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長谷工コーポレーションが直面したDX推進の試練

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、多くのメリットをもたらしてくれるという期待がある一方、導入には弊害もあります。
日本全国でBIM導入のようなDX関連の施策が検討される中、実行に移せないのも推進に伴う弊害を懸念してのものです。
しかし、長谷工コーポレーションはDX推進に伴う弊害と正面から向き合い、着実に導入を進めている企業です。
どのようなDXの弊害に直面し、解決していったのでしょうか。

目次:

  1. 10年前から行われてきたDX推進
  2. BIM運用に伴う弊害も
  3. 時間をかけて弊害を乗り越え、さらなる活用にも意欲的

長谷工コーポレーションのDX推進計画

長谷工におけるDX推進計画は、長い歴史があります。
まだBIMやDXといった言葉がポピュラーではなかった時代からの取り組みは、今になって実を結びつつありようです。

10年以上続けてきたDX推進

長谷工コーポレーションにおいてDXの積極的な推進を続けてきたのは、この度2020年に新社長へと就任した池上一夫氏です。

池上氏は2009年、長谷工におけるBIM導入の実施をスタートさせ、当時としてはまだ珍しい最先端の取り組みを、今日まで続けてきました。

途中何度も大きな壁にぶつかってきたものの、今でもDXの推進へ取り組み続けることに成功しており、社長となった今後もさらなるデジタル化が期待されています。

DX推進室の誕生

池上氏は社長就任に際し、DXの推進によって会社の生産性の向上に努め、これまでアナログ管理を行ってきた業務についてもデジタル化を進めていくことを明らかにしました。*1
就任後はすぐにDX推進室を設置し、今後のさらなるデジタル化にも意欲的な姿勢を見せています。

極端な方向転換は、通常は社内で煙たがられ、形だけの改革になってしまうこともしばしばあるものです。

しかし、池上氏が設置したDX推進室には特段驚きや戸惑いの声も出ず、社員も甘んじて施策を受け入れている様子が見られます。

社長就任と同時にDX推進を掲げてもひんしゅくを買わない池上氏は、現在に至るまでに多くのDXにまつわる課題をクリアしてきた実績があってのものなのでしょう。

長谷工が直面したDX推進の課題

2009年、池上氏が設計部門エンジニアリング事業部での事業部長へ就任した頃から、長谷工のDX推進に向けた戦いは始まっていました。

現場での混乱

BIMの導入は、理屈では非常に合理的なツールとして現場での使用が望ましいと言われているものの、ただ導入して終わりというわけではありません。
導入に伴い、既存のシステムをアップデートし、BIMありきのワークフローを一から構築していかなければならないため、現場に混乱をもたらすことになりました。

BIMは新しい技術であるだけに、柔軟に対応することも難しいテクノロジーでもあるのです。

顕著な作業量の増加

新しい技術を導入し、慣れないワークフローで仕事を進めていくとなると、今度は必要以上に作業時間を確保する必要があります。
移行のための準備と、新しい環境の整備、そして新しいツールを使った作業は、大きな負担として現場の社員を圧迫することになりました。

どれだけ長期的に見れば利益となるツールでも、現場の社員にとっては短期的な負担の方を煙たがることは目に見えています。

そのため、BIMを導入したいからといって、次の日にいきなり運用を進めていくことは叶わないのです。

既存技術に習熟した社員の反対

また、既存の技術に熟練している社員が、新しい効率的なテクノロジーを嫌がるのも自然な反応でしょう。
人間よりもはるかに効率的で、正確なマシンが現れてしまえば、彼らの居場所がなくなってしまうため、歓迎ムードで迎え入れることはありません。
新しいテクノロジーを導入するとなると、それによってあぶれてしまう人員へのカバーも考えていく必要があるのです。

実際、長谷工ではこういった課題全てにぶつかってきました。

長谷工はどのようにDX推進を実現したのか

このようなBIM運用における課題が山積しつつも、今ではBIMなしでいられないほどDXの運用が進み、今後のさらなる活躍を期待することもできます。

実際の長谷工コーポレーションの対象方法から、DX実現のためのプロセスを探っていきましょう。

増加した作業の外部委託

一つ目は、増加した作業の外部委託です。全ての作業を社内で対応するには増えすぎてしまったため、外の企業への委託も進んでいきました。
会社はコア業務に集中させ、余計な作業は他の会社の手を借りる体制を整えていったのです。

作業の自動化ソフトの導入

また、必ずしも全ての作業が既存のワークフローに最適化されているとは言えません。長谷工では作業のオートメーションも積極的に行い、負担の軽減に努めてきました。
既存の作業のあり方にもメスを入れることで、間接的にDXの推進へとつなげていったのです。

年数経過によるスキルの習熟

BIMの導入は、BIM特化の人材を育成しなければならないという点もネックとなりえます。
長谷工でも当初は使い慣れないソフトをBIMの導入で強制されたことから、以前のシステムに戻してほしいという声も大きかったのです*2。

しかし、年数の経過とともにBIMに習熟した人材も増え、10年に渡る導入の歴史がもたらしたノウハウにより、BIMは今や当たり前の技術として活躍しています。
長谷工における設計業務にはもはや100%BIMが活用されるよう整っており、今後もさらなるBIM活用が期待できます。

BIMの導入で得られた成果は

10年もの歳月をかけてBIM導入を実現した長谷工コーポレーションは、今後もさらなる成果獲得に向けた活用法を見出していくことになるでしょう。

組織全体の効率化を実現

まず、長い時間をかけて整えた盤石なBIM運用環境は、組織全体の効率化に大きく貢献することとなりました。
BIMの導入によって、設計初期の段階に負荷をかけ、後の工程の負荷を軽減するフロントローディングが実現し、効果的なBIM運用体制が構築されていったためです。

BIMはどうしても上流の過程における負荷が大きいため、負荷を等分して分散させることが難しくなります。

長谷工ではフロントローディングへの理解が社員全体に広く行き渡ったため、効果的なBIM運用のあり方への理解も高まり、積極的なコミットを引き出すことができたのです。

建設サブスクの可能性も

BIM活用が進んだことにより、保守運用段階におけるBIM活用の未来も開けています。
BIMは建物の品質管理、および資産価値を維持する上でも欠かせない技術です。
また、BIMをAIやIoTのような新しい技術と組み合わせることで、住民もハンズフリーで生活できるような、次世代のサービスの恩恵を受けることも可能になります*3。
こういったサービスを恒久的に届ける、建設サブスクリプションサービスの可能性も、長谷工は模索しているところです。

おわりに

長谷工コーポレーションは、DX推進を10年以上も続けてきたこともあり、そこで培われたノウハウには確かなものがあります。
これからDX推進やBIM活用を検討していきたい企業にとっても、非常に有意義な情報を提供してくれていると言えるでしょう。

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参考:

*1 日経ビジネス「長谷工、10年越しのDX 抵抗勢力を説得」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00074/?P=1

*2 日経ビジネス「長谷工、10年越しのDX 抵抗勢力を説得」p.2
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00074/?P=2

*3 日経ビジネス「長谷工、10年越しのDX 抵抗勢力を説得」p.4
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00074/?P=4

2023年2月1日 情報更新

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