FacebookのスマートスピーカーPortal、Amazon Alexa、Google Homeの比較
日本におけるスマートスピーカーの普及率は8%といわれています(参考:『2018デジタル消費者調査』アクセンチュア、4月3日発表)。しかし、BOSEなどの音響メーカーをはじめ、さまざまな企業がスマートスピーカー市場に参入するようになりました。Facebookも米国でスマートスピーカー「Portal」の販売を開始。AmazonのAlexaを搭載したEchoシリーズやGoogle Homeに追随する形になります。
ところで「なぜ、Facebookがスマートデバイスに参入?」と首を傾げる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、スマートスピーカー/ディスプレイを発売している3社の製品仕様と特長を整理し、製品戦略を考察します。
この記事を読むと以下の3つのことが分かります。
1.Facebook Portalの仕様と製品戦略
2.AmazonのAlexa搭載Echoシリーズの仕様と製品戦略
3.Google Homeの仕様と製品戦略
結論として、各社がスマートスピーカー/ディスプレイで何をめざすのかを探ります。
Facebook Portal の仕様と製品戦略
Facebook Portalは、現状ではディスプレイを搭載した2製品「Portal」「Portal+」が米国限定で発売されています。画面を搭載したスマートディスプレイ型で、スピーカーだけの製品はありません。Facebook Messengerによるビデオ通話が主な用途です。
公式サイト(英語)
https://portal.facebook.com/
Facebook Portalの仕様
2機種の音声認識はいずれもAlexa搭載です。共通の仕様として、ワイヤレスはWi-Fi(802.11a / b / g / n / ac)、デュアルバンドMIMO(2.4GHzおよび5GHz)、Bluetooth 4.2が利用できます。
※価格は、2018年11月22日現在のドル円換算。
■Portal
価格 | 149米ドル(約1万6,800円)※ |
ディスプレイ | 10.1インチ、720pまたは1200×800(WXGA) |
カメラ | 12MP 広角140度 |
スピーカー | 10W(フルレンジドライバーx2) |
マイク | 4マイクアレイ(前面2、背面2)、360°ピックアップ |
センサー | 光センサー |
サイズ | 幅 約249.9 × 高さ 約208.3 × 奥行 約93.5mm |
カラー | ホワイト、ブラック |
■Portal+
価格 | 299米ドル(約2万8,000円)※ |
ディスプレイ | 15.6インチ(縦方向に回転)、1080pまたは1920×1080(FHD) |
カメラ | 12MP 広角140度 |
スピーカー | 20W(ツイーターx2、4インチバスx1) |
マイク | 4マイクアレイ(前面2、背面2)、360°ピックアップ |
センサー | 光センサー |
サイズ | 幅 約223.0 × 高さ 約 449.8 ×奥行145.5mm(縦) |
カラー | ホワイト、ブラック |
Facebook Potal 製品戦略の考察
FacebookのPortalはビデオチャットによるコミュニケーションを目的としているため、「AIカメラの搭載」が大きな特長です。140度の広角カメラで人物を認識してアングルを調整します。たとえばチャット中のユーザーが部屋を動き回れば、カメラが人物を追いかけます。AmazonのEchoなどでは、ビームフォーミングというマイクの技術で声を認識していましたが、Portalでは画像認識の技術が使われています。
しかし、Facebookでは大量の個人情報の漏えいが大きな問題になりました。最終的に、3,000万人に影響があったといわれています。このことによりFacebookは信頼を失い、Facebookページを閉鎖する企業、利用者のFacebook離れが加速しました。
したがって、公式サイトではセキュリティ面の安全性を謳っています。AIカメラで認識された画像はPortalのローカル内で処理され、クラウド上にはアップロードしません。また、ワンタップでカメラとマイクをオフにしたり、専用のカメラカバーで物理的にカメラを塞いだりすることが可能です。パスコードでスクリーンロックをかけることもできます。
Alexa搭載のため、スキルを利用した対話やIoT家電のコントロールも可能ですが、むしろFacebookはSNSサービスの延長としてこのデバイスを位置づけているようです。個人情報漏えいの暗い影を払拭できるかどうかが、普及のキャズム(溝)を超えるカギになりそうです。
Amazon Alexa搭載デバイスの仕様と製品戦略
AmazonのスマートスピーカーEchoは、市場のリーダー的な存在に成長しました。日本では9月に10.1インチのスクリーンを搭載したスマートディスプレイ型「Echo Show」も発売しています。802.15.4(スマートホーム接続)に対応したデバイスです。
第3世代のEcho dotはデザインが変わり、ファブリックの柔らかい素材を用いた丸みを帯びた形になり、第2世代より最大音量が70%増加しました。どこかGoogleを意識した外観の変更です。高性能化したマイクは従来の7個から4個に減っています。
公式サイト
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B071ZF5KCM/
Amazon Echoシリーズの仕様
旧型の製品を除く新製品のラインナップは、スピーカー型が2機種、ディスプレイ型が2機種です。
■Echo Show(第2世代)
価格 | 27,980円(税込 |
ディスプレイ | 10.1インチ タッチスクリーン 1280 x 800 HD 720p |
カメラ | 5MP |
スピーカー | 2.0インチ ネオジム x 2 パッシブバスラジエーター付き、Dolby デュアル対応 |
マイク | 上部に8個のマイクアレイ搭載、ビームフォーミング、ノイズキャンセル採用 |
センサー | ― |
通話 | 音声通話・ビデオ通話 |
サイズ・重量 | 幅246 x 高さ174 x 奥行107mm、1,755g |
カラー | チャコール、サンドストーン |
■Echo Spot
価格 | 14,980円(税込) |
ディスプレイ | 2.5インチ タッチスクリーン 480 x 480 |
カメラ | VGA |
スピーカー | 1.4インチウーファー、0.8インチツイーター、Dolby デュアル対応 |
マイク | 4個のマイクアレイ搭載 |
センサー | ― |
通話 | 音声通話・ビデオ通話 |
サイズ・重量 | 幅104 x 高さ97 x 奥行91 mm、419g |
カラー | ブラック、ホワイト |
■Echo Plus(第2世代ニューモデル)
価格 | 17,980円(税込) |
ディスプレイ | ― |
カメラ | ― |
スピーカー | 3.0インチ(76.2 mm) ネオジム ウーファー、0.8インチ(20 mm)ツイーター |
マイク | 上部に7個のマイクアレイ搭載、ビームフォーミング採用 |
センサー | 温度センサー内蔵 |
通話 | 音声通話 |
サイズ・重量 | 高さ 148 x 幅 99 x 奥行 99 mm、780g |
カラー | サンドストーン、チャコール、ヘザーグレー |
■Echo dot(第3世代ニューモデル)
価格 | 5,980円(税込) |
ディスプレイ | ― |
カメラ | ― |
スピーカー | 1.6インチ |
マイク | 上部に4個のマイクアレイ搭載 |
センサー | ― |
通話 | 音声通話 |
サイズ・重量 | 高さ43 x 幅99 x 奥行99 mm、300g |
カラー | サンドストーン、チャコール、ヘザーグレー |
Amazon Echoシリーズ製品戦略の考察
スマートスピーカー市場を牽引するマーケットリーダー的存在だけに、AmazonはFacebook Portalのようなコミュニケーションに特化する戦略ではなく、全方位型の戦略を展開しています。ECサイトの売り上げを向上させる役割を果たすとともに、プライムビデオや音楽などのデジタルコンテンツを流通するデバイスにもなります。Kindleが電子書籍を流通させるデバイスだったように、EchoシリーズはAmazonの大きな物流チャネルのひとつになる存在価値があります。
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Google Homeの仕様と製品戦略
Google Homeは、Amazonの製品に追随する形で「Google Home」「Google Home Mini」の2機種のラインナップになります。ディスプレイを搭載した「Google Home Hub」も発表されましたが日本の発売は未定です。あえてカメラを搭載していません。Facebookに対して、個人情報漏えいの不安を払拭する安全性に配慮した仕様と考えられます。
Google ホーム&エンターテイメント 公式サイト
https://store.google.com/jp/category/connected_home
Google Homeの仕様
スマートスピーカーで重要な機能は、スピーカーよりもマイクかもしれません。Google Homeのマイクは2個で、Echoより少ない仕様になっています。
■Google Home
価格 | 15,120円(税込) |
スピーカー | 2インチ ドライバー、2インチ デュアル パッシブ ラジエーター |
マイク | 2個 |
通話 | 音声通話 |
サイズ・重量 | 直径96.4 x 高さ142.8 mm、477 g |
カラー | ホワイト、スレートファブリック |
■Google Home Mini
価格 | 6,480円(税込) |
スピーカー | 40 mm ドライバー採用 360 サウンド |
マイク | 2個 |
通話 | 音声通話 |
サイズ・重量 | 直径 98 mm x 高さ42 mm、173 g |
カラー | チョーク、チャコール・チョーク、コーラル(Googleストア限定)、アクア |
Google Homeの製品戦略
検索エンジンからスタートしたGoogleですが、YouTubeやXaaSの提供、OSとしてAndroid、スマートフォンとしてGoogle Pixel 3、VRとしてGoogle Daydream View、スマートホーム向けのGoogle Wi-fiやChromecastなどの製品群、自動運転の技術など、あらゆるプロダクトとサービスを手がけています。サードパーティのアプリやデバイスと連携して巨大なエコシステム(生態系)を形成していることが強みです。
Googleはミッション・ステートメントとして「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」を掲げているため、スマートスピーカーも「情報端末」として位置づけられているといえるでしょう。
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まとめ:スマートスピーカー3社は何をめざすか
ざっくり傾向をまとめると、Facebookは「ビデオチャットによるコミュニケーションツール」、Amazonは「モノとデジタルを問わず流通を促進するツール」、Googleは「生活を豊かにするための情報端末」という3社のスマートスピーカー/ディスプレイの商品戦略と差異化が考えられます。わずかながら事業全体における各社の位置づけは異なっているようです。
現在は人工知能などテクノロジーが変化する過渡期です。10年前にスマートフォンがこれほど普及することを誰も予測できなかったように、技術革新が加速した現在、2年後の変化さえ予測できないといえるでしょう。スマートスピーカー自体がディスプレイ搭載型に進化しているように、別の端末になっている可能性もあります。
「そういえば、スマートスピーカーってあったよね」
そんな風に懐かしく思い出す未来が到来するかもしれません。
※価格、仕様などは変更することがあります。詳細は各社の公式サイトでご確認ください。
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