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KAP for Revitの実現で清水建設が目指すBIM運用とは

BIM運用の効果的な方法の模索が各社で進む中、何年もBIMの推進を続けてきた清水建設は、BIMベースの生産体制構築にも着手しています。

そのファーストステップとして注目されているのが、KAP for Revitの導入による鉄骨システムへのテコ入れです。

KAP for Revitはどういったシステムなのか、なぜこのシステムの導入に至ったのかなどについて、ご紹介していきます。

目次: ① 鉄骨システムの定番であるKAPをRevitで利用可能 ② KAP for RevitがBIM運用の課題を解消するきっかけに ③ 清水建設のBIM構想の実現に貢献

清水建設のKAP for Revit(K4R)とは

清水建設が運用しているKAP for Revit、通称K4Rは、元々は単体の鉄骨システムであるKAPシステムがベースとなっています。

鉄骨構造物特化のKAPシステムがベース

KAPシステムは、鉄骨構造物に特化したCADシステムの一種で、清水建設を含め多くの企業が導入しているシステムです。

KAPシステム公式:http://kapsystem.jp/index.html

1972年より運用されているこの鉄骨システムは、改良を重ねて今では数多くの種類の鉄骨モデル作成を、短時間のうちに完成させることができます。

鉄骨製作に関わる全てのプロセスをKAPシステムで実現することができるため、その汎用性の高さも人気の理由の一つです。

高い機能性をRevitでも実現

そんな優れた機能性と信頼性に長けたKAPシステムですが、建設業界におけるBIM運用の普及に伴い、実現したのがAutodeskのBIMソフトであるRevitへの対応です。

Revitは世界で最も利用されているBIMソフトの一つで、日本でも清水建設をはじめ、多くの企業がRevitの導入を進めています。

KAPシステムもこれまでは各種データとの連携機能は有していたものの、BIMへのサポートは行っていませんでした。

KAP for Revitは、そんなBIM対応の一歩として始まった新しい機能の一つで、KAPシステムを使わずとも、Revit上でほぼ同様の機能を運用することができます。

KAP for Revit誕生の背景

清水建設があくまでもKAPシステムにこだわり、Revit対応のシステムを実現させた背景には、いくつもの要因が考えられます。

清水建設のさらなるBIM運用の促進

一つ目は、清水建設によるさらなるBIM運用を進めていくための施策であるという点です。

これについては詳しく後述しますが、清水建設ではRevitを使ったBIM運用体制の構築を進めており、鉄骨システムのBIM化も課題の一つでした。

KAP for Revitは、清水建設のプロジェクトには欠かせないファーストステップとして、その役割を果たしています。

BIM運用が持つ課題の解決

多くのメリットがあると期待されているBIMですが、その一方で看過できない課題も存在します。

例えば、BIM運用によって生まれる情報共有の鈍化です。

BIMは設計から施工、保守運用まで一貫したデータ運用ができるということで、情報共有の円滑化に貢献すると考えられてきました。

しかし、中途半端なBIM運用はかえって情報共有を阻害し、追加負担を各部門に課してしまう可能性もあるのです。

BIMのメリットを最大限引き出すために必要なのが、運用体制の構築です。建設に関わる全ての工程でBIMを使えるよう体制を整えることで、課題を解消することができます。

KAPシステムは優れた鉄骨システムでしたが、それだけにBIM体制を構築する上では、BIM対応が欠かせないのでした。

鉄骨業務の負担軽減

そもそも鉄骨業務は負担が大きく、パフォーマンスの改善がかねてより求められてきたプロセスでもあります。
KAP for Revitによって構造設計者がコストパフォーマンスに優れるプランの検討を容易に行えることになり、コストの改善による受注能力の強化にも繋がります*1。

また、BIMと鉄骨ファブのデータ連携も容易になり、業務効率の改善、ひいては業務の省人化にもつながるというわけです。

建設業界に根付いたKAPシステムの有効活用

もう一つ重要なのが、KAPシステムをRevitで利用できるということで、既存のノウハウを有効活用できるという点です。

KAPシステムは清水建設のみならず、非常に多くの企業が採用している鉄骨システムの一種です。

仮にゼロベースで新たなBIM対応の鉄骨システムを導入するとなると、また一からシステムの運用体制を作り直さなければならないため、運用コストは増大します。

環境に慣れるまではパフォーマンスの低下も免れないため、BIMの恩恵を享受するためには時間とコストがかかりますが、KAPシステムを流用するとなると話は別です。

従来のKAPシステムをそのままRevitで扱うことができれば、運用環境に大きな変更はないため、システム移行の手間も最低限で済ませられます。

エンジニアを新たに育成する必要もなく、既存のリソースの有効活用が実現するというわけです。

清水建設の「Shimz One BIM」とは

このようなKAP for Revitの運用が進められているのは、清水建設がShimz One BIMと呼ばれるBIM運用体制の構築も背景にあります。

Revitベースの設計施工連携BIM

Shimz One BIMはRevitをベースとしたBIM運用体制で、設計データを設計から施工、運用に至るまでを一貫して連携し、業務効率の改善を進めていこうという施策です。

Revitの互換性と国内における普及率は高く、他の建設業者との連携を図る上でも活躍が期待できるBIMソフトです。

Shimz One BIMの体制は2019年から2023年にかけての中期経営計画の中でも触れられており、計画通りにいけば2021年度中に構築が完成する予定です*2。

KAP for Revit運用の今後

現在はまたベータ版のトライアル段階にとどまっているKAP for Revitですが、将来的にはBIM運用の要となる役割を果たすことになる予定です。

KAP for Revitを最大限活用するために必要なのが、BIMソフトであるRevitの普及です。

すでに清水建設では全構造設計者のPCに装備を完了しており、案件への適用も行われていますが、その他企業での利用については、Revitの導入がまず必要になります。

今後、KAP for Revitを適用した案件が増加し、竣工までたどり着いたプロジェクトが増えてくることになれば、その需要はさらに大きくなることが考えられます。

KAP for Revitは清水建設にとって重要な施策であることはもちろん、業界全体の鉄骨システムのスタンダードとして定着する可能性も非常に高いと言えるでしょう。

おわりに

清水建設が実現したShimz One BIMは、設計から運用までのプロセスを全て一つのBIMデータで管理するというものです。

そのプロジェクトにおいて、KAP for Revitは大きなパフォーマンスを発揮することが期待されており、清水建設以外の企業にとっても有益なメリットを備えています。

BIM時代における鉄骨システムのスタンダードは、KAP for Revitとなることも十分に考えられます。

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参考:
*1 清水建設「BIMをベースにした生産体制を構築へ」
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html
*2 上に同じ

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