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日本の建設機械業界、問題点とその解決に向けて

はじめに:日本の建設機械業界の現状と直面している課題

日本の建設機械業界は、国内外で高い評価を受ける重要な産業です。ショベルカーやクレーン、油圧ショベルなどの建設機械は、建築現場や鉱山での作業を効率化し、安全性を高める役割を果たしています。

しかし、業界は現在、いくつかの深刻な課題に直面しています。ライフサイクルコストの低減や自然災害に強いインフラの整備、労働人口不足による安全性の低下、地球温暖化の進行、資源の大量消費と枯渇などが挙げられます。これらの問題は、業界全体の持続可能性に影響を及ぼす可能性があり、各企業は技術革新や新しい取り組みを通じて解決策を模索しています。本記事では、日本の建設機械業界の現状と課題、そして各社の取り組みについて詳しく解説します。

建設機械業界の概要

建設機械業界の役割と重要性

建設機械業界は、社会インフラの開発・整備を効率的かつ安全に行うための重要な役割を担っています。建設機械は、人の力では不可能な大規模な作業を代行し、工期の短縮や省力化、災害復旧などに貢献しています。特に日本では、地震や台風などの自然災害が多いため、建設機械の重要性は非常に高いです。建設機械業界は、景気の先行指標とも呼ばれ、経済活動の活性化に寄与しています。

主要製品とその用途

建設機械業界の主要製品には、ショベルカー、クレーン、油圧ショベル、フォークリフト、ブルドーザー、舗装機械、トンネル掘削機などがあります。これらの機械は、建築現場や鉱山、道路工事、災害復旧など、さまざまな場面で使用されます。例えば、ショベルカーは土砂の掘削や運搬に、クレーンは重い資材の持ち上げや移動に使用されます。これらの機械は、作業の効率化と安全性の向上に大きく貢献しています。※1

日本の建設機械業界の国際的地位

日本の建設機械業界は、国際的にも高い競争力を持っています。日本製の建設機械は、品質の高さと技術力で世界中から評価されており、輸出比率は70%に達しています。年間約3兆円の貿易黒字を生み出し、世界シェアは26.1%を占めています。特に小松製作所や日立建機、コベルコ建機、住友建機などの企業は、世界市場での存在感を示しています。今後も、環境対応や技術革新を通じて、国際競争力をさらに高めていくことが期待されています。※1

直面している主な課題

日立建機グループの総合報告書2021 ※2 では、以下6つの課題があげられています。

1. ライフサイクルコストの低減

建設機械のライフサイクルコストは、購入後のメンテナンスや修理、運用にかかる費用が大きな割合を占めています。これを低減することは、業界全体の利益を最大化するために重要です。IoT技術を活用した機械の状態監視や、故障予兆検知サービスの導入により、メンテナンスの最適化が進められています。これにより、ダウンタイムを削減し、稼働率を最大化することが可能です。

2. 自然災害に強いインフラの整備

日本は地震や台風などの自然災害が頻発する国であり、これに対応するための強靭なインフラの整備が求められています。建設機械業界では、耐災害性を考慮した機械や技術の開発が進められています。特殊機械やアタッチメントの情報提供、緊急通行車両確認証明書の発行支援など、災害時の迅速な対応が可能な体制が整えられています。

3. 労働人口不足に起因する安全性の低下

少子高齢化により、労働力の確保が難しくなり、安全性が確保されていない状態での作業が増加するリスクがあります。特に建設現場では、人と大型機械が近距離で作業するため、重大事故のリスクが高まっています。遠隔操作技術や自動運転機能の導入により、労働者が危険な現場に直接立ち入らなくても作業が行えるようにする取り組みが進められています。

4. 地球温暖化の進行への対応

地球温暖化は、建設機械業界にとっても大きな課題です。CO2排出削減に向けた低燃費機械や電動建設機械の開発が進められています。また、再生可能エネルギーの活用を進め、建設機械の運用における環境負荷を軽減する取り組みが行われています。製品のライフサイクル全体での環境配慮を推進し、サプライチェーン全体での温暖化対策を強化しています。

5. 労働人口不足に起因する生産性の低下

労働力不足は、プロジェクトの進行速度や生産性に直接影響します。ICTやIoTを活用して、効率的な作業管理と自動化を推進することで、生産性の向上が図られています。建設現場のデジタルツイン技術により、シミュレーションを行い最適な作業手順を計画することが可能です。遠隔支援システムやARを活用して、現場作業員のスキル不足を補完する取り組みも進められています。

6. 資源の大量消費と枯渇

建設業界は多量の資源を消費します。循環型社会の実現に向けて、廃材のリサイクルや再利用を推進することが求められています。高効率な建設機械の開発により、資源の消費を最小限に抑える取り組みが進められています。エコデザインを導入し、製品の廃棄時にも環境に優しい処理が可能な構造を採用することが重要です。

各社の取り組みと事例

ライフサイクルコストの低減への取り組み

IoT技術を活用したメンテナンスの最適化

日立建機では、ICTやIoT技術を駆使して機械の状態をリアルタイムで監視し、メンテナンスの最適化を図っています。これにより、故障の予兆を早期に検知し、ダウンタイムを削減することが可能です。部品の品質向上や供給体制の確立、サービスエンジニアの技術力向上にも注力しています。

同社の「ConSite®」は、IoT技術を活用して機械の状態をリアルタイムで収集・解析し、故障の予兆を検知するサービスです。これにより、故障する前に修理や部品交換を行うことが可能となり、ライフサイクルコストの低減に寄与しています。※3

自然災害に強いインフラの整備への取り組み

特殊機械やアタッチメントの情報提供

日本建設機械施工協会は、東日本大震災直後に特殊機械やアタッチメントの情報を迅速に提供し、災害対応を円滑に進めました。これにより、必要な機械の手配がスムーズに行われ、初動対応の円滑化に貢献しました。また、緊急通行車両確認証明書の発行支援を行ったことで迅速な復旧支援を可能にしました。これにより、被災地での復旧活動が迅速に進められ、社会的な評価も高まりました。※4

労働人口不足に対する安全性の向上策

自動運転ショベルの複数台同時稼働

コベルコ建機と安藤ハザマは、複数の自動運転油圧ショベルを同時に管理・稼働させるシステムの実証実験を行いました。これにより、建設現場での省人化と生産性の向上が確認されました。今後は、各現場の状況に合わせてシステムの最適化を図り、さらに効率を高めていく予定です。※5

技術革新と未来への展望

IoT、AIの活用による生産性の向上

IoTやAI技術の活用により、建設機械の効率化と生産性の向上が期待されています。リアルタイムでのデータ収集と解析により、最適な作業手順を計画し、効率的な作業管理が可能となります。これにより、労働力不足の問題を克服し、生産性を高めることができます。

環境負荷の低減と持続可能な開発

環境負荷の低減と持続可能な開発は、建設機械業界にとって重要な課題です。低燃費機械や電動建設機械の開発、再生可能エネルギーの活用により、環境への影響を最小限に抑える取り組みが進められています。これにより、企業の社会的責任を果たし、持続可能な事業運営を実現することが期待されています。

自動化とロボット技術の進展

自動化とロボット技術の進展により、建設現場での安全性と効率性が向上しています。自動運転技術や遠隔操作技術の導入により、危険な作業を人手に頼らずに行うことが可能となり、労働力不足への対応が進められています。これにより、安全な作業環境の実現が期待されています。

まとめ:問題点の解決に向けた業界全体の取り組みとその重要性

日本の建設機械業界は、ライフサイクルコストの低減や自然災害に強いインフラの整備、労働人口不足による安全性の低下、地球温暖化の進行、資源の大量消費と枯渇など、さまざまな課題に直面しています。しかし、各企業は技術革新や新しい取り組みを通じて、これらの問題に対する解決策を模索しています。IoTやAI、ロボット技術の活用により、生産性の向上や安全性の確保、環境負荷の低減が期待されています。業界全体での取り組みが進むことで、持続可能な事業運営が実現し、国際競争力の向上にも寄与することが期待されています。

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参考情報:

※1 増井麻里子 著 「建設機械業界 しくみとビジネスがしっかりわかる教科書」

※2 日立建機株式会社『日立建機グループ 統合報告書 2021 | 建設機械を取り巻く事業環境』(P.13 – p.14)
https://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2021/08/cf2021_all-1.pdf

※3 日立建機株式会社 『部品・サービス 安定稼働に貢献して、マシンダウンゼロへ』
https://www.hitachicm.com/global/ja/products/parts-service/

※4 JCMA 「平成23年度建設施工と建設機械シンポジウムパネルディスカッション『東日本大震災 ~建設機械が果たした役割とこれからの課題~』」
https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2012/05/074.pdf

※5 コベルコ建機株式会社『自動運転ショベルの複数台同時稼働・管理による省人化の実現について』
https://www.kobelcocm-global.com/jp/news/2023/230511.html

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