建設業における共通データ環境(CDE)とは?ソフトウェアのポイントについても解説
BIMの普及に伴い、作業の効率化や質の向上のために注目を集めているのが共通データ環境(CDE)です。
しかし、CDEが一広く認知されているとはいえず、BIMに興味があってもCDEを十分に理解していない方がいるかもしれません。
CDEは国の支援事業の対象*1にもなっている重要なシステムです。
ぜひこの記事をご覧になり、導入を検討してみてください。
建設業におけるCDEとは
それではさっそく建設業における共通データ環境(CDE)について説明します。
まずはCDEの概要と構成をみていきましょう。
CDEはISO19650に取り入れられている「共通データ環境」*2
CDEはイギリス発祥の考え方で、ISO19650に取り入れられたことから世界で注目を集めています。
CDEは「プロジェクトに関するすべての情報を収集・管理・配布するための情報プラットフォーム」です。
CDEを構築してデータを集積することで、作業の効率化や高品質化といったさまざまなメリットが生まれます。
BIMは、設計・施工・運用段階を通し、一貫して利用することがひとつの理想形です。
ひとつのプラットフォームですべてのデータを収集・管理・配布できるCDEは、BIMの一貫利用を助けるソリューションであるといえるでしょう。
CDEのステータス
CDEは下図*3のように4つのステータスで運用されます。
CDEの効果を最大化するには、ステータス間のデータのやり取りを正しくタイムリーに行うのが重要です。
ここでは、4つのデータステータスの役割や扱い方を紹介します。
ISO19650におけるCDEのコンセプト*3
(引用) UK BIM FRAMEWORK「 Information management according to BS EN ISO 19650 Guidance Part 2: Processes for Project Delivery Published by Edition 4 P.29」
https://ukbimframework.org/wp-content/uploads/2020/05/ISO19650-2Edition4.pdf
CDEのステータス(1):作業中(Work in Progress)
「作業中」は、作業チームがデータを作成・編集している状態を示すステータスです。
作業中のデータは作業チーム以外のメンバーに対しては非表示であり、アクセスもできません。
完成したデータは、確認・評価・承認の手続きの後、所定のメンバーに共有されます。
CDEのステータス(2):共有(Shared)
「共有」は、所定のメンバーが承認されたデータを見ることができるステータスです。
所定のメンバーとは、他の作業チームや運用管理者、建築主などを指します。
最終承認を受ける前のステータスであり、製作を開始する根拠資料などにはなりません。
共有の段階で更なる調整を行い、次のステップに向かうことになります。
CDEのステータス(3):公開(Published)
「公開」は、チーム内の検討などを終え、データが発行されたことを示すステータスです。
公開されたデータは、詳細設計や施工、資産管理のためにさまざまな関係者によって使用されます。
チーム内メンバーとのやり取りだけでなく、社外関係者などとのデータのやり取りもCDEで行うのが大きな特徴です。
CDEのステータス(4):アーカイブ(Archive)
「アーカイブ」は、作業履歴を示すステータスです。
CDEが情報プラットフォームとして正しく機能するように、承認の履歴などを記録します。
CDEの有効活用するためのポイント
CDEは、ただ環境を整えるだけでは機能しません。
ISO19650にはCDEの運用に関する要点*2が記載されています。
以下に要点をまとめるので、運用の際は正しいワークフローを用意しましょう。
図面、モデル、ファイルなどに対して、それぞれの保存場所で統一した標準識別子を割り当てる
国のガイドラインにあわせてファイルなどに名前を付ける
ステータスを正しく管理し、アクセスした人がデータの正確性・有効性を判断できるようにする
すべてのプロジェクトメンバーが最新の情報にアクセスできるように改訂管理を行う
承認済みデータのみがステータス変更(「作業中」から「共有」、「共有」から「公開」)されるように承認プロセスを管理する。
CDEを導入するメリット
前節ではCDEの概要について説明しました。
次に、CDEを導入するメリット*2についてみていきましょう。
情報の一元管理による効率化
CDEを適切に運用すると、プロジェクトメンバーはCDEにアクセスするだけで常に最新の図面や資料を見ることができます。
担当者から資料を取り寄せる必要がなくなるため、データのやり取りの効率化を図れるのがメリットです。
また、古い情報をもとに計画を進めてしまうようなミスがなくなり、手戻りが減ります。
「常に最新情報を格納する」というのは、社内外の多くの関係者が携わる建設業においては鉄則ともいえる基本的なことです。
しかし、日々刻々と進捗するプロジェクトで徹底するのは、不可能に近かったといえます。
CDEを構築することで最新情報を手軽に管理できるようになれば、さまざまなトラブルを回避できるでしょう。
関係者の連携強化による効率化や質の向上
CDEを使うと図面やモデルがプロジェクトメンバーに対してオープンになるのが特徴です。
これにより、会社の垣根を越えてアイディアを引き出しやすくなります。
建設業には、独自のノウハウや知見を持つ多くの専門会社が携わります。
それぞれの専門会社のよさを存分に発揮させるのがプロジェクト成功の秘訣です。
専門会社がCDEを通して情報に手軽にアクセスできることで、効率化や質の向上に繋がる意見を出しやすくなるでしょう。
透明性とセキュリティの向上
CDEは情報をオープンに扱うため、プロジェクトメンバー間で透明性を維持できます。
また、CDEは情報の一元管理による明快さゆえ、セキュリティの管理がしやすいといえます。
情報のデータ化に伴いデータセキュリティの重要性はこれからも増していくでしょう。
CDEにデータを集積することで透明性・セキュリティ性を維持できるのは、現代の需要に合ったメリットです。
CDEを扱えるソフトの選び方
CDEを扱えるソフトウェアはISO19650対応などのさまざまな機能を持っています。
ここでは、CDEを導入するときのソフトウェアを選ぶポイントをみていきましょう。
ISO19650対応*2
ISO19650対応のソフトウェアは、ISO19650で定められているCDEの運用に関する要点を満足できるように作られています。
日本でもこのようなソフトウェアを使ってISO19650に基づいた認証を受けたプロジェクト*4が登場しています。
ISO19650はBIMの世界的な指針です。
認証取得が建物の価値に繋がる場合は選択肢として挙げられるでしょう。
チームワーク機能
一部のソフトウェアには、CDE内のBIMを複数の作業担当者が編集できる「チームワーク機能」が搭載されています。
使えるソフトウェアは限定されますが、環境を整えられれば大きな効率化に繋がるでしょう。
BIMオペレーターが10人を超えるような大規模プロジェクトでは注目の機能です。
データ連携
CDEからデータを取り出して他のアプリケーションなどで使う場合に活躍するのが「データ連携」です。
BIMのモデルデータのやり取りには「IFC」というファイル形式を使うのが一般的です。
しかし、バージョンの適合などで不具合が生じるケースが多々あります。
データ連携機能でやり取りができればスムーズに扱えるため便利です。
ただし、使いたい外部アプリケーションなどに対応しているかは事前に確認するようにしましょう。
おわりに
共通データ環境(CDE)は、情報の一元化を図る優れたシステムです。
従来のやり方で発生していた情報の食い違いによる手戻りなどを減らし、効率化に繋げることができます。
また、会社の垣根を超えたオープンな提案が活発化され、質の向上を期待できるでしょう。
BIMの普及に伴いますます注目を集めているCDEをぜひ導入してみてください。
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*1
(参考) 国土交通省「 建築BIM活用プロジェクトを支援します P.2」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001586871.pdf
*2
(参考) AUTODESK「ISO 19650, 共通データ環境, CDE, Autodesk Construction Cloud」
*3
(引用) UK BIM FRAMEWORK「 Information management according to BS EN ISO 19650 Guidance Part 2: Processes for Project Delivery Published by Edition 4 P.29」
https://ukbimframework.org/wp-content/uploads/2020/05/ISO19650-2Edition4.pdf
*4
(参考) 大和ハウス工業株式会社「BSIグループジャパン(英国規格協会)
日本初となるISO 19650に基づいたBIM BSI Kitemarkを大和ハウス工業に認証」
https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20210225091947.html