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清水建設がKAP for Revitを開発した理由とは

清水建設は鉄骨構造物専用のCADとして、KAPシステムを使用しています。

長らく使用してきた自社開発したCADがあるにもかかわらず、AutodeskのRevitとKAPシステムを連携させる「KAP for Revit(K4R)」を開発した背景にはどういった事情があるのでしょうか。
本記事にて詳しく紹介します。

KAPシステムは清水建設開発の鉄骨専用 CAD

KAP for Revitを開発する前に、清水建設ではKAPシステムを開発、使用していました。
KAPシステムとは、清水建設のグループ会社である日本ファブテックの鉄骨構造物専用BIMソフトです。

KAPシステムは70年代に開発開始

KAPシステムは、自社の図面、原寸作業の省力化を目的に1972年に開発が始まりました。
コンピュータ内にグレードや鉄鋼の種類、などを盛り込んだ鉄骨構造物のモデルを構築することで積算結果など必要な情報が取得可能です。

「モデル形状をもとに必要な情報を取り出す」という考えは、今でこそ当たり前のような印象があります。
しかし、1970年代の初頭には、まだMicrosoftもAppleも創業しておらず、やっとパソコンが生まれたような時代です。
また、その後登場するCADも2次元データである製図をサポートしたり、情報を電子化したりするのが狙いで、図面を書くツールという認識が一般的でした。

KAPシステムはBIMの概念を含む

そもそも40年以上前のKAPシステムの開発時には、BIMという言葉すらなかったのです。
清水建設では、会社のシンボルマークとして先見性を象徴する「アイマーク」を採用しています。
BIMの要素が盛り込まれてるKAPシステムは、まさに清水建設の先見の明により作りだされた仕組みのひとつだといえます。

KAPシステムは現在でも主力ツール

KAPシステムは、清水建設が開発した構造設計用CADであるST-CADなど上流工程の構造設計データの読み込みに対応します。
そのほか、国内標準仕様の中間ファイル形式であるST-Bridge形式の入出力、AutodeskのRevitの入出力が可能です。

2020年にはクラウドの技術を活用して鉄骨構造物の形状作成を遠隔地かつ複数人で同時に並行作業する技術が試行されています。
海外のネットワークを活かした開発やリモートワークに対応することで、設計の効率化に貢献可能です。(*1)

複数のCAD・BIMでの開発では設計効率があがらない

KAPシステムは、現在でも鉄骨専用CADとして活用されています。
習熟し使えるシステムがあるにもかかわらず、清水建設があえてKAP for Revitの開発に踏み切った背景には、マルチシステムを用いた開発における課題があるのです。

BIM導入初期において3D形状は補足情報

建築物は開発に携わる企業の数が多く、CADやBIMを採用しているといっても、それぞれの企業の都合にあわせてさまざまなシステムを使用する状況が続いています。

BIMの黎明期は、図面の成立性を確認するために「3Dで形状を見てみる」というエビデンス的な用途が中心でした。

それぞれの部門ごとにさまざまなシステムが普及

ある程度BIMが普及しはじめると、大林組はTekla Structures、竹中工務店はBRAINというように、ゼネコン内でもシステムが異なるかたちで普及が始まりました。

それぞれのツールは各企業や部門が必要とする運用や作成したい形状にあわせて最適化されているため、自部門においては、高い導入メリットがあります。
特に分業を優先して開発スピードを挙げるためにも、いくつかの選択肢から使いやすく投資対効果にみあうシステムを選ぶのは非常に重要なことです。

また、マルチシステムでの開発にあわせてデータ互換を担保する目的で、国際規格のIFC、国内規格でST-Bridgeが開発されました。
中間フォーマットにデータ変換すれば、基本的にはどのシステムでもデータの読み込みが可能です。

マルチシステム開発における問題点

しかし、中間フォーマットでは、あるシステムで開発した際の情報がすべて盛り込めるわけではありません。
変換精度が異なれば微細形状が欠損する場合がありますし、大規模なアセンブリ情報・属性情報などは、パラメータがうまくわたらない可能性があります。

マルチシステムの状況で3Dを主に開発を行おうとすると、ファブリケーターや建具を扱う企業側が、各取引先にあわせてデータを作成しなければなりません。
しかも同じ部品番号の同じ建具は、自社で一度データ化しておきさえすれば、どのシステムでも問題なく開けるとは限りません。

例えば、ある企業にデータを提出した場合には問題ないにもかかわらず、別の企業にデータを出すとデータがうまく読み込めない、属性情報が渡らないというリスクが付きまといます。

したがって、協力会社では最終的に使われるシステムにあわせてデータを読み込むための調整をし続けなければなりません。
「ある構造のBIMのデータを持っているにもかかわらず、提出先のシステムにあわせて履歴の調整や属性の手直しをする」という工程は、本来は必要ありません。
提出データの調整は、ファブリケーターや建具メーカーなどの大きな負担となっていたのです。

最新形状が誰もわからない

ゼネコン側ではレビューの機会に各部門からのデータを統合しています。
複数のシステムで開発されているため、一部にIFCデータに変換した形状を使うこともあります。

IFCデータは納品仕様の確認など、最終形状のエビデンスとするには便利ですが、一度IFCデータに変換してしまったあとも設計が進んでいるため、厳密にいうと最新形状ではありません。
つまり、設計途中の構造をフルアセンブリした状態の3D形状は、誰も持っていないのです。

清水建設では、設計途中のレビュー時にBIMのデータがリアルタイムに共有できていれば防げた不具合を複数確認しています。

もしそれぞれの部門が、自分が設計している周辺の部位について都度状況を確認できれば、干渉や納まりの問題が発生する頻度が大きく下げられます。
建築設計の全体レビューにあがる課題を、各企業が共通で理解すべき事項に削減できれば、大きく開発効率があがるでしょう。

KAP for Revitの活用でリアルタイムのデータ共有が可能

KAP for Revitの開発背景には、ここまで紹介したとおり、複数のBIMと中間ファイルを使った開発での非効率な部分や手戻りや開発のしにくさがありました。

Revitが大規模アセンブリに対応可能に

一方、AutoCADのBIMであるRevitは、クラウドでも駆動できるようになり、ワークステーションのスペック制約を受けにくくなりました。

例えば、クラウドを使えば、仮想空間上にすべての部品や構造データを読み込み、干渉チェックや構造解析などが行えます。
データ容量を気にせず、ひとつのBIMのなかに全てのデータが読み込めるようになったのです。

KAP for RevitでKAPシステムとRevitがつながる

KAP for Revitでは、Revitのなかに標準的な構造をあらかじめ登録しています。
標準の継ぎ手、ボルト種類、ブラケットといった部材を登録しておけばパラメータを確認しながら簡単に形状が作成できます。

また、Revit上でリアルタイムに形状が更新されていくため、各担当者が変更した設計変更の食い違いが起こりません。
外装や昇降機、設備等、鉄骨詳細に関わる業者との連携性が高められます。

KAP for RevitはShimz One BIMの実現に不可欠

清水建設ではBIMを活用した生産体制の構築として「Shimz One BIM(設計施工連携BIM)」を掲げています。
「設計者が作成する構造図などの設計BIMデータを施工から製作(発注)、運用に至る段階まで連携させる」ためには、データ変換を排除する必要があります。(*2)
無駄を削減して開発スピードを早くするには、KAP for Revitのように同じシステムのなかでデータをつなぐ仕組みが求められていたのです。

まとめ

清水建設は、ゼネコンでありながら必要があればKAPシステムのようにシステム開発も行ってきました。

複数のシステムで開発する場合、ひとつのモデルで開発する場合それぞれに特徴があります。

清水建設がKAP for Revitを開発して他のBIMと自社で使うシステムを連携させた理由は、ひとつのBIMを用いてひとつのデータで設計したほうがよいという考えによるものなのです。

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参考URL
*1 https://kapmaster.wixsite.com/easy-kapsystem/blank-15
*2 https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html

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