生成AI活用に役立つLoRAとは?ファインチューニングとの関係や導入効果を解説
生成AIは今最も多くの注目を集めているハイテクの一種ですが、その運用に当たっては課題も残ります。
さまざまなアプローチで課題の解決とAIの躍進が試みられる中、AI活用の民主化を推進する技術として登場したのがLoRAです。
この記事では、そもそもLoRAとはどのような技術なのか、LoRAの活用によって生成AI活用はどのように変化することが期待されるのか、解説します。
目次:
- 生成AI活用の課題
- LoRAとは
- LoRAとファインチューニングの関係
- LoRA活用から期待できるメリット
- LoRAで実現可能なAIサービス
- LoRA運用の課題と展望
生成AI活用の課題
生成AIはゼロからコンテンツを生成することができるAIとして知られる、クリエイティブなプログラムです。
これまでAIの業務はルーティンワークの自動化にとどまってきましたが、生成AIの普及によって、人間でしか対応できないとされていた、複雑であったり創造性が問われたりする業務にもAIを適用することができるようになりつつあります。
文章の要約やサムネイル画像の作成などで成果を残しつつある生成AIですが、一方で運用上の問題もまだ残っています。
生成AI活用の大きな課題となっているのが、AI運用に伴う計算コストです。AIは元々計算負荷の大きいプログラムで、個人での利用が敬遠される理由の一つでしたが、生成AIはその負荷がさらに大きなものとなっています。
そのため、個人レベルで生成AIを利用するにはクラウドサーバーなどを使い、どこからかGPUリソースを確保する必要があり、自宅でGPUサーバーを賄うとなると、数百万円以上の出費が必要になってきます。
GPU需要は現在世界的に高まっており、今後も利用コストが大きくなると懸念されるため、低コストで高い計算能力を持った生成AI技術の登場が待たれるところです。
LoRAとは
このような問題を軽減するため、近年登場して話題を集めているのがLoRA(Low-Rank Adaptation)と呼ばれる手法です。LoRAは元のモデルのパラメーターを変更して、低いレベルの行列に差し替えることにより、少ない計算コストで高度な結果を出力することができます。
これまで、生成AIを使ってアウトプットを行おうとする場合、全ての計算処理を一つずつ実行していたため、多くの負担がかかっていました。
LoRaを使った計算は、いわばこの際の計算をショートカットするというものですが、計算の削減を行いながらもアウトプットされる生成物のクオリティは高いことから、有望な手法として知られています。
LoRAとファインチューニングの関係
このように、本来とは異なるデータセットを差し替えるような形で計算処理を行う手法は、ファインチューニングと呼ばれています。
ファインチューニングとは元々「微調整」を意味する言葉ですが、これは既存の訓練済みモデルを有効活用するための手法として以前から研究が進んできたものです。
AIを開発する際の最大の負担は、やはり学習過程にあります。膨大なデータを用意して、そこからさらにその全てを学習させる必要があるので、一般的なGPUリソースでは途方もない時間と費用がかかってしまうものです。
一方でファインチューニングを実施することで、既存の学習済みモデルを別の用途に転用することができるため、この学習コストを大幅にカットすることができます。パラメーターの微調整を行うだけで新しい目的に特化したAIを実装できるため、AI開発の劇的な効率化に貢献する技術です。
ファイチューニングにもさまざまな手法がありますが、LoRAはその一種であり、現状では最も汎用性が高く、制度にも優れることから、今後さまざまなシーンでの活躍が期待されています。
LoRA活用から期待できるメリット
生成AIの運用にLoRAを使用することは、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは主な利点について、整理して紹介します。
生成AI運用のコスト削減につながる
LoRAを採用した生成AI運用は、高い削減効果が見込めます。GPUのメモリ使用量を減らせるだけでなく、計算時間そのものも短くできるので、スペック面での不安が小さくなったり、最小限の計算時間で光熱費の削減が実現したりが可能です*1。
多様なAIサービスの発展に貢献する
生成AIのネックだったコスト面の問題が解消されることで、個人はもちろん企業における生成AI活用もますます活性化するでしょう。
運用負担の問題から実現に至っていなかったAIサービスも気軽に展開できるようになり、多様なAIサービスがこれから現れることにも期待したいところです。
LoRAで実現可能なAIサービス
LoRAの実装はAI関連サービスに多くの可能性をもたらしてくれます。実現可能なサービスとしては、
- 高度なAIチャットボットの実装
- AIモデルやAIアニメーションの本格活用
が挙げられます。これまでは基本的な質問事項にしか対応できなかったAIチャットボットが、LoRAの導入によって高度な回答も簡単に生成できるようになり、完全無人での問い合わせ対応が実現するかもしれません。
また、高速で画像生成が行える点を活かし、AIモデルを自社のサービスに合わせて登場させやすくなったり、多くの枚数を生成しなければならないアニメーション制作の現場でも、AIによって画像を用意させたりできるでしょう。
LoRA運用の課題と展望
LoRAは多くのメリットをもたらしてくれる反面、現状ではいくつかの課題も残ります。
ファインチューニング用のデータ確保負担が発生
LoRAは既存のデータをファインチューニング用のデータに置き換えることで計算負担を軽減するという手法を促すものですが、そのためには置き換え用のデータを用意する必要があります。
生成AIはその性質上、インプットするデータの著作権や肖像権がクリアになっているかどうかの問題を抱えていますが、これは置き換え用のデータも同様です。データの権利を確保する負担も出てくるため、一般に普及が進むまでは期待しているようなメリットを最大限得られない場合があるでしょう。
生成AIそのものの精度向上も必要
また、LoRAはあくまで計算に伴う負担を軽減するだけの手法であり、AIの精度向上に直結するのはモデルそのもののアップデートです。
質の高いAI生成コンテンツを得るためには、高度な生成AI技術の発展が不可欠であると同時に、それを採用できるだけのリソースを社内でカバーすることも求められます。
まとめ
この記事では、生成AIの運用効率向上につながるLoRAの役割について解説しました。生成AIは便利な反面、運用コストの問題がのしかかりますが、LoRAを使用することでその問題を軽減することができます。
効率的なAI運用の手法をうまく取り入れて、AIサービスの展開を進めましょう。
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出典:
*1 日経XTech「LoRAで生成AIを効率的にファインチューニング、GPUメモリー使用量などを削減」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/keyword/18/00002/120800245/