1. TOP
  2. ブログ
  3. AIリテラシーとは 厚生労働省の指針をもとに正しい基礎知識を確認しよう

AIリテラシーとは 厚生労働省の指針をもとに正しい基礎知識を確認しよう

2023年に大規模言語モデル「ChatGPT」が世界的なトレンドになったことにより、AIと日常生活の距離は急速に縮まりました。今では、新商品には「AI搭載」が当たり前のように記載されるようになり、ChatGPTや画像・動画生成AIによる生成物がインターネット上に溢れています。

急速なAIの普及が進むなか、「AIリテラシー」の重要性が注目を集めています。「AIを正しく使えるように」、「AIに騙されないように」、AIリテラシーが求められていますが、明確な定義はありません。この記事では、文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的ガイドライン」などを参考にしながら、AIリテラシーの概要や具体的な知識について解説します。

文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的ガイドライン」*1

文部科学省は、2023年7月に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(以下、ガイドライン)1を公表しました。本ガイドラインの位置づけは、生成AI黎明期における教育現場での生成AIの活用適否判断のために、国としての考え方を示すものとされています(1_P.1)。

本ガイドラインは、小学生や中学生に対する教育に関するガイドラインです。これからAIとともに育っていく子どもたちのために策定されたガイドラインなので、子どもたちが羽ばたいていく社会で求められるAIの正しい知識やAIリテラシーの方針が示されています。子どもだけでなく、AIを活用してビジネスを切り開く社会人にとっても有意義なガイドラインといえます。

なお、本ガイドラインは、広島AIプロセス(AIの活用と規制の国際的なルール作りに向けた議論)やその他の科学的知見の蓄積などに伴って機動的に改訂するとされています(*1_P.1)。気になる方は、継続的にチェックしてみてください。

AIリテラシーとは

ここではAIリテラシーの概要を解説します。AIの利便性の裏に潜んでいる危険を認識できるように意識してみてください。

AIリテラシーの意味

一般的に、「AIを正しく使う」「AIに騙されない」ために必要な知識全般を「AIリテラシー」と呼びます。ガイドラインは、AIの回答には、誤りや事実と全く異なる内容、不正確な文脈が含まれる可能性があることを指摘しています。また、AIが回答を生成するアルゴリズムが不明である「透明性に関する懸念」や、機密・個人情報などに関する「信頼性に関する懸念」もAIに関して指摘されている課題です(*1_P.2)。

このような課題はあるものの、情報技術を日常生活や学習で活用できるようにすることの重要性は、学習指導要領に強調されていることであり、AIの活用も例外ではありません。そのため、「生成AIがどのような仕組みで動いているのか」「どのように学びに活かしていくか」という視点や、生成AIを活用する力を育てていく姿勢は重要であるとされています(*1_P.4)。

AIの仕組みを理解して日常生活を豊かにする使い方や、誤った回答を見抜く能力を身に付けることが、ガイドラインで示されているAIリテラシーであるといえます。

AIリテラシーが重要視される背景

内閣府に設置されている「AI戦略会議」では、「AIに関する暫定的な論点整理」という資料が公表されています*2。そのなかで、以下のように記載されています。

「⽣成 AI は、⽣活者の利便性を向上させ、利益をもたらすが、⽣成 AI を活⽤できるかどうかに左右さ れる。若年層はもとより、⽣成 AI の恩恵は広く国⺠が享受できることが重要であり、幅広い世代が⽣成 AI を賢く使いこなすことのできるスキル・リテラシーを⾝に付けることが重要である。」
(引用:AI戦略会議*2_P.14)

ここから読み取れる重要なポイントは、以下の2つです。
・国民全体が生成AIの恩恵を享受することで生活が豊かになる
・そのためには幅広い世代がAIリテラシーを身に付ける必要がある

ビジネスを成功させるためだけでなく、普段の日常生活を豊かにするためにも、年齢に関わらずAIリテラシーを身に付けなければいけないことがわかります。

DXにおけるAIの重要性

AIリテラシーが求められているのは、当然、AIが普及しているからです。その背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)があります。DXはさまざまな分野で積極的に取り組まれており、ビジネスだけでなく私生活にも影響を与えています。ここでは、DXにおけるAIの重要性に着目してみましょう。

なぜAIがDXで求められているのか*3

現代には、少子高齢化、低い労働生産性、グローバル競争の激化など、さまざまな課題があります。課題を並べると暗い未来をイメージしてしまいますが、これらをクリアするために社会全体で取り組まれているのがDXです。DXは、概略的にはデジタル化による組織やプロセスの改革であり、そのメリットはデジタル情報の伝達・処理の早さです。AIは膨大な情報の分析・解析能力に優れているため、DXでの活躍が期待されています。

ChatGPTの実用化により、日常生活のDXにも取り組めるようになりました。具体例としては、夕飯のメニューを決めるプロセスの改革です。毎日のメニューを考えるのは大変ですが、ChatGPTに聞くと肉料理、魚料理、和食、洋食など、いくつかのメニューを提案してくれます。さらに、メニューのレシピを聞けば丁寧に教えてくれます。従来の料理のストレスや手間を大きく低減してくれる改革であり、立派なDXといえるでしょう。この例でもAIが膨大な情報からメニューやレシピを生成しており、DXにおけるAIの重要性を体感できます。

AIを学ばないことが格差になる時代*4

AI戦略会議でも述べられているとおり、AIは幅広い年代の生活を豊かにする存在です(*2_P.14)。一方で、AIを使えないとまわりに差をつけられてしまうと捉えることもできます。

「AIリテラシー」をキーワードに大学生が中心となって活動しているプロジェクト「aiEDU JAPAN」の川村氏は、NHKの取材で「(AIの)学習機会がないことによる教育格差や地域格差の拡大」(引用:NHK*4)に対する懸念を示しています。

文部科学省のガイドラインが示されたものの、地域や学校によってAIの扱い方が異なるのが現状です。また、既に学校を卒業している社会人は、AIについて正しく学ぶチャンスがないかもしれません。しかし、DXが進むにつれてAIの活躍の場は着実に広がっていくでしょう。AIに関する教育コンテンツなどを活用して積極的にAIリテラシーを学び、最新技術についていく姿勢が大切です。

一般的にAIリテラシーとされる内容*5

ここでは、一般的にAIリテラシーとされる内容を簡単に説明します。基本的な内容ですが、AIリテラシーの第一歩としてご覧になってみてください。

生成AIのしくみ(*1_P.2)

ガイドラインでは、生成AIは「あらかじめ膨⼤な量の情報から深層学習によって構築した⼤規模⾔語モデルに基づき、ある単語や⽂章の次に来る単語や⽂章 を推測し、「統計的にそれらしい応答」を⽣成するもの」(引用:文部科学省)としています。

つまり、学習データから正しい可能性が高いと判断した回答を返してきているということです。例えば、「赤いものといえば?」という問いに対し、学習データの8割が「りんご」であれば「りんご」と回答しやすくなり、8割が「いちご」であれば「いちご」と回答する可能性が高くなります。

AIの長所と短所*5

AIの長所は、人間では処理しきれない膨大な量の情報をもとに、人間の課題解決や創造活動を助けてくれることです。高度な分析・解析能力を活かし、人間が簡単にはたどり着けない結果を数字や視覚イメージで示してくれることも強みです。

AIの短所は、誤答の可能性が常にあり、場合によってはそれを人間が見抜けないことです。また、AIに頼りきりになり、人間が考えなくなってしまうこともデメリットとされています*5。

偽情報等によるリスク(*2_P.11)

これからは、自分がAIを活用する場面だけでなく、他人の制作物を利用するときもAIの介入を念頭に置かなければいけません。その制作物がAIを活用してつくられた偽情報の可能性もあるわけです。制作者に悪意はなくても、AIが偽情報で深層学習を進め、誤った情報を生成しているかもしれません。このようなリスクを常に意識しながら暮らしていく必要があります。

著作権侵害のリスク(*2_P.13)

生成AIは、膨大な情報をもとに深層学習を行います。その結果、元データの著作権を侵害してしまうような類似の生成物をつくってしまう可能性があります。生成AIの著作権侵害に関する法的な扱いは、整理が進められているもののまだ整いきっていません。生成AIの利用者としては、著作権侵害のリスクを頭に入れながら採用の可否を検討する必要があります。

おわりに

AIは着実に我々の生活に定着してきており、豊かな社会の実現に貢献し始めています。しかし、AIの利便性の裏には危険が潜んでおり、メリットをうまく享受するためには社会全体がAIリテラシーを身に付けることが大切です。

建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!

❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

*1

出所)文部科学省「初等中等教育段階における 生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」

https://www.mext.go.jp/content/20230704-mxt_shuukyo02-000003278_003.pdf

*2

出所)AI戦略会議「AIに関する暫定的な論点整理」

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ronten_honbun.pdf

リンク元:https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/

*3

出所)厚生労働省「AIリテラシー【第1回】AIが変える社会 P.7」

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000816680.pdf

*4

出所)NHK「将来必須の「AIリテラシー」学びの場を」

https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n3e034f90390a

*5

出所)株式会社小学館「解説|田中博之 AIリテラシー教育をどのように進めればいいのか? 【「生成AI利用ガイドライン」徹底解説 #5】」

https://kyoiku.sho.jp/267134/
    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP