デジタルツインの市場規模は?未経験からエンジニアになる方法もご紹介
最近よく耳にする「デジタルツイン」。世界や日本でもその市場はどんどん拡大しており、あらゆる業界に注目されている技術です。
デジタルツインの“ツイン”とは「双子」の意味で、デジタル空間でリアルの建築物や工場、都市などをデジタル空間に再現します。IoTによってモノがインターネットとつながることでデータが取得できるようになり、このような最新技術の活用も進んでいます。
市場規模が大きくなっているということは、もちろんその分野が活発になるということで、今後求人が増えてくることも期待できるでしょう。
この記事ではデジタルツインの市場規模やその技術、仕組みについて解説します。また「デジタルツインでものづくりをしてみたい!」という方に向けて、エンジニアとしてデジタルツインに関わる方法についてもご紹介します。
興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。
1.デジタルツインにおける世界・日本の市場規模
2.デジタルツインの魅力
3.デジタルツインにかかわるエンジニアになる方法
世界・国内におけるデジタルツインの市場規模
2025年までのデジタルツインの市場規模について、世界では約48兆円であるとされています。(※1)
またデジタルツインは複数の技術を組み合わせており、隣接するスマートシティやBI(ビジネスインテリジェンス)ツール、地理情報システム(GIS)なども合わせると約141.2兆円です。
日本におけるデジタルツインの市場規模は、2025年までにTAM(獲得できる最大市場規模)で9.6兆円まで大きくなると予測されています。
日本で9兆円もの規模を持つ産業を調べてみると、Amazonや楽天がけん引しているネット通販(EC)がありました。(※2)
デジタルツインの市場規模は、数年のうちに消費者のほとんどが当たり前に利用しているECとほぼ同じまで成長すると予測されているのです。
デジタルツインで特に注目される「スマートファクトリー」の市場規模
デジタルツインの中でも、工場の基幹システムや実行システムをデジタルツインで再現する「スマートファクトリー」は、生産性が大きく向上するとして製造業で注目されています。
矢野経済研究所の調査によると、2023年度には国内の市場規模が1兆7620億円になると予想されています。2022年度は1兆7040億円で、1年間で3.4%上がるという見通しです。
製造業でも人手不足・働き方改革が叫ばれており、DXをはじめITを駆使した業務改善が常に行われています。
スマートファクトリーによってデジタル空間に工場を再現できれば、故障を未然に防いだりトラブルの原因を早期発見したりといった大きなメリットがあり、多くの企業が導入を進めています。
デジタルツインが注目されている理由
デジタルツインが注目される理由としては、主に以下が挙げられます。
- 物理的な制限を超えられる
- さまざまな工程を効率化できる
- コストを削減できる
- 障害をスムーズに特定できる
- アフターサービスの品質向上が実現する
デジタルツインとして仮想空間にモノや都市を再現できれば、シミュレーションが簡単になります。
たとえば自社製品を計画している時、「雪山などの極寒で耐えられるだろうか?」「災害で火災に巻き込まれた時に耐えられるだろうか?」というシミュレーションが必要になることもあります。
そこでデジタルツインとしてデジタル上でシミュレーションできれば、極寒や火災の状況を実際に作る必要がありません。その結果テストにかかる工程を効率化できますし、コスト削減にも直結します。
IoTとして販売した商品のデータをリアルタイムで取得していれば、障害が起きた際も、デジタルツインによって原因をスムーズに特定できます。お客様にあれこれ説明させる必要がなく、アフターサービスの品質向上も実現できるのです。
デジタルツインの最大の魅力は、デジタル空間という自分の手元でモノを再現できるという点です。自社製品をデジタルツインで再現できれば出荷後の状況も手に取るようにわかりますし、建築現場や都市を再現できれば、有事の際も現地に行く必要がありません。
デジタルツインで使われる技術とその仕組み
デジタルツインは最新技術が結集して生み出されるものであり、主にIoTやAI、AR・VR、5G回線、シミュレーションツールといった技術が支えています。
主な流れとしては、以下の通りです。
- IoTで各部分の状況をリアルタイムで取得する
- AIで膨大なデータを処理する
- ARまたやVRでデジタルツインを視覚化する
- シミュレーションツールによってデジタルツインで再現したモノをテストする
まずデジタルツインの実現ではIoTが欠かせません。モノがインターネット環境につながっていることで、その場のデータを取得することができるのです。
しかしIoTが取得するデータはあまりに膨大で、人間がすぐに処理できるものではありません。そこでAIによってデータを処理してもらい、ARやVRで再現できる状態に整えるのです。また膨大なデータをスムーズに送るために、高速大容量・多数同時接続が可能な5G回線も欠かせません。
デジタルツインを作り上げた後は、シミュレーションツールで状況をチェックしたりテストを行ったりします。
市場拡大中のデジタルツインにかかわることができる仕事とは
これからも、デジタルツインを含めて世界中でIT化は進んでいくことは間違いないでしょう。
前述の通りデジタルツインにはさまざまな最新技術が使われています。デジタルツインに携わる仕事をしたいと思うなら、デジタルツインを支える最新技術を身につけておくことが最善です。
中でもIoTの技術をフル活用するIoTエンジニアは、デジタルツインを活用したプロジェクトでも必要とされるでしょう。
IoTエンジニアとは
IT業界ではさまざまなエンジニア職が存在しますが、最近では「IoTエンジニア」という仕事もあります。
IoTはデジタルツインの再現に欠かせない技術ですから、この部分を学ぶことで、時代に合ったスキルを持つエンジニアとして成長できるでしょう。
IoTエンジニアとは、IoTという技術を使ってシステムや製品開発を行うエンジニアのことです。もちろんエンジニアとしてプログラミングも行いますが、IoT製品において、企画や設計といった上流工程の業務も担います。
最初はテストや運用・保守周りの業務からキャリアをスタートするケースが多いでしょう。一般的なエンジニアと同じように、キャリアやスキルを高めていくことで将来的にはクライアントのニーズを聞いたり要件定義をしたりといった、上流工程の業務を担うことも可能です。
IoTエンジニアになる方法
IoTエンジニアになるには、接続されているIoT機器に関する知識やセンサーの知識といった組み込みシステム系の知識が必須です。
さらにインターネットありきの技術ですから、ネットワークやクラウドコンピューティング、そしてセキュリティの知識も必要となります。
資格は必須ではありませんが、IoTエンジニアを目指すなら以下のような資格がおすすめです。
- IoT検定
- IoTシステム技術検定
- ワイヤレスIoTプランナー検定
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
未経験からIoTエンジニアを目指すなら、上記のような資格取得を通して体系的に知識を身につけるのもいいでしょう。未経験の場合ポテンシャルを見込んでの採用となるので、資格によってスキルを証明することで、経験不足をカバーできます。
デジタルツインの市場規模や魅力、デジタルツインに関わるエンジニアを目指すポイントをご紹介しました。
大きな可能性を秘めるデジタルツインは世界中で注目される技術であり、東京都でも都市のデジタルツインプロジェクトが進んでいます。工場をデジタルツインで再現する「スマートファクトリー」の導入も進んでおり、今後ますますエンジニアが必要とされるでしょう。
デジタルツインに興味がある。ものづくりが好き。という方は、ぜひIoTエンジニアとしてIT業界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。
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参照サイト:
※1 https://coralcap.co/2022/02/digital-twin/
※2 https://toyokeizai.net/articles/-/14530