BIMにかかる費用はどれくらい?主要ソフトの価格や平均投資額を解説
「BIMにかかる費用はどれくらいだろう?」
「BIM導入について、他の企業ではどれくらいの費用を使っているのだろう?」
とお悩みの方へ。建築業界ではBIM導入が叫ばれており、多くの企業で課題のひとつとなっています。国内では費用の高さからBIMの導入に躊躇しているケースが多く、経営層が納得しない・導入はしたいけれど費用が足りない…と悩んでいるケースも少なくありません。
この記事ではBIM導入を検討しているご担当者に向けて、BIM導入にかかる平均的な費用やその内訳、人気BIMツールのライセンス費用についてご紹介します。BIM導入を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
BIM導入に関する年間投資額の企業平均(平成29年度版)
国土交通省の「平成29年度の年間投資額の企業平均」によると、平成29年度における企業のBIM推進のための年間投資額は以下の通りでした。(※1)
BIM/CIMに関するソフトウェア…357万円
BIM/CIMに関するハードウェア…346万円
BIM/CIMに関する研修:技術者育成…153万円
BIMの導入にかかる費用として、上記のようにソフトウェア・ハードウェア・そしてBIMを社内で使うために研修や技術者育成といった人件費の3つが主な項目として必要です。
これら3つを合計すると「856万円」となります。BIMは新しい技術であるため、専用ツールやそれに対応したハードウェアの導入などが必要で導入費用はどうしても高くなります。
BIMといえばBIMツールの導入が必要で、ツールの費用だけが高額だと思われがちです。しかし実際の調査データでは、ツールの導入に伴うハードウェアの費用もほぼ同じ額必要となります。
BIMの導入にかかる国の対応策
国土交通省では、費用・人材・機器に関する課題への対応状況として、以下を明言しています。(※2)
- 費用について
「新技術導入促進調査経費」として、平成30年度の予算を新たに計上しました。この費用は、新技術の導入・活用などにかかる経費として公共事業の工事費に上乗せされます。
- 人材について
BIM/CIMに関する技術力向上に向けて、学習フレームワークの構築を検討しています。公共事業において、受発注者双方が共通して学ぶべきことや役割に応じた学習すべき内容を分類して体系的にすることで、より効率よく学ぶことができます。
- 機器について
受発注者が受注者に対する要求事項(リクワイヤメント)を設定します。平成30年度以降は、発注者がソフトウェアに機能実装を求める「技術開発提案書」の作成を求めることで実務に即したソフトウェア開発を推進しています。
人気BIMソフト費用一覧
BIMの導入では専用ツールが欠かせません。国内でも人気のBIMツールとして、以下3つのソフトウェアのライセンス費用をご紹介します。
企業名 | ソフトウェア名 | 1か月(円) | 1年(円) | 3年(円) |
Autodesk | Revit(※3) | 57,200 | 453,200 | 1,359,600 |
Revit LT(※4) | 11,000 | 83,600 | 250,800 | |
GRAPHOSOFT(※5) | Archicad Collaborate | 62,040 | 434,610 | 1,173,447 |
Archicad | 62,040 | 434,610 | – | |
VECOTRWORKS(※6) | Vectorworks Design Suite スタンドアロン版 | – | 306,350 | – |
Vectorworks Architect スタンドアロン版 | – | 245,300 | – |
※2024年7月時点の価格です
※価格は税込みですArchicad Collaborate
Archicad CollaborateArchicad Collaborate
BIMで世界的なシェアを持つ「Revit」
Revitとは、AutoCADなどCAD全盛期からデザイン・設計分野に特化したソフトウェアを開発している「オートデスク」が提供するBIMツールです。3DCADソフトウェアであるRevitは、“BIM特化”が最大の特徴であり、意匠設計・構造設計・設備設計をカバーしています。
高性能かつプラグインが豊富・他ツールとの連携のしやすさで世界的に有名なBIMソフトウェアで、海外はもちろん日本でも多くのゼネコンや大手企業が導入しています。
LTはレンダリング機能自体が搭載されておらず、鏡面反射など光と影の計算ができません。シミュレーションした時の日の差し込み具合といったよりリアルな表現は難しいですが、設計やドキュメント作成といった基本的な機能をコスパ良く利用できるプランです。
ARCHICAD(アーキキャド)
ハンガリー企業のグラフィソフト社が開発している「ARCHICAD」は、建築・建設業界に特化したCADソフトです。ARCHICADもBIMを素早く取り入れたツールとして知られており、1980年代から開発を続けている老舗ともいえるソフトです。
ARCHICADの魅力といえばWindows・Macの両方に対応している点で、iPadはもちろんWindowsタブレットでも操作でき、より幅広く活用できます。
ARCHICADでは2023年より新製品として「Archicad Collaborate」を提供しています。これは通常のARCHICADにクラウドBIMソリューションである「BIMcloud SaaS」、データコレボレーションができるサービスを組み合わせたもので、Archicadの中で最も上位のプランです。
Archicadデザイン性が高く、アトリエ設計以外にも保育園や病院といった建築でも頻繁に使われているソフトです。
Vectorworks Architect(ベクターワークスアーキテクト)
アメリカのNemetschek Vectorworks社が開発している「Vectorworks Architect」は、BIMや木造建築設計、意匠設計などを支援するツールです。汎用の基本製品として2D・3D設計ができる「Fundamentals」を開発しており、「Vectorworks Architect」BIMに対応した空間計画機能や室内展開図ビューポートといった機能が上乗せされています。
企業がBIM導入に費用をかけるべき3つの理由
費用面の高さから、国内ではまだまだBIMが浸透していないといわれています。BIM導入にかかる費用は決して安くなく、経営層がOKを出さなかったり、導入したくても費用面で難航していたりと企業が抱えるBIMの悩みは様々です。
しかし以下の理由から、建築業界ではBIMの導入を急がなければなりません。
※ 2023年から公共事業では「原則BIM化」が適用
※ BIMの費用対効果は高い
※ 自社向けにカスタマイズしたツールならより高い効果を狙えるから
それぞれについて、順番に解説します。
1.2023年から公共事業では「原則BIM化」が適用
日本ではBIMの推進を目的として、令和5年度より公共事業において「BIM/CIM原則適用」が始まっています。段階的に進めるために義務項目・推奨項目の2つに分けた運用となっていますが、CADツールではできない「3次元モデルの活用」は義務項目です。(※7)
つまり、2023年度以降で公共事業を請けるためにはBIMツールが欠かせません。大手ゼネコンはすでにBIMツールの活用を進めていますから、大きな仕事を受けるためにも、費用を確保してBIMの導入に注力する必要があります。
2.BIMの費用対効果は高い
BIMは費用が高く、「利益が出るかわからない状態では導入を進められない」と考えている会社や経営層も少なくありません。しかしBIMツール「Revit」を開発しているオートデスクの調査では、BIMによる利益創出効果は工事費の10%に及ぶという結果が出ています。(※8)
BIMを導入・活用するとプロジェクトに潜むムダも見える化しやすく、手戻りを減らす効果があります。オートデスクの調査では手戻りの55%は設計が原因であり、資機材の供給が23%、人材能力によるものが18%でした。
BIMツールは設計工程の多くが自動化でき、手戻りの大幅な削減が期待できます。利益アップだけではなく無駄や手戻りを減らすことでコスト削減にもつながるので、より利益を伸ばす効果が期待できます。
3.自社向けにカスタマイズしたツールならより高い効果を狙えるから
BIMツールで人気の高い「Revit」は、国内でも多くの建築企業が導入しています。高性能でプラグインによる拡張性が高く、他アプリとの連携もできるのでより活用範囲を広げることができる点がRevitの魅力です。
しかしRevitはその拡張性の高さや高性能な仕様から、BIMのノウハウがない企業がスムーズに導入したり活用したりすることは簡単ではありません。
費用はかかるものの、BIMコンサルティングなど外部の力を借りることで、導入や自社に合わせたカスタマイズや導入支援・人材トレーニングといったサービスを受けられます。その結果BIM導入で失敗するリスクを抑えることができ、「こんなはずではなかった」と後悔せずに済むでしょう。
CAPAでは、設計業務効率化のためにRevitカスタマイズや他アプリとのデータ連携といった支援をしております。また既存データと親和性の高いBIMソフトウェアの選定やトレーニングも行っており、BIM導入を一気通貫でサポートします。
BIMの費用について、必要な項目やそれぞれの平均、人気BIMツールのライセンス費用などをご紹介しました。企業の規模やソフトウェア・ハードウェアの仕様によって費用は大きく異なりますが、ひとつの参考になれば幸いです。
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参照サイト
※1 https://www.mlit.go.jp/common/001252262.pdf(P.5)
※2 https://www.mlit.go.jp/common/001252262.pdf(P.8)
※3 https://www.autodesk.com/jp/products/revit/overview?term=1-YEAR&tab=subscription
※4 https://www.autodesk.com/jp/products/revit-lt/overview?term=1-YEAR&tab=subscription
※5 https://graphisoft.com/jp/price-2024
※6 https://www.aanda.co.jp/subscription/price.htmlhttps://www.autodesk.com/jp/products/revit-lt/overview?term=1-YEAR&tab=subscription