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1級建築士が語る海外のBIM活用状況アメリカ・シンガポール・日本の違いを徹底比較

最近BIMという言葉を聞く機会が多くなった方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。BIMは建物を作るプロセスに革新を起こす手法で、世界中で注目を集めています。日本においても、スターバックスの最新の店舗がBIMを活用して設計されているなど徐々に普及してきています。しかし、日本での普及率は海外に比べてまだ低いのが現状です。そこで、設計実務を行う1級建築士が日本と海外におけるBIMの活用法の違いについてお伝えしたいと思います。

BIM活用法

 ご存知の方が多いと思いますが、そもそもBIMとは何かについておさらいしておきます。BIMとは、今まで2次元で行なっていた設計業務を3次元で行う手法です。コンピュータ上で3次元のモデルを作成し、柱や梁などの部材に「材料の製造工場名」や「問題があった時の連絡先」などの情報を落とし込むことで、設計だけでなく施工や管理に至るまでのすべての段階でその情報を有効活用することができます。BIMを活用することで、視覚的に建物が把握しやすく、発注者との意思統一が簡単になりますし、2次元では見つけることが難しい「干渉」の問題を事前に把握することがでるので生産性を向上させることができます。

このように、BIMは視覚的にわかりやすく生産性も向上することから、世界各国で普及が進んでいます。それでは実際に日本とアメリカ、シンガポールでのBIMの活用法についてみていきましょう。

BIM発祥の地アメリカ

BIMはアメリカが発祥の地と言われています。建築業界は一品受注生産という特徴があるので、工場で機械的に作ることができず、他の工業製品に比べて生産性が低いことが指摘されていました。また、設計と施工の業務が分断されて効率が悪いという指摘もありました。アメリカは契約社会なので担当業務にのみ責任が発生します。その為、あきらかな設計ミスを発見してもそのままトンチンカンな建物を作ってしまうなど、設計と施工の情報共有ができずに効率が上がらない状況が続いていたのです。
これらの問題を解決するために設計から施工、管理に至るまで同じシステムを踏襲できて、視覚的に情報を共有できるBIMが誕生しました。

2003年に政府がBIM計画を発表すると、2007年には北米でのBIM導入率が3割程度となり、更に2012年には7割程度まで普及しました。土木分野においてもBIMの活用が5割に達するまで広がりをみせています。今後さらにBIMが普及することで生産性がより一層向上することが予想されます。

アメリカでは、連邦全体にBIMを必須とすることを義務付ける機関が存在しない代わりに、各州がBIMの利用を主導しています。例として、ウィスコンシン州では2010 年に予算が 500 万ドル以上の州のプロジェクトと、予算が 250 万ドル以上の新しい建設プロジェクトに BIM を義務付け、2018 年、ロサンゼルス コミュニティ カレッジ学区は、すべての主要プロジェクトで BIM を使用するよう指示しています。※1

シンガポールが促進する「バーチャル・シンガポール計画」

シンガポールは国土が狭く資源を殆ど輸入に頼っていることから50年前は国際競争力の低い国家でした。そんな危機的情報を打破しようとICTを用いて生産性を上げることを国家戦略としてきました。その結果2015年にはICT活用度ランキングで世界1位になっています。その流れを汲んで建築分野においてもICTを活用したBIMの普及が促進されてきました。

まず、2013年に20,000㎡を超える建物の「意匠設計」の確認申請をBIMで行うことを義務づけ、翌年には「構造設計」「設備設計」の確認申請についてもBIMで行うことを義務付けています。更に2015年にはBIMを使用した確認申請が必要となる建物の規模を、5,000㎡を超える建築物にまで広げています。それらの規制と同時にBIMを導入した企業にソフトウェアの購入費を補助したことで爆発的にBIMが普及してきました。

そして2016年には、国土全体をBIMモデル化する「バーチャル・シンガポール計画」が発表されました。国土全体をBIMモデル化することで、3Dを活用した通風シミュレーションやエネルギー管理などが可能となります。
BIMモデル化された国土のデータは建築分野での活用に留まらず、3D地図を用いた商業施設の案内や、人の流れの分析、効率的な電波塔の設置場所の検討など様々な用途での利用が想定されています。
「バーチャル・シンガポール計画」は2018年中の完成を目指していて世界の注目を集めていましたが2022年、ついに完成しました。島国であるシンガポールでは、気候変動による海面上昇などのシミュレーション、再生可能エネルギーへの展開などに役立てられています。※2

日本でのBIM普及率

日本は海外に比べてBIMの普及が遅れています。日本では設計と施工が分離発注される場合でも、契約関係に縛られることなく、相互に補助し合う傾向があるので、BIMを導入することで得られる情報の共有化というメリットがあまり感じられないのが理由に挙げられます。

2009年に大手の建設会社でBIMが導入され始めたことで「BIM元年」と呼ばれ、東京スカイツリーをはじめとした公共建築を中心にBIMを活用した設計施工が行われてきました。

国がBIMの普及を促進していることもあって、2016年には大手の建設会社や設計事務所を対象にした調査で約8割がBIMを導入した実績があることがわかっています。その後、2021年に国土交通省が行った調査では、総合設計事務所の約81%、中小規模の建設会社や工事業者も含めた数値では約46%がBIMを導入済みとなっています。この流れは今後、まだ導入率の低い関連事業者や専門設計事業者も含め、さらに広がっていくと考えられます。※3

その昔、日本では伊能忠敬が日本地図を完成させました。そして2005年には写真をつなぎ合わせることで街が立体的に見えるGoogle Earthが登場しました。更にBIMの登場によって近い未来、街中の建物を3次元で見ることができるようになりません。シンガポールでは一足早く現実になろうとしているので、日本でもBIMがより身近に感じられる未来はそう遠くないのかもしれません。

※1 https://www.bimacademy.global/insights/digitaltechnologies/bim-in-usa/

※2 https://venturebeat.com/business/how-singapore-created-the-first-country-scale-digital-twin/

※3 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/gaiyou.pdf

2023年04月27日 情報更新

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