BIMモデル事業とは?種類や取り組み事例を解説
BIM運用は多くの企業にとって喫緊の課題となっていますが、運用に際してはコスト面の負担や活用の方法がわからないなどの問題も懸念されており、今ひとつスムーズな普及が進みません。
ただ、BIM運用は国策としても後押しが進められているため、近年は様々な支援プロジェクトも見られます。
この記事では、そんなBIM支援プロジェクトの一種であるBIMモデル事業について、プロジェクトの概要やモデル事業から得られるメリット、種類、そして実際の取り組み事例を解説します。
目次:
- BIMモデル事業の概要
- 採択事業者がBIMモデル事業から得られるメリット
- BIMモデル事業の種類
- BIMモデル事業の主な取り組み事例
BIMモデル事業の概要
BIMモデル事業は、国土交通省が2020年より開始した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」の略称です。
建築プロジェクトにおいてBIMを導入することはどのようなメリットを事業者に与えるのか、どのようにパフォーマンスが変化するのかを検証するための機会を中小企業に設けることを目的としたプロジェクトであり、すでに複数回実施されています。
BIMモデル事業に応募した企業は、建築BIM推進会議による「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン第1版」に基づいてBIM運用を進めることが決められています。
またBIMモデル事業への応募に際しては、実際にBIMを利用して効果検証と課題分析を進め、本格的なBIM運用につながる提案を行うことが求められており、優れた提案には国から補助金が支給されます。
BIM運用の進捗状況及び成果については後ほど報告書の形式で共有され、他の事業者のBIM運用を支援する目的で活用されるという仕組みです。
採択事業者がBIMモデル事業から得られるメリット
BIMモデル事業に採択された事業者は、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは主な利点を整理して紹介します。
費用負担を抑えてBIMを導入できる
BIMモデル事業の有効活用は、上手くいけばBIM導入に伴うコストを抑えて施策を実行に移せる点にあります。
BIMモデル事業にはいくつかの種類があり、補助金が付与されないものもありますが、将来性や実効性が認められた場合、補助金を受けられるわけです。
BIM導入の壁となっているのは、やはりBIM導入に伴う設備投資や研修コストの発生です。これらの負担をBIMモデル事業を利用すれば軽減することができるため、やってみる価値は大きいと言えるでしょう。
期待値の高いBIM運用を進められる
BIMモデル事業に参画してBIM運用を進めることで、建設的にBIMを活用できる機会を得られます。
BIMモデル事業として採択されるには提案書の作成が必要ですが、それを通じてBIM運用の現実的な可能性を考える機会が得られるため、行き当たりばったりの活用でパフォーマンスが得られないようなケースを回避できるわけです。
また、BIMモデル事業は建築BIM推進会議によって採択されたガイドラインにのっとり、BIM運用を進めます。BIMの正しい運用方法についての理解を深め、リテラシーが高く堅実なBIM活用へ役立てられるでしょう。
自社のBIM運用を客観的に評価できる
BIMモデル事業に選ばれた場合、進捗状況や事業についての報告義務が発生しますが、これらは第三者からBIM運用の状況を客観的に評価してもらう上でありがたい機会とも言えます。
現状、BIM運用の事例はまだ十分とは言えず、最適なBIMの使い方ができているかどうか、わからない部分も多くなってくるものです。
BIMモデル事業であれば国家的なプロジェクトの一環としてBIM運用のあり方を評価してもらう機会を設けられるので、より質の高いBIM活用の機会を掴むことにもつながるでしょう。
BIMモデル事業の種類
BIMモデル事業には、大きく分けて以下の3つの種類が存在します。それぞれにどのような違いがあるのか、ここで確認しておきましょう。
先導事業者型
先導事業者型は、建築BIM推進会議のガイドラインに則って建築プロジェクトにBIMを導入し、定量的な効果検証や課題分析を行うことを前提としたBIMモデル事業です。
これまでのBIMモデル事業では取り組まれてこなかった課題を扱うプロジェクトなどに採択されるBIMモデル事業で、採択の際には経費の範疇で補助金を受け取ることができます。
中小事業者BIM試行型
中小事業者BIM試行型は、BIMガイドラインに則ってBIMを運用しますが、その際に複数の事業者と連携をとって建築プロジェクトにて検証等を行います。
こちらのBIMモデル事業でも補助金を受け取ることができますが、その金額は先導事業者型にくらべて小さいのが特徴です。
パートナー事業者型
パートナー事業者型は、建築BIM推進会議との連携を行いながらBIMを活用し、その検証結果を提言するために設けられたBIMモデル事業です。
こちらのモデルは補助金の受け取りこそできないものの、主体的にBIM運用を進め、そのパフォーマンスを評価したり課題を洗い出したりした上で情報を共有できるため、BIM運用の将来性を確保する上で重要なモデルです。
BIMモデル事業の主な取り組み事例
最後に、BIMモデル事業にはどのような取り組みが過去に行われてきたのか、実際の事例を参考にしながら確認しておきましょう。
株式会社梓設計など複数社(先導事業者型)
株式会社梓設計ら複数社が共同で取り組んでいる先導事業者型のプロジェクトでは、拡張進化型維持管理システムを活用したプロセスマネジメントの効果検証を実施しました*1。
BIMデータの活用や連携に伴う課題分析を実施することで、これまで確認できていなかった問題点の発見や、想定よりも良い成果が得られる施策も明らかになるなど、有意義な成果を納めています。
株式会社フジキ建築事務所・株式会社遠藤克彦建築研究所(中小企業BIM試行型)
株式会社フジキ建築事務所と株式会社遠藤克彦建築研究所は、中小企業BIM試行型の一環としてBIMモデルを活用した数量積算の有効性検証と提言プロジェクトを遂行しました*2。
従来手法のように積算ソフトを使わず、BIMソフトのみで数量を算出するワークフローの策定と数量の精度分析を実施した結果、生産性の向上効果が確認できたということです。
明豊ファシリティワークス株式会社(パートナー事業者型)
明豊ファシリティワークス株式会社は、パートナー事業者型のBIMモデル事業を実施し、発注者の BIM 活用のための「デジタル・ケイパビリティ」構築支援に関する検証を行いました*3。
デジタルを活用できる組織として持つべき能力、つまりデジタル・ケイパビリティをどのように獲得すべきかを検証したのが、このプロジェクトです。
BIMモデル運用の実態をより具体的に可視化し、どのような能力が運用に求められるのか、どんな仕組みが組織に必要なのかを明らかにする一助となりました。
まとめ
この記事では、BIMモデル事業とは何か、活用によってどのようなメリットが期待できるのかについて解説しました。
BIMモデル事業は補助金が出る種類もあるだけでなく、事業への参画によってBIMの建設的な運用が進むことも期待できます。
国が後押しする信頼性の高いこの制度を有効活用し、BIM運用を推進しましょう。
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出典:
*1 国土交通省「令和4年度モデル事業」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001599717.pdf
*2 国土交通省「令和4年度モデル事業」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001599728.pdf
*3 国土交通省「令和4年度モデル事業」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001599725.pdf