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ステレオカメラを用いた高精度3次元点群計測とは

現実空間に存在する物体の3次元点群データを取得することで、仮想空間にその物体を構築することができます。そうすれば立ち入り困難な場所や巨大な構造物であっても自由な角度で眺めたり、他の情報を追加したりという操作が可能になります。
3次元点群データの取得にはステレオカメラを使う場合とレーザーを使う場合がありますが、今回は前者のステレオカメラを用いた3次元点群計測についてご紹介します。

この記事を読むと以下の3つのことがわかります。

  1. ステレオカメラとは
  2. ステレオカメラと他のスキャナーとの比較
  3. 活用事例

ステレオカメラとは

ステレオカメラとは、2つのカメラ(2眼のカメラ)を用いて対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、カメラの画素の位置情報から、奥行き方向の情報も計測することが可能なカメラのことです。*1
簡単に言えば、私たち人間が無意識に行っている、2つの目で見ることで生じる視差を脳で処理することで3次元空間を理解する行為をカメラに応用した技術になります。
 

ステレオカメラの点群データについて

画像を取り終えたあと三次元構造復元用のソフトウェアを使って三次元構造を復元したのち、三次元点群を作成します。つまり、写真から一度人間が見ているような立体の連続的な表面を作り出し、その表面に点を配置していくように点群を作成していきます。

ステレオカメラとレーザースキャナーの違い

一般的に点群データを使用する際に使われるレーザースキャナーはLiDARと呼ばれるものなので、ここではステレオカメラとLiDARの違いについて説明します。

LiDARとは

LiDAR とは Light Detection And Ranging(光による検知と測距)の略称で、近赤外光や可視光、紫外線を使って対象物に光を照射し、その反射光を光センサでとらえて距離を測定するリモートセンシング(離れた位置からセンサーを使って感知する)方式のことです。
Laser Imaging Detection And Ranging(レーザー画像検出と測距)とも言われ、多くは近赤外レーザー光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測します。*2
ステレオカメラが取得した情報を三次元点群データに変換するためには、あとで述べますようにいくつかの過程を経ますが、LiDARは取得した情報自体が三次元点群データになっています。
レーザー光を使うので、レーザー光を拡散反射したり、乱反射したりする物体には不向きです。その一方で点群の密度と精度は非常に優れています。地上設置型であればミリ単位、ドローン搭載型であれば、撮影速度によりますが、数センチ以内の精度で計測が可能です。
デメリットとしてはコストがかなりかかるということです。多くの LiDAR のサービスプロバイダは日割りでサービスを提供しており、また LiDAR を搭載するためにはドローンも大きなものを用意する必要があるのが現状です。

ステレオカメラのメリット・デメリット

ステレオカメラの一番の特徴はLiDARよりコスト面で手頃であるという点です。
三次元点群データにどれだけの精度を求めるかによって、使用する計算ソフトウェアの質やカメラの解像度は変わり、それに応じてコストにも幅がありますが、一般的にLiDARよりも低いコストで使うことができます。
LiDARはレーザー光が反射して返ってくる時間で対象物体までの距離計測を行うので、遠すぎたらノイズや減衰で測定不能になりますが、その精度は距離にはあまり依存しません。それと比較してステレオカメラの精度は距離の二乗に比例して精度が悪くなります。したがって 10m の距離で ±1cm の精度だったものは、20m の距離で撮影すれば ±4cm の精度になってしまうということです。近くで撮影すればLiDARに匹敵する精度で点群データを取得することができるので、これは使い方次第でメリットにもデメリットにもなります。
また、ステレオカメラは、人の眼と同じく可視光線を受光して測定を行うため、夜間や大雨、霧など、視界が狭い場面では測定範囲・精度が著しく低下します。他にも、カメラに逆光が入る場合や、カメラレンズやフロントガラスに汚れが付いた場合も測定精度の低下につながります。*3
ステレオカメラの場合、まず撮影した写真の歪み補正が必要です。カメラのレンズはひずみを持っており、曲がっているため数学的にこれらの影響を取り除きます。そして最後には撮影した2Dの写真から 3D の立体を作り出すのに計算処理が必要になります。このような処理を伴うので立体には少なからず誤差が生じます。

ステレオカメラの活用事例

先ほど述べたように、現状ではステレオカメラで高い精度のデータを得ようとしたらかなりの労力が必要です。ステレオカメラか LiDAR かという選択はコストをとるか、精度を取るかという選択のようなものなので、ステレオカメラを大きな企業では使うことは少ないようです。
ここではステレオカメラが使われる場面について説明します。

・道路、建物の測量
計測対象が2次元的に広く大きかったり、形状が単純だったりする計測対象の具体的な面積や傾きを知りたい場合にはステレオカメラで三次元データを取得するのが有効です。形状が単調である物体はレーザースキャナーを使うまでもなく、ステレオカメラのほうがコスパがいいからです。

・産業用ロボット
産業用ロボットが扱うのは至近距離の物体が多いので、近ければ近いほど精度が向上するステレオカメラが活躍します。

・車載カメラ
ステレオカメラは車に搭載する用のカメラとしてよく使われます。大量に生産される車に搭載する、距離感知のためのセンサーとしてそれほど高価なものを使うことはできません。また前後の車間距離を知るために車全体をスキャンしてその形状を正確に知る必要はなく、車間距離が ±数m でわかるので都合が非常にいいです。
自動運転の車には、自動ブレーキや白線感知のために距離感知センサーは不可欠なので今後もこの用途で使われることがますます増えていくことでしょう。

まとめ

ステレオカメラは精度がレーザースキャンに比べて手頃な価格で三次元点群データを作成することができます。また近い距離で撮影した対象に関しては、非常に高い精度の三次元点群データを取得できます。
一方でその精度の低さはスキャンして仮想空間に現実の対象とそっくりな3Dモデルを作ろうとしたときに無視できるものではないケースが多いと思います。現段階では使う場面が限られてしまっているので、今後の技術向上と実用化に期待したいです。

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参考文献
*1 ZMP「ステレオカメラについて」
https://www.zmp.co.jp/knowledge/adas_dev/adas_sensor/adas_camera/adas_stereo

*2 ROHM 「LiDARとは?」
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/laser-diodes/ld_what10

*3 FREE AID「ステレオカメラって何?原理や用途、車載用の最新動向もチェック!」
https://freelance-aid.com/articles/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A-articles/2007.html

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