BricsCADコマンド一覧｜初心者が最初に覚える基本操作ガイド

2025.12.18

1. はじめに｜BricsCADとは？

BricsCADは、建築・土木・機械など幅広い分野で使われるDWGベースのCADです。AutoCADとの高い互換性があり、既存の図面資産をそのまま活かしながら、取引先とのファイル受け渡しもスムーズに行えます。コスト面のバランスにも優れており、個人からチームまで導入しやすいのも特長です。

機能面は2D作図に加え、3DモデリングやBIM（上位エディション）まで段階的に拡張可能。操作はコマンドラインとアイコンのどちらからでも行え、CADが初めての方でも慣れやすい設計になっています。

本記事では、BricsCADをはじめる人が最初に覚えるべき「基本操作」と「主要コマンド」にしぼって解説します。LINEやMOVEなどの定番コマンドから、保存・印刷といった基本ワークフロー、作業を一気に効率化するショートカットまで、実務でそのまま役立つ順番で紹介します。

最初に学ぶポイントを押さえておけば、図面作成はぐっと快適になります。AutoCADからの移行を検討している方でも違和感なく作業を進められるはずです。続く章では、画面構成の見方、新規図面の作成手順、そしてBricsCADコマンドの使い方へと進んでいきましょう。

2. BricsCADの基本操作

BricsCADでは、画面上のツールバーやメニュー操作、そしてコマンドラインによる直接入力など、複数の方法でコマンドを呼び出すことができます。
こうした多彩な操作方法は、利用者のスタイルに合わせて自由に選べるうえ、作図や編集を効率的に進められる点が大きな特長です。

まずは、画面上の各インターフェースの位置と役割を理解し、次に新しい図面を作成して保存する基本の流れを体験してみましょう。
初心者の方は、画面上のどこに何があるのかを把握するだけでも、操作に迷う時間や誤操作を大幅に減らすことができます。

さらに、BricsCADのレイヤー管理やプロパティ設定といった、図面を整理するための基本要素も一緒に確認しておくと良いでしょう。
これらのポイントを押さえたうえでコマンド操作やショートカットを覚えていくと、作業の理解が深まり、学習効率が大きく向上します。

以下の2つの小見出しでは、「インターフェースの見方」と「新規図面の作成から保存まで」の2点に分けて、BricsCADの基本操作の仕組みと流れをわかりやすく解説します。

2.1. インターフェースの紹介：ツールバー、メニュー、コマンドライン

BricsCADの操作画面は、大きく分けてツールバー・メニューバー・コマンドラインの3つで構成されています。

まずツールバーは、アイコンをクリックするだけで主要な作図・編集コマンドを実行できるエリアです。
操作内容が視覚的にわかりやすいため、初心者のうちはアイコン操作を中心に使うのがおすすめです。

次にメニューバーは、文字によるメニューからコマンドを選択する形式です。
機能ごとに分類されているため、「どのコマンドがどの項目にあるか」を把握しておくと、操作スピードが格段に上がります。

そしてコマンドラインでは、文字を直接入力してコマンドを実行します。
BricsCADでは自動補完機能（AUTOCOMPLETEMODE）が搭載されており、短い入力でも候補が表示されるため効率的です。
慣れてくると、コマンドライン入力が最もスピーディーな操作方法になるでしょう。
また、エイリアス（コマンド略称）を活用すれば、より素早く指示を入力でき、作業効率を一段と高められます。

2.2. 基本的な操作方法：新規図面の作成から保存まで

BricsCADで新規図面を作成するには、まずソフトを起動し、スタート画面またはメニューバーから「新規図面（NEW）」を選択します。
テンプレート選択画面が表示された場合は、希望するテンプレートを選ぶか、空白の図面を開いてみましょう。

線を引いてみたいときは、ツールバーやメニュー、あるいはコマンドラインに「LINE」または略称の「L」と入力します。
続けて、画面上で始点と終点をクリックすれば直線が描けます。
オブジェクトを正確に配置したい場合は、オブジェクトスナップ（端点・中点など）をオンにしておくと、狙った位置に正確に線を合わせられます。

作業内容を保存したいときは、「SAVE」コマンドまたはショートカットのCtrl + S（QSAVE）でファイルをセーブします。
初回保存時には保存先フォルダと図面名を指定します。作業中もこまめに保存を行うことで、万が一のトラブル時にも復旧が容易になります。

既存の図面を開く場合は、「OPEN」コマンドを使用します。途中段階のDWGファイルを開き、前回の続きから編集を再開できます。
こうした基本操作をスムーズにこなせるようになると、CADの学習過程で迷うことが減り、図面作成のスピードと精度が大きく向上します。

3. BricsCADの主要コマンド一覧

ここでは、BricsCADでよく使われる代表的なコマンドを3つのカテゴリに分けて紹介します。
最初にファイル管理に関わる基本的なコマンド、次に図面を描くための描画コマンド、最後に作成した線や図形を加工・修正する編集コマンドです。

これらのコマンドを一通り理解しておくと、作図の流れを把握しやすくなり、作業効率も大幅に向上します。
CADコマンド一覧としては基礎的な内容ですが、最初のうちは使うたびに動作を確認しながら覚えていけば十分です。

長期的には、コマンドライン操作とショートカット操作を組み合わせることが最も効率的です。
コマンドを繰り返し実践で使っていくうちに自然と指が慣れ、図面作成スピードも格段に上がっていきます。
以下では、それぞれのコマンドの特徴と使い方のポイントを詳しく見ていきましょう。

特にBricsCADはAutoCADとの互換性が高いため、基本操作はほとんど同じです。
DWGファイルの互換性も優れており、これまでの設計データを活かしながら学習を進めることができます。

3.1. ファイル管理の基本コマンド：OPEN・SAVE・PLOT

コマンド	内容	使用目的	補足
OPEN	既存のDWGファイルを開く。	保存済みの図面を再編集したり、他ユーザーの作業ファイルを参照する際に使用。	ショートカットキー：Ctrl + O。フォルダ参照から図面を直接読み込み可能。
SAVE	現在の図面を保存する。	編集内容を保持し、作業を中断・再開できるようにする。	ショートカットキー：Ctrl + S または QSAVE。別名保存も可能。
EXPORT / EXPORTPDF	DWG以外の形式で書き出す。	DXF、DWF、SVG、PDFなど他形式で共有したい場合に使用。	ファイル共有や社外納品時に便利。印刷レイアウトも保持できる。
PLOT（PRINT）	図面を印刷する。	レイアウト、尺度、線種、用紙サイズを指定して紙やPDFに出力。	Ctrl + Pで印刷ダイアログを開く。PLOTとPRINTどちらでも可。

これらのコマンドは図面データを扱う基本操作であり、作業の土台となります。
特に保存の習慣をつけることは、データ保護やバージョン管理の観点からも重要です。

3.2. 作図に使う描画コマンド：LINE・CIRCLE・RECTANGLE

コマンド	内容	使用目的	補足
LINE（L）	始点と終点を指定して直線を引く。	2D作図の基本操作。基準線や外形線など、あらゆる設計の基礎に使用。	オブジェクトスナップを活用することで正確な線分を描ける。
CIRCLE（C）	中心点と半径（または直径）を指定して円を作成。	円形部品や穴、補助線などを正確に描くために使用。	直径指定・三点円・接線指定など複数モードが選択可能。
RECTANGLE（REC）	対角点を指定して長方形を作図。	区画・部屋・部品枠など、矩形を素早く作りたいときに便利。	寸法値を直接入力して正確なサイズを設定できる。

これらの描画コマンドは、BricsCADの操作に慣れるための第一歩です。
単純な図形を繰り返し作図しながら、座標入力やスナップ機能の精度を体感していくことで、作業効率が大きく向上します。

3.3. 図形を整える編集コマンド：MOVE・COPY・TRIMほか

コマンド	内容	使用目的	補足
MOVE（M）	選択したオブジェクトを移動。	オブジェクトの位置調整やレイアウト変更に使用。	始点・移動方向・距離を指定して正確に配置可能。
COPY（CO）	オブジェクトを複写して複数配置。	同じ要素を繰り返し配置する場合に時短効果を発揮。	オブジェクトを一括選択して等間隔コピーも可能。
ERASE（E）／DELETE	不要なオブジェクトを削除。	図面の整理や不要線の除去に使用。	「Ctrl + Z」で元に戻せるため、試行的な操作も安心。
TRIM（トリム）	交差部分を基準に線をカット。	余分な線を整えて形状を仕上げる際に使用。	対象選択後にクリックで不要部分を削除。
EXTEND（エクステンド）	指定線に合わせて線を延長。	既存の線に接続させて正確な図形を作る。	TRIMと対になる操作。
OFFSET（オフセット）	指定距離で平行線や複写形状を作成。	壁厚や道路幅など、一定間隔の線を作るときに便利。	正と負の距離入力で両側方向の制御が可能。
FILLET（フィレット）	2本の線の交点に丸み（R）をつける。	角を滑らかに仕上げる加工でよく使用。	半径値を0にすると角を接続（延長）できる。
CHAMFER（チャンファー）	角を斜めにカットして面取り。	機械設計や3Dモデリングでの細部調整に使用。	長さと角度を指定して処理可能。

これらの編集コマンドを覚えることで、図面の修正や仕上げ作業をスムーズに行えるようになります。
特にMOVE・COPY・TRIMの3つは使用頻度が高く、BricsCADを使いこなすための基本中の基本です。
繰り返し練習しながら、自然に手が動くレベルまで習熟することをおすすめします。

4. ショートカットキーの活用

マウスでアイコンをクリックして操作する方法は直感的でわかりやすいですが、操作に慣れてくると多くのユーザーがショートカットキーを活用するようになります。
BricsCADのショートカットを上手に使えば、コマンド呼び出しのスピードが飛躍的に向上し、作業効率が大きく変わります。

さらにBricsCADには、マウスショートカットやクワッドカーソル（Quad Cursor）と呼ばれる独自のメニュー操作も用意されています。
これらを組み合わせることで、右クリック一つでコマンドを実行したり、カーソルを対象オブジェクトに合わせるだけで関連する操作候補を呼び出したりと、直感的で多彩な操作が可能になります。

以下では、よく使われるショートカットキーの一覧と、自分好みにカスタマイズする方法を紹介します。
作業内容や業種によって使用頻度の高いコマンドは異なるため、自分の作業スタイルに合ったショートカットを設定することが、効率化の第一歩です。
ショートカットに慣れてきたら、キーボード中心の操作をベースに、必要に応じてツールバーやコマンドラインを使い分けるスタイルを確立するとよいでしょう。

4.1. 便利なショートカットキー一覧

ここでは、BricsCADを使ううえであらかじめ覚えておくと便利な代表的ショートカットを紹介します。

No.	ショートカットキー	コマンド名	動作内容
1	Ctrl + O	OPEN	既存のDWG図面ファイルを開く。BricsCAD 図面開くコマンドを実行。
2	Ctrl + S	SAVE / QSAVE	現在の図面を保存。変更内容を上書き保存する。
3	Ctrl + P	PLOT / PRINT	印刷ダイアログを開き、レイアウト・用紙設定・尺度などを指定して印刷。
4	Z + Enter	ZOOM	図面の表示倍率を変更。拡大・縮小・範囲指定ズームなどが可能。
5	中ボタン（ホイール）ドラッグまたは PAN	RTPAN / PAN	図面の表示位置をドラッグして移動。システム変数「MBUTTONPAN」を1に設定する必要あり。
6	L + Enter	LINE	始点と終点を指定して直線を作図。2D作図の基本コマンド。
7	M + Enter	MOVE	選択したオブジェクトを指定方向・距離に移動。配置調整に使用。
8	CO + Enter	COPY	オブジェクトを複写して複数配置。繰り返し配置に便利な編集コマンド。

これらは日常的によく使われる基本ショートカットです。
ただし、使用頻度は業務内容によって異なるため、自分の作業環境に合わせて段階的に覚えていくのが効率的です。

ショートカット呼び出しは、コマンドライン入力と同じ感覚で操作できるため、自動補完機能（AUTOCOMPLETEMODE）との相性も抜群です。
文字入力に慣れておくと、複雑なコマンドも短いキー操作で素早く呼び出せるようになります。

4.2. ショートカットキーのカスタマイズ方法

初期状態でも便利なショートカットが多数用意されていますが、自分でカスタマイズすることで操作性をさらに向上させることができます。
BricsCADでは、メニューの「設定」からキー割り当てを変更するだけで簡単にショートカットを調整できます。

具体的には、CUI（Customize User Interface／カスタマイズユーザーインターフェース）を開き、コマンドとキーボードショートカットを関連付けます。
また、ALIASEDIT コマンドを使うと、PGPファイル（ショートカット定義ファイル）を直接編集することなく、簡単にエイリアス（コマンド略称）を追加・変更できます。

たとえば、「Ctrl + 1」でプロパティバーを開くよう設定したり、よく使うコマンドに独自の短縮キーを割り当てたりすることが可能です。
ただし、同じキーを複数の機能に割り当てると競合が発生するため、CUIまたはALIASEDITで整理しながら管理するのが安全です。

このように、ショートカットを自分の作業スタイルに合わせて調整することで、より快適で生産性の高いBricsCAD環境を構築できます。
自分仕様の操作体系を整えられれば、業務スピードが格段に上がり、設計作業そのものがよりスムーズで楽しくなるでしょう。

5. よくある質問（FAQ）

ここでは、BricsCADの初心者や他CADからの乗り換えユーザーから寄せられる代表的な疑問をQ&A形式でまとめました。
インストール手順や環境設定、トラブルシューティング、そして学習に役立つ資料まで、知っておくと便利なポイントを整理しています。

BricsCADをスムーズに導入して安定的に作図を行うためには、ライセンス認証や起動手順を正しく理解しておくことが重要です。
また、万が一トラブルが発生しても、正しい対処法を知っておくことで、作業の中断を最小限に抑えることができます。

さらに、公式ヘルプやチュートリアルなどの学習リソースを活用すれば、基本操作の理解から応用スキルの習得まで一貫して学べる環境を整えることが可能です。
BricsCADのレイヤー管理や3D操作など、段階的なステップアップを目指すうえでも役立ちます。

以下の2つの小見出しでは、インストールや操作トラブルに関するよくある質問と、今後の学習に役立つおすすめリソースを紹介します。
これらを参考にすることで、トラブルを未然に防ぎつつ、独学でも着実にスキルアップできるようになるでしょう。

5.1. BricsCADのインストールとトラブルシューティング

Q1. BricsCADのインストール手順がわかりません
A. 公式サイトからインストーラをダウンロードし、画面の案内に従って進めるだけで完了します。
OSの種類やライセンス形態によって細部が異なる場合もありますが、迷ったときは同梱のマニュアルまたはオンラインヘルプを確認しましょう。

Q2. コマンドラインが急に表示されなくなりました
A. コマンドラインが非表示になった場合は、「設定」メニューまたはCUI設定で表示を再度オンにできます。
また、F2キーを押すとコマンド履歴の確認も可能です。画面レイアウトを誤って変更した可能性がある場合は、デフォルトのワークスペースに戻すのも有効です。

Q3. ショートカットキーが反応しなくなりました
A. ショートカットの割り当てが変更・競合しているか、別のユーザープロファイルが適用されている可能性があります。
ALIASEDIT コマンドまたは CUI設定を確認し、各コマンドの割り当てを再設定してください。

Q4. 図面が開けない、またはファイルが壊れています
A. まずは自動保存ファイル（.sv$）やバックアップファイル（.bak）を探し、そちらから開けるか試してみましょう。
DWGファイルの互換性に問題がある場合は、ファイルの保存バージョンや、他ソフトでの保存履歴も併せて確認することが重要です。

5.2. 追加リソースや学習資料の紹介

公式ヘルプとチュートリアル
BricsCAD公式サイトには、操作マニュアルやチュートリアル動画が豊富に公開されています。
コマンドラインの操作方法や編集コマンドの手順を確認したいとき、あるいはオブジェクトスナップの設定を復習したいときに役立ちます。
ユーザーコミュニティとフォーラム
国内外のBricsCADユーザーが集まるフォーラムでは、実務経験に基づくアドバイスや設定ノウハウを共有しています。
特にAutoCADからの移行ユーザーにとっては、操作差異や互換性に関する情報源として重宝します。
書籍・電子書籍
BricsCADの入門書や操作ガイド、コマンド一覧をまとめた専門書も出版されています。
図解付きの解説書は初心者にも理解しやすく、体系的に学びたい方に最適です。
専門講座・セミナー
BricsCAD BIM機能や3D操作など、上級者向けの講座を提供しているスクールやオンラインセミナーもあります。
短期間で実務レベルのスキルを習得したい方や、業務効率を高めたい方におすすめです。

6. まとめ：BricsCADを使う上でのポイント

ここまで紹介してきたように、BricsCADはAutoCADとの高い互換性と柔軟なカスタマイズ性を備えた、初心者にも扱いやすいCADソフトです。
基本となるのは、ツールバーやコマンドラインを使った操作方法、作図・編集に欠かせない代表的なコマンド、そして図面を整理するためのレイヤー管理といった基礎部分です。

特に、TRIM（トリム）、FILLET（フィレット）、CHAMFER（面取り）などの編集コマンドは、日常の作図作業で頻繁に使用します。
これらを早い段階で使いこなせるようになると、修正作業のスピードと精度が大幅に向上します。
また、ZOOM（ズーム）や PAN（パン）などの表示操作をこまめに活用することで、図面全体の把握や細部の確認がスムーズになり、作業効率も高まります。

さらに、ショートカットキーやマウスショートカット（ビュー操作）、クワッドカーソル（Quad Cursor）などの上級操作を取り入れると、コマンドの呼び出しが格段に速くなり、作業の流れがより直感的になります。
こうした機能を組み合わせていくことで、自分に合った操作スタイルを確立でき、日々の設計作業が一段と快適になります。

BricsCADの基本操作をしっかり身につけておけば、将来的に3DモデリングやBIM機能など、より高度な設計領域へとスムーズにステップアップすることも可能です。
まずは基本を確実に理解し、徐々に応用へと広げていきましょう。

本記事が、あなたが“BricsCADを自在に使いこなす第一歩”を踏み出すための助けとなれば幸いです。
学んだ内容を何度も実践しながら、自分に合った操作環境を整え、BricsCADでの設計スキルを着実に磨いていってください。