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AmazonによるiRobot買収とは?背景や両社の今後を解説

GAFAの中にも数えられる、世界最大級のIT企業である米Amazonは、ルンバでお馴染みの家電メーカーiRobot社を買収し、大きな話題を呼びました。

IT企業が家電メーカーを買収するというケースはあまり耳にしませんが、今回の買収の動きについては多くの有識者も注目を集めており、同時に一国の規制当局も動き出す事態となっています。

この記事では、そんなAmazonによるiRobot買収とはどのようなことが行われたのか、そして買収の背景にある両社の狙いや、買収によって今後どのような展開が想定されるのかについて、解説します。

目次:

  1. AmazonによるiRobot買収とは
  2. AmazonがiRobotを買収に踏み切った背景
  3. iRobot買収でAmazonはどう変わるのか
  4. AmazonによるiRobot買収がもたらす懸念

AmazonによるiRobot買収とは

2022年8月、アメリカのAmazon社は全自動ロボット掃除機「ルンバ」を開発・販売するiRobot社の買収を発表しました*1。iRobot社の販売するルンバは国内外で多くの人気を博しており、日本でもロボット掃除機の代名詞としても知られています。同社はナスダック市場にも上場しているほどの大企業であったわけですが、Amazonは買収に踏み切りました。

今回、AmazonによるiRobotの買収額はおよそ17億ドルで、日本円にして2,200億円ほどの額でした。iRobotの創業者であり、当時のCEOでもあったコリン・アングル氏は買収後も引き続き同じ役職に留まっており、iRobotの組織に対して大きなテコ入れが行われた動きはないとみて良いでしょう。

AmazonがiRobotを買収に踏み切った背景

AmazonがこのタイミングでiRobot社を買収した背景には、そもそもどのような理由があるのでしょうか。ここでは有識者の見解をもとに、Amazonが買収によってどんなメリットを得ようとしているのか、そしてiRobotにも買収によるメリットはあるのかについて、解説します。

Amazonが抱える背景

AmazonがiRobotの買収を決断した背景として、まずわかりやすいものが家電販売の強化です。Amazonは近年、あらゆるカテゴリの商品を取り扱うECサイトとして世界のトップに君臨しており、圧倒的な物流網と商品ネットワークを有し、無数のユーザーニーズを解消できるサービスとなっています。

家電販売についても近年はAmazonがシェアを伸ばしており、家電量販店よりもAmazonで購入するという人は後を絶たず、既存の量販店は窮地に立たされています。

ただ注目したいのは、AmazonがiRobotの買収によって得たかった本当のメリットは、iRobotのもつロボット開発の技術ではないか、という側面です*2。iRobotは高度な自律式のロボット技術を有しており、最新モデルの「ルンバ」の性能は一昔前のモデルに比べ、圧倒的に高性能に進化しています。

一方、Amazonも近年はロボット開発に力を入れており、自社倉庫における貨物移動ロボットの運用はもちろん、最近では家庭用向け自律走行ロボット「Astro」の発表とテスト販売も行われています。

そしてAmazonが最も期待しているiRobot独自の強みとして、同社ロボットのホームマップ生成技術が挙げられます。ロボットが家の中をテスト走行し、間取りやインテリアの配置を記憶させることで、最適な掃除ルートの確立などに役立てる技術です。

ルンバはすでにAmazonのAI「Alexa」と連携し、ボイスコントロールが可能となっていますが、iRobotがAmazon傘下になったことで、より高度な操作が可能になったり、Amazonオリジナルのロボット開発の更なる飛躍が実現したりするかもしれません。

iRobotが抱える背景

一方、買収によってAmazon傘下となったiRobotについても、従来では得られなかったメリットが期待できます。それが、iRobot製品のシェア拡大です。

現在ルンバはロボット掃除機業界における圧倒的なシェアを誇っており、他の追随を機能面では譲りません。ただ最近ではAIの飛躍的な進化もあり、ルンバと同等の性能を持ったロボット掃除機が中国メーカーを中心に数々登場し、今では「追われる立場」になりつつあるというのも事実です。

特に後発のロボット掃除機はルンバよりもはるかに安いというアドバンテージを有しており、こういったメーカーのコスト面でのアドバンテージを解消したり、圧倒的なiRobotのブランド力を維持できたりしなければ、そのシェアが瓦解してしまう可能性もあります。

そんな時に飛び込んできたのが、Amazonによる買収のオファーです。Amazonは世界中に家電販売網を構築しており、プライベートブランドの製品も次々と企画・販売を進めています。

今回の買収によって、Amazonの資本力とネットワークを活用し、プライベートブランドとしてルンバを販売できるようになれば、そのシェアの優位性を損なわずに済むというわけです。

iRobot買収でAmazonはどう変わるのか

AmazonはiRobotを買収したことで、家電販売における優位性はもちろんですが、自社でのロボット開発という点でも更なるアドバンテージを得ることになるでしょう。

iRobotの「ルンバ」は他のロボットメーカーにはないパフォーマンスで競合を圧倒してきましたが、今後Amazonはロボット業界においても、同様の存在感を発揮するかもしれません。

Amazonオリジナルの自律走行ロボットが、各家庭や企業で広く稼働し、スマートスピーカーを普及させたようなインパクトを残す可能性もあります。

AmazonによるiRobot買収がもたらす懸念

ただ、AmazonによるiRobotの買収は、企業間の競争を鈍化させる可能性もあるという問題も指摘されています。イギリスの規制当局にあたる競争・市場庁(CMA)、及びアメリカの連邦取引委員会(FTC)は、競争の低下を懸念して調査をすでに開始しているところです*3。

今後の展開によっては、AmazonやiRobotは当初想定していたような恩恵を十分に受けることができなかったり、最悪の場合、買収そのものがなかったことになってしまう可能性もあるため、その動向にも注目したいところです。

まとめ

この記事では、AmazonによるiRobot買収がもたらす市場への影響や、両社の買収に期待する狙いなどについて解説しました。

近年、Amazonは自社ソフト開発のみならず、ハード開発にも力を入れています。iRobotは世界有数のロボット技術を有している企業であり、それが傘下におさまるとなればこれほど心強いことはないでしょう。

ただ、この買収については各国の規制当局も調査を介しており、独占禁止法に抵触する可能性も出てきました。今後の調査結果次第では、十分なメリットを享受できずに買収が終わるケースも想定されるため、今後の動向にも注目したいところです。

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参考:

*1 ITmediaビジネスオンライン「米アマゾンがアイロボットを買収、その狙いは何か?」

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2208/30/news035.html

*2 Impress Watch「アマゾンのアイロボット買収は「必然」だった」

https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1430731.html

*3 ロイター「アマゾンの米アイロボット買収、英規制当局が調査開始」

https://jp.reuters.com/article/amazon-com-irobot-antitrust-britain-idJPKBN2WG05X

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