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AutoCADのフォントを一括変更!スクリプトで作業を効率化する方法

1. はじめに

1.1 AutoCADでのフォント変更の課題

AutoCADで図面を作成していると、「文字スタイル」や「フォント」の管理が意外と手間になります。特に、複数の図面や大量のテキストを扱う場合、ひとつひとつ手動でフォントを変更するのは時間がかかり、納期に影響することさえあります。

手作業による設定ミスや、フォント崩れのようなトラブルも起こりやすく、「統一感のある図面に仕上げたいのに、なぜかバラつきが出てしまう」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

こうした課題を解決する方法のひとつが、AutoCADのスクリプト機能を活用した「フォントの一括変更」です。スクリプトを使えば、手動で繰り返していた操作を自動化でき、作業時間の大幅な短縮とミスの削減につながります。

さらに、複数の図面ファイルをまとめて処理したい場合には、バッチ処理との併用で一括実行も可能です。スクリプトやAutoLISPなどの自動化技術は、日々の作業を効率化し、品質を保ったままスピードアップを実現する大きな味方になります。

この記事では、スクリプトを活用してAutoCADのフォントを一括変更する方法をわかりやすく解説します。設計の現場で「もっと楽に、正確に作業したい」と感じている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。


1.2 この記事で得られるスキルとメリット

この記事を読むことで、AutoCADにおけるスクリプト(.scrファイル)による自動化の基本が理解でき、実際に「フォントを一括変更するスクリプト」を自分で作成・実行できるようになります。

難しいプログラミング知識は必要ありません。AutoCADの基本操作ができればOKです。図面内で使われるSTYLEコマンドや、TEXT・MTEXTといった文字に関するコマンドについても、基本から丁寧に解説します。

また、フォントの種類(TrueTypeとSHX)や、それぞれの特性・注意点についても押さえておくことで、トラブルのない図面づくりと統一感ある仕上がりを実現できます。

一括変更ができるようになれば、フォントが混在するミスを防げるだけでなく、社内標準やクライアント指定のフォントに即座に対応できるようになります。

さらに、この経験は「図面自動化の第一歩」として、他の作業効率化(マクロやAutoLISPの活用)にもつながっていきます。
作業時間の短縮と品質向上を同時にかなえるヒントとして、本記事をご活用ください。

2. AutoCADのフォント設定の基礎

引用:https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-1ED81E98-6463-4574-875F-183C8280C4AC

2.1 フォントの種類とその影響

AutoCADで使用できるフォントには、大きく分けてTrueTypeフォントとSHXフォントの2種類があります。TrueTypeフォントは、Windowsなど他のソフトウェアでもよく使われる一般的な形式で、見た目が美しく、印刷時の仕上がりも高品質です。そのため、クライアント向けの図面やプレゼン資料などでよく利用されます。

一方、SHXフォントはAutoCAD独自の軽量なベクターフォントで、動作が軽く処理も速いため、古いバージョンとの互換性を重視した図面や、機械図面など機能性を優先する用途に適しています。特に文字数が多く、処理負荷が高い図面ではSHXフォントのほうが安定する場合もあります。

ただし、この2種類のフォントには、それぞれ得意・不得意があり、図面の表示や印刷の品質、互換性に影響することがあります。たとえば、TrueTypeフォントはデザイン性や印刷品質に優れますが、AutoCADの古いバージョンでは正しく表示されないことがあります。また、SHXフォントは軽量で安定していますが、複雑な書体の再現には向いていません。

そのため、どのフォントを使用するかは、プロジェクトの内容やクライアントの要件、社内ルールに合わせて選ぶ必要があります。さらに、スクリプトでフォントスタイルを変更する場合には、使用するフォントの種類をあらかじめ決めておくことが重要です。設定後に意図しない文字化けやレイアウト崩れが発生するのを防ぐためにも、最初に方針を明確にしておくべきです。

また、図面に複数のフォントが混在していると、スクリプトを実行した際に意図しないスタイルが反映されるなど、想定外の結果になることがあります。そうした事態を避けるためにも、まずは図面全体で使用する標準フォントを決め、社内規定や業界標準と照らし合わせて統一することが、効率的でミスのないフォント管理につながります。


2.2 フォント設定の基本手順

AutoCADでフォントを扱ううえで、まず理解しておきたいのが「テキストスタイル」という考え方です。テキストスタイルとは、使用するフォントの種類や文字の高さ、幅の倍率、傾斜の角度などをひとまとめにして管理する設定のことです。図面内のすべての文字は、基本的にこのテキストスタイルに従って表示されます。

このテキストスタイルは、AutoCADのSTYLEコマンドを使って作成・編集することができます。具体的には、「文字スタイル」ダイアログから既存のスタイルを選択して編集するか、新しくスタイルを追加することで設定を行います。フォント名(たとえばArialやromans.shxなど)を指定し、必要に応じて文字の高さや幅倍率、傾斜角などのパラメータを設定できます。

こうして定義したテキストスタイルは、TEXTやMTEXTなどの文字コマンドで使用されるほか、寸法記入に使うDIMSTYLE(寸法スタイル)でも参照されるため、図面全体の統一感に大きく関わってきます。設定を適切に行えば、図面が読みやすく整理された印象となり、社内外への信頼性にもつながります。

ただし、この設定作業を手作業で行う場合は、図面ごとに同じ手順を繰り返す必要があり、数が増えると大きな負担になります。特に複数の図面にまたがって統一フォントを適用する場合、1枚ずつ開いて同じ作業を行うのは非効率で、ミスが起こる原因にもなります。

そこで便利なのが、スクリプトファイル(.scr)やマクロを活用する方法です。これらを使えば、複数の図面に対して同じフォント設定を一括で適用することができ、手間を省くだけでなく、作業の正確性も高められます。

このように、「フォントの設定」をスクリプトで自動化するためには、まずテキストスタイルの概念と操作方法をしっかりと理解することが大切です。この基礎が身についていれば、後のスクリプト作成や実行手順もスムーズに進められるようになります。

3. スクリプトを使ったフォント変更のメリット

3.1 作業時間の短縮とエラー削減

AutoCADでフォントを一括変更する際、スクリプトを使う最大のメリットは、何といっても作業時間を大幅に短縮できる点です。手動で図面を1枚ずつ開いて、STYLEコマンドでフォントを変更し、さらに保存して閉じる……という作業を何度も繰り返すのは、とても骨の折れる作業です。数枚ならまだしも、何十枚、何百枚と処理する場合、時間と労力が大きくかかってしまいます。

このような場合、あらかじめ用意したスクリプトファイル(拡張子 .scr)を使えば、AutoCADのSCRIPTコマンドによって一連の作業を自動的に実行することが可能になります。スクリプトが順番にコマンドを処理してくれるため、ユーザーは毎回同じ操作を繰り返す必要がなくなります。さらに、Windowsのバッチ処理や一部の外部ツールと組み合わせることで、複数のDWGファイルに対して連続処理を行うこともでき、手作業と比べて圧倒的に効率的です。

加えて、スクリプトはあらかじめ記述されたコマンドに従って動作するため、人の操作ミスをほとんど排除できます。手入力だと起こりがちなフォント名のタイプミスや設定項目の選択忘れといったヒューマンエラーも、スクリプトなら最初に正しく記述さえしておけば、何度繰り返しても同じ内容を正確に実行してくれます。これは作業品質の安定にもつながります。

実際に、AutoCADを学ぶ場や社内の研修などでも、スクリプトは効率化手段として注目されつつあります。初心者にとっては「面倒な作業を減らす便利な仕組み」として有用なだけでなく、スクリプトを通じてコマンドの流れや構造を理解することで、AutoCAD操作の本質的な理解にもつながっていきます。
つまり、スクリプトはただの「時短ツール」ではなく、効率化と学習を同時に促進する手段としても活用できるのです。


3.2 デザインの一貫性とプロフェッショナルな印象

AutoCADで作成される図面は、建築・土木・機械・設備など分野を問わず、見た目の整った図面であることが評価される重要なポイントです。文字のフォントが図面ごとに異なっていたり、部分的に異なるスタイルが混在していたりすると、全体の印象が雑然としたものになり、見る側に不信感を与えてしまう可能性があります。

特に、社外のクライアントや発注者に提出する図面では、一貫した文字スタイルと見やすいフォントを使用することが信頼感のあるプレゼンテーションにつながります。そのため、プロジェクト全体で統一されたフォントを使うことは、図面の品質を高めるうえで非常に重要です。

そこで活用したいのが、スクリプトを使ったフォントスタイルの一括設定です。たとえば、社内で推奨されているフォントや、クライアント指定の書式に合わせてスクリプトを準備しておけば、図面全体に同じ文字スタイルを簡単に適用することができます。STYLEコマンドだけでなく、DIMSTYLE(寸法スタイル)と組み合わせることで、注釈や寸法に対しても統一されたスタイルを反映させることが可能です。

あらかじめテンプレート化されたスクリプトを用意しておけば、どんなプロジェクトでも素早く対応でき、時間のかかる再設定の手間を省くことができます。特に案件数の多い事務所や企業では、一貫性のある図面を効率的に生み出すうえでスクリプトが大きな武器になります。

このような整った図面は、見た目の印象だけでなく、作業者が交代した場合でも読みやすく、引き継ぎや修正もスムーズです。加えて、見栄えの良い図面はクライアントからの評価も上がり、信頼獲得やプレゼンの成功につながるケースも少なくありません。

つまりスクリプトを使ったフォントの統一は、単なる作業効率化にとどまらず、プロジェクトの完成度や会社の印象そのものを高める施策と言えるでしょう。

4. スクリプトの作成方法

4.1 スクリプトの基本的な構造

AutoCADでスクリプトを作成する際は、まずテキストエディタ(メモ帳など)を使用して、実行したいコマンドを1行ずつ順番に記述していきます。そして、作成したファイルを「.scr」という拡張子で保存することで、AutoCADのSCRIPTコマンドから読み込めるようになります。スクリプトは基本的に、AutoCADのコマンドラインに手動で打ち込む内容を、あらかじめ記述しておくイメージです。

スクリプトに書ける内容は、_STYLE、_TEXT、_DIMSTYLEなど、通常のAutoCAD操作で使用する標準コマンドが中心です。実行時には、スクリプト内の各行が順番に読み込まれ、それぞれがAutoCADのコマンドとして自動実行されます。そのため、正確なコマンド名と引数を記載することがとても重要です。

特に注意したいのが、「コマンドの先頭にアンダースコア(_)を付ける」という書き方です。これは、AutoCADが多言語対応していることに由来しており、アンダースコアを付けることでどの言語環境でも共通して動作するようになります。たとえば、日本語版でも英語版でも_STYLEと記述すれば同じコマンドが実行されるため、環境依存の不具合を防ぐ工夫として有効です。

また、スクリプトファイルでは、空白の数や改行の位置など記述の正確さが動作に大きく影響します。スクリプトは1行単位で順に処理されるため、余計なスペースや不適切な改行が入っていると、予期せぬエラーや停止の原因になることがあります。特に長い処理を記述する場合は、整った構文を心がけることが成功のポイントです。

なお、スクリプトはシンプルな内容でも十分に力を発揮します。たとえば、「フォント変更 → 保存 → 閉じる」といった一連の処理をあらかじめ記述しておけば、ほぼ自動化された図面編集が実現できます。図面を1枚ずつ手作業で開いて修正する必要がなくなるため、作業の効率が飛躍的に向上します。

さらに、より高度な自動化を行いたい場合は、スクリプトにAutoCADマクロやAutoLISPとの連携処理を組み込むことも可能です。これにより、コマンドの条件分岐や複雑な文字列処理、ループ処理などを柔軟に構成することができ、CAD作業全体の最適化と品質管理につながっていきます。


4.2 フォント変更用スクリプトの具体例

ここでは、AutoCADのスクリプトでフォントを変更する基本的な例をご紹介します。たとえば、「Standard」という既存のテキストスタイルを、ArialというTrueTypeフォントに切り替えるだけのスクリプトを作るとしましょう。メモ帳などのテキストエディタで以下のように記述します(国際対応を考慮してアンダースコア付きにします)。

mathematica

コピーする編集する

_STYLE Standard Arial 0 1 0 N N

このコマンドの各引数は、以下のような意味を持っています:

引数内容設定例
Standardテキストスタイル名(既存または新規作成)Standard
Arial使用するフォント名(TrueTypeフォントなど)Arial
0文字の高さ(0を指定すると未定義。テキスト側で設定)0
1幅倍率(1.0が標準)1
0斜体の角度(単位は度。0で直立)0
N上下反転するか(Y=反転する/N=反転しない)N
Nビッグフォントを使用するか(Y=使用/N=未使用)N

このように、スクリプト内でパラメータを順番に正しく指定することで、目的のテキストスタイル設定を自動的に適用できます。特にフォントの種類や文字の形状に関わる設定は、図面の読みやすさや仕上がりに大きく影響するため、プロジェクト基準に合わせた設定を事前に明確にしておくことが大切です。

複数のテキストスタイルを一括で変更したい場合は、同じ形式で記述した行をスクリプトファイルに追加していくだけでOKです。たとえば、見出し用のスタイル、注釈用のスタイル、寸法用のスタイルなど、それぞれに合わせた_STYLEコマンドを複数行に渡って書くことで、さまざまな用途に対応したスタイル設定をまとめて適用できます。

さらに、複数のDWGファイルに同じスクリプトを適用したいときは、AutoCADを起動してスクリプトを読み込む処理を、WindowsのバッチファイルやPowerShell、外部ツールと連携させることで、1枚ずつ開かなくてもまとめて処理できる環境が整います。これにより、大量の図面ファイルへの一括対応が現実的な選択肢となります。

このように、スクリプトの書き方と構造を理解すれば、1つ1つ手作業で変更していたフォント設定を、自動で正確かつスピーディーに処理することが可能になります。特に、日常的に多くの図面を扱う現場においては、スクリプトによるフォント一括変更は大きな時短テクニックとなるでしょう。

5. スクリプトの実行方法

5.1 スクリプトの読み込みと実行手順

スクリプトファイル(.scr)を作成したら、次は実際にAutoCAD上でそのスクリプトを実行してみましょう。スクリプトを実行するための基本的な手順はとてもシンプルです。

まず、AutoCADを起動し、対象となる図面ファイルを開いた状態にします。そのうえで、コマンドラインにSCRIPTと入力し、Enterキーを押すとスクリプト選択ダイアログが表示されます。そこで、あらかじめ作成しておいた.scrファイルを選択すれば、スクリプト内に書かれたコマンドが順番に実行されます。

スクリプトの動作中は、AutoCADのコマンドライン上で処理内容がリアルタイムに表示されていきます。テキストスタイルの変更や保存など、指定された操作が1行ずつ自動で処理されていく様子が確認できます。作業はすべて自動で進行するため、手動での繰り返し操作が不要になるのが大きな利点です。

また、複数の図面に同じスクリプトを適用したい場合には、図面を1枚ずつ開いて実行する方法のほかに、バッチ処理を活用して連続実行する方法もあります。たとえば、WindowsのバッチファイルやPowerShellスクリプトを使用すれば、AutoCADを自動起動して複数の図面にスクリプトを適用することも可能です。これにより、10枚、50枚、100枚といった大量のDWGファイルでも、まとめて効率よく処理できるようになります。

ただし、スクリプトを実行する際にはいくつかの注意点もあります。特に、ファイルパスの指定ミスには注意が必要です。スクリプト内で使用しているフォントや図面ファイルのパスが誤っていた場合、スクリプトが途中で止まってしまうことがあります。複数のAutoCADバージョンを混在して使っている環境では、互換性の違いによってエラーが発生するケースもあるため、まずは小規模なテスト用ファイルで実行を試してみるのが安全です。

スクリプト実行後は、変更が正しく反映されているかを必ず確認しましょう。具体的には、TEXTやMTEXTの表示が意図したフォントに変わっているか、DIMSTYLEの寸法文字にスタイルが適用されているかなどを、コマンドラインやプロパティで確認します。設定漏れや文字化けが起きていないかをチェックすることで、安心して本番作業に移行できます。


5.2 実行時のエラー処理とトラブルシューティング

スクリプトの実行中にうまく処理が進まない場合は、いくつかのよくあるエラー原因をチェックすることが大切です。たとえば、スクリプトファイル内のコマンドにスペルミスがあると、その時点で処理が止まってしまいます。特に長いスクリプトでは、1行ごとの内容を細かく見直す必要があります。

また、図面ファイルが読み取り専用になっている場合や、他のユーザーが開いて編集中でロックがかかっている場合なども、スクリプトによる変更が反映されないことがあります。このような状態では保存処理に失敗することがあるため、あらかじめ図面ファイルの属性を確認しておくと安心です。

さらに、AutoCADの設定によっては、コマンドを実行した際にポップアップやダイアログボックスが表示されてスクリプトが止まってしまうこともあります。たとえば、保存確認ダイアログや警告ウィンドウなどが表示されると、スクリプトの自動実行がそこで一時停止してしまいます。これを避けるためには、事前にAutoCADのオプション設定を調整するか、ユーザー入力を必要としないようにスクリプトを構成しておくと安全です。

フォントに関するトラブルも、実行時の代表的な課題です。たとえば、スクリプトで指定したフォント名が誤っていたり、PCにそのフォントがインストールされていなかったりすると、文字が正しく表示されず、文字化けやレイアウトの崩れが発生する可能性があります。使用するフォントは事前にOS側でインストールされているかを確認し、正確なフォント名を記述することが重要です。

また、万が一に備えて、スクリプトを実行する前に元の図面ファイルをバックアップしておくことも忘れてはいけません。スクリプトが途中で止まったり、想定外の設定が適用されたりした場合でも、バックアップファイルがあれば元の状態に戻すことができ、安心して修正作業を行うことができます。

このように、スクリプト実行におけるトラブルは事前の準備と確認でかなりの部分を防ぐことができます。失敗しにくく、効率的に作業を進めるためにも、テスト→確認→本番実行という手順をしっかり守ることが成功の鍵となります。

6. スクリプトの活用事例

AutoCADスクリプトによるフォントの一括変更は、実際の業務現場でも多くのメリットを生み出しています。特に、複数の図面を効率よく整えたい場面では、その効果は想像以上に大きなものです。ここでは、実際の企業やプロジェクトにおけるスクリプト活用の事例をご紹介しながら、どのように作業効率化や品質向上に寄与しているのかを具体的に見ていきましょう。

スクリプトを活用することで、手作業による繰り返し作業から解放されるだけでなく、人的ミスの防止、標準化の促進、業務のスピードアップといった副次的な効果も得られます。スクリプトは単なる便利ツールにとどまらず、図面の品質管理やプロジェクト全体の進行管理にも影響を与える大きな武器となるのです。

また、企業によってはフォント変更の作業を外注していたケースもありますが、スクリプトを導入することで内製化が可能となり、コスト削減にもつながります。こうした事例は、スクリプトの導入を検討している他の設計事務所やCADチームにとっても、有益な参考になるでしょう。


6.1 よくある活用シーンと期待できる効果

AutoCADでのフォント変更作業においては、スクリプトを活用することで大幅な効率化が期待できます。たとえば、大量の図面においてSHXフォントからTrueTypeフォントへの統一が求められるケースでは、手作業による変更は時間がかかるうえにヒューマンエラーのリスクも伴います。

こうした場面でスクリプトを使用すれば、複数の図面に対して一括でテキストスタイルを適用でき、処理時間を大幅に短縮することが可能です。数十枚規模の図面であれば、従来の方法に比べて10分の1以下の時間で完了できることもあり、納期短縮や人的リソースの有効活用につながります。

また、スクリプトをテンプレート化しておけば、プロジェクトごとに設定を使い回すことができるため、標準化の推進にも効果的です。たとえば、特定のフォントや文字サイズ、寸法スタイル(DIMSTYLE)を組み合わせた一連の設定を事前に定義しておけば、異なる案件でも即座に反映できる環境が整います。

このようにスクリプトによる自動化は、作業時間の短縮に加え、図面の品質均一化、人的ミスの削減、社内ルールの徹底といった効果ももたらします。日々多くの図面を扱う現場においては、スクリプト活用が業務の効率化と品質向上の両立を支える有効な手段となるでしょう。

7. まとめ:スクリプトで広がるAutoCAD作業の可能性

この記事では、AutoCADのスクリプト機能を使ってフォントを一括変更する方法について、基礎から具体的な実践例まで丁寧にご紹介してきました。手動では時間と手間がかかるフォント変更作業も、スクリプトを活用することで大幅な効率化が実現でき、作業ミスを防ぎながら図面全体のクオリティを高めることが可能になります。

スクリプトの導入によって、同じ操作を繰り返す必要がなくなり、数十枚、数百枚の図面にも一貫したフォントスタイルを適用できるようになります。特に、社内規定やクライアントの指定に合わせた統一感のある図面を作成するうえで、その効果は非常に大きなものです。視認性の高い文字設定や正確なスタイル管理は、プレゼン資料としての説得力にも直結します。

また、スクリプトは一度作成すれば何度でも使い回せる「資産」となり、業務における標準化や再現性の向上にも役立ちます。図面ごとに発生していた細かな調整作業が不要になることで、作業者の負担が軽減され、結果として品質と納期の両立が可能になります。プロジェクト全体のスピードアップにも寄与し、チーム全体の生産性向上にもつながるでしょう。

今回ご紹介したフォント一括変更は、AutoCAD自動化のほんの入り口にすぎません。スクリプトやAutoLISP、マクロといった技術を活用すれば、フォントに限らず、レイヤー管理、線種変更、ブロック挿入、寸法設定など、多岐にわたる図面操作を自動化できます。さらに、外部データベースやExcelと連携させることで、より高度な一括処理や属性管理も可能になります。

これらの技術は、特別なプログラミング知識がなくても少しずつ習得できるものであり、誰でも「効率化の第一歩」を踏み出すことができます。日々の作業に追われがちな現場こそ、こうした自動化の力を味方につけて、よりスマートで快適な業務環境を築いていけるはずです。

AutoCADでのフォント管理に課題を感じている方は、ぜひ本記事をきっかけに、スクリプトの活用にチャレンジしてみてください。効率的で統一感のある図面作成ができるようになれば、クライアントからの評価も高まり、あなた自身の業務スキルの幅も確実に広がっていくことでしょう。

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<参考文献>

AutoCAD LT 2026 ヘルプ | SCRIPT[スクリプト実行] (コマンド) | Autodesk

https://help.autodesk.com/view/ACDLT/2026/JPN/?guid=GUID-DB55FE5C-6B51-40AE-AE3D-4C3A28ADC5D9

AutoCAD LT 2026 ヘルプ | スクリプトを使用して作業を効率化する | Autodesk

https://help.autodesk.com/view/ACDLT/2026/JPN/?guid=GUID-BE44AE86-7638-48C9-BE5B-C1DF8E4C8808

AutoCAD 2026 ヘルプ | STYLE[文字スタイル管理] (コマンド) | Autodesk

https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-F8EA1280-BF0E-4674-ABCF-EEA0D41752D6

AutoCAD にフォントをインストールする方法

https://www.autodesk.com/jp/support/technical/article/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/Where-to-install-font-shape-files-in-AutoCAD.html

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