AutoCAD価格改定2025|値上げ内容と今後の導入・更新ポイントを徹底解説
1. はじめに
1.1. AutoCAD価格改定2025の概要と読者への影響
2025年、AutodeskはAutoCADを含む複数の製品で価格改定を実施しました。今回の改定では、新規サブスクリプション契約だけでなく更新契約の料金も引き上げられ、法人・中小企業・個人事業主を問わず幅広いユーザーに影響を与える見込みです。特にAutoCADは、建築・製造・設備設計など幅広い分野で“業界標準”として長年利用されてきたため、この値上げは多くの設計現場にとって無視できない出来事となります。
価格改定の背景には、Autodeskが進めるサブスクリプションモデル強化や、クラウド連携機能・AI自動化機能などの先進技術への継続的な投資があります。さらに、世界的なインフレや為替変動といった外部要因も重なり、CAD業界全体で価格が上昇傾向にあります。
こうした状況では、契約の更新時期や契約形態を見直すことが、コストを抑えつつ業務環境を安定させるために欠かせません。価格改定は避けられないものですが、それをきっかけに契約戦略やライセンス管理を見直せば、むしろコスト削減や業務改善のチャンスに変えることも可能です。
1.2. この記事で解説する内容
本記事では、まずAutoCADの基本機能とライセンス形態をおさらいし、2025年の価格改定内容を整理します。そのうえで、値上げの背景となるAutodeskの戦略や市場動向を解説し、契約更新や新規導入時に検討すべきポイントを具体的に紹介します。
さらに、各種コレクション製品の価格改定への影響、代替CADソフトウェアの検討ポイント、販売パートナーを通じたコスト最適化の方法など、実務に役立つ情報も網羅します。この記事を読むことで、価格改定の影響を正しく理解し、「いつ・どの契約で・どの製品を選ぶべきか」を判断するための知識が得られるはずです。
2. AutoCADとは?基本のおさらい
2.1. AutoCADの主な用途と特徴
AutoCADは、Autodeskが提供する汎用CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアで、建築設計、機械設計、製造業、土木・設備分野など、幅広い業種で利用されています。2次元図面の作成から3次元モデリングまで対応でき、豊富なコマンドとカスタマイズ性の高さが特長です。近年ではクラウド連携機能やモバイル版の提供により、オフィス外でも図面の閲覧・編集が可能になっています。
長年にわたり業界標準として定着しているため、教育・研修環境やサポート体制も充実しており、導入後すぐに業務へ活用できるのも魅力です。また、バージョンアップのたびに新機能や改善が加えられ、AIを活用した自動化ツールや共同編集機能など、設計の効率化を支える機能も進化し続けています。
ユーザーの業務内容や規模によって使い方はさまざまで、伝統的な2次元製図の用途から、BIMや3D設計との併用、業種特化のアドオンとの組み合わせまで、多様な活用スタイルが存在します。この柔軟性の高さが、AutoCADが長年選ばれ続けている理由の一つです。
2.2. ライセンス形態の解説
現在、AutoCADのライセンスはサブスクリプション(定期契約)方式に一本化されています。以前は買い切り型の永久ライセンスが存在しましたが、Autodeskはすでに販売を終了し、月額契約・年額契約・3年契約といった期間選択型のサブスクリプションモデルへ移行しました。これにより、常に最新バージョンを利用できるメリットがある一方、契約更新時に継続的な費用が発生するため、長期的なコスト管理が必要です。
製品構成は大きく分けて以下の3種類があります。
- AutoCAD(単体):フル機能版で、2D/3D設計を幅広くカバー。
- 業種別コレクション(例:AEC Collection、Product Design & Manufacturing Collection):AutoCADに加え、BIMやCAM、解析ツールなど複数ソフトをセットで利用可能。
契約形態を選ぶ際は、自社の業務内容や使用頻度、将来の業務拡張計画などを踏まえて比較検討することが重要です。
2.3. 価格体系の変遷
かつてのAutoCADは、一度購入すれば半永久的に利用できる「永久ライセンス」が一般的でした。しかし2016年以降、Autodeskは段階的に永久ライセンスの新規販売を終了し、2019年までに完全にサブスクリプションモデルへ移行しました。この移行により、契約期間を選べる柔軟性が生まれた一方で、契約更新のたびに費用が発生する構造になっています。
さらに、近年は世界的なインフレや為替変動の影響に加え、AutodeskによるクラウドサービスやAI機能への開発投資が進んだことから、サブスクリプション価格が上昇傾向にあります。特に2025年の価格改定では、契約形態によって異なる値上げ幅が設定されました。
こうした背景を理解しないまま契約更新を行うと、予想以上のコスト増につながる可能性があります。そのため、導入や更新のタイミングでは、価格だけでなく最新機能や運用面での効果も含めた総合的な判断が求められます。価格の変化を単なる負担と捉えるのではなく、自社の設計業務を強化するための投資として評価する視点が重要です。
3. 2025年AutoCAD価格改定の詳細
3.1. 改定の実施時期と対象製品
2025年のAutoCAD価格改定は、2025年5月7日から順次実施されます。新価格は、新規サブスクリプション契約だけでなく、契約更新にも適用されます。適用タイミングは契約ごとの更新日によって異なり、改定日以降に契約を行ったユーザーは新価格が適用されます。
対象となるのは、AutoCAD単体ライセンスだけではありません。業種別コレクション(例:AEC Collection、Product Design & Manufacturing Collectionなど)、さらにM2S(Move to Subscription)やTNU(Transition to Named User)といった特別更新プログラムも含まれます。
このため、ほぼすべてのAutoCADユーザーが価格改定の影響を受けることになります。更新タイミングによって支払額が大きく変わる可能性があるため、早めに契約更新の計画を立てることが重要です。とくに長期契約を検討すれば、一定期間は旧価格を据え置ける可能性がありますが、その判断には自社の予算や事業計画とのバランスを見極める必要があります。
3.2. 具体的な値上げ率と価格
2025年の価格改定では、製品や契約条件によって値上げ率が異なります。参考情報として、国内リセラーの案内によれば、新規契約の年額は約3.3%の値上げ、更新契約では約8.7%の値上げがありました。また、M2S/TNUといった特別更新価格も最大5%の引き上げとなり、2025年5月10日以降はこれらが1年契約限定になる予定です。
例えば、AutoCADの年額契約が数千円単位で上昇し、3年契約の場合も契約期間全体で見れば数万円単位の増加となります。
さらに、為替変動や世界的なインフレの影響で、今後も価格が追加的に調整される可能性があります。実際、Autodeskは過去にも為替レートの変動に応じて国内価格を改定してきた経緯があり、今回も例外ではありません。導入・更新を検討する際は、必ず公式サイトや販売パートナーから最新の価格情報を入手し、正確なコスト試算を行うことが必要です。
3.3. 契約タイプ別の影響
AutoCADのサブスクリプションには、月額契約・年額契約・3年契約など複数の選択肢があります。一般的に契約期間が長いほど年間あたりのコストは安くなりますが、今回の価格改定ではすべての契約タイプで値上げが適用されます。したがって、長期契約が必ずしも最も有利とは限らなくなります。
契約更新のタイミングは、自社の利用状況やライセンス数を見直す絶好の機会です。使用頻度の低いライセンスを整理するだけでも、大幅なコスト削減が可能です。とくに複数部署や拠点で利用している場合は、ライセンスを一括管理することで無駄を減らしやすくなります。
小規模事業者や個人利用では、資金繰りの柔軟性を重視して月額契約を選択する方法もあります。一方、安定した利用を前提とする法人では、複数年契約によって値上げリスクを抑える戦略も有効です。契約タイプの選定は、コスト面だけでなく業務スケジュールや将来の利用計画も踏まえて判断することが重要です。
4. 値上げの背景とAutodeskの戦略
4.1. サブスクリプション強化と機能投資
今回の価格改定の背景には、Autodeskが推し進めているサブスクリプションモデルの強化があります。かつて主流だった買い切り型の永久ライセンスは2016年以降販売が終了し、現在はすべての製品がサブスクリプション契約に移行しました。これにより、Autodeskは安定した収益基盤を確保でき、同時にユーザーに常に最新バージョンと機能を提供できる仕組みを整えています。
さらに、近年はAIやクラウド連携などの先進技術への積極的な投資も価格改定の大きな要因です。AutoCADでは、自動化機能やリアルタイム共同編集、クラウド上でのデータ共有など、生産性を飛躍的に向上させる新機能が次々と実装されています。これらの機能開発やインフラ維持には高額なコストがかかり、その負担が利用料金にも反映されます。
つまり、今回の値上げは単なる価格の引き上げではなく、より高性能で利便性の高いCAD環境を持続的に提供するための投資回収という意味合いを持ちます。利用者にとっては一時的な負担増となりますが、その先には業務効率化や品質向上といった長期的なメリットが期待できます。
4.2. 市場環境と価格改定のグローバルトレンド
AutoCADの価格改定は、Autodeskだけの動きではなく、ソフトウェア業界全体の世界的な価格上昇傾向と密接に関連しています。背景には、世界的なインフレ、開発・人件費の高騰、クラウド運用コストの増加、そして為替変動があります。特に日本では円安基調が続き、海外価格を基準とするソフトウェア製品の多くが値上げせざるを得ない状況にあります。
また、CADを含む設計ソフトの各メーカーは、クラウドサービスやAI機能の開発を競うように強化しており、その開発費や運用費をサブスクリプション料金に反映させる動きが広がっています。結果として、サブスクリプション価格の引き上げは業界全体の共通トレンドとなっており、Autodeskもこの流れの中にあります。
このような環境を考えると、今後も定期的に価格改定が行われる可能性は高く、ユーザー側には契約タイミングの工夫や複数年契約による価格固定、ライセンス数の見直しといった長期的なコスト対策が求められます。世界的な価格動向を注視しつつ、自社にとって最も合理的な契約・運用戦略を立てることが、今後の安定的なCAD運用の鍵となるでしょう。
5. 導入・更新時の重要ポイント
5.1. 契約の見直し
まず重要なのは現行契約の更新日と契約内容を正確に把握することです。更新日が改定後に予定されている場合、値上げ前に契約を前倒し更新することで、旧価格を一定期間維持できる可能性があります。特に1年契約から3年契約へ切り替える場合や、契約更新本数を見直す場合は、社内稟議や予算確保を早めに進める必要があります。
また、Autodesk認定販売パートナーを通じた契約も有効な戦略です。パートナーによっては、期間限定の割引を実施している場合があります。ただし、条件や期限があるため、早めの情報収集と決断が欠かせません。
さらに、更新時期の調整はコスト対策だけでなく、業務面でも効果があります。繁忙期に新バージョン導入や学習負荷が重なると効率が下がる恐れがあるため、閑散期に導入・更新を行い、研修や設定調整の時間を確保することも重要です。
5.2. AutoCAD製品の比較と選択
AutoCADには用途や業務規模に応じた複数の製品ラインがあります。
- AutoCAD(フル機能版):2D/3D設計機能を網羅し、幅広い業務に対応。
- 業種別コレクション(AEC Collection、PD&M Collectionなど):AutoCADに加え、BIMやCAM、解析ツールなどをセットで利用可能。
3D設計やBIMとの連携が必要な業務では、フル機能版または業種別コレクションの導入が効率的です。製品選択の際は、現在の業務内容だけでなく、今後の事業計画や将来必要になる機能を考慮することが重要です。クラウドやモバイルでの活用、共同編集、AI機能の利用予定なども含めて、最適なプランを選びましょう。
5.3. ライセンス管理と最適化
ライセンスを契約したまま更新を繰り返すと、使用されていないライセンスが温存されているケースが少なくありません。特に複数拠点や複数部署で利用している場合、利用状況の可視化が難しくなり、無駄なコストが発生します。
定期的にライセンスの棚卸しを行い、実際の利用状況を把握することが重要です。ある企業では、不要なライセンスを整理したことで年間数十万円のコスト削減に成功した事例もあります。
また、サブスクリプション契約の利点として、一時的に利用を停止したり、必要に応じて追加契約できる柔軟性があります。これを活用すれば、繁忙期・閑散期に合わせてライセンス数を最適化でき、長期的なコスト抑制につながります。
5.4. 代替CADソフトウェアの検討
価格改定を機に、AutoCAD以外のCADソフトを検討する企業もあります。代表例としてはDraftSightやZWCADなどがあり、AutoCADと近い操作性を持ちながら低コストで利用できる場合があります。特に2D作図が中心の業務では、代替製品でも十分な機能を提供できるケースがあります。
しかし、代替ソフトの導入には注意も必要です。最も重要なのはDWGファイルとの互換性であり、完全互換を謳っていても、細かい部分で表示や印刷結果に差が出ることがあります。また、取引先や協力会社とのデータ交換頻度が多い場合、AutoCAD環境を維持する方がトラブルを避けられることもあります。
さらに、AutoCADにはWeb版やモバイル版があり、外出先や現場での図面確認や簡易編集が可能です。こうした機能は代替製品では再現が難しい場合もあるため、試用版での検証やサポート体制の確認を必ず行いましょう。導入後の教育や運用負荷まで含めた総合判断が不可欠です。
6. AutoCAD導入・更新のタイミングとアドバイス
6.1. 法人向けコスト圧縮と運用最適化
法人でAutoCADを利用する場合、数十〜数百のライセンスを一括で管理することも珍しくありません。そのため、2025年の価格改定は、企業全体のIT予算や設計部門の運営に大きな影響を与える可能性があります。特に、複数年契約を値上げ前に更新することで一定期間は旧価格を維持できる場合があり、短期的なコスト上昇を抑える有効な手段となります。ただし、その分初期支出が増えるため、資金計画やキャッシュフローとのバランスを考慮する必要があります。
コスト圧縮のためには、まずライセンスの利用状況を可視化することが重要です。どの部署でどの程度使われているのか、利用頻度の低いライセンスはないかを定期的にチェックし、不要な契約を削減することで、年間で数十万円規模のコスト削減が可能になるケースもあります。また、部署ごとに個別契約をしている場合は、一括契約に統合することでボリュームディスカウントを適用できる可能性もあります。
今回の価格改定を契機に、ライセンスの棚卸しや契約の集約を実施することは、長期的なコスト最適化の観点からも有効です。
6.2. 予算計上と内部調整のタイミング
AutoCADの契約更新や新規導入は、単にIT部門の判断で行うだけでなく、企業全体の予算計画や経営方針とも密接に関わります。特に中小企業にとって、年間数%〜10%近い値上げは経営への影響が大きく、年度予算の策定段階から見込んでおくことが欠かせません。
予算申請や社内稟議をスムーズに通すためには、ライセンス数や契約期間だけでなく、導入による業務効率化の見込みやコスト削減効果を具体的な数字で示すことが重要です。例えば、最新バージョンでの作業効率向上率や、クラウド連携によるプロジェクト管理時間の短縮効果など、具体的な効果を提示すると承認が得やすくなります。
また、「価格が上がるから先延ばしする」という判断は必ずしも得策ではありません。導入を遅らせることで業務効率の改善が後ろ倒しになり、結果として機会損失や競争力低下につながる可能性もあります。むしろ、改定前のタイミングで早期導入することで、コストを抑えつつ業務改善を前倒しできる場合もあります。
6.3. Autodesk認定販売パートナーの活用
AutoCADの契約や更新を行う際には、Autodesk認定販売パートナーを通じた導入が大きなメリットをもたらします。認定パートナーは、契約タイミングや契約本数に応じて、特別割引やキャンペーンを提供する場合があり、公式サイトでは案内されない優遇条件を受けられることもあります。特に大口契約や複数年契約を検討している場合、価格交渉の余地が広がる可能性があります。
さらに、パートナー経由で契約すると、導入前後のサポート体制も充実します。ライセンス管理のアドバイス、導入時の初期設定やトレーニング、最新機能の活用方法などを直接相談できるため、社内の運用負荷を軽減できます。また、定期的に最新の価格動向や機能アップデート情報を提供してくれるため、将来的な契約戦略や運用改善にも役立ちます。
こうした外部の専門知識を活用することで、自社の契約や運用をより戦略的に管理でき、価格改定の影響を最小限に抑えることが可能になります。
7. まとめ|価格改定をチャンスと捉える
7.1. 賢い契約と運用でのコスト対策
2025年のAutoCAD価格改定は、多くのユーザーにとってコスト増という避けられない現実をもたらしました。しかし、この状況を単なる負担と捉えるのではなく、契約内容や運用方法を見直す好機と考えることが重要です。例えば、複数年契約による価格固定、ライセンス数の最適化、契約更新タイミングの調整など、実践的な対策によって長期的なコスト負担を軽減できます。
新規導入を検討している企業にとっても、契約形態や製品選択の工夫次第で、導入後の運用コストを抑えながら必要な機能を確保できます。また、AutoCADにこだわらず、代替CADソフトウェアを含めた比較検討を行うことで、自社の業務に最も適した環境を構築することも可能です。価格改定のタイミングは、こうした検討を行う絶好のチャンスでもあります。
7.2. 業務改善と技術革新の進展
今回の価格改定の背景には、AutodeskによるAI自動化やクラウド連携など先進機能への継続投資があります。これらの機能は、作業時間の短縮や設計の精度向上、チーム間の情報共有の効率化といった形で、日々の業務に直接的なメリットをもたらします。
特に中小企業にとっては、こうした先進技術を活用することで、大企業と同等の設計スピードや品質を実現できる可能性が広がります。つまり、価格上昇はコスト負担だけでなく、業務の高度化と競争力強化を後押しする投資でもあるのです。
価格改定を契機に、自社の設計環境や契約戦略を総点検し、必要な機能を最大限に活用できる体制を整えることが、今後の成長と競争優位の確立につながります。長期的な視点で見れば、このタイミングをどう活かすかが、企業の設計力と生産性を左右するといえるでしょう。
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<参考文献>
Autodesk AutoCAD(オートキャド) | 価格・製品についてhttps://www.autodesk.com/jp/products/autocad/overview
[重要なお知らせ] 一部のオートデスク製品における価格変更についてhttps://pages.autodesk.com/index.php/email/emailWebview
オートデスク製品・サービスが2025年5月に価格改定(値上げ)されました | Autodesk コンシェルジュセンター | CAD Japan.com
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/campaign/250410-01/