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マイクロソフトが「メタ クエスト」 デバイスに連携させることを 発表

バーチャルオフィス・メタバースなど、新しい分野でさまざまなサービスが利用されるようになり、いよいよ本格的な普及段階へと進んできた実感があります。
そんな中、競合するサービスで覇権を争っていたマイクロソフトとメタ(旧フェイスブック)が、連携するというニュースが飛び込んできました。
今回の記事ではこの話題についてまとめてみたいと思います。

この記事でわかること

  1. マイクロソフトとメタの連携に関する内容について
  2. それぞれの企業が独立で進めていた内容について
  3. 連携で実現する未来について

マイクロソフトとメタとの連携に関する内容

まずは事実の確認から始めていきましょう。
米国時間2022年10月11日に、米国マイクロソフトはメタバース分野で米国メタと連携したと発表しました。メタバース分野への積極的な投資で話題になったメタが、独自サービスとデバイスで囲い込みを図るのではなく、マイクロソフトのサービスと連携する方向に動いたのは注目すべき点です。

このような新たな分野では、先にキラーコンテンツをリリースした企業が市場を占有し、先行者利益を得ることができます。特にビジネス分野でも広く利用が期待できるメタバースという領域は、次の覇権をどこが取るのか注目が集まるところでもあり、メタだけでなく多くの企業が技術開発や新たなサービスの開発に取り組んでいます。

マイクロソフトとメタとの連携によって何ができるのか?

具体的には次のようなことが実現するとされています。

・Microsoft TeamsをMeta Questで体験することができる。

・Meta Quest ProとMeta Quest 2で、Windowsエクスペリエンスをストリーミングできる。
Windowsエクスペリエンスは、Windows 10上の特定のアプリの作業をほかの機器に引き継いだり通知することによって、作業を共有できる機能です。
これがMeta Questと連携することによって、VR上で実行できるようになります。

・Meta Quest ProやMeta Quest 2から直接WordやExcelなどのOfficeアプリを操作できる。
ビジネスシーンで最も利用されているOfficeアプリを、VR空間で利用できるようにすることで、本格的なビジネスユースへの展開が可能になります。

・メタが提供するHorizon Workroomsから、マイクロソフトのTeamsで開催されるミーティングに参加可能になる。
メタのVRプラットフォーム上から、マイクロソフトのコラボレーションアプリであるTeamsが利用できるようになります。
Meta Quest利用者が無理なく外部の提供するアプリを利用することで、利便性が格段に向上します。

・Microsoft TeamsでのMeta Avatarの利用ができる。
マイクロソフトの提供するサービス上で、メタの機能が利用できるという内容です。
マイクロソフトとメタのサービスが、お互いが得意とするツールやサービスを自由に利用できることで、利用者が無理なく効果的なVR体験をすることができるようになります。

・Microsoft IntuneとAzure Active DirectoryによるMeta Questのサポート
企業のセキュリティと端末の管理が、メタの提供するデバイスでできるようになります。

実際マイクロソフトも、「Holo Lens」というVR/ARヘッドセットを発売していますが、40万円を超える価格設定であり、一般ユーザーが気軽に手を出せるものではありません。
企業ユースを想定していますが、全社員に配布して日常的な会議・コラボレーションユースで利用するという事も難しいでしょう。

せっかくVR対応のさまざまな一般向けサービスを提供していても、対応デバイスが限られてしまうと普及を阻害してしまいます。今後の有望市場であるVR分野で、広く利用されるサービスとしてマイクロソフトのビジネスツールを定着させるためには、一般ユーザーが無理なく利用できるデバイスの確保が必要です。

その点、ゲーム分野で実績のあるMeta Qestシリーズは、十分に条件を満たすデバイスと言えるでしょう。
一方のメタにとっても、社運をかけて取り組んでいるメタバース分野でのユーザー拡大や自社プラットフォームの利用促進には、ビジネス分野で多くのユーザーを確保しているTeamsやOfficeアプリとの連携が重要です。

VR空間という「新しく、慣れないサービス」の中で、日常的に使っているOfficeアプリがリアル空間と同様に使えるというのは、一般ユーザーにとってメタバースへのハードルを下げることができるでしょう。

一点だけ気になることと言えば、メタはハードウエアの企業ではないということです。
Facebookという世界最大級のSNSサービスが事業の中心であり、本来であればメタバース領域で広く利用される、プラットフォームやサービスの普及に力を入れたいところです。
単なる「マイクロソフトサービスが利用できるデバイス」の販売促進だけでは、Facebookに続く事業に繋げることは難しいかもしれません。

あくまで、VR空間を利用するためのプラットフォーム自体はメタが提供し、その中でマイクロソフトの各サービスが日常空間と同様に利用できる。そのためのデバイスはメタが提供する、ということが理想となるはずです。

一方のマイクロソフトとしては、自社の各種サービスがVR空間でも多くのユーザーに利用されることが第一目的であり、そのためのプラットフォームやデバイスにそれほどこだわりはないはずです。
今後、メタ以外のVR関連企業との連携も、決して否定はできません。*注1

それぞれの企業が独立で進めていた内容

ここで、それぞれの企業が進めていた内容について、詳しくご紹介しましょう。

◯マイクロソフトの取り組み

VR世界を実現するためには、VR空間で作業をするための基盤となる「プラットフォーム」、中で利用される「アプリケーション」、VRサービスにアクセスするための「デバイス」が必要となります。

マイクロソフトの場合、プラットフォームとしては「Mesh」が2021年に発表されています。中で利用されるソフトやサービスは、現実世界でも広く利用されているOfficeやWindowsの機能を、VR対応させることで実現しています。
またデバイスについては「Holo Lens」があります。

これらの全てが十分に普及すれば、ユーザーの囲い込みに成功し、マイクロソフトの一人勝ちで終わるでしょう。
しかしMeshについては、2021年の発表以来続報がない状態であり、Holo Lensについては高額なため、廉価版でも発売されない限り一般に広く普及することはないでしょう。

さらに言えば、VRゴーグル自体がどちらかというと、ゲーム分野で利用が拡大している事もあり、Holo Lensがターゲットとしている領域とは異なるという面もネックになります。*注2

マイクロソフトが自社でプラットフォームからデバイスまで、全てのカテゴリーを網羅する戦略から、転換する方向に舵をとったことが今回のメタとの連携から窺い知ることができます。
自社の得意とする分野(ビジネスサービス)にリソースを集中し、そこだけはVR領域でもシェアを確保できるよう動き始めたのでしょう。

◯メタの取り組み

Facebookは2004年にスタートしたサービスであり、全世界にユーザーを持つSNSの代表的なサービスとして成長してきました。
その後、LINEなど後発のSNSやYoutubeといった動画を中心としたSNSサービスの追い上げもあり、やや成長に翳りが見えてきたところです。

2021年には社名を「Meta(メタ)」に変更し、「SNSの企業からメタバースの企業へと進化する」と高らかに宣言しています。
さらに、メタバースのプラットフォームとして「Horizon Worlds」を発表しました。まだリリースされたばかりのサービスですので、今後の動向を見ていかないと成功に結びつけられるかどうかはわからない状況です。

デバイスに関しては、VRゴーグル製造会社であったオキュラスVRを買収し、現在のMeta Questを発売しています。
メタバース内で提供されるサービスについても自社開発を進めてはいるようですが、メタとしてはプラットフォームさえ普及するのであれば、外部のサービスを取り入れても不足はないでしょう。*注3

連携で実現する未来について

VR空間・メタバースが普及し、誰もが気軽に利用できる。そんな未来が現実になったとしましょう。そのためにはどんな環境が必要でしょうか。

まず、VR空間を認識するためのデバイスが必須です。軽量で違和感なく装着でき、長時間利用していても負担を感じないことが重要でしょう。
価格も一般ユーザーが気軽に購入できるぐらいの設定であり、できれば標準規格に基づいて複数のメーカーから選択できるのが理想です。

単にデバイスという名称だけを取り上げると、iPhoneのような端末と類似しているように感じますが、位置付けは全く異なります。
iPhoneの場合、利用できるソフトウエアをApp Store経由でしか導入できないクローズドなシステムを採用することで、Appleが独占的に利益を確保することできます。

つまりiPhoneというプラットフォームがまずあって、それが圧倒的なシェアを確保することで、アプリ市場での手数料収入の重要な要件となっている訳です。
一方のVRデバイスは、このような役割を果たすことができません。例えるなら、iPhoneではなくモニターやマウスのようなポジションと言えるでしょう。

VRゴーグルにいくら注力しても、将来的には多くのデバイスの中の一製品になるに過ぎません。そのため、マイクロソフトやメタにとっては、それほど魅力のある分野とは言えないでしょう。
Apple社がかつて、GUIの普及を通じてMacの優位性を訴えるため、マウスを提供していたのと似た事情です。

報道によると、マイクロソフトでHolo Lensを生み出したAlex Kipman氏はすでに退職し、次期ヘッドセットであるHolo Lens3の計画を破棄したとのことです。
このことから、マイクロソフトはデバイスは他社製品で許容し、もっと自社が得意とする分野、つまりビジネスアプリやサービスに注力する方向に進んだことがわかります。

ユーザーがVRゴーグルを使ってアクセスする先が、メタの提供する「Horizon Worlds」なのか、その他のプラットフォームになるのかはまだわかりません。
ただ言えることは、メタがプラットフォームで優位的な立場を確保する事ができなければ、社名をかけたチャレンジは失敗に終わるでしょう。

一方のマイクロソフトとしては、プラットフォームやデバイスは他社のものでも構わないので、自社の提供するビジネスサービスがVR空間内でもシェアを確保できれば十分成功と言えます。
このことからも、マイクロソフトの方がより柔軟な戦略を選択する事ができそうです。

今回の連携について、マイクロソフトは「十分な成果を期待する事ができる」のに対し、メタの方は「まだ十分とは言えない」段階でしょう。
マイクロソフトは、他に有力なプラットフォーマーが出てきたら、同様の連携を取ればいいだけですが、メタの方はこれから競合他社との競争に打ち勝ち、プラットフォームの普及を目指して、さらなる努力をしていかなければなりません。

【まとめ】

これまで、それぞれの企業がVR分野・メタバース分野での個別の取り組みを進めていた状況でしたが、今回の連携で一つのブレイクスルーを迎えた感があります。
我々ユーザーにとっては、使い慣れたソフトやサービスがVR空間でも遜色なく使え、比較的手の出しやすいデバイスが利用できるのは大きなメリットです。
今後のさらなるサービスの充実や、環境の整備に期待したいところです。

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■参考文献
注1
Mogura VR 「Metaが新デバイス「Meta Quest Pro」を発表しMicrosoftと提携、Valveにも新デバイスに関する動きアリ ー 週間振り返りXRニュース」
https://www.moguravr.com/meta-ms-partnership/

@DIME 「『Meta Quest』デバイスに『Microsoft 365』アプリなどが対応」
https://dime.jp/genre/1481913/

マイクロソフト 「マイクロソフトと Meta、未来の仕事と遊びの没入体験の提供で連携」
https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/10/12/221012-microsoft-and-meta-partner-to-deliver-immersive-experiences-for-the-future-of-work-and-play/

注2
窓の杜 「MetaとMicrosoftがパートナーシップ締結を発表 ~VR空間で「Excel」や「Word」などが利用可能へ」
https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1446650.html

注3
Yahoo! NEWS 「Facebookが社運をかけたメタバースは、批判を乗り越えて存在感を見せることができるか」
https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20220821-00311196

日本経済新聞 「Facebook、社名を「メタ」に変更 仮想空間に注力」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN258L20V21C21A0000000/

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