ARES CADで移動できない?原因と今すぐできる解決策を完全まとめ
1. はじめに
ARES CADを使い始めると、多くの方がまずつまずきやすいのが「オブジェクトを思ったように移動できない」というトラブルです。
移動(MOVEコマンド)は、図形の位置を調整したり部品をレイアウトしたりする、CADのごく基本的な操作です。ここでつまずいてしまうと、その先の作業が進まず「なぜか動かない……」とストレスを感じてしまいます。
しかし多くの場合、ソフトの不具合というよりも、
レイヤーのロックやEスナップ(オブジェクトスナップ)の設定、座標系(UCS)のずれなど、ちょっとした設定や操作の違いが原因です。ポイントを順番に確認していけば、自力で解決できるケースがほとんどです。
本記事では、ARES CADで「移動できない」「うまく動かない」と感じたときに考えられる主な原因と、そのチェック方法・解決手順をわかりやすく整理します。CAD初心者の方にも読みやすいように、専門用語はできるだけかみ砕いて説明していきます。
また、基本的な対処を試しても直らない場合に備えて、最終手段として試したい方法や、一気に確認できるチェックリストも用意しました。作業を止めずに進められるよう、原因を一つずつ一緒に確認していきましょう。
2. ARES CADで移動できない主な原因
ここでは、ARES CADで「移動できない」「うまく動かない」と感じたときに、多くの初心者が実際に遭遇しやすい原因をまとめています。移動に失敗する理由の多くは、ソフトの不具合ではなく、設定や操作のちょっとした違いによって起きるものです。
以下で一つずつ詳しく説明していきますので、自分の状況と照らし合わせながら原因を切り分けていくと効率よく問題を発見できます。特に「レイヤーのロック」「Eスナップ(オブジェクトスナップ)の状態」「UCSの設定」など、基本的なポイントが移動操作の成否を大きく左右します。
ここで紹介する7つの原因はいずれも、難しい対処を必要としないものばかりです。場合によっては複数の要因が重なって発生していることもあるため、気になる項目を順番に確認することで、より確実にトラブルを解消できます。
また、これらの原因はARES CAD特有のものではなく、ほかの一般的なCADソフトでも共通して起こりうる内容です。ARES Commanderでの作業はもちろん、幅広いCAD環境で役立つ基礎知識として覚えておくとよいでしょう。
2.1. レイヤー設定の問題
レイヤーがロックされている場合、オブジェクト自体は表示されますが、グリップが出ず移動・編集ができません。逆に、レイヤーがフリーズ(凍結)されていると、そのレイヤーのオブジェクトが画面に表示されず、選択することすらできなくなります。複数レイヤーを使った図面では、オブジェクトが「ロック」や「読み取り専用」になっていないかを最初に確認しましょう。
ロックアイコンがついている場合はロック解除、フリーズ状態の場合は解凍が必要です。編集を想定するレイヤーが凍結されていると、いくら操作しても動かすことはできません。
大規模な図面では、管理者が重要部分を保護するため意図的にロックしている場合もあるので、チームで作業している場合はレイヤー運用ルールを確認しておくと混乱が少なくなります。レイヤーの数が多い場合は、レイヤーパレットのソート機能や検索機能を使うと、目的のレイヤーをすばやく探し出せます。
2.2. オブジェクトスナップの設定誤り
オブジェクトスナップ(ARESでは「Eスナップ」)が必要以上にオンになっていると、意図しない点に吸着してしまい、狙った位置に移動できず「動かない」と感じることがあります。
端点・中点・中心・交点など、多数のスナップを有効にしすぎると、スナップが過敏に働き移動先を指定しにくくなるため注意が必要です。F3キーでEスナップを一時的にオフにし、移動位置をクリックしてから、必要に応じて再度オンに戻す方法も効果的です。
また、操作に慣れないうちは必要最低限のスナップ項目(端点・中心など)のみ有効にするほうがスムーズです。スナップを一度切ってから目的の位置に移動し、再度オンに戻す流れは、初心者でも扱いやすい基本的な対処法です。
2.3. 座標系の誤設定
UCS(ユーザー座標系)が意図しない向きになっていると、カーソルの動きとオブジェクトの移動方向が一致しなくなり、思い通りに移動できないことがあります。2D図面であっても、UCSがわずかに回転しているだけで、移動方向が違ってしまうことがあるため注意が必要です。
そのようなときは、UCSアイコンを確認し、UCSコマンドでワールド座標系(WORLD)へ戻すと改善することが多いです。特に他人が作成した図面を編集する際や、複数ビューポートを使っている場合は、意図しないUCSが設定されているケースがよくあります。
もし3Dとして作業している場合も、UCSの向きは移動方向に直結するため、目的に合わせて正しく設定されているか定期的に確認すると良いでしょう。
2.4. グリップ設定の影響
オブジェクトを選択すると表示される「グリップ」を使って移動する際、設定しだいでEスナップと干渉し、意図しない点に吸着してしまうことがあります。また、グリップの数が多すぎると、どのグリップをつまんだのか分からなくなり、結果として移動操作が不安定になることもあります。
SHIFTキーを押しながらグリップをクリックすると、一時的に編集モードを解除できる場合があるため、動作が不自然なときには試してみるとよいでしょう。もしグリップ編集そのものに慣れていない場合は、グリップを使わずMOVEコマンドを直接使う方法のほうが確実です。
グリップ編集とEスナップのバランスを調整しながら、自分に合った操作方法を見つけることが重要です。
2.5. 移動コマンドの使い方ミス
MOVEコマンドの基本操作がうまくできていないケースも非常によくあります。MOVE→オブジェクト選択→基点指定→移動先指定という操作の流れを守らなければ、狙った位置に正しく移動できません。
特に基点や移動先のクリック位置がスナップにより意図しない点に吸着すると、オブジェクトがどこへ移動したのか分からなくなることがあります。正確に移動したい場合は、「@100,0」のように相対座標をキーボードで入力する方法が有効です。
移動後にオブジェクトが見えなくなった場合は、Zoom Extents(全体表示)で表示範囲をリセットして確認しましょう。
2.6. 選択方法とPICKFIRSTの設定
オブジェクトを先に選んでからMOVEコマンドを実行したい場合、事前選択が機能しないと「移動できない」と感じてしまうことがあります。このとき関係するのがシステム変数「PICKFIRST」です。
PICKFIRSTが1なら事前選択が有効になり、0のときはMOVEコマンド起動後にしか選択できません。自分の操作スタイルに合った設定にしておくと、移動操作がスムーズになります。
また、選択フィルタがかかっている場合や、レイヤー・グループ設定などにより選択できないケースもあります。選択範囲がおかしいと感じたら、これらの設定も合わせて確認してください。
2.7. ハードウェアと表示設定の問題
パソコンの動作が重い場合や描画処理が遅れている場合、移動したはずのオブジェクトが元の位置にいるように見えるなど、表示の乱れが「移動できない」と誤解されることがあります。特にGPUドライバが古かったり、PCの処理負荷が高かったりすると描画が遅延します。
ARES CADでは、[オプション]→[システムオプション]内のグラフィックスパフォーマンス設定(アンチエイリアスや表示品質など)を調整することで改善することがあります。環境に応じて設定を変更すると、描画の安定性が向上するケースもあります。
また、CPU・メモリの使用率が高くなると操作が重くなるため、タスクマネージャーで負荷状況を確認する習慣をつけると効果的です。複雑な図面は外部参照(Xref)で分割し、軽量化することで動作が安定しやすくなります。快適に作業するためには、最新のOS・ソフトウェアアップデートだけでなく、適切な性能のPCを使用することも重要です。
3. 今すぐできる解決策

ここからは、これまで挙げてきた原因を踏まえた、すぐに試せる具体的な解決策を紹介します。どれも難しい操作ではなく、短時間で確認できるものばかりです。
環境設定や図面の状態によっては複数の原因が重なり、問題が目立ちにくくなることもあります。そのため、以下の手順を順番に実施すると、より効率よく問題の切り分けと解決が進みます。自分の作業環境に合わせて、一つずつ丁寧にチェックしていくのがおすすめです。
まずはレイヤーやスナップ設定を確認するだけで解決するケースも多くあります。状況が改善しない場合は、UCSやドライバ設定など、もう少し踏み込んだ対処へ進むとよいでしょう。
それでは、7つの解決策を順に見ていきましょう。
3.1. レイヤーの確認と調整
最初に確認したいのはレイヤーの状態です。レイヤーマネージャーを開き、ロックアイコンが付いているレイヤーや、フリーズ(凍結)されているレイヤーがないかをしっかりチェックしましょう。
ロック解除や解凍を行うだけで、移動操作が問題なく行えるようになることも少なくありません。また「読み取り専用」となっているレイヤーがある場合は、編集できる状態に切り替えたうえで移動を実行してください。
チームで作業している場合は、誰がどのレイヤーをロックしているのか、管理ルールがどうなっているのかを確認することで、不必要な混乱を防げます。レイヤー数が多く管理が複雑な図面では、レイヤーパレットの検索やソート機能を活用すると、目的のレイヤーを効率よく探し出すことができます。
3.2. OSNAP設定の最適化
オブジェクトスナップ(Eスナップ)が移動操作の妨げになっている場合は、F3キーで一時的にオフにして試してみると効果的です。移動したい位置を直接クリックできるため、動きの確認もしやすくなります。
必要なスナップだけをオンにする方法も有効です。たとえば端点と中点だけを有効にしておくと、指定したい点を正確に掴みやすくなります。逆にスナップが多すぎると、思わぬ場所に吸着し、意図しない位置に移動してしまう原因になります。
また、オン/オフを素早く切り替えるショートカットを覚えておくと、作業スピードが向上します。最初のうちはスナップを減らして作業し、慣れてきたら徐々に必要な機能を増やしていく方法もおすすめです。
3.3. UCSのリセットと確認
座標系に違和感がある場合は、UCSコマンドでワールド座標(WORLD)に戻すと、移動方向が正常に働くことがよくあります。
特に他の人が作成した図面を編集していると、知らないうちにUCSが回転していることがあります。UCSアイコンの向きが不自然だったり、原点が想定外の位置にある場合は、WORLDにリセットして正しい状態に戻しましょう。
必要であれば、移動後に改めて独自のUCSを設定し直すことも可能です。複数のビューポートを利用している場合は、それぞれでUCSの設定が異なる可能性もあるため、ビューポート単位での確認も忘れずに行いましょう。
3.4. グリップ設定の見直し
オブジェクトを選択した際に多数のグリップが表示され、どれを操作してよいか判断しづらい場合は、グリップの数や表示方法を調整してみましょう。
ARES CADでは、オプションからカーソルやスナップマーカーの色・サイズを変更でき、視認性を高めることでグリップ操作が格段に扱いやすくなります。
クリックひとつでグリップ編集モードに入る設定は便利ですが、慣れないうちは誤操作の原因にもなります。SHIFTキーで一時的に動作を停止させることもできるので、操作に迷うときは試してみてください。どうしても混乱する場合は、グリップによる移動を避け、MOVEコマンドを中心に使う方法が安心です。
3.5. 正確な移動コマンドの実行
MOVEコマンドを正しく使うことも重要です。基本は「オブジェクト選択 → 基点指定 → 移動先指定」という流れを確実に行うこと。これを曖昧にすると、意図しない位置に移動したり、オブジェクトが見失われたりします。
大量のオブジェクトを動かす場合は、ウィンドウ選択やクロッシング選択を適切に使い分けることで、必要なものだけ確実に選択できるようになります。
また、キーボードで「@100,0」などと入力して相対座標で移動する方法は、精度を求める場面でとても有効です。移動したオブジェクトが画面外に出てしまった場合は、Zoom Extents(全体表示)ですぐに確認できます。
3.6. 選択とPICKFIRST設定のチェック
事前にオブジェクトを選んでからMOVEを実行したい場合は、PICKFIRSTの設定が適切かどうかを確認しましょう。
PICKFIRSTが1なら事前選択が有効になり、0だとMOVE実行後にしか選択できません。自分の操作スタイルに合わせて調整することで、作業効率が大きく変わります。
また、選択フィルタやレイヤー・グループ設定が原因で選択できないこともあります。選択がうまくいかないと感じたら、これらの設定が干渉していないかも合わせて確認するとよいでしょう。
3.7. ハードウェアとドライバの更新
ソフトが最新でも、PC側のドライバが古いままだと移動操作が重く感じる場合があります。特にグラフィックカードのドライバ更新は、描画の安定性に直接影響します。
また、CPUやメモリの負荷が高い状態では、MOVEコマンドの処理が遅れ、意図した通りに移動できていないように見えることもあります。タスクマネージャーで現在の負荷状況を確認し、不要なアプリを終了するだけでも改善するケースがあります。
グラフィックスパフォーマンス設定(アンチエイリアスや表示品質など)を調整するのも有効で、環境によっては設定を変更すると動きが安定する場合があります。ドライバを更新した際は再起動を行い、改善しているか確認しましょう。
4. それでも直らないときの最終手段
ここまで紹介した対処をすべて試しても問題が改善しない場合は、より根本的な部分に原因が潜んでいる可能性があります。その際は、以下の「最終手段」として紹介する方法を検討してみてください。どれも操作自体は難しくありませんが、図面や設定に広く影響することがあるため、慎重に実施すると安心です。
一つ目の方法は、ARES CADの設定(プロファイル)を初期化し、いわゆる作業環境を一度リセットしてしまうやり方です。長期間使用していると、カスタマイズ内容や設定変更が意図せず干渉し、特定のコマンドだけ動かなくなるケースがあります。再起動では改善しない場合でも、プロファイルをデフォルトに戻すことで予期せぬ不具合が解消されることがあります。
二つ目の方法として、問題が起きているオブジェクトを別の新規図面にコピー&ペーストしてみるという手順があります。これにより、現在の図面に破損データや異常設定が含まれていた場合でも、よりクリーンな状態で操作を試せます。新規図面で正しく移動できるなら、元のファイル側に原因があると判断しやすくなります。
三つ目として、ARES Commanderのバージョンを最新に更新すること、そしてDWGファイルの破損チェック(RECOVER)を実行する方法があります。
ARESでは、メニューの[アプリケーションボタン]→[管理]→[復旧](RECOVER)から図面の修復が行えます。図面がわずかに破損している場合や、使用中のバージョンに特定の不具合が報告されている場合には、この作業が特に効果的です。ソフトウェア更新と復旧処理を組み合わせることで、環境依存の原因にもアプローチできます。
5. 今すぐできるチェックリスト(総まとめ)
ここまで紹介してきた内容を、すぐに確認できる形で一覧にまとめました。下記のチェックリストに沿って順番に見直していくことで、多くの「CADの移動トラブル」の原因を効率よく洗い出せます。どれも短時間で確認できるものばかりなので、作業を止めたくないときの最終確認として活用してください。
- レイヤーにロックやフリーズがかかっていないか。
対象レイヤーが編集可能か確認し、必要に応じて「ロック解除」や「解凍」を行ったか。 - Eスナップ(AutoCADでいうOSNAP)が適切に設定されているか。
スナップが過剰に働いていないか、一時的にオフにして確認したか。 - UCSは「WORLD」に戻っているか、または正しい方向に設定されているか。
座標系が意図せず回転していないか、UCSアイコンの向きをチェックしたか。 - グリップ編集の設定が複雑すぎないか。
意図しないグリップが反応していないか、SHIFTキーなどで誤操作を防げているか。 - MOVEコマンドの操作手順を正しく実行しているか。
オブジェクト選択 → 基点指定 → 移動先の順を守り、適切に基点と移動位置を指定したか。 - PICKFIRSTのシステム変数が適切な値になっているか。
事前選択を使いたい場合は「1」になっているか、操作方式に合った設定かを確認したか。 - グラフィックス設定やドライバは最新の状態か、PCの負荷は高すぎないか。
表示処理が遅くなっていないか、図面サイズが大きすぎないかも含めてチェックしたか。
6. まとめ:トラブルは設定と操作の見直しでほぼ解決できる
ARES CADで「移動できない」というトラブルが起きた場合でも、その多くはレイヤーのロック状態やEスナップの設定、座標系(UCS)のずれといった基本設定の見直しだけで解決できることがほとんどです。原因が複雑に見えても、一つひとつ確認していけば必ず糸口が見つかります。
万が一、どの対策を試しても改善しない場合には、ファイル破損や環境側の問題など、より深い要因が関係している可能性もあります。ただし、こうしたケースは比較的まれで、多くのユーザーは今回紹介した手順を丁寧に見直すことで正常な動作を取り戻しています。
実務ではスピードが求められるため、日頃からレイヤー管理やOSNAP設定、座標系の確認といった基本操作に慣れておくことが、移動コマンドに限らずさまざまなトラブルを未然に防ぐ秘訣になります。設定を理解し使いこなせるようになることで、作業効率も大きく向上するでしょう。
この記事の内容を参考にしながら、自分の環境でも設定と操作をこまめに見直してみてください。きっと多くの問題がスムーズに解決でき、より快適にARES CADを使いこなせるようになるはずです。今後の作業にぜひ役立てていただければ幸いです。
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