無線通信を活用した製造業DXとは?事例をご紹介
製造業は日本の主要産業の一つですが、システムや設備の老朽化、そして労働人口の減少によって、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められています。
製造業のDXには多様なアプローチがありますが、中でも優先的に導入したいのが、無線通信技術です。本記事では、無線通信を活用した製造業のDXについて、実際の事例とともに具体的な運用方法をご紹介します。
目次:
①製造業に必要なDXとは
②DXの要件「ダイナミック・ケイパビリティ」について
③無線通信の導入で実現すること
④無線通信を採用した製造業DXの事例
製造業に必要なDXとは
そもそも、製造業に求められているDXとはどのような施策なのでしょうか。具体的な進め方を、ステップに分けてご紹介します。
ステップ1:無線通信技術やITシステムの導入
最初のステップは、今回のテーマでもある無線通信技術、そしてその他ITシステムの導入です。DXは制度改革によって実行することはもちろんですが、ハードウェア・ソフトウェアの導入も欠かせません。特に無線通信はさまざまなテクノロジー活用の足がかりとなる技術であるため、製造業にとっては不可欠です。
Wi-FiやBluetoothといった身近な技術はもちろんのこと、最近では5G通信のような次世代高速通信技術の発達も見られます。設備と人を無線通信で繋ぐことで、抜本的な業務効率化が進みます。
ステップ2:データ活用の推進
2つ目のステップとして、データ活用の推進が挙げられます。ソフト・ハード面での設備導入が進むと、次第に社内には業務データが蓄積されていきます。ITツールを使ってこれらを活用できる体制を整備し、更なる生産性向上に向けた施策を実現しましょう。
製造業に限らず、近年はあらゆる業界でビッグデータの解析、及びAI活用が進んでいます。すでに多くの企業でこれらの技術の実装が進んでおり、DXを進めることで、実現は十分に可能です。高度なデータ活用を実施できるよう、ツール活用と人材教育・確保を進めましょう。
ステップ3:業務の自動化(スマートファクトリー)
DXに必要なシステムを揃え、高度なデータ活用が実現すると、いよいよ業務の自動化が進められます。人間で作業する必要のないラインへとシフトし、高度な意思決定や管理業務にのみ従事するだけで完結する、スマートファクトリーを実現可能です。
高騰する人件費の問題と生産性・品質の向上という3つの課題をまとめてクリアできるスマートファクトリーの実現は、次世代での活躍を目指すメーカー企業にとって、一つのマイルストーンになっています。
DXの要件「ダイナミック・ケイパビリティ」について
経済産業省が2022年2月に発表したレポート「製造業におけるDX」によると、DXを実現するためには「ダイナミック・ケイパビリティ」の獲得が必要とされています*1。ダイナミックケイパビリティは「企業変革力」とも和訳されており、企業が時代の変化に応じて自己変革できる能力を指します。
業務のデジタル化はダイナミックケイパビリティに必要な三要素を獲得する上で有効とされていますが、ここでその三要素について、確認しておきましょう。
感知
1つ目の要素は、感知する能力です。時代の潮目が変わったことを感知したり、新しい競合や技術が現れたことによる脅威を感知したりといった能力です。時代に応じて企業を変革するためには、繊細かつスピーディに世の中の変化を感じ取る必要があります。
捕捉
2つ目の要素は、捕捉です。捕捉とは、変革の正しい機会を捉え、既存の技術やリソースを再構成し、競争力を確保する能力です。タイミングとなすべきことを読み違えない判断力が必要です。
変容
3つ目の要素は、変容です。一時的な対応ではなく、競争力を持続させるために長期的に刷新し続けられる能力は、これからの組織活動に不可欠となるでしょう。
無線通信の導入で実現すること
無線通信技術の導入は、製造業におけるDXの初歩的な取り組みです。具体的に導入によって実現することとして、以下の変化が挙げられます。
迅速な情報共有
1つ目は、迅速な情報共有です。高速無線通信によって、企業のあらゆるデータは自動で送受信され、人の手を解する必要がなくなります。
共有漏れはなくなり、リアルタイムでデータを分析にかけられるので、生産性の向上に役立ちます。
システムの簡素化
2つ目は、システムの簡素化です。IoT技術を導入して単一の管理システムで全ての設備を制御したり、検査や製造過程を自動化することができたりします。
デジタルツインなど次世代技術の導入
センシング技術と無線通信を高度に活用すれば、デジタルツインのような次世代技術の活用も進められます。各地に設置されたセンサーからリアルタイムで情報を集め、現実と瓜二つの環境を仮想空間に再現するデジタルツインは、次世代の都市開発に不可欠の技術とされています。
最新の技術活用ができる企業へと生まれ変わることで、高い競争力を備えた製造業を実現できます。
無線通信を採用した製造業DXの事例
無線通信技術を採用しているメーカーは国内にも多数出現しています。最後に実際のDX事例について、3つご紹介します。
トヨタ自動車株式会社
大手自動車メーカーのトヨタ自動車では、工場へのIoT導入を進め、無線通信を活用したDXを実現しています*2。社内教育の徹底とAIプラットフォームの導入などを経て、従来のトヨタ生産方式を生かした現場の効率化を実現し、高い費用対効果を創出しました。
三菱電機株式会社
大手家電メーカーの三菱電機では、工場設備IoTの実装によって、工場における生産情報とITを連携させる仕組みを実現しました*3。自動化に必要なロボット技術やセンサー機器を統括制御し、データを収集する仕組みを整備することで、IoT環境の整備に努めています。
また、IoT導入の目的をあらかじめ明確にすることで、確実な課題解決を促し、パートナー企業との連携強化を実現しています。
ダイキン工業株式会社
空調設備でお馴染みのダイキン工業は、大阪に設置した新工場を「デジタル・ファクトリー」として運用を開始し、積極的なIoT活用を進めています*4。無線通信技術を生かして工場内の設備を全てネットワークに接続し、データ収集、及びデータ活用を実現しました。
結果、生産状況がリアルタイムで可視化され、計画を逐一最適化することに成功し、余計なロスの発生を最小限に抑えています。
まとめ
製造業界におけるDXには設備投資が求められていますが、費用対効果を高めるためにはDXの目的を明確にし、そもそもどのようなことができるかの知識理解を深める必要があります。
無線通信技術の導入によって、製造業はDXを大きく前進させることが可能です。自社の課題と無線通信でできることを照らし合わせ、DXの足がかりを探りましょう。
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参考:
*1 経済産業省「製造業におけるDX」p.1
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sangyo_cyber/wg_seido/wg_kojo/pdf/002_03_00.pdf
*2 経済産業省「製造業DX取組事例集」p.17
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf
*3 経済産業省「製造業DX取組事例集」p.31
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf
*4 経済産業省「製造業DX取組事例集」p.42
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf