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Googleが取り組む脱クッキーの新たな規格「Topics API」とは

 そろそろ業界も「サードパーティ・クッキー」を諦め、新しい規格の導入を急ぐ必要があります。Appleはすでに完全撲滅運動を独自にスタートしており、CMでも派手に「安全・安心」をアピールしています。

 一方のGoogleはというと、広告収入がメインであるビジネスモデルという関係もあり、やや後手に回っている感は否めません。

 そんな中出てきた新たな規格「Topics API」について、内容を確認していきましょう。

この記事でわかること

 ・これまでの「サードパーティ・クッキー」撲滅の流れについて

 ・サードパーティ・クッキーが嫌われる理由

 ・Googleが新たに提案する「Topics API」とは何か

これまでの「サードパーティ・クッキー」撲滅の流れ

 まず、最近の「サードパーティ・クッキー」制限に関する流れを、簡単にまとめてみましょう。

 2017年9月 Appleがトラッキング防止機能(ITP)をSafariに搭載

   ※SafariはAppleの標準ブラウザ

 2018年5月 EUでGDPR(一般データ保護規則)が発効

 2020年8月 カリフォルニア州で消費者プライバシー法(CCPA)が執行

 2022年4月 日本で改正個人情報保護法が施行

 他にもいろいろありますが、とりあえずAppleの取り組みが割と早い時期に行われ、その後、各国の行政機関による規制が強まっているという流れになります。

 規制に関する内容も多岐にわたりますが、基本的には「個人情報の管理ルールを厳密化し、違反すれば罰則」となっています。

 EUで発効した「GDPR(General Data Protection Regulation)」では、制裁金として違反した企業の「全世界売り上げの4%または2千万ユーロ」のどちらか高い方を支払うと言うルールが制定されました。

 2千万ユーロと言うと、現在の為替レートであれば28億円弱になります。(2020年7月現在)

 試しにGoogleの親会社である「Alphabet」の、2021年第四四半期の総売り上げを調べてみると750億ドル強でした。

 年間通してこの売り上げを維持すると仮定した場合、年間売り上げが約3,000億ドルとなります。GDPRで一番厳しい制裁金が課せられるとするならば、約120億ドルを支払う必要があり、現在のレートでなんと1兆6,000億円オーバーです!

 これ、いくらなんでも間違えじゃないのか?と、何度か計算し直してみましたが、やはりこの金額になります。

 結局のところ、Alphabetの売り上げがとんでもないって事にはなるのですが、AlphabetはGDPRには間違っても目をつけられないようにしなくてはいけません。*注1

なぜ「サードパーティ・クッキー」が嫌われるのか

 ここで少しだけ、サードパーティ・クッキーがなぜこんなに嫌われているのか?について、簡単に説明しておきましょう。詳しい内容については他の記事に任せるとして、あくまでもイメージが掴める程度の例として取り上げてみます。

■サードパーティ・クッキー関連の記事

CAPA「サードパーティーCookieを無効にする方法とは?メリットも解説」

「AppleのSafariでトラッキング防止機能を設定し行動追跡をブロックしよう」

 あなたがある日、夏用の服を買おうと思い、とあるショップに行ったとしましょう。

 店内を見て回って、気に入った一着を選びレジで精算しました。その時に、ショップカードを作るため、氏名・住所・電話番号などの個人情報を記入して渡します。ここまでは普通に日常生活で経験することです。

 この時、ショップカードを渡されますが、このショップカードがちょっと変わっており、一冊のノート形式になっています。このノートには、あなたがショップを訪問した日・買ったもの・店内のどこを見て回って、店員さんとどんな会話をしたかまで、事細かに記録されています。

 しかしこの記録自体は、あなたが訪問したショップが書き込んだものであり、次に訪問した時に誰が担当してもスムーズに接客できるようにするためのものである、と説明を受けます。

 あなたは、このショップの品揃えが気に入っており、また来るかもしれないので渋々記録された内容について、納得することにしました。

 その後、今度は靴を買おうと思って別のショップに行ったとします。

 初めて行ったショップだったのですが、接客した店員が「あの時、あの店で買った服にはこの靴がお似合いですよ」とか、「店内で手に取った服が好みなら、うちにも同じタイプの服がありますよ」と勧めてきます。

 いつの間にかあなたの知らないところで、先ほどのショップのノートの中身を見られていたのです。

 びっくりしてショップのノートを取り出してみると、先のショップで書き込まれた以外の何か訳のわからない文章が山のように書き込んでありました。

 慌てて今居たショップを後にして街中を歩くと、すれ違った全然知らない人があなたを呼び止めて「靴を探しているなら、あそこの店がいいですよ。今セール中です。」と話しかけてきます。

 どうでしょう?実際にこんな事が起こったら気持ち悪いですよね。

 このノートに書き込まれた情報が「クッキー」であり、あなたが全く知らないうちに書き込まれている知らない相手からの文章が「サードパーティ・クッキー」です。

 このようなことがインターネット上では普通に行われています。

 この例え話では正確性は多少犠牲にしていますが、イメージとしてはほぼこんな感じと思っていただいて良いでしょう。

 各国の行政機関が個人情報保護を目的として、厳しい規制に取り組むのは当然だということが理解できるかと思います。

 一方の広告を出す側としては、こんな便利で効果的な仕組みはなかなかありません。

 例えば、あなたが結婚式場を経営しているとして、街中の人通りの多いところに大きな看板を出すとしましょう。

 この場合、かなりの費用をかけて制作し、毎月場所代を支払う必要があります。しかし、その看板を見る大部分の人は、あなたのターゲット層とは異なっています。

 結婚式場の場合、既婚者には関係ない広告であり、小中学生にもあまり意味はないでしょう。あなたのメインターゲットは「結婚適齢期で、現在交際中であり、近々結婚式をあげる予定の男女」です。

 せっかくかなりのコストをかけて設置した看板も、その大部分は全く関係のない人に見せていることになり、費用分の効果が出ない可能性が高いと思われます。

 一方クッキーを使うことにより、相手が今何に関心を持って、どんな消費行動をとっているかを、かなり絞り込むことができます。あなたのターゲット層にピンポイントで狙い撃ちして広告を表示することが可能であり、これこそがインターネット広告が著しく伸びている最大の要因となっています。

 このような手法を「ターゲティング広告」といい、まさに今回話題のGoogleが世界企業として覇権を握ることができた理由の一つです。

 Googleは優れた検索アルゴリズムを開発し、検索サイトとしてサービスを開始しましたが、その収益の基盤はターゲティング広告であり、現在においてもそれは変わりありません。

 今回の「サードパーティ・クッキー」排除の動きに対しても、Appleにずいぶん遅れて取り組んでいるのは、クッキーを使ったターゲティング広告がGoogleの収益の柱となっているからです。

Googleが新たに提案する「Topics API」とは

 Appleが先行して「サードパーティ・クッキー」排除の動きができたのは、Googleとは根本的にビジネスモデルが異なるからです。

 AppleやAmazonは、自社のプロダクトやサービスを直接消費者に販売または仲介することによって、手数料収入を得ています。消費者行動や個人情報については、販売効果をあげるためのマーケティングに用いられています。

 一方のGoogleやFacebookは、基本的に無料でサービスを提供しています。無料サービスによって、収集した消費者行動や個人情報を活用した広告収入がメインであり、時には情報そのものを商品として販売することで収益を上げています。極論を言えば、我々の個人情報そのものが「商品」になる訳です。

 「サードパーティ・クッキー」は、このような個人行動や情報を効率よく収集するのに非常に便利な機能でした。しかし、世界的な批判を受けてこの仕組み自体を、放棄せざるを得なくなりました。

 とはいうものの、収益の柱である「消費者行動」に対する情報収集を諦めるわけにはいきません。諦めてしまった場合、Googleのビジネスモデルが崩壊してしまうでしょう。

 私たち消費者にとっても、このような企業が無料のサービスを提供してくれるからこそ、快適なインターネットサービスの利用ができているという面もあります。

 もし、Google検索やGoogle Mapがなかったら、、、、。FacebookmやInstagram、LineやYouTubeなどのサービスが使えなかったり、有料サービスになってしまったら、、、。

 今ほど快適なインターネットの生活は送れないでしょう。

 そのため「サードパーティ・クッキー」に変わる、「個人ができるだけ特定されない」形で、「マーケティングに必要な情報」を渡す仕組みを作る必要があります。

 私たち一般消費者が「気持ち悪い」と感じず、どんな情報が提供されてるのか確認できる形で、マーケティングに必要な最小限必要な情報を提供する。そのような仕組みです。

 Googleが現在取り組んでいるのは、お互いの「妥協点」をうまく見つけるような機能であり、今回のテーマとなっている「Topics API」です。

 実は、この前にも一つアイディアを提案していたのですが、個人が特定される恐れがあり、「サードパーティ・クッキーより危険な可能性が高い」という批判を受けて断念した経緯があります。

 Googleが提案する「Topics API」の仕組みは以下のようなものです。

 1)消費者の関心をTopicというカテゴリーに分類

   ※Topicの具体的な例

    「カントリーミュージック」

    「メイクアップ・コスメ」

    「ベジタリアン料理」   など

 2)将来的には数百から数千件のTopicsを準備。現在は350件程度

 3)ユーザーのインターネット利用履歴を追跡し、その訪問先サイトから興味を持っているTopicをピックアップし記録する

 4)記録のタイミングと数は、1週間ごとに5つまでとする。

   また、過去3週間分だけを記録し、それ以前の記録は自動的に削除する

 5)個人の特定を難しくするため、ユーザーの訪問履歴とは全く関係のないダミーのTopicをランダムに選択し、1週間毎に1つずつ記録しておく。

 ここまでが、「サードパーティ・クッキー」に変わる消費者行動を記録する仕組みです。

 広告を出稿する側はこの記録を参照し、ユーザーが関心がありそうなTopicに関係する広告を表示するようにします。

 またTopic情報はユーザーのブラウザ上に記録され、Googleや第三者のサーバー上にはいかなる記録も残されません。

 ユーザーはクッキーよりもはるかに見やすく、わかりやすい状態でこの記録を参照することが可能です。また、記録されたTopicを個別にオフ(情報を与えない)することも、オールでオフにすることもできるようになっています。

 現在のクッキーも、ユーザーが自分で確認することはできるのですが、素人にはぱっと見で何が記録されているか判断するのは難しい状態です。この事が「何がされているのかわからず気持ち悪い」というイメージに繋がっているため、記録内容を明確化するのは非常に重要です。

 さらに、「個人が特定できない程度」かつ「マーケティングに有効」な情報の折り合いをつけようとしているのが「Topics API」の仕組みです。

 まだ発表されたばかりでテスト段階であることから、果たしてこの新しい仕組みが有効に機能するかどうかは今のところは不明です。*注2

まとめ

 Googleが提案する新たな仕組み「Topics API」がうまく動作し有効に活用できるかについては、今後のテスト結果を待つしかありません。

 また、広告業者はこれまでに比べて、かなり制限を受けた情報を元にマーケティングをしていく必要があります。しかしそれでも、従来のマスメディアからインターネット広告へのシフトは今後も加速していくでしょう。

 インターネット広告において、「うまく折り合いをつける」ための良い方法を見つけていくことは、今後の大きな課題でもあります。

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■参考文献
注1
ZD Net Jpan 「Google Cloudの売上高は45%増–Alphabet第4四半期決算」
https://japan.zdnet.com/article/35182953/
株式会社AZ 「【全編】Cookie(クッキー)規制問題のキホンの「キ」〜今さら聞けないクッキーの仕組み〜」
https://azkk.co.jp/what-is-cookie-01
日経XTREND 「米グーグルの脱クッキー新機能「Topics API」 仕組みを図解」
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00657/00002/
注2
日経XTREND 「グーグル、“脱クッキー”と広告を両立 FLoCの次はTopics API」
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00657/00001/
ケータイWatch 「Google、新しいプライバシー保護の取り組み「Topics」を発表——脱「Cookie」への新たな取り組みとは」
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1383476.html
IT Media News 「Google、脱Cookie技術「FLoC」開発を停止し、新たな「Topics」を発表」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2201/26/news064.html
マイナビNews 「Google、Chrome開発版でCookieに代わるプライバシーサンドボックスをテスト」
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220401-2309129/
AdUser Times 「広告で個人特定を大幅に制限 グーグル、新技術を発表」
https://www.advertimes.com/20220126/article375152/
Zenn 「Google のターゲティング広告関連の新しい提案「The Topics API」について調べた」
https://zenn.dev/mryhryki/articles/2022-01-30-the-topics-api
EFF ”Google’s FLoC Is a Terrible Idea”
https://www.eff.org/deeplinks/2021/03/googles-floc-terrible-idea
Google Japan Blog 「プライバシー サンドボックスの新しい Topics API について」
https://japan.googleblog.com/2022/01/topics-api.html
プライバシーテック研究所 「Cookie規制から代替案に再注目!法律に準拠したデジタルマーケティングの救世主たちとは」
https://acompany.tech/privacytechlab/cookie-regulation-other-method-third-party-data-cookie/

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