BIMの4D・5D・6D・7D・8Dとは?設計環境の未来のかたち
BIMは、建築や土木などで広く活用されており、CADよりも多様な情報を統合できるとされていますが、具体的に何が管理できるのかイメージがわきづらいものです。
本記事では、BIMにおける次元の考え方や、具体的に4Dから8Dまでの各次元の概要と活用のメリット、さらには将来の展望として期待されるXDについて解説します。
BIMを活用した業務の進め方がどのように変わるか、ぜひ参考にしてください。
一般的な次元とBIMにおける次元の考え方の違い
一般論として用いられる「次元」とBIMで用いられている「次元」では考え方が異なります。
一般的に、次元は空間や物体の特性を表すために使用されます。
- 1次元(1D):線
- 2次元(2D):面
- 3次元(3D):立体
- 4次元(4D):3次元+時間
一方、建築や土木で用いられるBIMでは、建物のライフサイクル全体にわたる3Dモデルの作成と運用が重視されています。
BIMでは3Dモデルを作成するだけではなく、管理できる情報が異なるのです。
BIMを活用することでプロジェクトの品質、安全性、持続可能性が向上し、コスト削減と効率化が目指せます。
BIMは3Dプロジェクトの可視化ができる
BIMの3Dとは、従来の2D図面と比較して、建物の形状や構造、空間関係をより正確に表現します。
3D BIMでは、設計者や施工者がプロジェクトの全体像を容易に把握できるため、プロジェクトの計画、設計、施工、維持管理を効率化する効果が期待できます。
3D BIM活用のメリット
- 干渉の検出と調整:プロジェクトの可視化により異なる建築要素間の衝突を建設前に解決することで、現場での問題発生を予防
- 空間計画の最適化を支援:さまざまな空間配置を机上で検討することで、機能性や利便性に基づく意思決定が可能
- 正確な数量調査:材料や数量を詳細に把握することで見積もりプロセスの合理化とコスト管理の向上を促進
BIMの4Dはスケジューリングを可視化できる
BIMの4Dとは、3次元のモデルに建設スケジュールやシーケンス情報など時間情報を追加した次元です。
4D BIMでは、建設プロセスを視覚化し、プロジェクトのタイムラインに基づいて建物がどのように構築されるかを示します。
これにより、ACE業界におけるプロジェクト管理を効率化し、予測可能性を高める効果が期待できます。
4D BIM活用のメリット
- 早期の衝突検出と解決:建設シーケンスを動的に視覚化して異なる活動や職種間の衝突や競合を調整することで、現場での再作業や遅延を抑制
- スケジュールの最適化:プロジェクトのスケジュールを正確に統合し、潜在的な衝突や遅延を特定することで作業効率と生産性が向上
- リソースと機器の管理:プロジェクト全体でリソースの割り当てを把握し、資源利用を最適化することでダウンタイムを削減
- コミュニケーションとエンゲージメントの向上:シーケンスの視覚化により関係者間のコミュニケーションを促進し、プロジェクトの進捗への理解が高まる
BIMの5Dは正確なコスト見積もりと予算管理ができる
BIMの5Dとは、3Dの空間モデルに時間(4D)とコスト(5D)の要素を加えた次元です。5D BIMでは、3Dモデルとコストデータを組み合わせることで、正確なコスト見積もりと予算管理が可能です。
5D BIM活用のメリット
- 正確なコスト見積もり:各建築要素にコストデータを関連付けることで、予算超過のリスクを減らし、効果的な意思決定を支援
- リアルタイムのコスト分析:プロジェクト全体にわたるコスト分析を実施し、デザイン変更や材料の代替がコストに及ぼす影響をリアルタイムで評価
- 数量積算の最適化:3Dモデルから自動的に数量を抽出して、数量積算プロセスを迅速化
- コストコントロールとレポーティング:コストデータの継続的な監視と管理を通じて、正確なレポーティングを提供し、プロジェクトの財務成功を図る
- 価値工学の促進:設計段階でコスト削減の代替案を探求し、材料の最適利用を図ることで、全体的な価値向上を図る
BIMの6Dは持続可能性とエネルギー効率の分析ができる
BIMの6Dとは、建物のライフサイクル全体にわたる環境パフォーマンスの評価を行う次元です。
6D BIMでは、5Dのコスト管理機能のほか、エネルギー効率の高い建築プロジェクトの計画と実施を行う情報やツールが含まれており、建築の持続可能性と環境負荷の軽減に大きく貢献します。
6D BIM活用のメリット
- 持続可能な設計の促進:建物のエネルギー効率や環境影響を評価することで、長期的な環境負荷を軽減する設計を選択
- エネルギー消費量の最適化:建物のエネルギー消費を詳細に把握・評価することで、運用コストの削減と環境を保護
- 環境負荷の評価:建物のライフサイクルにおける環境負荷を評価することで、低炭素・省エネルギーの建築実現のための戦略を策定
- 持続可能な運用とメンテナンスの計画:エネルギーシステムや照明などの管理を行い、建物の環境負荷を最小限に抑える戦略を構築
- 意思決定の支援:設計から施工、運用まで、持続可能性に関する意思決定を全面的に支援
BIMの7Dは維持管理と資産管理を効率化できる
BIMの7Dとは、運用保守マニュアル、保証、資産管理データなどの設備管理情報を統合して扱う次元です。
7D BIMでは、建物の設計段階から解体までの情報を一元的に管理し、維持管理の効率を大幅に向上させることが期待できます。
7D BIM活用のメリット
- 効率的な維持管理:建物の設備仕様や保守スケジュール、資産情報をデジタルで一元管理することで、施設管理者によるメンテナンス計画策定や運用が効率化
- ライフサイクルコスト分析:建物の全生命周期を通じてコストデータを統合し、設計やメンテナンスの決定における財務的影響を評価
- 資産性能と寿命の最適化:設備の性能と耐用年数を継続的に監視し、資産の保全と価値向上を図る
- 持続可能性とエネルギー効率の向上:環境への影響とエネルギー消費を評価し、持続可能な運用戦略を策定
- スムーズなコラボレーションとコミュニケーション:プロジェクト関係者間の情報共有が容易になり、効果的なコミュニケーションが可能
BIMの8Dでは建設現場の安全性向上が図れる
BIMの8Dとは、建設現場の安全性と事故防止に特化した次元です。
8D BIMでは、建設プロジェクトの安全計画が強化され、潜在的なリスクの事前対応と対策により建設現場の安全性確保や作業員の健康と福祉増進が図れます。
8D BIM活用のメリット
- 現場事故の削減:建設現場の潜在的な危険を事前に特定して安全対策を講じることで事故を抑制
- 安全管理を徹底:詳細な安全計画を事前に作成し、建設現場でのリスクを最小化
- 作業員のトレーニングの強化:作業員に対する安全教育を実施して安全意識の向上を図る
- 設計段階でのリスク管理:建設プロセスをシミュレーションし、各種安全対策の効果を事前に評価することでリスクを特定・設計最適化により後の段階での危険を回避
BIMには9D、10D、XDという概念もある
建築情報モデリング(BIM)の進化は、3Dから8Dまで多様な次元で進行していますが、9D、10D、複数の次元をまとめて表現するXDという概念もあります。
9D BIMは、リーン建設に焦点を当てています。
これは、建設プロジェクトの無駄を排除し、効率を最大化することを目指し、リーン原則を活用してプロジェクトの価値の流れを可視化し、非効率性を排除します。
また、資源管理や調達プロセスの最適化にも貢献するとされています。
10D BIMは、主に工業化建設の文脈で参照されることが多いです。
デジタルモデルを活用したオフサイト建設手法やプレファブリケーションの強化、災害や緊急管理計画の統合などが含まれます。
XD BIMとは、主に5Dを超える次元を扱う際に使用されます。
XD(拡張BIM)は、BIMによって解き放たれる情報と洞察の広範な探求を可能にし、プロジェクトチームがより多くの価値を引き出し、優れたプロジェクト成果を達成する効果が期待できます。
まとめ
BIMの4D、5D、6D、7D、8Dとは一般的に次元でイメージする「リアルさ」とは異なる概念です。
「BIMを使うとさまざまな情報が管理できてプロジェクトの開発効率が効率化する」とは、3Dから4D、5D、6D、7D、8Dと次元を高めることで管理できる情報が増えることを示します。
上位次元を管理できるBIMでは、設計プロセスだけでなく、建設と維持管理の各段階においてもより詳細な情報提供とプロジェクト管理の強化を目指しているのです。
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