BIM導入が進んでいる会社は?BIMオペレーターの需要も拡大
建設会社を中心に、多くの会社で導入が検討されているBIMですが、BIM導入の状況やその目的は会社によって様々です。
今回は積極的にBIM導入を進めている大手企業の事例を紹介しつつ、BIM導入の拡大で需要が大きくなっているBIMオペレーターについてもご紹介します。
①BIMを導入している会社の事例
②BIM導入に期待されている効果
③高まるBIMオペレーターへの注目度
BIMを導入している会社の事例
まずは、実際にBIMを運用している会社の事例から見ていきましょう。それぞれで独自の運用方法を模索し、実践している様子がうかがえます。
大成建設
大成建設では数年前よりBIMソフトである「Revit」の運用を進めており、設計業務の大半をRevitにて行い、大きな業務改善効果を獲得してきました。
改修面積が約4700m2にものぼる規模のプロジェクトであっても、視点内の合意形成を円滑に行うことにより、設計から施工までをわずか7ヶ月で終えることに成功しています*1。
また、大成建設では「BooT.one」(ブート.ワン)と呼ばれる独自のRevit向けプラグインを開発しました。
自社で培ったノウハウを他の企業でも活用できるようにするなど、幅広いBIMの普及にも努めていることがわかります*2。
清水建設
清水建設も、大成建設同様AutodeskのRevitをBIMソフトとして採用している企業の一つです。
2019年、清水建設はRevitを基軸とした独自のBIM運用体制である、「Shimz One BIM(設計施工連携BIM)」の構築を進めていることを発表しました*3。
それに合わせて鉄骨構造データの変換ツールである「KAP for Revit(K4R)」も発表するなど、運用体制の拡充が進んでいます。
設計から施工、そして運用に至るまで、BIMの導入によって生産性向上、および省人化を進めていくことが目的です。
大林組
大林組では、BIMモデルによって構築されたデータは、デジタル承認が行えるよう環境を整備しています*4。
これまでは設計図をBIMにおこし、BIMデータをまた設計図に起こし直すことで手動照査が行われており、非常に手間のかかる作業でした。
しかしデジタル承認をシステムに取り入れたことで、設計図に起こす必要もなくなり、照査もデジタル処理で行えるようになりました。
BIMの運用は、それに伴う周辺環境の整備も進めなければ、効果を最大限発揮することができないとも言われています。
大林組では、BIMモデルのポテンシャルを引き出せる環境づくりが盛んな文化が生まれつつあると考えられます。
大和ハウス工業
2006年からRevitの運用を進めていた大和ハウスでは、「D’s BIM」と名付けられた建築イノベーションの実践が行われています*5。
このプロジェクトが目的としているのは、全社的なBIMの導入です。
試験的なBIM運用にとどまらず、全てのプロジェクトでBIMを運用し、生産性の向上を目指す施策が進められています。
BIMモデルを採用することで、内見もVRで行えたり、災害時でも迅速な居住地建築が実現したりなど、幅広い活躍が期待できます。
住宅に強い大和ハウス工業だけに、オフィス建築やインフラ工事とは異なる分野で頭角を表していくことになりそうです。
BIM導入に期待されている効果
このようなBIM導入の事例から、各社がBIMに期待している効果についても確認しておきましょう。
働き方改革の実現
BIM導入を推進している企業が求めているのは、やはり働き方改革の実現が大きいと言えます。
建設業界は身体的負担が大きく、休みもないという負のイメージが強く残ります。
BIM導入で一気に働き方改革を推し進め、オフィスワーク主体のクリーンな業界へとシフトし、優秀な人材を集めたいという思いがあるのでしょう。
業務効率化による生産性向上
また、建設業界は上記のようなイメージの低下も相まって、人手不足が深刻化している分野の一つでもあります。
今後ますます労働人口が減少していく可能性もあるため、少ない人間でも現在のパフォーマンスを維持、あるいは向上していく施策が欠かせません。
BIMの運用方法は、情報共有を円滑にするだけではありません。
AIやロボットにBIMデータを読み込ませることで、より精度が高く、複雑な業務を担えるようになります。
作業の大半を無人化することで、少人数でも施工業務を遂行することが可能になるでしょう。
高まるBIMオペレーターへの注目度
BIM運用が各社で進められる中、新たに注目を集めている職業がBIMオペレーターです。
BIM運用の課題を解消するBIMオペレーター
BIMオペレーターは、主にBIMモデルの制作を担当する職業です。
いわゆる3DCADモデリングに近い仕事内容となっていますが、細かな数値入力の作業も多く、通常の3DCADモデリングよりも複雑な業務となっています。
BIM運用の課題の一つとして挙げられているのが、BIMを扱える人材の不足です。
BIMはここ数年で一気に導入が進められている技術ということもあり、多くの企業はBIM人材を確保できないことから、BIMの導入を見送っているケースもあります。
オペレーターの拡充は急務
このようなBIMオペレーターの需要拡大に備えて、いくつかの企業では対策も進められています。
例えば、人員の配置転換、および人材育成によるオペレーターの確保です。
BIMモデルを業務に導入すると、必然的に設計段階でモデルを作りきってしまうことになるため、多くのリソースを必要とします。
いわゆるフロントローディングと呼ばれる手法ですが、この結果、下流工程においては従来なって人員を必要としなくなるため、上流のBIMオペレーティングに人員を回すという転換が進められているのです。
一方、このような柔軟な配置転換を行うことができず、現場からの圧力でフロントローディングが進められないというケースもあります。
BIM導入を進めていくには、このような問題を解消しながらオペレーターを確保する必要があるのです。
おわりに
BIM導入は各企業で少しずつですが進んでおり、今後数年以内に完全にBIMへ移行を完了する企業も出てくる可能性が高いと言えます。
中小企業でのBIM導入事例はまだ少ないものの、環境やBIMオペレーターのような人材が整備されれば、積極的に運用されることになりそうです。
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参考URL
*1 建設ITワールド「大成建設がビルのリニューアル工事をBIMで大幅効率化
Revitですべての施工図を作成し、FMへとつなぐ(オートデスク)」
https://ken-it.world/success/2018/11/adsk-taisei-case.html
*2 大成建設「大成建設のBIM規格を応用技術が「BooT.one」として提供開始」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2019/190624_4664.html
*3 清水建設「BIMをベースにした生産体制を構築へ」
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html
*4 大林組「BIMモデルにおけるデジタル承認を実用化」
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20200604_1.html
*5 大和ハウス工業「建築イノベーション「D’s BIM」始まる」
https://www.daiwahouse.com/innovation/soh/vol11/
2022年10月13日 情報更新