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竹中工務店のVRシステム『maXim(マキシム)』が示す新しい防災のあり方

VR技術は仮想的に現実の空間を正確に描写し、体験することができるため、様々な業界での運用が進んでいます。かねてよりBIM運用が盛んな竹中工務店ですが、2017年に発表した独自のVRシステムである『maXim(マキシム)も、非常に先進的な運用方法を提示しています。

目次:
①災害シミュレーターのmaXim
②BIMデータを用いた正確なシミュレーション
③人命の保護やBCPへの応用が期待

竹中工務店の『maXim』とは

竹中工務店が開発したmaXimは、日常で想定される様々な災害をVR上で再現し、体験することができる防災向けシステムです。

竹中工務店 公式アナウンス:https://www.takenaka.co.jp/news/2017/03/04/index.html

臨場感のある災害体験VRシステム

日本は先進国の中でも非常に災害が多い国の一つで、地震や津波、台風など、多くの自然災害に毎年見舞われます。不測の事態とはいえ、災害が日常的に発生し得る環境で生活している以上、日々の業務においても防災訓練を行うことは欠かせません。
あらかじめ避難経路や各自然災害などへの対処法を理解しておくことで、生存の可能性を向上させることができます。

maXimは、そんな防災への取り組みをさらに改善すべく、VRを用いたリアルな災害体験を行うことが可能です。商業施設やオフィスビルにおける避難訓練は、多くの人が密集しているために非常に大きな役割を果たしています。
maXimではVR映像の中で実際の施設を仮想的に再現し、室内にいながらにして、本格的な避難を体験することが可能です。

また、単に避難経路に従って移動するだけでなく、火事や浸水が起こったことを想定して、リアルタイムでの黒煙の充満や、水没を体験することができるようになっています。
従来の避難訓練ではできなかったリアルな体験を、maXimによって体験することができるのです。

BIMを採用するmaXimの仕組み

maXimで発生する火事の黒煙や浸水プロセスは非常に正確に再現されており、実際に災害が起きた際の災害の様子が正しく描写されます。
この再現性を確保するのに役立っているのが、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の技術です。
maXimでは、建物の3Dデータの各パーツに、素材などの詳細な情報を盛り込むことが可能なBIMデータを、VRシミュレーションに応用しています。

仕組みとしては、まずBIMからシミュレーションに必要な情報を抽出し、実際の災害の各事象や避難行動を分析します。
分析結果と3D情報を統合し、周辺の都市モデルと地域の災害シナリオを追加した上で、maXimはVRシミュレーションを生成してくれるよう作られているのです。
maXimで生成された避難訓練シナリオは、通常のモニターで体験することができるだけでなく、ドーム型のシアターやVRゴーグルなどで体験することができます。

あらゆる出力デバイスによって、ケースバイケースの運用ができるのも、企業の防災を意識したmaXimならではの魅力と言えます。

maXimが取り組む課題

これまでも避難訓練は様々な企業や自治体で行われてきましたが、実際の災害とは乖離があり、実効性に欠けていた点もあります。

臨場感の欠如

一つは、訓練に伴う臨場感の欠如です。

災害は人の命を脅かし、財産に大きな損害をもたらす脅威であるにも関わらず、いつどこで起こるかわからないものです。
そのため、いざその時が来るまで緊張感を維持することは難しく、ついつい定期的な避難訓練も疎かにしてしまうことも増えてしまいます。

一方のmaXimは、単に避難経路を確認するだけにとどまらず、仮想空間とは言え実際の災害をシミュレートし、臨場感を得ながら訓練を受けることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=xGAvo9z8pJE

上記の映像を見ると、maXim上では多くの人がぞろぞろと非難する様子や、実際のアナウンス、そして増水がかなりのスピードで進む様子が伺えます。
これはmaXimがシミュレートした実際の避難シナリオですが、maXimを用いた訓練を行う場合、これを自社ビルなどに置き換えて運用することができるようになります。

具体性に欠けた訓練

maXimが自社ビルの設計を用いた訓練を可能にすることのメリットは、非常に具体的なシナリオでの訓練を実現する点にあります。

従来の避難訓練シナリオというのは、マニュアル化によって速やかに社員へ共有し、理解を促すことが優先されてきました。
そのため、実際の避難にあたっては、マニュアル上では想定されていなかった混雑や、被害の拡大が発生する可能性もあります。
効果的な避難を実現するためには、各フロアやエリアごとで正確なシミュレーションを実施する必要があるのです。

maXimを使えば、このような課題にも対応が可能です。

BIMデータを用いた3D映像のため、地震の際に倒壊で通行できなくなったり、早期に浸水が始まるエリア、そして黒煙が充満しやすい箇所を、しっかりと確認できます。
あらかじめ身の回りでどのようなハプニングが発生するのかを知っておくことで、迅速な迂回などを行うことも可能になるでしょう。

maXimの将来的な運用方法

このように、優れた災害シミュレーションを体験できるmaXimですが、実際の運用方法としてはいくつかのケースが想定されています。

VRハザードマップの実現

一つは、VRハザードマップの実現です。

現在、自治体や行政が作成しているハザードマップの多くは、2D平面図によるものがほとんどです。
具体的な被害想定などはしっかりと計算されてマップが作られている一方、3Dデータにそれらが応用されていないため、具体的な防災施策に落とし込むことが難しいのです。

そこでmaXimの登場です。2Dハザードマップの作成過程で用いられたデータを、BIMによって生成した地域や施設の3Dモデルに、それを当てはめることが可能になります。
これによって、「津波の際は〇〇駅までが●メートルの浸水被害が及ぶ」など、具体的に災害をシミュレーションすることができるようになります。

視覚化されたBCP(事業継続計画)の実現

あるいは、BCPにおける有効活用も期待できるでしょう。
予期しない災害などが発生したとしても、事業が停止してしまわないようあらかじめ計画を用意しておくBCPにおいて、具体性の高いデータは重要です。

突然発生する緊急事態にその場対応を続けていては、企業は事業継続が困難となり、倒産などのリスクも跳ね上がります。
こういった事態を避けるためにも、maXimの運用は有効です。
例えば、会社のサーバー設置場所を検討する際、maXimのシミュレーションで浸水箇所を把握するような使い方はより普及していくでしょう。
あるいは3Dのハザードマップを利用することで、地震や津波のリスクが小さい場所にオフィスを構えるといった動きも、活発になっていきそうです。

企業価値をいかなる事態においても損なわないよう維持するため、maXimは大いに活躍してくれるでしょう。

おわりに

BIMを用いて、正確な災害シミュレーションを行ってくれるmaXimは、人の命を守る上で大きな役割を果たします。
しかし、BCPでの活用に見られるように、正確な災害シミュレーションは、企業価値を守る上でも非常に重要です。
視覚化によって、正確かつ分かりやすいデータを提供するmaXimは、今後も積極的な活躍が期待されることでしょう。

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