AutoCADのオートスナップを使いこなす!作図効率を劇的に向上させる設定&活用術
1. はじめに
AutoCADでの作図に悩む方、特にAutoCAD初心者として基本的なCAD操作を学び始めたばかりの方にとって、正確な図面の作成をスピーディーにこなすことは大きな課題ではないでしょうか。
そして、図面を描く際、ほんの少しのずれが大きな誤差につながることも多々あります。そんなときに役立つのが、作図効率向上を実現する「オートスナップ(AutoSnap)」です。正確さと作図スピードの両立を目指すうえで、オートスナップを使いこなすことはCAD設計の基盤ともいえます。
本記事では、オブジェクトスナップ設定の基礎からオートスナップ設定の具体的なやり方、さらには効率化に直結する活用術までを整理して紹介します。初めてAutoCADを触る方でもわかりやすいよう、ステップを分けてスナップツールのポイントを解説します。最初に押さえるべき要点を知っておくことで、短期間でCAD作業効率化を達成し、CAD作図作業の質を大きく向上させましょう。
2. オートスナップの基本理解
引用:AutoCADヘルプ:https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-6FB309A8-2696-4383-8277-950E9E2756A8
オートスナップとは、AutoCADにおいてオブジェクトスナップをより直感的かつ視覚的に扱うための仕組みであり、作図効率向上を目指すうえで欠かせない機能です。
まず、そもそも「オブジェクトスナップ」自体が何かというと、図面上の特定ポイント(例えば端点や交点など)をピタリと捉えられるようにCAD操作を補助してくれる仕組みのことを指します。これをさらに見やすくし、かつ操作をスムーズにするのがオートスナップの強みです。オートスナップ設定を行うことで、カーソルを対象の点に近づけた際にスナップマーカーが表示されたり、視覚補助機能によって任意の点をつかみやすくなります。
この機能があるおかげで、寸法や角度を厳密に入力しなくても、CAD設計の初期段階から精度向上につなげられるのです。特に、AutoCAD初心者には視覚的な理解がしやすくなるメリットがあります。描いた図形に対して、どの点が端点であるかを示す「スナップマーカー」が明示的に表示されるため、図面上で対象点を探し回る時間がかなり短縮されるはずです。
さらに、将来的にCADプロフェッショナルを目指す方々にとっては、オートスナップを扱う感覚を早期に身につけること自体が重要な積み重ねとなります。図面が複雑化しても、慣れたスナップツールを使いこなせることで、任意の寸法や座標を堅実に捉えられるようになり、作図スピードの底上げにも寄与します。
2.1. オートスナップとは何か?
オートスナップは「オブジェクトスナップ」を補佐する役割を持ち、目に見える形でスナップヒント(ガイドやマーカー)を与えてくれる機能です。
オブジェクトスナップが有効な状態だと、端点や中点、交点などにカーソルが近づいた際に小さなアイコンが表示され、そこが「選択できるスナップ点」であると教えてくれます。オートスナップをオンにすると、これらのアイコンがよりはっきりとした形で見られ、かつ視覚補助機能が働いてカーソルをその点に寄せやすくなるのです。
例えば、線分の端点を確実に指定したいとき、オートスナップ設定を有効にしておけば、画面上で狙ったところを探す時間をほぼゼロにできます。建築図などの精緻な図面ではミリ単位の誤差が問題になる場合もあり、人間の目だけでは間違いが発生しがちです。ですが、オートスナップは図面の要素を自動認識してくれるので、ダイナミックにスナップマーカーが表示され、視覚的な確認が簡単になります。
こうした機能は、初心者の場合は「どこをクリックすれば正確に作図できるのか分からない」という状況を解決し、中級者以上なら「面倒な位置合わせを効率化したい」というニーズに応えてくれます。複数のパーツをずれなく配置したり、作図テクニックを高めたい人にも効果的であり、大きな図面を扱う現場でも役立つテクニックのひとつです。
なお、オートスナップを深く理解するには、どのスナップモードがどのように図面要素と連携するのかを一つずつ把握していくステップが必要です。端点(Endpoint)や中点(Midpoint)、交点(Intersection)のような代表的なオブジェクトスナップを適宜組み合わせることで、どんな形状でも精度の高い配置が可能となります。
2.2. オートスナップの主要な機能
オートスナップを構成する主要な機能には、スナップマーカー、視覚補助機能、オブジェクトスナップ トラッキングなど、複数の視点から作図を助ける仕組みが含まれています。
一つ目の「スナップマーカー」は、カーソルがスナップ可能な点に近づいたときに特定のアイコンが表示される機能です。例えば、端点では小さな四角形、中点では三角形、交点はX印といった具合に、図形上の種類別にマーカーが切り替わります。これにより、視認性が高まり、どこが何のスナップなのかを直感的に把握しやすくなります。
二つ目の 「視覚補助機能」 は、カーソルを対象のスナップ点に近づけると、視覚的なマーカーやツールチップが表示され、より直感的にスナップ位置を選択できる仕組みです。これにより、マウスの動きが多少ズレても、適切なスナップ点を視認しやすくなり、正確な位置指定が可能になります。
また、複数のスナップ点が密集している場合でも、TAB キーを押すことで候補を順に切り替えながら選択できる ため、意図したポイントをスムーズに指定できます。オートスナップを活用することで、手動での微調整の手間を減らし、より効率的な作図作業が実現できます。
三つ目の 「オブジェクトスナップトラッキング(Osnap Tracking)」 は、カーソルをスナップ点に合わせた際に一時的な補助線(トラッキングガイド)を表示し、正確な位置決めを容易にする機能です。例えば、ある端点を軸にして水平または垂直方向へ延長したい場合、この機能を利用するとカーソルを特定のスナップ点に合わせた際に補助ラインが表示され、正確な位置決めが容易になります。
この機能を活用すれば、マウス操作だけで基準点からの位置関係を視覚的に把握でき、計測や補助線を引かなくてもスムーズに作図が進められます。習熟度に関わらず、作図の効率を向上させる重要な機能であり、複雑な図面でも誤差なく作業できるのが特徴です。
これらの機能を総合的に活用することで、単純な線の作図から複雑な形状の組み立てまで幅広く応用できます。特に初めてAutoCADに触れる場合、最初にこのオートスナップの主要な機能を理解しておくと、作図の品質やスピードに大きな差が出るでしょう。
3. オートスナップの設定方法
オートスナップの恩恵を十分に受けるには、正しい設定方法を押さえておくことが不可欠です。
初期の段階で設定を適切に行っておかないと、思うようにスナップが働かず、かえって作図が面倒になるケースもあります。ここでは、基本的な設定手順と、より使いやすくカスタマイズするためのポイントを確認してみましょう。
設定作業においては、まず「オブジェクトスナップ設定」を呼び出すところから始まります。AutoCADで「DSETTINGS」コマンドを用いるか、画面下部ステータスバーから「OSNAP」ボタンを右クリックしても同様の設定ダイアログにアクセスできます。そこに並んだチェックボックスが、一般的なスナップモード(端点や中点、交点など)に対応しているので、必要なものにチェックを入れておくことが最初のステップです。
さらに、CAD初心者のうちは、「極トラッキング」や「オブジェクトスナップトラッキング」なども同時に利用することが多いでしょう。その際は「追跡」をONにするかどうかも確認します。特にオブジェクトスナップトラッキングを使いこなせば、複数のスナップ点から仮想ラインを交差させて目標点を一発で指定できるため、作図テクニックを格段にアップグレードさせることができます。
また、後述するようにAPERTURE(アパーチャ)システム変数を調整すると、カーソルがオブジェクトスナップを認識する範囲を変更できます。範囲が広すぎると複数のスナップ点を拾いやすく、逆に狭すぎると必要な点まで逃してしまうため、適度な数値を見つけると快適さが増すでしょう。特にディスプレイ解像度やモニターサイズが異なる環境下では、この数値のチューニングが精度向上に役立ちます。
3.1. 基本的な設定手順
オートスナップを使いこなすために、まずはAutoCADの設定ダイアログで行う基本操作を確実に理解しておきましょう。
一連の流れとしては、以下のステップで設定を進めます。まず、コマンドラインに「DSETTINGS」と入力してEnterキーを押すか、画面下部ステータスバーのオブジェクトスナップ(OSNAP)部分を右クリックし、「設定」を選択します。すると、オブジェクトスナップ設定のタブが含まれる「オプション」ウィンドウが開くはずです。
次に、「ドラフティング」または「スナップとグリッド」などのタブを確認します。ここに、端点や中点、交点をはじめとする主要なスナップの一覧が並んでおり、必要なスナップにチェックを入れていきます。オートスナップ機能を最大限に活かすには、多用するスナップは常にオン、ほとんど使わないスナップはオフにするなど、用途に合わせてON/OFFを使い分けるのがコツです。
さらに、オートスナップマーカーの色なども変更できます。例えば暗い背景を使っている方はスナップマーカーの色を見やすい明るめに変更するなど、視認性を高める設定が可能です。CAD設計での作図効率向上を狙うなら、こうした画面設定の細かなカスタマイズも意外と大きな効果を発揮します。
最後に設定が終わったら、OKボタンを押してウィンドウを閉じれば完了です。実際にLINEコマンドやCIRCLEコマンドなどを用いて図形を描きながら、スナップマーカーが正しく表示されているか、視覚補助機能が期待通りに働くかを確認しましょう。うまくいっていれば、近づくだけでスナップ点を捉えてくれる快適な操作性をすぐに実感できるはずです。
3.2. スナップオプションのカスタマイズ
基本のオートスナップ設定を押さえたら、さらに使いやすくするために細部をカスタマイズするのがおすすめです。具体的には、スナップ感度設定やショートカットキーの割り当てを最適化するだけで、作図スピードが大幅に上がります。
例えば、スナップ感度設定(APERTUREなど)を調整すると、カーソルをどれだけ近づければスナップが認識されるかを制御できます。数値が小さすぎると、厳密に狙った点にしかスナップしないため、マウス操作が細かくなりすぎて疲れやすいです。一方で大きすぎると、複数のスナップが重なるときに不要な点を拾ってしまう恐れがあります。画面解像度や作図対象のサイズに合わせて、心地よいバランスを見つけることが重要です。
また、ショートカットキーによるオートスナップショートカットの設定も見逃せません。F3キーでオブジェクトスナップ全体のON/OFFを切り替えたり、Shift+右クリックで一時的に別のスナップモードを呼び出したりと、多彩な操作が可能になります。たとえば多くの点が入り乱れる複雑な図面を処理中、必要なタイミングだけ特定のスナップを呼び出したい場合に、この一時切り替えがとても便利です。
さらに、オートスナップの視覚的なフィードバックが使いにくいと感じる場合は、システム変数「AUTOSNAP」の値を調整する 方法もあります。これにより、スナップマーカーの表示の有無や、ツールチップ(スナップのヒント)の表示タイミングを変更 できます。例えば、スナップマーカーが頻繁に表示されすぎて作業しづらい場合は、「AUTOSNAP」の値を調整してツールチップの表示を最適化 すると、視認性が向上し、スムーズに作図を進めることができます。
作業環境に合わせてオートスナップの設定をカスタマイズすることで、余計なストレスを減らし、より快適に正確な作図ができるようになるでしょう。
4. オートスナップの活用テクニック
オートスナップの設定を整えたら、次に活用術を学んで実践で役立てる段階です。
多くのユーザーが意外と気づいていないのは、一つひとつのスナップ機能を単独で使うだけでなく、それらを組み合わせることで大きな威力を発揮するという点です。例えば、端点スナップと中点スナップを同時にオンにしておき、状況に応じてショートカットキーを活用しながら最適なポイントを瞬時に選ぶ、という流れを身につけると作図速度が向上します。
また、オブジェクトスナップトラッキングを絡めると、複数のスナップ点から延長線や参照線を導き出し、その交点を自動で取得できます。たとえば、ある図形の端点と別の図形の中点を参照に「まっすぐ横に線を伸ばした先で交わる点」を狙う、といった高度な指定も簡単です。こうしたトラッキング機能は、建築図でも複合的な寸法取りをする際に便利で、無駄な計算ミスも減らせます。
活用テクニックは一朝一夕では習得しきれない部分もありますが、焦らずに「どの状況でどのスナップをどう組み合わせるか」を意識しながら練習してみてください。特に建築系のCAD作図作業では、細かい寸法や角度を知らず知らずのうちにきっちり合わせるスキルが求められますが、こうした場面でオートスナップが真価を発揮してくれます。
4.1. 効率的なスナップの使用法
効率的にスナップツールを使いこなすためには、「必要最小限かつ状況に応じて切り替える」のが基本方針です。
多くのスナップモードを無条件にオンにすると、一見便利そうに思えますが、実際はカーソルがどこにスナップしているのか分かりにくくなり、時間を浪費する原因にもなりかねません。例えば、端点や中点の指定が明らかな状況なら、交点スナップをオフにするといった具合に、使用頻度や場面ごとに調整を行うのが理想です。そうすることで、確実かつ素早い選択が可能になります。
また、AutoCADが提供する「オブジェクトスナップメニュー(Shift+右クリック)」 を活用すると、作図の効率をさらに向上させることができます。たとえば、描画コマンド実行中に SHIFT + 右クリック するだけで、一時的に特定のスナップモードを指定できるため、通常はオフにしているスナップでも、必要な時だけオンにしてピンポイントで利用できます。これは複数のモードが干渉して意図しない点を拾ってしまうのを防ぐためにも有効です。
「Tab」キーを使った候補スナップの切り替えも、大きなアドバンテージにつながります。カーソルが複数のスナップ点に近い場合、Tabキーを押しながら目的のスナップマーカーに切り替えることで、狙ったポイントを確実に選べるのです。余計なマウス移動を最小限に抑えられ、特に複雑な図面で違いを実感できるでしょう。
このように、あらゆるシーンで同じスナップ設定に頼るのではなく、都度必要なモードを選別し、ショートカットキーなどを駆使して最短操作で作図を行う方法を身につけると、短時間で正確に進められる「作業の質」と「スピード」の両立が可能になります。
4.2. ショートカットキーとその利用
AutoCADでは豊富なショートカットキーが用意されており、オートスナップに関する操作も簡単に切り替えられます。
代表的なのはF3キーで、これはオブジェクトスナップのON/OFFを瞬時に切り替えるものです。例えば、通常は端点や中点などを頻繁に使いたいからONにしておきたい一方で、大量の線が交差しているところではスナップが多すぎて逆に作図しにくいと感じることがあります。そんなときはF3で一時的にOFFにして、狙いたいラインだけを目視で指定してから再度ONに戻す、といった柔軟な使い方をするとよいでしょう。
また、Shift+右クリックで呼び出せるメニューは、その場で一時的に特定のスナップモードを指定できます。 例えば、通常は端点(Endpoint)や中点(Midpoint)などをデフォルトでONにしている場合でも、一時的に 接線(Tangent)や最近点(Nearest) のスナップを使いたいときにShift+右クリックでスナップモードを切り替えられます。さらに、Tabキーを押すと候補のスナップマーカーが順番に切り替わっていくので、視覚的にどの点を選択するかを切り替えられる点もうれしい機能です。
また、自分の好みに合わせてユーザー独自のキーボードショートカットを定義することもできます。たとえば、APERTUREの値を変えるコマンドをショートカット化したり、特定のスナップモードをON/OFFするLISPを組んでショートカットキーへ割り当てたりする上級者向けの手段も存在します。こうした調整を習得すると、建築学部の課題などで新しい図面を描く際にも、素早く適した環境に切り替えて作業できるようになるでしょう。
ショートカットキーを使いこなすことは、CADトラブルシューティングにもつながります。もし急にスナップが思うように効かなくなっても、F3やShift+右クリックで状態確認をしながら問題を切り分けることができるからです。結果として余計な操作を減らし、学習時間や作図コストを下げる効果も期待できます。
4.3. オブジェクトスナップとの組み合わせ
オートスナップは、そもそも「オブジェクトスナップ」の概念があって初めて機能します。そこで大切なのが、ベースとなるオブジェクトスナップの設定を理想的に組み合わせることです。
端点(Endpoint)や中点(Midpoint)、交点(Intersection)など頻繁に使う基本的なモードは、常にオンにしておくのが一般的ですが、矩形や円弧を多用するなら接線(Tangent)や四半円点(Quadrant)も活きてきます。逆に、特定のケースでしか使わないような一部のスナップ(平行や垂線など)は、普段はオフにして、必要なタイミングで一時的に呼び出すやり方が作図効率向上には適しています。
また、オブジェクトスナップトラッキングも欠かせません。例えば、二つの異なるスナップ点から仮想のラインを伸ばして、その交点にカーソルが近づいた際に自動的に点を捉えてくれるという仕組みをうまく利用すれば、原点や基準線を使わなくてもテンポ良く位置合わせができます。図面の作成時に「どこからどこまで測ってこの点を決めればいいのか」などをいちいち計算せずに済むため、CAD作業効率化に直結します。
こうしたオブジェクトスナップとの組み合わせ運用は、CADプロフェッショナルだけでなく、初心者にも非常に重要です。平面図や立面図を描く際、線を引くたびに寸法入力ばかりしているとスピードが落ちる一方です。しかし、スナップを駆使すれば、図面上の要素同士の関連を簡単に引き出せるため、より直感的に部材を配置できます。
最終的に、オートスナップとオブジェクトスナップを正しく組み合わせることで、誤差が発生しにくい図面を短時間で完成させることが可能になります。図面の精度が上がると、次の工程(例えば3D化や数量拾いなど)でもスムーズに進められるため、学習・実務の両面で大いに役立つはずです。
5. オートスナップのトラブルシューティング
オートスナップは非常に便利な機能ですが、設定や環境によってうまく動作しないこともあります。
たとえば、他のスナップモードと競合して意図しない点を拾う場合や、画面の縮尺が合わずマーカーが表示されにくい状況など、さまざまな場面で小さなトラブルが起こり得ます。こうした問題を素早く解決するために、日頃からチェックポイントを明確にしておくと安心です。
特に、初心者が陥りがちなのは、一度の設定不備で「スナップが一切機能しない」と勘違いしてしまうパターンです。たとえば、F3キーでオブジェクトスナップが知らないうちにOFFになっていたり、スナップの対象オブジェクトがロックされたレイヤーに乗っていて選択できなかったりと、意外にシンプルな理由が多いです。そんなときはまず「スナップがきちんと有効になっているか」「対象のレイヤーは表示・解凍状態か」などをチェックするとよいでしょう。
また、作図範囲が大きすぎて、スナップの感度では拾いきれないケースも考えられます。そういうときは前述のAPERTURE値を大きめにすると解決することがあります。逆に、図面が非常に細かいときに感度が強すぎると、複数の点が重なって意図と違う箇所を拾いやすくなるため、このパラメータを小さくしてみると改善されたりします。
トラブルシューティングを通してオートスナップの動作原理を知っておくことは、CADトラブルシューティングのスキルアップにつながります。特に、建築分野の実務に携わるようになると、図面サイズの桁違いな案件や多くのレイヤーを扱う場面も増えてくるので、自力で原因を突き止めてすぐ対処できるのは大きな強みとなるでしょう。
5.1. 一般的な問題とその解決策
オートスナップに関する典型的な問題には、例えば「カーソルを近づけてもスナップマーカーが全然表示されない」「間違った点ばかり拾ってしまう」などがあります。こうした事象が起きた場合、原因を段階的に追うとスムーズに解決できます。
まず確認するのは、OSNAP自体が有効になっているかどうかです。F3キーを何度か押すか、ステータスバーにあるオブジェクトスナップアイコンがオンになっているかを確かめます。ついでに、DSETTINGSのタブ内で必要なスナップモードにチェックが入っているかもチェックするのが基本です。
次に、該当オブジェクトがロックレイヤーや凍結レイヤーに配置されていないか確認しましょう。ロック状態だと、「触れてはいるがスナップが効かない」というケースも考えられます。加えて、作業している座標系(UCS)が目的のオブジェクトとずれている場合も問題の一因になりがちです。3D環境で2Dの図形を扱うときなどに、この座標ズレが発生しやすいといえるでしょう。
また、意外に多いのは画面表示の問題です。大きすぎる図面や極端に小さいスケールでは、マーカー表示が小さすぎたり散らばりすぎたりして見つけにくくなります。そんなときは「REGEN」コマンドを試すことで画面を再作図し、スナップマーカーの再表示を促すのも一つの方法です。
こうした段階的な確認を行えば、オートスナップが思ったように働かない原因の大半は解決します。単純な設定の見落としであることも多いので、問題が起きたときにはまず基本のチェックリストを頭に入れておきましょう。
5.2. スナップが効かない時のチェックリスト
スナップが突然効かなくなった、または思った通りに作動しないと感じた時に役立つのが、以下のようなチェックリストです。
1. 「OSNAPボタンはロックされていないか」:ステータスバーを見て、オブジェクトスナップが有効かつロックアイコンがアクティブでないかを確認。オンオフが簡単に変わるので要注意です。
2. 「スナップモードのチェックボックスは外れていないか」:端点、交点など必要なスナップモードに再度チェックが入っているかをDSETTINGS画面で確認します。
3. 「レイヤーの状態を確認」:スナップ対象のオブジェクトがロックされていたり、凍結・非表示になっていないか。建築図などで多数のレイヤーを管理している場合、うっかりレイヤーをオフにしたまま描画しているケースもあります。
4. 「座標系のずれ」:現在のUCSがオブジェクトの存在する座標と合っているか。3Dモデル空間で2D図面を扱うときや、複数の座標系を切り替えたあとに発生しがちです。
5. 「スナップ感度設定」:APERTUREやAUTOSNAPの数値は適正か。大きすぎると誤スナップ、小さすぎるとスナップポイントを見逃しがちになります。
これらを順番にチェックするだけでも、多くのスナップ不良は症状が解消されるはずです。特に大学生や新人のエンジニアにとっては「どこから調べてよいか分からない」となりやすいので、あらかじめこのチェックリストを覚えておくと安心感があります。また、こうしたトラブルシューティングを経験していく中で、オートスナップやオブジェクトスナップの内部構造についても理解が深まり、より柔軟なCAD操作が行えるようになります。
将来的には、作図中のちょっとした違和感を察知し、素早く設定を切り替えるなどの判断ができるようになるでしょう。これは将来の建築実務やプロジェクトチームでの作業においても、大変貴重なスキルとなっていきます。
6. まとめ
オートスナップは、AutoCADでの作図効率向上と精度向上を実現するうえで欠かせない機能です。本文では、オートスナップの基本から設定方法、活用テクニック、トラブルシューティングまで一通りを解説してきました。
特に、はじめてCAD操作を学ぶ方にとっては、どのスナップモードをいつ使うのかピンとこないことが多いかもしれません。しかし、端点や中点、交点、接線、中心といったさまざまなモードをオートスナップ設定で整理し、それらをショートカットキーや一時スナップ呼び出しを使い分けて活用するだけでも、線の描画や形状の配置が圧倒的にスムーズになります。これは、建築学を学ぶ大学生が課題で複数のパーツを正確に配置したい時、あるいは将来の現場作業で大規模な図面を扱う際にも非常に役立つスキルとなるでしょう。
また、作図スピードを上げたいという顕在的なニーズや、周りより少しでも早く上達したいという潜在的なモチベーションにも効果をもたらすのがオートスナップの魅力です。正しいスナップ設定を行えば、その分図面を仕上げる時間が短縮でき、他の演習や研究などにも時間を割けるようになりますし、スナップミスによるやり直しも減ります。結果として、より高品質な成果物を生み出す力につながるでしょう。
まとめとして、オートスナップ利点を活かすポイントは、「自分の用途に合ったモードの選別」「感度やマーカー表示などのカスタマイズ」「ショートカットキーの積極的な活用」「問題が起きたときの対処フロー」といった複数の要素をバランス良く意識することです。こうした技術を習得することで、大学の課題でもスピーディーかつ正確な図面を提出でき、クラスメイトや先輩からの評価や信頼を高めるという期待する効果も得られます。
今後は、実際にAutoCAD上でオートスナップの設定をいじりながら、ショートカット呼び出しやトラッキングを試してみてください。慣れてくると、いちいち数値入力しなくてもオブジェクトスナップだけで多くの作図要求を満たせるようになり、自分の操作環境に合わせたオートスナップカスタマイズも自在に行えるはずです。ぜひ、学習と実践を繰り返しながら、CAD設計の世界でさらなる高みを目指してみてください。
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参考情報
・AutoCAD 2025 ヘルプ | 概要 – グリッドとグリッド スナップを調整する
https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-FEA6BC6E-D81E-4AD2-BD4C-70078C57709A
・AutoCAD 2025 ヘルプ | オブジェクト スナップ トラッキング
https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-6FB309A8-2696-4383-8277-950E9E2756A8