Revitでのモデリングを効率化しよう 便利なワークシェアリング機能について解説
BIMの普及が本格化し、多くのプロジェクトで3次元モデリングが行われるようになりました。BIMは、2次元のCADと比べて一つひとつの部材が持つ情報が多く、入力に大きな労力と時間がかかります。大規模・高難度のプロジェクトでは、一人のBIMオペレーターではやり切れないことも珍しくありません。
そのようなときに便利なのが、Revitのワークシェアリング機能です。Revitのワークシェアリング機能を使えば、複数のオペレーターがひとつのモデルを同時に編集できます。現在はクラウド上で同時編集できるサービスもあるため、さまざまなプロジェクトや働き方に対応できるでしょう。
Revitのワークシェアリングとは*1
それではさっそくRevitのワークシェアリングの概要をみていきましょう。
ネットワーク上でモデルを共同編集する機能
冒頭で述べたとおり、Revitのワークシェアリング機能は、複数のオペレーターがひとつのプロジェクトファイルを同時編集できる機能です。ネットワーク上にプロジェクトファイルを管理する環境を構築し、オペレーターはネットワークにアクセスしてモデルを編集します。Revitのワークシェアリング環境には3つの種類がありますが、これらの紹介は次節に譲ります。
モデルの共同編集は、設計・施工のどちらのフェーズでも便利ですが、特に有効なのは施工モデルの編集です。施工モデルでは、構造体、仕上げ、設備など、さまざまな分野の部材を施工BIMオペレーターが作成することになります。これらを一人のオペレーターがすべて担当するのは難しいため、分野ごとにオペレーターの担当を分けるのが一般的です。そのため、ワークシェアリングを活用して複数のオペレーターが同時編集できる環境を構築できると効率よく作業できます。
RevitのBIM環境
Revitのワークシェアリングには、3種類の環境が用意されています。
・Work Sharing
「Work Sharing」は、同一のLAN環境下でプロジェクトファイルを同時編集する方式です。各担当者はローカルモデルを自分のパソコンで編集し、中央モデルに同期することで、中央モデルが最新の状態になります。
一般的なのは、社内のネットワークサーバーに中央モデルを保存するケースです。社内のネットワークサーバーを利用するのでセキュリティ面では安心感があります。社外のメンバーと作業するには、セキュリティの課題をクリアした上でサーバーへのアクセス権を付与するなどの配慮が必要です。
Work Sharingの概念図
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出所)株式会社大塚商会「Revitファイルの同時編集とは? ~BIM 360 Designで共同設計~
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/201028-01/
・Revit Server
「Revit Serer」は、インターネットのWAN環境でプロジェクトファイルを編集する方式です。海外のLAN環境と繋ぐ場合は、高速かつ安定した接続を維持するため、それぞれの拠点にアクセラレーターを用意します。
Revit Serverの概念図
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出所)株式会社大塚商会「Revitファイルの同時編集とは? ~BIM 360 Designで共同設計~
・BIM 360 Design(現:BIM Collaborate Pro)
「BIM 360 Design(現:BIM Collaborate Pro)」は、Revitのクラウドベースの共同作業ツールです。BIM 360 Designでは、従来のワークシェアリング機能をクラウド上で利用することができます。
BIM 360 Designの特徴は、Revitのプロジェクトファイルを管理するサーバーが不要なことです。これにより、サーバーの管理コストを削減できます。また、アクセス制限によりセキュアな状態で社内外のアクセスが可能になるため、シームレスなワークフローを実現可能です。オペレーターのリモートワークにも柔軟に対応できるため、在宅ワーカーや海外事務所に依頼しやすくなります。
BIM 360 Design(現:BIM Collaborate Pro)の概念図
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出所)株式会社大塚商会「Revitファイルの同時編集とは? ~BIM 360 Designで共同設計~
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/201028-01/
ワークシェアリングのメリット
ここでは、ワークシェアリングのメリットについてまとめていきます。場合によっては作業効率の大幅な向上が期待できます。
モデリングの効率アップ
ワークシェアリング機能による同時編集は、さまざまなシーンでモデリングの効率アップが可能です。
大規模プロジェクトのモデリングを行うときは、設計・構造・設備・仮設のように担当を分けて作業を進めることで一人当たりの負担を減らし、タイムリーなモデル発行を継続できます。製作や施工の工程に合わせて高精度のモデルや図面を発行できるようになるので、手戻りを減らせるでしょう。
中小規模のプロジェクトの場合、設計完了から施工開始までに十分なモデリング期間を確保できないケースがあります。そのようなときに、複数のオペレーターで一気にモデリングできるのもワークシェアリングの魅力です。工区ごとに担当を分けてワークシェアリングを行えば、それぞれのペースでモデリングを進められます。
手軽にモデルを共有
手軽にモデルを共有できることもワークシェアリングのメリットのひとつです。ワークシェアリングでは、サーバーもしくはクラウドに中央モデルを保管します。そのため、データを共有する相手にアクセス権を付与できれば、モデル自体を送付することなく共有が可能です。
3次元モデルは情報量が多く、プロジェクトファイルが1GBを超えることも珍しくありません。手軽にモデルを共有できる環境の構築は、BIMを推進していく上で避けられない道になるでしょう。
多様な働き方に対応
ワークシェアリングは、サーバーやクラウドにアクセスできればどこからでも作業を進められます。そのため、リモートワークにも対応しやすいのがメリットです。現在は、十分なBIMの知識・技術を有するBIMオペレーターが不足している状況です。プロジェクトの要求に対応するため、BIMのモデリングを請け負う事務所では、リモートワークに対応するなどしてオペレーターを確保しています。元請業者としても、BIMオペレーターにしっかり対応してもらうには、ワークシェアリング環境が必要になってくるかもしれません。
また、筆者の経験では、海外事務所にBIMのモデリングを委託するケースも増えています。「Revit Server」により、インターネットのWAN環境でワークシェアリングを実施するのもひとつの手ですが、シームレスな作業環境を実現するには、「BIM 360 Design」などのクラウド環境を利用した方がよいでしょう。
BIM Collaborate Proのクラウドワークシェアリング
Autodesk社は、BIM 360 Designの後継サービスである「BIM Collaborate Pro」を含むさまざまなサービスを提供し、BIMの推進をサポートしています。ここでは、現在のAutodesk社の主力製品におけるRevitのクラウドワークシェアリングについてみていきましょう。
BIM Collaborate ProはAutodesk Construction Cloudの製品*2
Autodesk社は、設計から施工、さらには運用・維持管理まで一貫してプロジェクトを管理できる共通データ環境(以下、CDE)として、「Autodesk Construction Cloud(以下、ACC)」を提供しています。
ACCには、さまざまな分野で便利なツールが用意されており、そのなかのひとつがBIM Collaborateです。BIM Collaborateのアップグレード版であるBIM Collaborate Proは、追加オプションに位置付けられています。BIM Collaborate Proは、アップグレード版の独自機能として、BIM 360 DesignからRevitのクラウドワークシェアリング機能を継承しています。クラウドワークシェアリングを導入したい場合は、BIM Collaborate Proの採用を検討してみてください。
BIM Collaborate Proのクラウドワークシェアリングのメリット*2
BIM Collaborate Proでクラウドワークシェアリングを利用する大きなメリットは、ACCに含まれる他のサービスとスムーズに連携できることです。モデリングを行うツールであるBIM Collaborate proから、施工管理などのツールセットが用意された「Build」、見積ソフトウェア「Takeoff」などに連携できるため、シームレスなワークフローが実現します。
BIM Collaborate Proのクラウドワークシェアリングのデメリット*3
BIM Collaborate Proのデメリットは、追加オプションを購入する必要があることです。BIM Collaborateは117,700円/年であるのに対し、BIM Collaborate Proは158,400円/年です。ワークシェアリング以外の基本機能は、BIM Collaborateでも使えます。ワークシェアリングをするためには、追加の費用がかかることに留意しておきましょう。
今後はCDEの構築が主流に
プロジェクトにおけるCDEの構築は、国土交通省が推進している建設業の新たなワークフローです。今後はCDEを構築する必要性が増す可能性が高く、ACCをはじめとするCDEサービスを利用していくことになるでしょう。
CDE環境下では、モデルはCDE(クラウド)に保管されます。そのような状況がベースになる以上、少しの費用と手間を加えてワークシェアリング環境を実現することは、プロジェクトに大きなメリットを与えるかもしれません。
おわりに
BIMの急速な普及に伴い、BIMの実施体制を本格的に検討し始めた企業が多いと思います。BIMマネージャーやBIMオペレーターといった人の体制はもちろんのこと、CDEやワークシェアリングなどのシステム体制も十分に検討して整備を進めなければいけません。令和6年は国土交通省の建築BIM加速化事業が継続されているため、環境を構築するチャンスです。
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出所)株式会社大塚商会「Revitファイルの同時編集とは? ~BIM 360 Designで共同設計~」
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/201028-01/
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出所)Autodesk「Autodesk Construction Cloud」
https://construction.autodesk.co.jp/
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出所)Autodesk「BIM CollaborateとBIM Collaborate Proの比較」