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ゼネコン各社の協力から生まれたAutodesk Revit向け構造用ファミリの可能性

Autodeskが提供するRevitは、ハイエンドなBIM運用を推進する重要性の高いサービスです。ただ、その一方でRevitの運用には課題も残るため、現状ではその真価をまだ十分に発揮できていないという声もあります。

今回はそんなRevit運用の課題に焦点を当て、新たにゼネコン各社が協力して開発したRevit向けの構造用ファミリがどんな役割を果たすのかについて、ご紹介します。

目次:

1.Revitの概要
2.BIM運用の課題
3.新たに誕生したRevit向け構造用ファミリについて
4.構造用ファミリの整備から期待できること

Revitの概要

Revitは、Autodesk社が提供しているBIMツールです。従来の3D CADツールとは異なり、BIMは3Dモデルに対してさまざまな情報を直接付与した上で運用ができるという、高度な技術を有しているのが特徴です。

Revitは単体での運用だけでなく、同じくAutodesk製品であるAutoCADなどの3D CADツールと併用することで、設計から施工、維持管理までの業務をワンストップで実現できる業務効率化が期待できます。

世界中で導入企業が増えており、日本においても採用企業が増えていることから、Revitは今後もBIM運用が広がる中で、重要な役割を果たすと考えられているツールです。

BIM運用の課題

BIM運用は業務効率化やプロジェクトのクオリティ向上といったメリットが大いに期待される反面、注意しておくべき課題も存在します。

十分にBIM製品が普及していない

まず、RevitをはじめとするBIM製品の導入は、十分に活躍が期待できるほど進んでいないのが現状です。近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりに伴い、以前よりも導入企業は日本でも増えているものの、その数は十分ではありません。
BIM製品は、導入企業が増えれば増えるほどそのメリットが最大限発揮される情報共有能力の高さを備えています。一方、導入企業の数が増えなければ、そのメリットが十分に発揮されず、費用対効果が期待していたような物にはならないという問題を抱えています。

導入コストがかかる

BIM製品はCAD以上に高価なツールとなるため、気軽に個人や中小企業が導入できないという問題も抱えています。例えばAutodeskのRevitは、1年更新のライセンス契約を主な料金プランとして展開していますが、その価格は1年あたり42万7,900円と、安価な買い物ではないことがわかります*1。

このような負担を抱えてでも導入を進めるためには、それなりの対価が大いに期待できる環境が整っている必要があります。

BIM製品同士の互換性が問題視されている

BIMツールとは一言で言っても、実際にはさまざまな企業から各種BIMツールが展開されているので、BIM製品であればなんでも良いというわけではないという問題もあります。

特にファイルの互換性は重要な課題となっており、ファイル形式が合わないBIM製品同士の場合、互換性の問題からコラボレーションができない、あるいは変換の負担が発生し、業務負担を大きくさせてしまうこともあります。

技術格差拡大の原因となっている

BIMツールを導入している企業の多くは、大企業です。BIM需要のある建設・土木業界を支えている企業の大半は中小企業であるため、本来BIMは中小企業にこそ導入を進めるべき技術でもあります。

BIM導入が情報感度が高く潤沢な予算のある企業にばかり集中していると、互換性の問題から導入済みの企業同士でプロジェクトが進み、そうでない企業は衰退の一途を辿るという技術格差を拡大することにもなりかねません。

このような問題を解消するためにも、BIM運用は広く市場に開かれていることが重要になります。

新たに誕生したRevit向け構造用ファミリについて

上記のようなBIM運用の課題を受け、大手建設会社5社が協力して開発したのが、Revit向け構造用ファミリです。

Autodeskと、株式会社大林組、清水建設株式会社、鹿島建設株式会社、大成建設株式会社、そして株式会社竹中工務店は、2022年2月に新たなRevit向け構造用ファミリを協力で開発したことを発表しました*2。

このファミリ開発の背景として挙げられていたのが、各部材のモデルに含まれる属性データが異なるという問題です。
設計事務所や建設会社が別々のソフトを使ってファミリを構成してしまうと、設計から生産・施工・維持管理などの各プロセスで各データをそのまま使うことができず、業務効率の低下を招いていました。

今回提供が発表されたのは基礎・杭のファミリ、壁・床のパラメータですが、これらは異なる組織でも円滑に利用できるよう、属性データが統一された状態で利用可能となっており、従来のデータ互換性の問題をクリアできる仕様が採用されています。

パラメータを利用した効率的な構造設計を実現し、更なる業務効率化や品質向上が期待できるでしょう。

構造用ファミリの整備から期待できること

このように、大手企業によって構造用ファミリの整備などをはじめとするデータ整備が行われることで、BIM運用のメリットはさらに大きくなることが期待できます。

上で紹介した通り、BIM運用は費用対効果が期待できるほどの性能を発揮できない可能性があることから、導入を見送ってきた企業もありました。しかし今回のデータ整備のような取り組みが、今後もさまざまなシーンで行われるようになれば、BIM導入のハードルが下がるだけでなく、活用効果も高まることが期待できます。

BIM導入のメリットが大きくなればなるほど、日本国内におけるBIM運用の効果や導入企業は増大していくことになるでしょう。

まとめ

BIM活用には魅力的なメリットが複数備わっている一方、導入時には課題も残ります。今回の構造用ファミリの整備のような取り組みは、そんなBIM活用のハードルを下げ、広くBIM技術を普及する上で大いに意味があると言えます。

今後もBIM活用環境の変化に注目し、最大限活用するためのチャンスについての理解を深めましょう。

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参考:
*1 Autodesk「Revit」
https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview?term=1-YEAR&tab=subscription

*2 建設ITワールド「大手建設会社 5 社の協力によるAutodesk Revit 向け構造用ファミリを公開」
https://ken-it.world/supporters/2022/02/%E5%A4%A7%E6%89%8B%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E4%BC%9A%E7%A4%BE-5-%E7%A4%BE%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B-autodesk-revit-%E5%90%91%E3%81%91-%E6%A7%8B%E9%80%A0%E7%94%A8%E3%83%95%E3%82%A1.html

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