建築における展開図とは|作成目的や作成手順を解説
展開図とは住宅内部の情報を知るために必要な図面です。建物の建築に携わる場合、展開図の作成が求められます。しかし、展開図の作成手順がよくわからないと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
本記事では展開図の概要にふれつつ、作成目的や作成手順を分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
1.展開図の概要と作成目的
2.展開図の作成手順
3.建築工事設計図書作成の概要
建築における展開図の概要
展開図とは住宅内部の空間の詳細を伝えるために作成する図面です。平面図では伝えられない詳細を施行者などの関係者に示します。住宅内部の中心から北・東・南・西をみた投影図で、1部屋につき4つの図面を作成します。展開図では次のような情報の読み取りが可能です。
・室内の仕上げ材
・天井の高さ
・エアコンおよび空調の位置や寸法
・窓およびドアの位置やサイズ
・キッチンの設備と寸法
展開図では施行者に住宅内部のイメージを明確に伝えられます。住宅完成時のイメージがしやすくなるため、家具の配置を検討する際に役に立ちます。
建築における展開図を作成する目的
建築において展開図を作成する目的は次の3つです。
・具体的な設計イメージを作り上げる
・工事の生産性向上を図る
・施行者と設計者間の円滑なコミュニケーションを図る
ここでは、それぞれの目的を詳しくみていきましょう。
具体的な設計イメージを作り上げる
平面図ではチェックできない室内の仕上げ材や天井の高さ、設備の寸法などを把握できます。そのため、平面図などの基本図面や口頭などでの説明と比較すると、展開図は具体的な設計イメージを作り上げることが可能です。
口頭での説明のみでは関係者に伝わりにくい可能性もあります。展開図により、建築の知識が浅い相手でも容易に情報を伝えられるでしょう。
工事の生産性向上を図る
窓およびドアの位置やサイズは施工時の基準になります。施工時の基準の明確化により、工事をスムーズに進行できるようになるでしょう。人為的なミスや確認作業などの削減につながり、工事の生産性向上が期待できます。
関係者間の円滑なコミュニケーションを図る
基本図面と比較すると、室内情報の詳細を伝えることが可能です。施行者と設計者など関係者間で共通の認識を持てるようになります。設備の配置やサイズなど詳細の情報共有が可能になり、打ち合わせや工事を円滑に進められるでしょう。
建築における展開図の作成手順
基本的な作成手順は次のとおりです。
1.4方向からみた図面を作成する
2.窓やドアなどの開口部分を作図する
3.キッチン設備やエアコンなど設備機器を作図する
4.スイッチやコンセントなどを作図する
5.寸法を書き加える
ここでは、それぞれの手順を詳しくみていきましょう。
1.4方向からみた図面を作成する
展開図の土台となる4方向からみた図面を作成しましょう。図面は関係者間で確認しやすいように、北面をA、東面をB、南面をC、西面をDとします。住宅内部が複雑である場合、作成する図面の枚数が増える可能性があります。
4枚の図面は次の2つの基準により寸法を決定します。
・部屋の有効長さ
・床から天井までの高さ
決定後、外形の作図を進めましょう。
2.窓やドアなどの開口部分を作図する
窓やドア、壁などを作図しましょう。加えて、窓やドアの開口部分も作図していきます。窓やドアは床からの高さ(内法高さ)に従い、正確に作図する必要があります。また、壁の作図においては実際の壁厚の寸法を記載しましょう。壁厚の寸法の明確化により、有効的に活用できるスペースを正確に把握できます。
3.キッチン設備やエアコンなど設備機器および家具を作図する
明確なイメージを与えるために、キッチン設備やエアコンなど設備機器および家具を作図しましょう。とくに展開図では平面図では作図できないキッチン関係の設備を表現できるため、空間の状況をより把握しやすくなります。設備機器の作図により、窓の開口に支障がないかなどの確認も可能です。
平面図で配置場所を決定した設備機器も展開図に作図した場合、配置場所を変更しなければならない可能性もあります。例えば、スイッチと設備機器が重なってしまい、スイッチを押せなくなってしまう場合、設備機器の場所を変更する必要があります。そういった場合、配置を再検討するケースもある点を知っておきましょう。
4.スイッチやコンセントなどを作図する
スイッチやコンセントなどは展開図において正確な高さに作画する必要があります。具体的には次の4つの機器は設置場所として適切な位置があるため、正確に展開図に反映していきましょう。
・スイッチ
・コンセント
・リモコン
・インターホン
電気配線図では設置する高さは表現できません。展開図で設置位置の高さの把握により、設備機器や家具と重ならないかをチェックできます。家具や設備機器と重なってしまい、スイッチやコンセントが使用できないという問題を発生させないためにも重要な作図手順です。
5.寸法を入力する
図面で住宅の内部を確認したい関係者に向けて、家具の高さや窓および建具の内法高さなど寸法を入力します。寸法が分からない場合、正確な展開図を作成しても関係者と情報を共有できません。関係者に伝えたい寸法を全て入力しましょう。
建築工事設計図書作成基準とは(*1)
建築工事設計図書作成基準とは、国土交通省が公表している建築工事設計図面の作成基準です。図面作成において文字や線、寸法などの表示方法などの統一により、業務効率化を図る目的で提示されています。建築工事設計図書作成基準では展開図を同一の用紙に製図する場合の配置が定められています。展開図の図面の配置は、用紙を4分割にし、左上がA、右上がB、左下がC、右下がDです。
また、建築工事設計図書作成基準には図面に記載する平面表示記号が記載されています。展開図の製図時に参考にしましょう。
建築の展開図をCADソフトで作成する方法もある
展開図だけでなく、建築のプロジェクトでは平面図や側面図、床伏図など大量の図面を作成しなければなりません。手作業で取り組むと、膨大な時間と手間がかかります。そのため、展開図などはCADソフトで作成する方法も検討しましょう。CADソフトとは建築プロジェクトの設計図面などを作成できるソフトです。
2D図面と3D図面の作成に対応しているソフトやBIMに対応しているソフトなど多様な製品があります。代表的なソフトにはAutoCADやJw_cadがあげられます。ソフトによって特徴や販売価格、搭載している機能が大きく異なるため、導入時には十分に確認しましょう。
まとめ
本記事では展開図の概要と書き方を解説しました。展開図とは住宅内部の空間の詳細を伝えるための図面です。北・東・南・西の4つの方向から、窓や家具、設備機器など住宅内部の詳細を確認できます。展開図により、設計のイメージを作り上げることが可能になり、作業を効率的に進められるようになるでしょう。加えて、関係者間でのイメージの共有がしやすくなります。
しかし、住宅内部の詳細を伝えるため、製図には時間と手間がかかってしまう可能性も否定できません。手作業ではなく、CADソフトによる製図をおすすめします。CADソフトの活用により、時間削減や業務効率化を図れるでしょう。
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*1
「国土交通省|建築工事設計図書作成基準(令和2年改定)p.3」