世界最大のオンライン総合旅行サービスExpediaとGoogle travelを比較してみた
昨年Googleでは、いくつかの旅行関係サービスを統合した「Google Travel」をリリースしました。
これまで、世界最大のオンライン総合旅行サービスとして成長してきた「Expedia」と比べて、どのような点が違うのでしょうか。
それぞれの特徴と使い勝手を比較し、これからのOTA(Online Travel Agent)やメタサーチなどの旅行関連サービスの進化について考えてみましょう。
この記事でわかること
・オンライン総合旅行サービス「Expedia」とは何か
・Googleの新サービス「Google Travel」の特徴
・使いやすいサービスはどっちなのか
世界最大のオンライン総合旅行サービス「Expedia」とは
多層化する旅行サービスの種類
まず、現在の旅行関係サービスの用語について、少し解説を加えておきましょう。ホテルや航空チケットの予約など、旅行に必要な手続きを代行してくれるのが「旅行代理店」です。
従来は店舗を構えての営業形態が主流でした。国内ではJTBやHISなどが有名です。多くの場合が、駅前や百貨店などに店舗を設置し、個別の予約代行だけでなく様々な旅行パッケージを販売することで収益をあげています。
しかし、インターネットの発達に伴いオンラインだけで旅行代理店業務ができるサービスが登場し、現在では大きなウエイトをしめるようになってきました。
これが「OTA」です。
国内でよく知られているのが、楽天トラベルやじゃらんなどでしょう。ExpediaもこのOTAの一つで、世界規模で見ると現在最も有名なサービスです。
Expedia以外にも、Booking.comやHotels.comなど多くのOTAが存在し、それぞれ独自色を出したサービスで規模を拡大しています。
ここ10年ほどは、さらに進化したメタサーチというサービスが大きく発展してきました。
「メタサーチ」は「アグリケーションサイト」とも言われ、一括検索ができるサイトです。ユーザーの目的に応じた最適な航空チケットや宿泊プランを、いくつものOTAから検索・抽出して表示してくれるというサービスを提供しています。
2001年スタートのSkyscaner、2004年のカヤック、2005年のWegoやTrivagoなどがメタサーチの代表的なサービスです。
2000年に創業し、一時Expediaの社内サービスとなった後、スピンオフした「TripAdvisor」のことはどこかで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
メタサーチは2000年代に生まれ、2010年ごろから急激に成長し、大きな存在感を持つようになりました。
例えば旅行分野での広告額についても、以前はGoogle Adsなどの広告媒体が中心だったのに対して、近年ではメタサーチへの投資へとシフトしています。
このように成長を続けているメタサーチの中で「Expedia」は、世界最大の規模を持っています。
Googleも旅行関連サービスを個別にローンチしていましたが、2019年にそれらのサービスを統合することで進化を遂げています。*注1
Expediaの特徴
ここで世界最大の総合旅行サービスを展開している「Expedia」について、どのような特徴があるのか確認してみましょう。
私たち日本人にとってありがたいことに、インターネットサービスにも関わらず24時間・365日、日本語による電話サポートがあります。
しかし、対応するスタッフが日本人とは限りませんので、他の外資系ヘルプデスクのように若干の当たりハズレはあるかもしれません。
しかし、電話サポートがあると安心して利用する事ができます。
Expedia公式ページで記載されている特徴は、「安い」「便利」「安心」の3つです。
Expediaでは、世界統一価格に設定されていますので、日本のハイシーズンであるゴールデンウィークやお盆でも、通常価格で提供されます。
また、航空チケットの手数料が無料というのも魅力の1つです。
通常は「予約手数料」や「発券手数料」などが加算されることが多く、手数料無料であればその分価格面でのメリットが大きいと言えるでしょう。
ただし、LCC(格安航空会社)などを含めると、必ずしも最安価格であるとは限りませんので注意が必要です。
Expediaは、ユーザーインターフェースについても洗練されており、空室・空席だけを検索結果として表示します。
他のサイトのように、検索結果をクリックして詳細を確認していくと目的の部屋がすでに埋まっていて、何回も検索画面に戻るという面倒な操作をしなくて済みます。
もちろん、オンライン・カード決済も可能であり、モバイル・タブレット対応となっていますので、移動中でも問題なくチケットを確保することができます。
Expediaは、世界最大の総合旅行サービスということもあり、うまく利用できれば非常に便利で快適な旅行を楽しむことができます。
12時間前までなら予約可能なため、急なスケジュールの変更にも対応できます。
多くの旅行会社の場合、前日や当日の予約ができない事もありますので、この点も非常に便利な特徴と言えるでしょう。*注2
他にも航空チケットと宿泊予約を同時にすると、宿泊代金が大幅に割引になるなど、多くのメリットがあります。*注3
しかし、もちろん全てのおいて完璧という訳ではなく、ユーザーの経験や目的によっては使いにくいとされる部分もあります。
そもそもメタサーチという性質から、検索結果として表示される情報量が多く、ユーザー側が慣れてないとうまく目的にあったプランを選択できないこともあります。
また外資系ということもあり、日本人の習慣やカルチャーと若干ずれている面もありますので、やはりユーザー側である程度工夫して、うまく利用することが必要なサービスです。
これまで店舗型の旅行代理店で、現地ツアーガイド付きのパッケージ旅行しか利用経験がない方だと、初めは少し戸惑うかもしれません。
しかし、一度OTAを利用し慣れてしまえば、これまでより自由で安価な旅行を楽しむことができますので、ぜひチャレンジする価値はあります。
業界に衝撃を与えたGoogleの新サービス「Google Travel」の特徴
「業界に衝撃を与えた」というのは、決して大げさな見出し文句ではありません。
事実、Expediaの会長を務めるバリー・ディラー氏がGoogleの旅行分野への進出を不満とし、米反トラスト法当局に規制を求めるなどの動きが出ています。
もともとメタサーチ各社は、多額の広告料をGoogleに支払うことによって、圧倒的な集客を武器に成長してきた経緯があります。
そのGoogle自身が、自分たちのビジネスと直接競合するサービスをローンチしたのであれば、その影響ははかり知れません。
Googleはこれまで以下の3つのサービスを個別に立ち上げていました。
・Google Trips・・・・アプリ版旅行プランニングツール
・Googleホテル検索・・ホテルの比較・検索に特化したサービス
・Googleフライト・・・航空チケットの比較・予約サイト
それぞれのサービスは、リリース時点から順次ブラッシュアップをすることで、より便利で使いやすいものへと進化してきました。
しかし2019年になって、これらの3つのサービスを統合した「Google Travel」を、総合旅行サービスとしてスタートさせました。
Googleが保有する膨大な情報と検索ノウハウを駆使し、さらに洗練されたインターフェースを持つ「Google Travel」のローンチは、先行するメタサーチ各社にとっては脅威そのものです。*注4
それでは、Google Travelは他のメタサーチと比べて、どのような点に特徴があるのか見ていきましょう。
Google Travelでユーザーごとに最適の旅行プランニングが可能に
旅行を予約した際、電子化された情報(予約番号や宿泊通知など)がたくさんのメールに紛れて、肝心な時にすぐに取り出せないという経験したことはありませんか?
Gmailアカウントと共通で利用できるGoogle Travelでは、Gmailに到着した航空チケットや宿泊予約などのメールを自動で分類整理し、プランとして表示してくれる機能があります。
Google Travelにアクセスすれば、必要な情報に素早くアクセスし、表示することが可能です。
短期間の旅行であっても、航空チケットや現地でのレンタカーの予約、宿泊、オプショナルツアーなど多くの手続きが必要となるものです。
このような情報を、Gmailから自動で収集・整理してくれるというのは、実に便利でGoogleならではの機能と言えます。
このように、ユーザーごとに最適な情報を常にアップデートしてくれますので、簡易的な旅行アシスタントを持ってるような感覚に近いのかもしれません。
Google Travelは、ユーザーインターフェースもシンプルです。
多くの情報が所狭しと表示される一般的なメタサーチと比べて、扱いやすく感じられる点もメリットの一つでしょう。
目的地を設定すると、各社の航空チケット・宿泊先・現地での観光情報などが表示され、移動からアクティビティまでシームレスに手続きができるようになっています。
現在はGoogle傘下であるYouTube動画が、旅行プランに合わせた「情報」の一つとして表示されます。
文字や画像だけではわからないことも、このような動画を通じて容易にイメージできる仕組みとなっています。
また、ユーザーが過去に検索したり、各種Googleのサービスを利用した際の履歴などから、個人ごとに最適化された情報が表示されます。
他にも、Google Mapの機能をフルに使えるなど、様々な面で使いやすく、馴染みやすいサービスが提供されています。
現在、世界のIT企業がしのぎを削って開発に取り組んでいるAI分野についても、Googleは最先端の技術を持っています。
今後最先端のAI技術を応用し、個人の目的や趣味・嗜好に応じた最適な旅行プランニングのアシスタントへと進化していく事が考えられます。
旅行業界は成長が著しく、ビジネスの領域として魅力的な分野であることからも、Googleが本格的に力を注いでこの業界をリードする存在となっていく可能性が高いのではないでしょうか。*注5
使いやすいサービスはどっち?
ここまでExpediaとGoogle Travelについて詳しく紹介してきました。
では、実際に利用するとしたら、どちらのサービスが良いのでしょうか?
前提として、今回紹介したメタサーチのようなサービスは、「海外旅行にある程度慣れていて、比較的頻繁にいく人」に向いているということです。
旅行代理店のパッケージツアーとは異なり、航空チケットや宿泊先など情報は豊富に提示されますが、決定するのはユーザー本人です。
そのため、価格や目的に合わせて自分で選択できるだけの力が最低限必要です。
このような問題をクリアしていると仮定した場合、結論としては両方のサービスを使ってみて、目的や使い勝手の面で自分に合っていると思われるサービスを、主として利用すれば良いでしょう。
そもそも同じメタサーチと言っても、Expediaが「豊富な情報を提供することで、総合的な旅行サービスを提供」を目的としているのに対し、Googleは「シームレスで使いやすいシステムと個人に最適化された情報の提供」と、異なる方向性を持っているからです。
ExpediaがGoogleに比べて、オンライン総合旅行サービスという分野で実績を持っていることは事実です。
サポートも充実している点からも、まずはExpediaから使い始めて、オンラインに慣れて行くのも良いかもしれません。
【まとめ】
店舗を構えた旅行代理店からインターネットサービスへ、さらにより多くの情報とサービスを提供するオンライン総合旅行サービスへと、旅行業界は大きく進化を遂げてきました。
直近では新型コロナの影響で、海外旅行については急ブレーキがかかった格好ではありますが、Expediaはコロナ後の業績の回復を予測して、さらなるサービスの充実にも取り組んでいるようです。
自分の希望に最適な組み合わせを、世界中の航空会社やホテルの中から効率良く選択し、自由に旅行を楽しめる時代が今まさにやってきました。
ここで紹介した以外にも民泊や体験を重視したものなど、多種多様なサービスがあります。
まだ利用したことのない方も、ぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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■参考文献
注1
travel voice 「ホテル比較「メタサーチ」の成長はどこまで続くか? 広告投資額の推移を分析してみた」
https://www.travelvoice.jp/20191003-135586
訪日ラボ 「検索の「メタサーチ」とは? どんなサービス?OTAとの違い・普及の理由・メリットとデメリット・旅行業界大手企業4選の特徴も紹介」
https://honichi.com/news/2019/10/17/metasearch/
注2
Expedia 世界最大のオンライン総合旅行会社へ、ようこそ
https://www.expedia.co.jp/p/promos/japan-brand-benefit
注3
travel vision エクスペディア・ジャパン社長に聞く海旅戦略、Googleの影響予測も
http://www.travelvision.jp/interview/detail.php?id=84107
注4
Hotel Bank Googleの旅行産業参画によりOTAの脅威に、政府規制に注目
https://hotelbank.jp/google-travel-ota-regulation-analysis/
BRIDGE 大逆風のExpediaに襲いかかるGoogleーー決算に書かれたGoogle Travelの追随
https://thebridge.jp/2020/06/expedia-ceo-details-anti-google-game-plan-pickupnews
注5 訪日ラボ Google Travel(グーグルトラベル)とは?航空券まで取れる旅行プランニングツール活用法
https://honichi.com/news/2019/08/09/googletravel/
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