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Revitのファミリで場所に合わせた一般モデルを作る!効率と品質を両立する手法

はじめに

建設業界では、BIM(Building Information Modeling)の普及が進み、設計から施工、運用に至るまでのプロセス全体でデータを一元管理し活用する流れが加速しています。その中でも、Revitのファミリは、プロジェクトの効率性と精度を両立させる上で欠かせない存在となっています。ファミリは、建築要素をモデル化するための基本的な単位であり、その柔軟性とカスタマイズ性が、設計者や施工者にとって大きな武器となります。

特に、現代の建築設計では、場所や用途に応じたモデルの最適化が求められています。例えば、都市部の高層ビルと郊外の低層住宅では、求められる設計条件や施工環境が大きく異なるため、適切なファミリの選定と作成がプロジェクトの成否を左右します。Revitファミリは、これらの多様なニーズに応えるためのツールとして、設計者がプロジェクトごとに必要なモデルを効率的に作成し、クライアントの期待を超える成果を提供することを可能にします。

本記事では、Revitファミリの基本的な概念から実務における応用例までを取り上げます。場所ごとに異なる条件を考慮した一般モデルの作成手法や、効率を重視したファミリ作成のテクニック、さらには設計者と依頼者のコミュニケーションを円滑にするためのポイントについて詳しく解説します。実務に即した形でRevitファミリを最大限に活用し、設計の効率化と品質向上を両立する方法を掘り下げます。

Revitファミリの基礎知識

Revitファミリは、BIMプロジェクトの中で建築要素を定義する基礎的な構成要素です。これを理解し、適切に活用することが設計や施工プロセス全体の効率と精度を向上させる鍵となります。本章では、ファミリの種類、役割、作成の基本について詳しく説明します。

ファミリの種類と役割

Revitファミリは、その用途や特性に応じて3つの種類に分類されます。それぞれの特徴を正しく理解することで、プロジェクトごとに最適なファミリを選択できます。

  1. システムファミリ
    システムファミリは、壁、床、天井、屋根などの建築の基本要素を定義します。これらはRevitに組み込まれており、プロジェクトに直接使用可能です。設計者が基本的な構造や仕上げの設定を素早く行えるため、システムファミリは特に初期設計段階で重宝されます。例えば、壁の厚さや断熱性能の違いを反映させることで、設計の精度を高めることができます。
  2. ロード可能ファミリ
    ロード可能ファミリは、外部で作成された部品や設備をRevitプロジェクトに読み込むためのファミリです。家具、照明器具、設備機器など、特定の仕様を持つ要素をモデル化する際に使用されます。このファミリは、標準的なパーツをベースに、プロジェクトのニーズに合わせてカスタマイズが可能です。これにより、クライアントの要求に応じた柔軟な設計が実現します。
  3. インプレースファミリ
    インプレースファミリは、プロジェクト内で特定の条件に応じて直接作成されるカスタムファミリです。複雑な形状や一度きりのデザインが必要な場合に適しています。例えば、現場の条件に合わせたオリジナルのモニュメントやデザイン装飾を作成する際に活用されます。これにより、設計の自由度が広がり、独自性の高いプロジェクトに対応できます。

ファミリ作成の基本要素

ファミリを効果的に作成するためには、以下の3つの基本要素を理解することが重要です。

  1. テンプレートの選択
    ファミリを作成する際の最初のステップがテンプレートの選択です。Revitには、異なる用途に応じたテンプレートが用意されています。適切なテンプレートを選ぶことで、作成作業の手間を大幅に削減できます。たとえば、家具モデルを作成する場合には「Furniture Template」を選択することで、寸法や材質の設定が容易になります。
  2. 参照面(Reference Plane)の設定
    参照面は、モデルの基準となる平面を定義します。これを適切に設定することで、モデルの配置や向きが正確に制御され、作業の効率が向上します。特に複雑な形状のモデルでは、参照面の配置が設計全体の整合性を保つ鍵となります。例えば、窓やドアのファミリでは、壁に対する正確な位置合わせが求められます。
  3. パラメータの活用
    パラメータは、ファミリに可変性を持たせるための設定項目です。寸法、材質、表示設定などをパラメータ化することで、異なる条件下で同じファミリを再利用することが可能になります。たとえば、同じファミリ内で異なるサイズのテーブルを作成する場合、長さや幅をパラメータとして設定することで、簡単に調整できます。また、プロジェクト全体の一貫性が向上し、設計変更にも迅速に対応できます。

場所に応じた一般モデルのファミリ作成

建築設計において、場所ごとの条件や用途を考慮したファミリの作成は、プロジェクトの成功に直結します。適切な設計要件を把握し、それに応じた柔軟なモデルを作成することで、効率性と品質の両立が可能になります。本章では、場所に応じた設計要件の考慮方法と、それを実現するためのパラメータ活用について詳しく解説します。

場所ごとの設計要件を考慮したファミリ

プロジェクトの立地条件や用途により、ファミリに求められる仕様は大きく異なります。場所ごとの特性を正確に捉えることが、最適なモデル作成の第一歩です。

屋外設置物の場合

項目説明
材質パラメータ耐候性の高い材料(例:ステンレスやアルミニウム)を設定。
表示パラメータ周囲の視認性を高めるため、色や反射率を調整。

具体例: 街路灯のモデルでは、異なる高さや光の広がりをシミュレーションするパラメータを設定し、設置環境に応じた最適化が可能です。

室内家具の場合

項目説明
寸法パラメータ長さ、幅、高さを可変にして異なるスペースに適応。
材質パラメータ木材、金属、布地などの選択肢を用意。
配置ガイド他の家具や壁との干渉を防ぐ参照面の設定。

具体例: オフィスデスクのモデルでは、ケーブル管理用のオプションを含めたカスタマイズが、現代的なオフィス設計において有用です。

パラメータの柔軟な活用

場所に応じた設計を可能にするためには、パラメータの設定が重要です。以下は、パラメータを活用する具体的な方法です。

  1. 寸法パラメータ
    長さ、幅、高さといった基本的な寸法をパラメータ化することで、異なる設置環境やクライアントの要求に対応できます。たとえば、複数のテーブルサイズを1つのファミリで管理する場合、寸法パラメータを活用すればサイズ変更が簡単です。
  2. 材質パラメータ
    ファミリに適用する材質を可変にすることで、1つのモデルを複数の用途に再利用できます。たとえば、同じ形状のベンチでも、屋外用には耐久性の高い材質、室内用には装飾性の高い材質を設定することが可能です。
  3. 条件付きパラメータ
    パラメータ間の関係性を条件式で設定することで、モデルの挙動を制御できます。たとえば、特定の高さ以上の場合に補強材を追加する仕様を設定することで、設計精度を向上させます。
  4. ビュー固有のパラメータ
    表示設定をパラメータ化することで、図面ごとに異なる情報を表示することができます。たとえば、設計段階では詳細な寸法を表示し、施工段階では主要な要素のみを強調するなど、用途に応じた柔軟な表示が可能です。

このように、場所ごとの要件を正確に捉え、適切なパラメータを設定することで、設計の柔軟性と効率性を両立するファミリが作成できます。これにより、設計者は多様なプロジェクトに対応しやすくなり、クライアントへの価値提供が一層高まります。

ファミリ作成の効率化テクニック

Revitファミリ作成を効率化することは、設計者の時間を節約し、プロジェクト全体の生産性を高める重要なポイントです。本章では、効率化のための具体的なテクニックを説明します。

テンプレートの再利用

ファミリ作成を効率化する基本的な方法の一つが、過去のプロジェクトで使用したテンプレートの再利用です。例えば、家具や設備のファミリで既存のテンプレートを活用すれば、一から作業を始める必要がなく、カスタマイズするだけで完成します。共通のライブラリを整備し、ファミリ名やテンプレート名に明確な命名規則を設けることで、プロジェクト間の一貫性を保ちながら効率よく作業できます。また、事前に標準化されたパラメータを設定しておけば、新しい条件に応じた調整も迅速に行えます。

具体例: 過去のオフィスデスクのテンプレートを基に、クライアントごとに異なるサイズや仕上げを設定し、新しいデザインを効率的に作成。

モデルの簡略化

ファミリモデルの複雑さを必要最小限に抑えることで、作業効率が向上し、プロジェクト全体のパフォーマンスを改善できます。ディテールを過剰に作り込むと、ファイルサイズが大きくなり、操作性が低下します。そのため、設計段階では必要な情報だけを反映させ、詳細な要素は施工図面用に別途作成するのが一般的です。また、LOD(Level of Detail: 詳細度)をプロジェクトの用途に応じて設定し、過剰な表現を控えることで、適切なレベルのモデルを提供できます。

具体例: 初期設計では柱や梁の形状を単純化したモデルを使用し、最終段階で接合部や仕上げのディテールを追加する。

データ交換を考慮した設計

異なるチームやソフトウェア間でデータをスムーズに共有できるファミリ設計は、プロジェクトの成功に欠かせません。IFC形式などの業界標準フォーマットを採用することで、他の設計ツールとの互換性を確保できます。また、材質や製品コードといった汎用性の高いパラメータを設定することで、調達部門や施工チームと簡単に情報を共有可能です。さらに、ファミリの中で使用する属性やパラメータを明確に定義し、設計チーム全体で共有することで誤解を防ぎ、スムーズなコラボレーションを実現します。

具体例: 家具のモデルに材質や製品コードの情報を含め、設計データを調達部門に渡す際に追加の説明を不要にする。

ワークフローの標準化

効率化を進めるには、ファミリ作成のワークフローを標準化することが重要です。作成手順やルールを明文化し、ドキュメント化することで、チーム内のスキル差を減らし、新しいメンバーでも迅速に作業を始められる環境を整えます。レビュー手順を取り入れることで、作成したファミリがプロジェクトに適しているかを事前に確認でき、無駄やミスを減らせます。また、定期的なトレーニングを行うことで、全員が同じ基準で作業を進められるようになります。

具体例: ファミリ作成用のガイドラインを作成し、テンプレート選択やパラメータ設定の手順を統一。定期的にレビュー会議を開き、品質を維持。

ファミリ作成者と依頼者が知るべきポイント

Revitファミリの作成においては、作成者と依頼者の円滑な連携が不可欠です。双方が作業の流れや目的を正しく理解し、効果的に協力することで、プロジェクト全体の効率と品質を大幅に向上させることができます。本章では、それぞれの役割と重要なポイントについて詳しく解説します。

依頼者へのヒント

ファミリを依頼する際には、明確で具体的な要件定義が成功の鍵を握ります。以下に、依頼者が考慮すべきポイントを示します。

  1. 要件の具体化
    必要な寸法、用途、材質など、設計の条件を詳細に伝えることが重要です。例えば、「長さを2mから5mの範囲で調整可能」「材質はステンレスと木材の2種類から選択」など、具体的な指示をすることで、作成者が適切な設定を行いやすくなります。
  2. 期待する成果の共有
    完成したファミリをどのように活用する予定なのかを共有することで、作成者がその用途に最適な設計を行えます。たとえば、「設計図面で詳細に表現したい」や「施工時に簡易的に使用できるモデルが必要」など、目的を明確に示しましょう。
  3. フィードバックの頻度とタイミング
    初期段階で作成されたモデルに対し、早い段階で意見を提供することで、修正作業を最小限に抑えることができます。レビューのタイミングをあらかじめ設定するのも有効です。

具体例: 会議用テーブルのファミリを依頼する場合、「幅2m、奥行き1m、高さ75cmで、材質を変更可能に」といった詳細な仕様を提供し、設計図での使用目的を伝えることが、期待どおりのファミリを迅速に作成する助けとなります。

作成者へのヒント

ファミリを作成する側には、依頼者の要望に基づいて柔軟かつ効率的に対応する能力が求められます。以下は、作成者が留意すべきポイントです。

  1. 再利用性を意識した設計
    一度作成したファミリが将来のプロジェクトでも活用できるよう、汎用性の高い設定を行いましょう。たとえば、寸法や材質を変更可能にすることで、さまざまなプロジェクトに対応可能です。
  2. ドキュメント化の徹底
    ファミリの構造や設定内容を文書化することで、他のチームメンバーや後続の作業での活用が容易になります。文書には、使用されたテンプレートやパラメータの説明、特別な注意事項などを含めると効果的です。
  3. テストとレビューの実施
    作成したファミリが期待どおりに機能するかを確認するため、実際のプロジェクト内で試用します。また、他のメンバーからレビューを受けることで、改善点を早期に特定できます。

具体例: 建築プロジェクトで使用される窓ファミリの作成時、幅、高さ、材質を可変に設定し、使用方法を詳しく説明するドキュメントを作成することで、結果的に複数のプロジェクトで再利用され作業時間の削減へ貢献できます。

双方に共通する重要ポイント

依頼者と作成者の双方が理解すべき共通のポイントも存在します。

  1. 明確なコミュニケーション
    プロジェクトの目的や制約条件を初期段階で共有し、双方の期待値を一致させることが重要です。
  2. 現実的なスケジュール設定
    作業に必要な時間を正確に見積もり、無理のないスケジュールを設定することで、品質を犠牲にすることなく進行できます。
  3. 継続的な取り組みの改善
    ファミリ作成における手順や成果物を定期的に振り返り、次回以降の作業に反映させる仕組みを構築します。

これらのポイントを実践することで、依頼者と作成者の連携がスムーズになり、プロジェクト全体の効率と品質が向上します。コミュニケーションの質を高めることで、期待以上の成果物を得られるでしょう。

まとめ

Revitファミリの作成は、建築設計や施工の効率と品質を向上させる重要な要素です。本記事では、ファミリの種類や効率的な作成手法、実例を通じた活用方法、そして作成者と依頼者の連携のポイントを解説しました。これらを理解し実践することで、プロジェクト全体の生産性を大幅に向上することが期待できます。

ファミリ作成を効率化するには、テンプレートの再利用やモデルの簡略化、パラメータの活用が鍵となります。特に、過去のプロジェクトで使用したファミリを基に新しい条件に適応させる手法は、時間を節約しつつ高品質な成果物を提供するために効果的です。また、屋内外の異なる設計条件に対応するために柔軟な設定を行い、再利用性を高めることが重要です。

ファミリ作成を成功させるためには、作成者と依頼者の連携が不可欠です。依頼者は明確な要件を提示し、作成者は汎用性の高い設計を心がけることで、双方の期待に応えるファミリが完成します。この協力体制により、プロジェクト全体の効率と品質が向上するでしょう。

Revitファミリは、設計から施工までを支える基盤となる重要なツールです。本記事の内容が、効果的なファミリ作成の一助になればと思います。

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