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アップルのライトニング端子を狙い撃ち!EU議会で禁止される事態に

長年iPhoneユーザーを苦しめてきたライトニング端子。ついに終了を予測させる決定が行われました!
今回、2022年10月のEU議会で可決された司令案には、最大100Wの給電能力を持つ全てのモバイル機器について、USB-C端子の搭載を義務付けるとの記載があります。
現在該当する製品で、USB-C以外の端子を持っているのはiPhoneぐらいですので、まるで「狙い撃ち」されたような決定です。
今回はライトニングとUSB-Cについて、今後の展開を考えていきたいと思います。

この記事でわかること
・EU議会の決定内容とその影響について
・USB-Cとライトニングの違いとは
・USB-C義務づけとアップルの対応について

EU議会の決定内容とその影響

EU議会で、今回可決された司令案の内容をまとめると以下のようになります。

・有線で充電可能な最大100Wの電力供給で動作するすべてのモバイル機器について、USB Type-Cの搭載を義務化
・義務化の期限は2024年末まで。それ以降は指令に従わない機器についてはEU圏内での販売を禁止
・対象機器としては、スマートフォンやタブレット、カメラなど。キーボードやマウスなどの周辺機器も含まれる
・ノートPCは今回は対象外。ただし2026年春以降に、USB Type-C搭載が義務化される予定

スマートフォンについて言うと、iPhone以外の製品のほとんどはすでにUSB-C端子を搭載していることから、今回の指令案で最も影響を受けるのはiPhoneということになります。
まるで、iPhoneを狙い撃ちしたような今回の決定。一体どのような背景があるのでしょうか。*注1

※今回の内容ですが、レポートしているニュースサイトの中には「欧州委員会で決定」とするものもありますが、欧州委員会は法案の作成・提出をする機関です。
法案(指令案)の議決は欧州議会が担当しますので、「欧州議会で議決(決定)」とするのが正しいと思われます。

今回の法案は2021年9月に欧州議会に提出され、審議を経て2022年6月に暫定合意し、10月になって正式決定されました。この「充電機器の統一」法案(指令案)を実行することによって、以下のようなメリットがあるとされています。

「充電機器の統一」のメリット

・廃棄物の削減
共通規格の採用により無駄が削減され、廃棄物削減効果が期待できます。

・製品価格の低下
USB-Cとライトニング対応機器の価格差を見れば明らかなように、サードパーティの製品が出そろえば、消費者の負担は少なくなるはずです。

・消費者がメーカーに縛られない選択ができる
中心となる機器に合わせて周辺機器を一旦揃えてしまうと、なかなか規格の異なる機種への乗り換えが難しくなります。このような制約をなくすことも目的の一つとなります。*注2

もし、現時点で充電端子の規格が乱立し、メーカーごとに異なる方式を採用しているようなカオスな状態であれば、上記のような効果は大いに期待できるでしょう。
しかし、今回規制の対象となるデバイスについては、すでにかなりの割合がUSB-Cを搭載しており例外はiPhoneぐらいです。

となると「市場の混乱をなくし消費者の利益を保護する」という名目よりは、アップルに対する個別攻撃という側面が目立ってしまいます。
EU議会はよほどライトニングに業を煮やしているのでしょうか。なんと賛成602票、反対13票、棄権8票という圧倒的大差でこの法案(指令案)が可決されています。

EU議会において、電子機器のポートにまで細かい指示をするという点に、若干なりと違和感を感じてしまいます。実はもっと、政治・経済・外交などの大きなテーマを議論しているというイメージを抱いていました。
 
しかし今回、異なる国家の集合体であるEUにとって、このような規格の統一・共通化を推進することも重要な課題の一つであることが分かりました。

前EU委員会(2014年〜2019年)では、「接続されたデジタル単一市場(Connected Digital Single Market)」の完成を、重点政策の一つとして進めてきました。
さらに現在のEU委員会では「欧州デジタル化対応(A Europe fit for the Digital Age)」を掲げています。
このように、EUにとってデジタル技術の活用と普及は、他の国家規模の課題に匹敵するぐらい、重要なテーマとなっています。

それぞれの政策について内容は多岐にわたりますが、特に「EU内の企業にとって公正な競争の実現」や「安全・高性能・持続可能なデジタル・インフラの整備」といった指針が、今回の決定に該当しそうです。
透明性を確保し競争を促すことが低価格で良質な製品開発に繋がり、消費者にとってもメリットが大きいということになるのでしょう。*注3

今回、アップルがiPhoneの圧倒的なブランド力と先進国におけるシェアの高さにあぐらをかき、すでに時代遅れの性能しか持たないライトニング規格で、独占的な利益を得ている事について、もう見過ごせないという判断が下されました。
そのため今後アップルは、何らかの対応を迫られることになります。

USB-Cとライトニングの違い

USB-Cとライトニングと並列して比べていますが、よくよく考えてみると異なる概念を比較していることに注意しなければいけません。
USB-Cは「形状」の規格であり、ライトニングは「形状+性能」を含む規格です。同じUSB-Cであっても性能は製品ごとに異なりますので、「USB-C」と「ライトニング」の場合、厳密には形状だけしか比較することはできません。

「ライトニング」は、サイズが幅7.7mm×厚さ4.7mmであり、上下を気にせず利用することができ、データの転送速度は480Mbps(USB2.0に準拠)というアップル独自の規格です。
2012年に登場してからすでに10年が経過しており、現在ではレガシーの部類に入ると言っても良いでしょう。
仮にアップルが規格を提供するといっても、自社製品に採用するメーカーはないはずです。

アップルがライトニング規格を搭載した当時、USB-Aが多くの機器で採用されていました。しかしUSB-Aは、上下の区別があることからユーザーにとっては「やや使いにくい」ものでした。
少し差しにくい場所にUSB-Aポートがある時など、なかなかうまく差すことができず、イライラした経験がある方もきっといることでしょう。
そのため2012年当時、ライトニングは画期的な規格としてアップルらしさを主張していました。

しかしUSB-Cにおいては上下の区別がなくなり、もはやライトニングの優位性は失われました。またサイズも約8.4mm×約2.6mmであり、ライトニングよりやや薄い形状です。
転送速度については製品ごとに異なり、USB2.0からUSB3.2まで対応しています。さらにThunderbolt規格にも対応しているため、最大で40Gbpsプラス映像出力も可能です。
このことからも、ライトニングがいかに「古い」かがわかります。*注4

アップルはライトニングにこだわる理由について、「ユーザーの安全性と製品の安定性を確保するため」という立場を取っています。
アップルはサードパーティ製の製品に対して、MFiという認証プログラムを実施しており、厳格な基準を設定しています。細部にこだわり完璧さを求めるアップルらしい部分ではありますが、現状では単に「収益手段」の一つになっています。

USB-C規格が普及し、性能が段階的に進化している現在、消費者にとってライトニングのメリットは「ほぼない」と断言して良いでしょう。
EU議会の思惑がどこにあるのかは別にして、今回の決定が消費者にとってマイナスになることはなさそうです。アップルが有線ポートを完全に無くしてしまわない限りは。。。

EU以外にも拡大する規格統一とアップルの対応

EUの決定に続いて中国でも同様の動きがあり、いよいよアップル包囲網が本格的になってきました。
報道によると、中華人民共和国工業情報化部(MIIT)が、スマートフォンなどの外部機器について規格統一を進めるとのことです。
買い替えの際に既存の付属端子が無駄にならないことで、省資源につながることがその理由とされています。さらに中国国内のベンダーに、規格統一への動きに参加することも求めています。

中国ではiPhoneのシェアが増加しており、日米欧以外の重要マーケットとなっていることから、影響は小さくありません。
例えこの動きがEUや中国だけにとどまると仮定しても、エリア別に端子の異なるiPhoneを設計・製造することのメリットは少ないと思われます。
いずれにしろライトニング端子とは決別せざるを得ないことは、ほぼ確定していると言って良いでしょう。*注5

【まとめ】

アップルは、これまでも市場で主流となっている規格とは異なる独自規格を、幾度も採用してきた企業です。瀕死の危機から復活してからは、比較的標準規格を採用する場面も増えましたが、それでもアップルらしさは依然として残っており、ライトニング端子はその象徴とも言える存在でした。
今回のように市場のニーズではなく、国際機関からの圧力で変更せざるを得ないというのは過去にも例がありません。

目の前に迫った期限までにUSB-Cを採用せざるを得ないでしょうが、アップルがそのまま大人しくしているものでしょうか?
スマートフォンから物理キーボードを無くしたように、イヤホンジャックを廃止しワイヤレスイヤホンの市場を押し上げたように、また何かしらのアップルらしさを見せてくれる。実はそんな未来にちょっとだけ期待しています。

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■参考文献
注1
IT media NEWS 「EUで“Lightning廃止法案”可決 賛成96.6%で USB Type-C搭載を義務化」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2210/05/news085.html

注2
@DIME 「EUでの義務化法案可決でiPhoneのLightning端子はいつからUSB Type-Cに切り替わる?」
https://dime.jp/genre/1480480/

注3
JETRO 「EUデジタル政策日本貿易振興機構の20 21年10最新概要月(ジェトロ)ブリュッセル事務所海外調査部」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0a88cad7cdac3e5a/20210038.pdf

注4
IT media Mobile 「とっても複雑なUSB Type-Cの世界 ケーブルのトラブルを防ぐには?」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2201/14/news027.html

日本航空電子工業株式会社 「TYPE-Cコネクタと類似点の多いLightningを基板実装・転送速度などで比較、または採用しているデバイス・メーカーの紹介」
https://www.jae.com/column/06-type-c-connector-and-Lightning-connector/

注5
iPhone Media 「Lightning端子が不利に!?中国の関係機関が外部接続端子の規格統一推進へ」
https://iphone-mania.jp/news-432020/

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