1. TOP
  2. ブログ
  3. 気象学の分野で活躍するLiDARの応用事例とは

気象学の分野で活躍するLiDARの応用事例とは

最新の測量技術として知られるLiDARは、自動運転をはじめとする先進分野において革新的なパフォーマンスを発揮しています。近年は自動運転分野での注目度が高いLiDARですが、実際には気象学をはじめとする、さまざまな領域での活躍が見られる技術です。

この記事では、そんなLiDARが気象学の分野でどのように活躍しているのか、そしてどんな領域で活躍しているのかについて、事例とともに解説します。

目次:

  1. LiDARの仕組み
  2. 従来のレーダー技術との違い
  3. 気象学で活躍するLiDAR
  4. 測量分野全般で期待されるLiDAR
  5. LiDARが自動運転で注目される理由
  6. そのほかLiDARの応用事例

LiDARの仕組み

LiDARの総称は「light detection and rangingで、日本では「ライダー」と呼ばれている技術です。名前にもある通り、LiDARの特徴はレーザー光を使った測量や検知が行えることにあります。

計測したい方角や物体に向けてレーザー光を照射し、その反射から得られる情報をもとに、さまざまなデータの出力や分析に応用します。地球上で最もスピードに優れ、直線に伸びていく光線の性質を利用した、高度な測量技術と言えるでしょう。

LiDARは主にレーザー照射機と、反射したレーザー光を捉えるセンサーという2つの要素で成り立っているのが特徴です。反射光を受信するまでの時間を計算し、点群データとして出力することで、対象物の正確な形状や、対象物までの距離を測定することができます。

従来のレーダー技術との違い

LiDARのような高精度な測量や計測を行えるツールとして、従来採用されてきたのがミリ波レーダーです。ミリ波レーダーはレーザー光を用いるLiDARとは異なり、電波を使って物体の形状や距離、そして土地の測量を行う技術です。

ミリ波レーダーはカメラなどと併用することにより、自動車の物体検知システムや、自動ブレーキシステムなどに採用されてきた経緯もあるなど高い信頼性を備えます。ただ、ミリ波レーダーは物体との距離を測定することはできるものの、物体の正確な形状を捉えることが難しい技術であるため、使用機会は限定されます。

一方、LiDARは正確な距離の測定はもちろん、物体の形状も特定ができるため、ミリ波レーダーよりも正確な測量が可能です。この点が高く評価され、LiDARはこれからさまざまな領域で導入が進んでいくと期待されています。

気象学で活躍するLiDAR

LiDARは多くの分野で活躍する測量技術ですが、初めてそのパフォーマンスが成果を挙げたのは測量分野です。レーザー技術が開発されて間もないころ、LiDARはレーザーを実用的に導入するための手段として知られており、気象学の分野で一定の成果を挙げていました。

当時行われていたのは、パルスレーザー光を大気中へ発射し、大気中のエアロゾル(浮遊粒子状物質)や分子による後方散乱光を測定する計測手法です*1。後の技術革新に伴い、雲のプロファイリング、風の測定、様々な大気成分の定量化など、多くの調査活動にLiDARが活用されることとなりました*2。

測定方法も多種多様で、地中や地上、空中など、さまざまな場所で測定ができることから、実に多くの測量情報をLiDARから得ることができます。光線をうまく活用すれば、あらゆる領域に応用ができることを、LiDARは証明してくれます。

測量分野全般で期待されるLiDAR

気象学に限らず、LiDARは多様な測量分野に活用することができる技術です。例えば地質や土壌調査のシーンでは、LiDARを使った標高測定を実行したり、河川敷などの微妙な地形を極めて正確に特定し、高精度な3Dマップ作成に役立ったりしています。

あるいは、考古学における測量においても、LiDARは活躍します。長い年月をかけて、地面や深い森林の下に埋まってしまった人工物を、LiDARによって特定することができたり、現地調査だけではとても見つけられない、人跡未踏の地域における人類の痕跡の発見に貢献したりが挙げられます。

現代では、農業におけるLiDAR活躍の機会も増えています。正確に農地の測定を行い、地形図を作成することで、農地の斜面の具合や、日照時間を特定することが可能です。最高の収穫量を達成するために必要な情報を、LiDARから分析できます。

LiDARが自動運転で注目される理由

測量以外にも、LiDARは自動運転の領域で顕著な成果を発揮しています。LiDARの名前が広く知られるようになったのは、自動運転分野ですが、従来のミリ波レーダーよりもはるかに高い精度の情報を得られるため普及が進んでいます。

LiDARはまるで肉眼で捉えているような精度で、前方のオブジェクトを検知できるため、交通事故などが発生するリスクを極限まで小さくできます。そのため多くの自動運転車にはLiDARが採用されており、他のセンシング技術や高精度カメラと合わせて運用が進んでいます。

ただ、LiDARを自動運転で活用するにあたっては、注意すべき課題もあります。まず、LiDARはとにかく費用が高く、気軽に自動車に搭載することが難しい技術です。サイズもまだまだ大きく、自動車のデザインを大きく損なってしまう可能性も捨てきれません。

また、必ずしもLiDARだけが自動運転を支える技術というわけでもなく、企業によってはLiDAR非搭載で自動運転技術を確立しようという動きもあります。LiDARがなければ自動運転は成立しないわけでもありませんし、LiDARは自動運転のためだけの技術ではないということも、覚えておきましょう。

そのほかのLiDARの応用事例

最後に、その他のLiDARの応用事例について、解説します。

ソニー

多くの人が注目するのは、やはりLiDARそのものの高性能化です。2021年、ソニーは300m先の物体を測位できるLiDAR用センサーの開発を発表しました*3。センサーの精度を高めることで、より詳細な情報を取得し処理できるようになったことで、さらなるLiDARの利便性向上に期待が持てます。

このセンサーを導入することで、15cm単位での測定が可能になるだけでなく、悪天候の現場でも高い精度を維持できるなどのメリットが期待されます。

電気通信大学など

高度な利便性を備えたLiDARは、その脆弱性にも懸念が集まります。2022年、電気通信大学やアメリカのミシガン大学などが共同で研究した発表によると、自動運転車の周囲を検知するセンサーにレーザー光を物理的に照射して、意図的に障害物を見えなくする攻撃の有効性が指摘されました*4。

偽の反射光がセンサーを偽ることができる以上、センサーのパフォーマンスが阻害される心配のない仕組みを構築しなければ、この手口のリスクは残り続けるでしょう。

まとめ

この記事では、LiDARの気象学における活躍や、自動運転での活躍、そして応用事例について解説しました。将来有望なLiDARですが、まだまだ運用に伴う課題は残されており、それをクリアするための技術開発が進んでいます。

今後も技術発展が進めば、より利便性に優れるLiDARの運用が身近に訪れるかもしれません。

大手ゼネコンBIM活用事例と 建設業界のDXについてまとめた ホワイトペーパー配布中!

❶大手ゼネコンのBIM活用事例
❷BIMを活かすためのツール紹介
❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

参考:

*1LiDAR Cover「ライダーによる大気計測」
https://www-lidar.nies.go.jp/~cml/Japanese/LidarText/LidarInt.htm

*2 Kokyo「LiDARとは」
https://www.symphotony.com/lidar/principle/#section5-6

*3 ITmedia「ソニー、300m先の物体を測位できるLiDAR用センサー開発 15cm単位でリアルタイム測定」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/18/news130.html

*4 ITmedia「自動運転車の視界から“人だけ”を消す攻撃 偽情報をLiDARに注入 電通大などが発表」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2211/07/news043.html

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP