生成AIの実装を進めるAmazonのメガネ型デバイス「Echo Frames」とは
AmazonやGoogle、Microsoftなど大手AI企業は、現在こぞって自社サービスに生成AIの実装を進めています。
特にAmazonはビジネス分野だけでなく、私達の日常生活に関係の深いスマートホーム製品に生成AIを取り入れ、数多くリリースしています。それだけ私達が、生成AIによる恩恵を受ける機会が多くなることを意味します。
今回はその中の一つである、メガネ型デバイス「Echo Frames」について、まとめていきましょう。
この記事でわかること
・メガネ型デバイス「Echo Frames(第二世代)」の概要と特徴について
・Echo Framesはまだプロダクトとしては実験段階なのか
・生成AIの活用で私達の生活はどのように変化するのか
メガネ型デバイス「Echo Frames」の概要と特徴
Amazonは2023年9月に、いくつかのプロダクトを発表しました。以下にその概要をまとめておきます。
・Echo Hub 25,980円(発売時期未定)
・Fire TV Stick 4K Max 第2世代 9,980円(10/18発売)
・Fire TV Stick 4K 第2世代 7,480円(10/18発売)
・Fire HD 10 第13世代 32GB:19,980円、64GB:23,980円(10/18発売))
・Fire HD キッズプロ 23,980円(10/18発売)
・Fire HD キッズモデル 23,980円(10/18発売)
上記は日本でも発売が予定されているプロダクトのリストです。
Fire TV Stickを購入すると、バスケットライブにも接続できるとのことです。ネット接続を売りにしているTVでも、バスケットライブに対応しているものは見当たりません。ワールドカップ以来「にわかバスケファン」を自認している私は、早速Fire TV Stick 4Kを注文してしまいました。
標準価格は上記のように発表されていますが、「Fire TV Stick 4K」はちょうど半額セールをしていましたので、思ったより安く購入できました。
すでにGoogle Castは持っていたため、バスケットライブはPCからブラウザ経由で見ていました。今後Fire Stickで、視聴環境が改善できれば良いなと思っています。
話が横に逸れてしまいました。
実は今回、Amazonの発表にはあったものの、日本での発売が示されなかった製品もいくつかあります。この記事で話題に取り上げるメガネ型デバイス「Echo Frames」もその一つです。
◯日本での発売が未定のプロダクト
・Eccho Show 8 第3世代 149.99ドル
・Fire TV Soundbar 119.99ドル
・Echo Frames 第2世代 269.99ドル
メガネ型デバイスといえば、かつて話題を独占していたのがGoogleの「Google Glass」です。残念ながらあまり市場に受け入れられず、その後も「日常的に装着できるメガネ型デバイス」は、あまり有力なものが存在していません。
メガネ型デバイスで私達が理想として想像するのは、NHKでアニメ放送されていた「電脳コイル」のようなものではないでしょうか。
日常生活で普通に装着することができ、さまざまな情報をAR空間に表示してくれたり、カメラを通じて捉えた現実世界の情報を解析するなどの機能を持つものです。ドラゴンボールに登場する「スカウター」を、もう少し高機能にしたようなイメージでも良いかもしれません。
しかし、今現在はゲームや特定の用途に向けたAR/VRゴーグルのようなプロダクトが主流であり、とても日常的に利用できるようなものではありません。
ではAmazonが販売する「Echo Frames」は、私達の理想にどの程度近づいたのでしょうか?
まず最初に断っておきますが、このデバイスは映像に関しては全く機能を有していません。音声のみ対応しています。つまりAR機能もなければ、カメラすら搭載していませんので、メガネ型の「ワイヤレスイヤホン・マイク」だと思えばわかりやすいでしょう。
このことからも、私たちの理想からは遠くかけ離れていることが分かりますが、一応カタログスペックを確認しておきましょう。
・最大2台までのデバイスに接続できるマルチペアリング機能
・ワイヤレス充電対応
・CARERAとのコラボモデルがある
・6時間持つバッテリー
・再生時間40%向上、通話時間80%向上(初代に比べて)
使い方としては、装着した状態でアレクサを操作できる。その一点です。
初代は2019年に発売されていましたが、機能的には目を見張るほどの進化はしていません。ちょっと軽くなって、ちょっとおしゃれなモデルが追加されたぐらいです。
利点として、イヤホンと異なり耳を塞がないため、外部の音を遮断することはありません。また、デバイスからの音は指向性が高く、装着者に向けてピンポイントで向けられるので「音漏れ」が少ない。。。というのが『主催者の発表』です。
しかし、これについてはやや疑問が残ります。
どんなに指向性が強いといってもオープンイヤー型であり、骨伝導でもない以上は音漏れが皆無ということはありえません。少なくとも日本の満員電車の中で、音楽を聴くようなことはしない方が良いでしょう。
また、度付きレンズなどにも交換可能とアナウンスされており、日常的な利用を想定したものとされています。とはいうものの、バッテリーなどをフレームに入れているため、通常の軽量メガネに比べると、装着者への負担は一定程度あります。
また、単体で使えるものではなく、外で通話や音楽を聴こうと思った場合、スマホとの連携が必須です。
正直な話、ワイヤレスイヤホンで十分じゃないですか?と思うレベルです。
現時点で評価するのであれば、「大して機能もないのに、装着に一定の負担があり、不格好でそれなりのお値段がするガジェット」でしかありません。
Fire Stickを衝動買いする私でも、これではなかなか触手が動きません。
ここで、紹介し忘れた性能を付け加えておきましょう。
IPX4の耐水性があり、UV400対応のサングラスも選択することができます。いかがでしょう?好感度が少しはアップしたでしょうか、、、、。
「Echo Frames」は、国内で発売されるとしたらおそらく4万円は超える価格のイヤホン・マイク付きメガネであり、デザインは7種類のみです。みなさんの物欲に響くでしょうか?*注1
Echo Framesはまだプロダクトとしては実験段階なのか?
Amazonの家庭用プロダクトに関しては、アレクサを中心として、スマートスピーカーやFire TV Stickなど、かなり普及しているものもあります。しかし、アンプやコンセント、電子レンジ、セキュリティ関連など、かなり多くのプロダクトについては、それほどセールスに結びついてない印象も受けます。かなり、ニッチな分野を攻めているなという感じです。
コンシューマー向けでは小売仲介ビジネスがメインとなっているAmazonですが、自社独自製品であるこのようなプロダクト群は、どの程度のポジションになっているのでしょうか?
これについては、Amazonのデバイス&サービス担当である「デイブ・リンプ上級副社長」へのインタビュー記事が参考になります。*注2
Amazonは先ほど大規模なリストラを実行しており、ビジネスの再構築を進めています。その中で、アレクサを中心としたプロダクトについては今後も開発・販売を継続し、むしろ力を入れていく分野であると位置付けています。
現時点ではアレクサ関連製品は赤字とのことですが、プロダクト単体での利益を追求するのが主たる目的とはしていません。ユーザーが気軽にアレクサを利用できる環境を整備することで、最終的にはメインビジネスである小売への誘導を図ることが重要としています。また、ユーザーの行動データを関連製品を通じて収集することも重要なポイントです。
このような点も考慮した上で、Amazonの「Echo Frames」はまだ実験的なプロダクトである可能性が高いと判断できます。あくまでアレクサに接続できる端末の一形態であり、何がユーザーにとって使いやすいかを確かめているのではないでしょうか。
だからこそ、無理にAR機能を搭載せず、機能を絞り込んだプロダクトとしてリリースしているのではないかと思われます。その意味でも「Echo Frames」に関しては、AppleやMetaのAR/VRゴーグルやGoogle Glassと比較するのはやめておいた方がよいでしょう。
生成AIの活用で私達の生活はどのように変化するのか
ここまで、Amazonが開発・リリースしているユニークなハードウエアについてご紹介してきました。しかしAmazonが今現在、最も力を入れている分野を一つ挙げるとしたら、間違いなくAIの開発と実用場面での活用でしょう。
ChatGPTの登場で、一気に加速した感のある生成AIのさまざまな実用面での利用拡大。
あの巨大Googleがコードレッドを発令し、強烈に対抗意識を燃やしてきたのも話題になりました。
Amazonは「アレクサ」という、すでにコンシューマー向けに一定程度普及しているAIアシスタントを有しています。私たちが身近に触れることができるAIアシスタントであれば、「Siri」や「OK、Google」に次いで有名です。
今後はこのAIアシスタントの精度を高め、もっと自然にもっと役に立つように進化させることが最重要課題となります。Amazonはアレクサを中心にして、連携する家電や端末を増やすことで、この分野をリードすることを狙っています。
みなさんは、シルベスタ・スタローン主演のSF映画「デモリッションマン」をご存知でしょうか?長年の人工冬眠から目覚めた主人公は、AIが発達した未来で目覚めます。音声で「Light!」と言うと部屋の電気がつく。そんな場面で戸惑う様子が描かれています。
同じくSF映画の金字塔である「エイリアン」に登場する貨物船「ノストロモ号」には、乗組員が『おふくろさん』と呼びかけるAIが搭載されています。言語だと”mother”なので、本来はマザーコンピューターの略だったのかもしれませんが、うまい翻訳だと感心したものです。
このAIも音声入力に対応し、乗組員の質問に音声で答えてくれます。
「2001年宇宙の旅」に出てくるHAL9000、スタートレックシリーズに登場するコンピューターなど、SF作品には欠かせないのが音声で会話できるAIです。おそらく開発している多くのエンジニアが目標としているのも、このようなSF世界のAIのはずです。
前節で紹介したリンプ上級副社長は実際に、「スタートレックのコンピューターに辿り着くまで、私たちの開発は終わりません。」と話しています。ChatGPTは私たちに、このような世界がもうすぐ目の前に来ている事を感じさせるきっかけとなりました。
ここから数年で、おそらく私たちの日常生活に大きな影響を与えるまでに進化していく事でしょう。
【まとめ】
Amazonのユニークな製品のうち、本稿では「Echo Frames」についてご紹介しました。残念ながら、現時点では決して「オススメできる製品」ではありません。
しかしAmazonは、開発したAIの性能をすぐにフィールドテストできるアレクサを中心とした環境を持っているのが大きな強みです。ユーザーの体験をデータとして収集し、より良いプロダクトに活かしてくるはずです。私たちの生活空間を劇的に変えるのはAmazonなのかもしれませんね。
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■参考文献
注1
BUSINESS INSIDER 「生成AIでアマゾンの「アレクサ」が進化する。 日本ではFireタブレットやFire TV Stickの新型登場」
https://www.businessinsider.jp/post-275631
ケータイWatch 「Amazon、スマートグラス「Echo Frames」を発表」
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1532957.html
Yahoo!ニュース(Forbes Japan) 「生成AIでAlexaの会話力も大進化、アマゾン幹部に聞く「日本導入の時期」」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c3a1fef5e10f569d4856170279eecb564ecc226?page=3
WIRED 「アマゾンのスマートグラス「Echo Frames」には、まだまだ課題が山積している:製品レヴュー」
https://wired.jp/2021/04/07/amazon-echo-frames/
注2
Impress Watch 「アマゾンのハードウェアはどこへ向かうのか アレクサとテレビ・クルマの未来」