ARES CADで面積を正確に算出する方法|実務で使える基本操作とチェックポイント
1. はじめに
建築図や設備図の面積を正確に算出することは、建築設計において欠かせない作業のひとつです。面積が誤っていると、資材発注量のミスや数量拾い出しのズレが発生し、コスト計算の誤差や工期遅延につながる恐れがあります。こうしたリスクを避けるためにも、CADでの正確な面積計測スキルを身につけておくことが重要です。
ARES CADは、軽快な動作とDWG互換性を備えたAutoCAD互換CADとして広く利用されています。必要な機能を抑えつつコストを抑えられる点も特徴で、面積計測に関しても複数の方法を選択できます。中でも、GETAREAコマンドをはじめとした基本操作を理解しておけば、作業効率と計測精度の両面で大きなメリットが得られます。
本記事では、ARES CADで面積を算出する代表的な3つの方法を分かりやすく解説し、用途に応じた使い分けも紹介します。また、正確な面積を得るために欠かせないチェックポイントや、トラブル発生時の確認項目についても整理しました。単位設定(UNITSYSTEM)やZ値の調整など、基本的な部分を押さえるだけでも、面積計算の精度は大きく向上します。
2. ARES CADで面積を算出する基本の3方法
実務で頻繁に使われる面積取得の方法として、ここでは3つの手順を紹介します。1つめはGETAREAコマンドで直接計測する方法、2つめは閉じたポリラインを利用してプロパティから確認する方法、そして3つめがハッチ(Hatch)の情報を使って面積を求める方法です。
これらは操作性や得意な場面が異なるため、図面の構造や目的に応じて使い分けるのが効率的です。たとえば複雑な形状が連続する区画をまとめて数量拾い出ししたい場合はハッチ面積が便利で、単純な形状ならGETAREAコマンドで素早く面積を取得できます。
ARES CADでは、ポリラインやハッチはプロパティパレットで面積を確認でき、GETAREAコマンドの結果はコマンドウィンドウに表示されます。また、ポリラインの修正やスケール設定といった基本的な準備を整えておくことで、面積計算にかかる作業時間を大きく短縮できます。以下では、それぞれの方法の詳細と長所を順番に解説していきます。
2.1. GETAREAコマンドで計測する方法
GETAREAコマンドは、ARES CADのコマンドラインやリボンメニューから簡単に呼び出せる基本機能です。コマンドラインに「GETAREA」と入力し、求めたい領域の頂点を順番にクリックしていくだけで、面積と周長を同時に計算できます。
複雑な形状を扱う場合は、「追加(Add)」オプションや「減算(Subtract)」オプションを活用することで、複数箇所の面積を合計したり、不要な部分を差し引いたりできます。例えば建物の中心部分と外周部分の差を求めたい場合はSubtractオプションが便利です。
ただし、頂点をたどる順序を誤ると計算結果がズレてしまうことがあるため、クリック順には注意が必要です。GETAREAは頂点指定とエンティティ指定の両方に対応しており、さまざまな図形で使える柔軟性の高さも特徴です。CADで面積を扱う際の基本スキルとして覚えておくと大いに役立ちます。
2.2. 閉じたポリラインの面積をプロパティで確認する方法
閉じたポリラインを作成しておけば、プロパティパレットからすぐに面積を確認できる点が大きなメリットです。ARES CADの実務では、この方法は最も利用される面積算出手法のひとつです。
最初の手順として、対象のポリラインが完全に閉じているか確認します。もし一部に隙間がある場合は、ポリライン修正コマンド(PEDITなど)で「閉合(Close)」オプションを選択して形状を確実に閉じてください。そのうえでポリラインを選択すると、プロパティパレット内に面積が数値として表示されます。
図面内に閉じたポリラインが多数ある場合でも、各ポリラインを選ぶだけで個々の面積を確認できるため、非常に効率的です。また、複数のポリラインを合計したい場合は、GETAREAコマンドの「追加」オプションを利用すれば簡単に合算できます。レイアウト設計や部屋ごとの面積拾い出しなど、幅広い実務で役立つ方法です。
2.3. ハッチから面積を取得する方法
ハッチ(Hatch)は、閉じた境界をもとに作成されるため、ハッチ自体が面積情報を持っています。つまり、ハッチを選択してプロパティパレットを開くだけで、その領域の面積を簡単に確認できます。
この方法は、図面の区画ごとにハッチを使って色分けや分類を行う場面で特に有効です。ハッチを使えば視覚的に分かりやすく整理しながら面積を管理できるため、建築図や設備図のざっくりとした面積拾い出しに適しています。また、複数の区画にハッチを設定しておけば、それぞれの面積を次々と確認でき、作業効率も向上します。
ただし、ハッチの境界が破損している場合は正しい面積が取得できないことがあります。ハッチが正常に作成できない、あるいは面積が期待どおりに表示されない場合は、境界線のつながりや閉じ方を一度見直すことが重要です。
3. 正確な面積を算出するために必ず確認すべきポイント
実務で面積が正しく計算できない原因の多くは、操作方法そのものよりも、図面データに潜む設定ミスや不備によるものです。単位設定の誤り、ポリラインのわずかな隙間、意図しないZ値の混在など、気付きにくいポイントを修正するだけで、面積算出の精度は大幅に向上します。
ここからは、ARES CADで面積を正確に取得するために重要となる4つの視点をまとめています。読むだけでなく、実際のプロジェクトに当てはめて確認しながら進めてみてください。
3.1. 単位設定(UNITSYSTEM)の確認
ARES CADでは、UNITSYSTEMコマンドを使用して図面の単位を設定します。ミリメートル(mm)、メートル(m)、インチなどの値を切り替えられますが、ここを誤ると面積計算は大きく狂ってしまいます。
たとえば、本来はm²で扱うべき図面をmm²のまま計算すると、面積が100万倍の数値として表示されてしまうことがあります。そのため、「最終的にどの単位で面積を扱いたいのか」を明確にしたうえで、必ずUNITSYSTEMで正しく設定しておくことが重要です。
また、他者から受け取った図面や異なる単位で作られたデータを扱う際には、単位が混在しやすいので注意が必要です。後で修正するよりも、作業前に統一しておくことでトラブルを未然に防げます。
3.2. ポリラインが完全に閉じているか
ポリラインが途中で分断されていたり、ほんのわずかな隙間があるだけでも、面積が正しく計算されなかったり、数値が異常に表示されたりすることがあります。これは実務で最もよく発生する原因のひとつです。
そのため、PEDITコマンドなどを使って「Close」オプションを選択し、輪郭が確実に閉じている状態に整えてください。隙間が小さいと気付きにくいため、対象部分を拡大表示しながら確認する方法がおすすめです。
また、一見つながっているように見える線でも、頂点が少しずれているだけで閉じた形状になっていないことがあります。スナップ機能や、CADツールバーの補助表示を活用しながら、形状の継ぎ目を丁寧にチェックしましょう。
3.3. Z値の混在に注意する
複数の図面データを統合したり、他ソフトで作成したDWGファイルを取り込んだりすると、Z値が不揃いになっているケースがあります。本来2次元のはずの図面に微妙な高さ情報が残っていると、面積が正しく計算されないことがあります。
そのため、面積を取る前にFLATTENコマンドなどを使い、すべての図形のZ値を0に揃えておくことが重要です。これにより、GETAREAコマンドやプロパティパレットによる面積取得が安定し、誤差の発生を避けられます。
Z値は目視では判断しづらいため、特に外部から受け取ったデータを扱う場合は、作業前に必ず一度確認する習慣をつけておくと安心です。
3.4. スケール(尺度)が正しいか
ARES CADに図面やブロックを挿入する際、スケール設定が誤っていると、実際とは異なる面積が計算されてしまいます。特に、他のソフトで作成されたブロックやテンプレートを使うと、意図せず縮尺が変わってしまうことがあるため注意が必要です。
例えば、実寸1mの部屋を1/100の縮尺で描いた図面をそのままmm単位で扱うと、数値の桁がずれてしまい、面積も正しく算出されません。実寸(1:1)と図面単位の関係をしっかり理解し、適切なスケールが設定されているかを確認してください。
また、複数の図面を1つのファイルにまとめる場合も注意が必要です。片方が1/1で、もう片方が1/50で作成されていると、面積計算に大きなズレが発生します。図面統合の際には、尺度がそろっているか必ず確認してから作業を進めることが安全です。
4. 面積が正しく出ないときのチェックリスト

面積計算が思うようにいかない場合は、まず下記のチェックリストを確認しながら原因を切り分けてみてください。どれも実務で頻繁に発生するポイントで、早い段階でチェックしておくとトラブルを最小限に抑えられます。
❏ 単位設定は正しいか(mm、m、インチなど)
❏ ポリラインが確実に閉じているか
❏ Z値がすべて0にそろっているか
❏ 図形やブロックに適切なスケールが設定されているか
❏ プロパティパレットの面積欄が空欄や「?」など異常表示になっていないか
❏ ハッチの境界が欠けていないか、破損していないか
これら6つの項目を一つずつチェックするだけでも、CADでの不具合の原因をつかみやすくなり、面積計算に関するトラブルシューティングが格段に進めやすくなります。特にこの面積計算チェックリストを手元に置いておくことで、日常業務における見落としを防ぎやすくなり、作業の精度と効率が向上します。
また、CAD面積算出の精度をさらに高めるには、他ソフトとの比較や、手計算による検算を併用する方法も効果的です。複数の観点から数値を確認することで、最終的な信頼性をより強固なものにできます。
5. 実務で役立つ応用テクニック
面積計算を正確に行うことはもちろん重要ですが、実務では「いかに効率よく集計・整理するか」も大きな課題になります。ここでは、日々の業務で役立つ応用テクニックを紹介します。複数の区画面積を合計したり、図形を分割して部分面積を取り出したり、Excelへまとめて管理したりと、設計・数量管理の現場では多様な作業が発生します。こうした処理を効率化するためにも、ARES CADの各種機能を組み合わせて活用すると非常に便利です。
5.1. 複数の部屋・区画を一括で集計する方法
たとえば、マンションやオフィスビルなどのフロアを区画ごとに整理し、ポリラインやハッチをあらかじめ設定しておくと、複数の面積をまとめて集計しやすくなります。面積の合計が必要な場合は、GETAREAコマンドの「追加(Add)」オプションを使えば、一度に複数領域の面積を加算できます。
また、設備図の面積やレイアウト設計の面積など、部屋の境界が複数レイヤーに分かれているケースでは、レイヤーフィルタを使って集計したい区画だけを抽出しておくと管理がスムーズです。このような一括処理を活用することで、資材発注やコスト見積もりの作業を効率化し、プロジェクト全体の時間短縮にもつながります。
5.2. ポリラインを分割/結合して部分面積を計算
大きなポリラインで囲った領域では、細かい部分だけを確認したいときに扱いづらいことがあります。そんな場合は、ポリラインを分割して複数の領域に分けることで、必要な部分面積だけを抽出できます。
逆に、分割された複数のポリラインをひとつの図形にまとめたいときは、PEDITのJoin機能を使うことで簡単に結合できます。こうした柔軟な図形編集ができる点は、ARES CADの強みのひとつです。
なお、分割や結合の操作を行ったあとは、Z値や境界線に隙間が発生していないか必ず確認してください。わずかな不備が面積計算の誤差につながることがあるため、丁寧なチェックが欠かせません。
5.3. Excelとの連携で面積一覧を作成
面積データをExcelで管理したい場合、プロパティパレットに表示されている面積をコピーしてExcelへ貼り付けるだけでも一覧化できます。さらに効率を求める場合は、スクリプトやLISPを活用して複数の面積を一括で抽出する方法も有効です。
Excelで面積表を作成しておくと、差し引き計算や合計算出が自動で行えるため、建物のプランニングやコスト管理がより正確になります。部屋ごとの面積と費用を紐づけて管理することも容易になり、作業の透明性が高まります。
また、LISPスクリプトや外部ツールとの連携により、面積計算の自動化や省力化も実現できます。大量の図面を扱う方や、面積集計の頻度が高い業務に携わる方は、一度活用方法を検討してみる価値があります。
6. AutoCADとの違い(実務者が気になるポイント)
ARES CADとAutoCADの違いが気になる方は多いかもしれません。特にUIの構成やライセンス費用の違いは、導入時の判断基準としてよく挙げられます。しかし、ARES CADはDWGネイティブCADとして高い互換性を備えており、AutoCADから移行しても大きく戸惑うことは少ないでしょう。
たとえば、GETAREAコマンドやプロパティパレットによる面積確認など、面積計測に関する基本的な操作フローはAutoCADと非常によく似ています。アドインの種類は異なるものの、リボンメニューやコマンドラインといったCAD操作の基本的なインターフェースも共通点が多く、操作体系の理解もしやすいのが特徴です。そのため、AutoCADの経験があるユーザーであれば、学習コストを大幅に抑えながらスムーズに移行できるケースが一般的です。
一方で、AutoCAD特有の一部コマンドや機能は、ARES CADでは名称が異なっていたり、配置が変わっていたりする場合があります。こうした違いを感じた際は、まずツールバーやパネルの配置を自分の作業スタイルに合わせてカスタマイズしておくことで、より使いやすい環境を整えられます。UIを最適化するだけでも作業効率が大きく向上し、日常的な操作がぐっと快適になるでしょう。
7. まとめ|ARES CADでも正確な面積計算は簡単にできる
ここまで、ARES CADで面積を正確に算出するための基本操作と、作業前に必ず確認すべきポイントについて解説してきました。特に押さえておきたい重要項目は4つあります。
まず、UNITSYSTEMで単位設定を正しく整えること。次に、ポリラインが確実に閉じているかを確認すること。そして、Z値を0にそろえて図面を平面化しておくこと。最後に、図面やブロックが正しいスケールで扱われているかをチェックすることです。
この4つを徹底するだけでも、面積計算の精度は大きく向上します。
また、GETAREAコマンドやプロパティパレットを活用した面積計測の基本操作は決して難しくありません。複数箇所の合計や差し引き、一括集計、Excelへの書き出しなど、実務で役立つ応用テクニックを身につければ、作業効率はさらに高まります。面積計算をスムーズに行えるようになることで、コスト管理や資材発注といった業務にも余裕を持って対応できるようになるでしょう。
ARES CADを活用し、日々の作業を的確かつスピーディに進めることで、設計の質はもちろん、業務全体の信頼性も向上します。正確な面積算出は、プロジェクト成功の大きな支えとなるスキルです。ぜひ本記事を参考に、実務で活かせる操作と知識を身につけて、さらなる成果につなげてください。
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<参考文献>
ARES Standard – Graebert
https://www.graebert.com/ja/cad-software/ares-standard/
Graebert Japan ヘルプセンター – Graebert Japan FAQ
CADソフトウエア、ARES Commanderをダウンロードする
https://www.graebert.com/ja/cad-software/download/ares-commander/





