ArchiCAD導入前に知りたい!動作環境と推奨PCスペック
はじめに
CADソフトウェアの中でも特に高い人気を誇るArchiCADは、建築設計の効率化を図る強力なツールですが、その力を最大限に引き出すためには、ソフトウェアが要求する動作環境を十分に満たしたPCの選定が不可欠です。
本記事では、ArchiCADの導入を予定している方々に向けて、その動作環境と推奨されるPCスペックについて詳しく解説していきます。ArchiCADは、クリエイティブなデザインプロセスを支援するために、PCのハードウェア性能に強く依存しています。そのため、適切な動作環境を整えることは、プロジェクトのスムーズな進行に直結します。プロジェクトの進行速度や効率性を左右するため、PCの選定は非常に重要です。
本記事を通じて、ArchiCADの動作を保証するために必要なハードウェア要件を詳解し、ベストなPC選択のための指針を示します。ArchiCAD導入の参考となれば幸いです。
ArchiCADの基本と動作環境
ArchiCADとは?
ArchiCADは、GRAPHISOFT社が開発したBIM(Building Information Modeling)を基盤にした建築設計用のソフトウェアです。1984年に初めて開発され、以来、建築業界におけるデファクトスタンダードとして広く認知されています。BIMの概念を世界で初めて実装したことで知られるArchiCADは、3Dモデリングを基本にしており、設計者が建物のあらゆる側面を総合的に管理することを可能にします。3Dモデリングを活用することで、デザインの自由度は格段に向上し、クライアントへのプレゼンテーションにおいてもその直感的な操作性を活かすことができます。
<参考>株式会社キャパブログ「Archicad(アーキキャド)とは? 建築分野で信頼されるCAD/BIMソフトウェアについて解説」
ArchiCADは、WindowsおよびMacOSの両方に対応しており、設計者が使用するプラットフォームを選ばないのも大きな特長の一つです。さらに、他のデザインソフトウェアやツールとの連携を容易にするため、OPENBIMのコンセプトを採用し、設計プロセスの効率化と透明性を高めています。
ArchiCADの動作環境の概要
ArchiCADの動作環境は、ソフトウェアのバージョンとプロジェクトの規模に応じて異なりますが、ハードウェアの性能がソフトの挙動に直接影響を与えるため、慎重な選定が必要です。ArchiCAD 28の推奨動作環境を見てみると、特にCPU、メモリ、グラフィックカード、およびストレージの性能が重要視されています。
CPUに関しては、IntelまたはAMDのx64マルチコアプロセッサが推奨され、特にIntel Core i7やAMD Ryzen 7以上が最適となります。メモリは、プロジェクトの規模によっては32GBから64GB以上が望ましいです。また、ArchiCADは3Dモデルのレンダリングにおいても高い能力を要求するため、DirectX 11およびOpenGLに対応した少なくとも6GBのVRAMを持つグラフィックカードが必要です。ストレージには、高速なデータアクセスを実現するために、NVMe SSDを選択すると良いでしょう。ディスプレイについても、高解像度での作業が求められるため、最低でもFHD+(1920×1080)の解像度を推奨します。これらの動作環境を適切に満たすことで、ArchiCADの機能を余すことなく活かし、効率的な設計業務を行うことが可能になります。
<参考>GRAPHISOFT「ArchiCAD 28 動作環境」
https://graphisoft.com/jp/resources-and-support/system-requirements
1. システム要件
項目 | 最低動作環境 | 推奨動作環境 |
CPU | Mac: Apple M1 PC: Intel Core i5, AMD Ryzen 5 | Mac: Apple M2、Apple M2 Max PC: Intel Core i7/i9、AMD Ryzen 7/9 |
RAM | 4GB以上 | 16GB(推奨)、32GB、64GB以上(大規模プロジェクト向け) |
ディスク | SSD(5GB以上の空き容量) | SATA SSD(推奨)、NVMe SSD(高速処理向け) |
グラフィックスカード | 4GB VRAM、DirectX 11対応、OpenGL対応 | 6GB~8GB VRAM、DirectX 11、OpenGL対応 |
ディスプレイ解像度 | 1440×900 | FHD+ (1920×1080)、2K (2560×1600)、5K (5120×2880) |
OS | Mac: macOS 12.6.7 Monterey(インストール可能だがサポート外) PC: Windows 10 64-bit (Build 1809以降) | Mac: macOS 13 Ventura、macOS 14 Sonoma、macOS 15 Sequoia PC: Windows 11 |
インターネット | 必須(ライセンス管理、BIMcloud接続、更新のダウンロード等) | 高速インターネット接続推奨 |
プロテクションキー | クラウドライセンス、CodeMeterソフトウェアキー、またはハードウェアキーが必要 | – |
グラフィックスカードの特記事項
- Redshiftレンダリングエンジンを利用する場合:
- NVIDIA: CUDA 7.0以上に対応したグラフィックスカードが必要。
- AMD: NaviまたはVegaシリーズに対応。
- VRAM: 最低8GBのVRAM搭載が推奨されます。
対応プロジェクト規模
プロジェクト規模 | ハードウェア要件の目安 |
エントリーレベル | Intel Core i5 / AMD Ryzen 5、16GB RAM、4GB VRAM |
居住空間規模プロジェクト | Intel Core i7 / AMD Ryzen 7、32GB RAM、6GB VRAM |
アパート及びオフィス | Intel Core i9 / AMD Ryzen 9、64GB RAM、8GB VRAM |
ハイエンドレベル(病院・高層建築) | Apple M2 Max / Intel Core i9、64GB以上のRAM、8GB以上のVRAM |
オプションハードウェア
- 周辺機器: 主要なプロッタ、プリンタ、デジタイザはすべてArchicadに対応。ドライバはOSによってサポートされます。
推奨PCスペックの詳細
CPUとその選定基準
ArchiCADのスムーズな動作を確保するためには、まずCPUの選定が重要です。CPUは、計算処理の中心を担うため、その性能がソフトウェアの動作効率に直結します。ArchiCADにおけるCPUの選定基準としては、複数コアを持つプロセッサが推奨されます。特に、IntelであればCore i7以上、AMDであればRyzen 7以上が理想的です。これらのCPUは、多くのスレッドで並行して処理を行うことができるため、大規模なプロジェクトを扱う際にも十分なパフォーマンスを発揮します。また、最新のプロセッサであるほど、アーキテクチャの最適化によって電力効率や処理速度が向上しているため、可能であれば最新世代のものを選ぶと良いでしょう。優れたCPUを選ぶことで、ArchiCADのレンダリング処理がスムーズに行われ、業務の効率化に直接つながります。
必要なメモリ容量
ArchiCADの動作において、メモリはCPUと並んで重要な役割を担っています。特に、プロジェクトの大きさや併用するアプリケーションによって必要なメモリ容量が変動するため、十分なメモリを備えることが推奨されます。ArchiCAD 28を使用する場合、エントリーレベルのプロジェクトであれば16GB、より大規模なプロジェクトでは32GBから64GB、それ以上を推奨します。メモリは、プログラムの実行中にデータを一時的に保存する領域として機能するため、不足するとソフトの動作は遅くなり、プロジェクトの進行を妨げます。より多くのメモリを搭載することで、同時に複数のアプリケーションを開いたり、大規模なデータセットの処理を円滑に行うことが可能となります。メモリのアップグレードは比較的容易であるため、将来的なプロジェクトの拡張を視野に入れた上で、大容量のメモリを選択することが効果的です。
グラフィックカードの要件
グラフィックカードは、ArchiCADにおける3Dモデリングやレンダリングの品質を左右する重要なハードウェアコンポーネントです。ArchiCAD 28の推奨環境として、少なくとも6GBのVRAMを備えたDirectX 11およびOpenGL対応のグラフィックカードを選ぶことが求められます。NVIDIAのGeForce RTXシリーズやAMDのRadeon RXシリーズが特に適しています。これらのカードは、高度な画像処理能力を持ち、3Dビジュアライゼーションを行う際に高いパフォーマンスを発揮します。特に、レンダリング速度の向上やリアルタイムでのモデルの操作をスムーズにするために、より高性能なグラフィックカードを選ぶことで、設計プロセス全体の効率が向上します。また、Redshiftレンダリングエンジンの利用には、CUDA 7.0以上をサポートするNVIDIAグラフィックカード、またはAMDのNavi/Vegaが必要であり、最低でも8GBのVRAMを備えることが推奨されるため、用途に応じたカード選びが重要です。
ストレージとディスプレイの推奨仕様
ArchiCADを使用する際、ストレージとディスプレイの仕様も重要な要素となります。ストレージについては、データの高速アクセスを可能にするためにNVMe SSDを選択することが推奨されます。これにより、ソフトウェアの起動やプロジェクトデータの読み込みが迅速になり、作業の効率化が期待できます。また、プロジェクトファイルが大容量化することが多いため、最低でも512GBのストレージ容量を確保することをお勧めします。ディスプレイに関しては、高解像度での作業が求められるため、フルHD(1920×1080)以上の解像度を持つディスプレイを選ぶことが理想的です。特に2K(2560×1440)や4K(3840×2160)ディスプレイを使用することで、より詳細な作業が可能となり、設計の精度を向上させることができます。これによって、クライアントへのプレゼンテーションやチーム内での確認作業が円滑に行える環境を整えることができます。
市場での推奨PCモデル
デスクトップPCの選択肢
ArchiCADに最適なデスクトップPCを選ぶ際には、スペックと価格のバランスが重要です。デスクトップPCは強力な性能を持ち、拡張性に優れているため、高度な設計作業を行う環境に適していると言えます。市場には様々なモデルが存在しますが、HPのZ4 WorkstationシリーズやDellのPrecisionシリーズが特に評価されています。これらのワークステーションは、Intel Core i7またはCore i9プロセッサ、もしくは対応するAMD Ryzenプロセッサを搭載し、強力な処理能力を提供します。また、NVIDIAのRTX A2000もしくはA4000グラフィックカードを搭載することで、高品質な3Dモデリングを可能にし、リアルタイムでのレンダリングも快適に行えます。これらのモデルは、冷却効率の高い設計やエラー訂正機能を持つECCメモリを搭載しており、長時間の作業にも耐えうる信頼性が備わっています。デスクトップPCを選ぶ際には、拡張性や冷却性能にも着目し、将来的なニーズに応じてアップグレードが容易なモデルを選ぶと良いでしょう。
ノートPCの選択肢
ノートPCは、持ち運びの利便性と高性能を兼ね備えた選択肢として、実務での使用にも最適です。ArchiCADに適したノートPCとしては、HPのZBookシリーズやDellのPrecisionシリーズが注目されています。これらのノートPCは、パワフルな第11世代または第12世代のIntel Coreプロセッサや、最新のAMD Ryzen 9プロセッサを搭載しており、デスクトップと同等のパフォーマンスを提供します。また、NVIDIAのRTX A3000シリーズなどの高性能グラフィックカードを備えることで、3Dモデリングやレンダリング作業もスムーズに行うことが可能です。ノートPCのメリットとしては、現場での作業やクライアントとの打ち合わせ時に、3Dモデルをその場で確認・変更できる点が挙げられます。ノートPCを選ぶ際には、バッテリーの持続時間やディスプレイの解像度、携帯性も考慮し、自社の業務スタイルに最適なモデルを選定することが大切です。
価格と性能のバランス
ArchiCADに対応するPCを選定する際には、価格と性能のバランスを考慮することが重要です。高性能なPCは確かに魅力的ですが、予算内で最大の効果を発揮するモデルを見つけることが求められます。例えば、デスクトップPCであれば、HP ZシリーズやDell Precisionシリーズなどのワークステーションは高性能で安定した動作を提供しますが、各社ともにエントリーモデルからハイエンドモデルまで幅広く展開しており、価格の選択肢も多様です。一方で、ノートPCでは、携帯性やバッテリーの持続時間なども考慮に入れながら、コストパフォーマンスの高いモデルを選ぶことができます。特に、HPのZBookやDellのPrecisionシリーズのノートPCは、コストと性能のバランスが取れており、多くの企業で採用されています。PCを大量に購入する際には、メーカーと直接交渉することで、ボリュームディスカウントを受けることができる場合もありますので、価格交渉を検討することも一つの手段です。
ArchiCADの推奨するPCモデル(2022年度版)
2022年度の記事となりますが、ArchiCADは公式に、HPとDellのPCを推奨しています。2025年現在も後継機が出ている機種となりますので、ぜひ参考にしてください。
HP
HPは、ArchiCADに最適なPCとして、特にZシリーズのワークステーションを推奨しています。HP Z4 G5は、10コアのCPUとNVIDIA RTX A4500グラフィックカードを搭載し、BIMを利用した建築設計において優れた性能を発揮します。このモデルは、高速なレンダリングと複雑な3Dモデリングをサポートし、設計プロセスを強化します。また、HPのワークステーションは、ISV(Independent Software Vendor)認定を受けており、ArchiCADなどの高度な専門ソフトウェアとの互換性が保証されています。さらに、HP独自のエアフロー設計により、筐体内の熱を効果的に排出し、PCパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能です。標準保証で3年間の修理サポートが提供されるため、長期的な安定稼働を確保したい企業にとっては、非常に魅力的な選択肢となります。
<画像引用・参考>日本HP「GRAPHISOFTユーザーに最適なHP Z Workstation」
https://jp.ext.hp.com/workstations/isv/graphisoft/
Dell
DellのPrecisionシリーズは、ArchiCADのBIM設計に最適化されたワークステーションとして高評価を受けています。特に、Precision 5570や5770は、最新の第12世代Intel Coreプロセッサを採用し、高い計算処理能力を提供します。また、NVIDIA RTX A3000グラフィックカードを搭載することにより、リアルタイムでの複雑な3Dモデリングやレンダリングを可能にしています。Dellは、セキュリティとメンテナンスにも特化しており、AIを活用してアプリケーションの最適化を行う「Dell Optimizer for Precision」を搭載し、業務効率をさらに向上させます。さらに、シャーシイントルージョンセンサーにより、外部からの不正アクセスを防ぐセキュリティ機能も充実しています。これにより、設計データの保護が求められる建築プロジェクトにおいて、安心して使用できるPC環境を提供します。長期的なサポートと高い耐久性を考慮すると、DellのPrecisionシリーズは、ArchiCADユーザーにとって非常に魅力的な選択肢です。
タワーワークステーション「Dell Precision 3260コンパクト」でArchicadのBIMモデル動作確認
<画像引用・参考>Built「デル・テクノロジーズの最新ワークステーションが「Archicad」の“設計BIM”に最適な理由」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2209/29/news009.html
まとめと次のステップ
選定のポイントのまとめ
ArchiCADを快適に使用するためには、動作環境を満たすPCの選定が不可欠です。本記事で解説したように、CPU、メモリ、グラフィックカード、ストレージのそれぞれが重要な要素となります。特にCPUは、複数コアを持つ最新世代のものを選び、メモリはプロジェクトの規模に応じて32GBから64GB以上を推奨します。また、グラフィックカードについては、NVIDIA RTXシリーズやAMD Radeonシリーズの高性能モデルを選ぶと良いでしょう。ストレージは、NVMe SSDを選択することでデータの読み書き速度が向上し、業務の効率化に寄与します。これらのポイントを踏まえ、デスクトップおよびノートPCの中から、自社のニーズに合ったモデルを選定することが重要です。
ArchiCAD導入のためのアクションプラン
ArchiCADの導入を成功させるためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。まず、動作環境に最適なPCの選定を行い、ハードウェアの準備を整えることが基本です。その後、ArchiCADのライセンスを取得し、クラウドライセンスまたはCodeMeterソフトウェアキーを用いてソフトウェアをアクティブ化します。次に、IT部門と協力して、ArchiCADのインストールとシステム設定を行いましょう。この際、必要なドライバの確認と、ネットワーク環境の整備も忘れずに行います。さらに、従業員向けのトレーニングを実施し、ソフトウェアの基本操作や効率的な使用方法を習得することも重要です。これにより、ArchiCADの全機能を活用した設計が可能となります。最後に、導入後のフォローアップを行い、問題が発生した場合には迅速に対応できる体制を整えておくことが、継続的な業務効率化に繋がります。
おわりに
ArchiCADの導入を考えている企業にとって、適切な動作環境を整えることは、プロジェクトの成功を確実にするための第一歩です。本記事では、ArchiCADに最適なPCスペックやモデル選定に必要な情報を詳しく解説しました。これらの知識を活用し、最適なPCを選ぶことで、設計業務の効率化や作業環境の改善を実現できるでしょう。今後も、ArchiCADを中心とした設計環境を構築し、業務の生産性を向上させるための取り組みを続けてください。これにより、競争の激しい建築業界での競争力を高め、クライアントの満足度を向上させることができるでしょう。今後の成功を心よりお祈り申し上げます。
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参考情報:
・GRAPHISOFT「ArchiCAD 28 動作環境」
https://graphisoft.com/jp/resources-and-support/system-requirements
・日本HP「GRAPHISOFTユーザーに最適なHP Z Workstation」
https://jp.ext.hp.com/workstations/isv/graphisoft/
・Built「デル・テクノロジーズの最新ワークステーションが「Archicad」の“設計BIM”に最適な理由」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2209/29/news009.html
・株式会社 日本HP「【CAD歴10年の設計士監修】CAD用パソコンの選び方と必要スペックとは?」https://jp.ext.hp.com/campaign/business/others/casestudy/shichimaru/
※本記事は2025年2月7日現在の情報を元に作成しています。
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実際にご利用される際には、公式サイトの情報も合わせてご参照ください。