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AUTODESK社のBIM360に対応した教育プログラムや教材を調べてみた

 2Dから3D CAD、さらにBIMへと建設業界でのIT活用は急速に高度化してきています。
 国土交通省でもBIMの推進を明確に打ち出しており、今後はBIMを導入していない事業所においても、対応が迫られてくることが予想されます。
 とはいうものの、複雑・高度なシステムであるBIMを使える社員の養成はどうしたら良いのでしょうか?
今回の記事では、AUTODESK社の「BIM360」について、教育プログラムや教材について調べてみました。*注1

この記事でわかること
 ・AUTODESKの豊富な教育コンテンツについて
 ・認定トレーニングセンターについて
 ・マネージャーとオペレーターで必要なスキルの違いとは

AUTODESKの豊富な教育コンテンツ

 「BIM360」の提供元である「AUTODESK社」は、AutoCADやRevitなどといった建築・土木・設備業界で事実上の標準となっている、強力なソフトを数多くリリースしています。
 これらのソフトについては、それぞれ専門的な知識と技術が要求される高度なものであり、作業者にとって習熟することが一つのハードルとなっています。

 AUTODESK社では、ソフトウエアの普及にとって障害となり得る習熟問題への対応として、豊富な教育コンテンツを提供しています。特に教育機関向けとして、1年間ソフトウエアライセンス料無料という優遇も設けられており、大学や専門教育期間での利用促進を狙った措置が取られています。*注2

 AUTODESK社の日本語HPにある「サポートとラーニング」から、BIM360に関連するコンテンツを検索すると、全部で2708件もの膨大な資料がヒットします。(2021年2月時点)
 ただしこれらの多くは、トラブルシューティングやチュートリアルおよび、BIMの概要を説明する資料であり、初学者が体系的に学ぶにはあまり向いてと言えるでしょう。
 実際に製品を扱いながら、その都度必要な情報を自力で見つけ出す努力が必要となります。

 また、テーマごとのフォーラムもありますが、こちらは英語がベースになっているためハードルはかなり高めです。
 AUTODESK Design Academyにも、いくつかの教育プログラムが掲載されていますが、全てのコンテンツが英語である上に教育アカウントが必要であり、いずれかの教育機関に所属していなければいけません。*注3

 ”Access free resources to support your syllabus”は教員向けのプログラムであり、”Projects for your classroom”から「BIM360」をキーワードとして検索すると、2項目のコンテンツがヒットします。
 そのうちの一つを具体的に見ていくと、”Construction Management(施工管理)”というタイトルで6~10時間の学習時間が設定されており、トレーニング用のデータとビデオ教材をダウンロードすることができます。
 かなり体系的に学べる内容になっていますが、教育アカウントを持っていない一般ユーザーは利用することができません。

 他にも、”Build foundational skills by taking a self-paced course”という独学用のコースもありますが、こちらにはまだBIM360でヒットするコンテンツはアップされていないようです。
 教育機関向けでないものとしては、”Autodesk Construction Cloud Learning Center”の”On-Demand Training”にBIM360のコースが設定されています。このコースには”Document Management(文書管理)”や”Approvals Workflow(承認ワークフロー)”など段階的に学べるコンテンツが準備されています。

 試しに”Document Management(文書管理)”を覗いてみましょう。
 アカウントが必要となりますが、製品のユーザーでなくとも電子メールを登録するだけですぐにアカウントを取得することができます。取得したアカウントを登録し、コンテンツにアクセスしてみると、次のようなカリキュラムを見ることができます。

 ◯Setup 
 ”Add Members(メンバーの追加)”など5項目のビデオ教材
 ※音声(英語)での解説付きで操作方法を説明する2分程度のコンテンツ

 ◯Execution
 ”Add Markups(マークアップの追加)”など3項目のビデオ教材
 ※音声なしで実際の操作状況を示したコンテンツ

 ◯Workflow 
 ”Document Distribution(ドキュメントの配布)”と第するビデオ教材
 ※音声(英語)付き

 ◯Resources
 コースの理解度をチェックするためのQ&AやPDF資料など

 ビデオ教材はどれも2~3分程度で閲覧できますので、語学がネックにならなければ手軽に学べる教材として、非常に便利に使うことができます。
 また英語が苦手であっても、実際の操作状況が動画で確認できますので、ソフトさえ手元にあれば、ある程度は独学で学べる内容となっています。
 このような英語でのコンテンツは比較的充実していますが、現時点で一般ユーザー向けに日本語で学べる体系的なコンテンツは存在していないようです。*注4
 

認定トレーニングセンターについて

 AUTODESK社には自社の製品に対して、一定の基準を満たした教育機関を「オートデスク認定トレーニングセンター(ATC)」として展開しています。
 ATCは、AUTODESK社の定めるトレーニング実績・設備・指導レベル等の基準を満たしていることから、ワールドワイドで通用する信頼できるプログラムを提供しています。
 ATCでの受講を完了した場合、オートデスク本社社長のサイン入りの修了証を取得することができます。

 さらに、世界共通の「オートデスク認定資格」を受験することができ、合格し認定資格を取得できれば、自分のスキルレベルを証明することもできます。*注5

 このATCでBIM360のコースがあれば良いのですが、本記事執筆時点での「最新トレーニングコース情報」には、該当するものがありませんでした。
 かろうじてBIMに関連した「Revit」のコースがありましたが、多くはAutoCADなどのCADオペレーター養成講座が占めています。
 このようなコース設定については、市場ニーズに合わせて設定されていますので、AUTODESK社がBIM360のニーズに応えるようなコースを設定することに、期待したいところです。*注6

マネージャーとオペレーターで必要なスキルの違い

 そもそもBIM360とはどのようなソフトで、操作するのに必要なスキルとはいったいどのようなものなのでしょうか?
 BIM360は、Docs・Design・Coordinateなどのシリーズがあり、それぞれ別の役割を持っています。
 基本となるDocsでは、CADやRevitのデータをはじめとして、OfficeやPDF・写真など幅広い形式のデータをクラウド上で共有することができます。また、図面上に指摘事項を作成し、他のメンバーに対して修正依頼や確認事項の伝達をすることができます。
 いわば建設業界に特化した、共有のワークスペースのようなものであり、実際のCADデータやBIMデータは、AutoCADやRevitなどのソフトで作成することになります。
 イメージとして近いのは、Google Driveのような共有可能なクラウド上のスペースです。管理権限を持つマネージャーが、参加者の登録や権限の設定をすることができ、そこで共有されるデータは、Google DocumentやSpredSheetなどで作成するのと良く似ています。

 ということはBIM360の操作といっても、マネージャーとオペレーターでは求められるスキルに違いがありそうです。
 BIM360の操作というと、基本的には「管理」的な操作がメインということになります。メンバーの登録や権限の設定をするといった利用者の管理から、全体を見渡した進捗管理や指摘事項の設定など、主にマネジメントに関するスキルが要求されます。
 もちろん、各種図面や仕様などに関する専門的な知識は必要ですが、そのデータの作成や修正については、実質オペレーターがやることになります。

 一方オペレーターは、BIM360で共有されているデータをCADやBIMを使って作成することが主な業務になります。これはAutoCADやRevitを習熟することがスキルとして求められますので、BIM360の詳しい操作をあまり必要としません。

 BIM360の利用を主な目的とした教育プログラムやテキストがあまり出回ってないのは、こうしたことにも理由がありそうです。BIMソフトを使いこなして各種データを作成することができれば、BIM360の利用に関してはそれほどハードルは高くないと言えます。
 特に修正権限を持たないユーザーの場合、データの閲覧だけしかできませんので、特別なスキルは必要ありません。*注7

【まとめ】
 日本は世界に比べて、まだまだBIMの普及が遅れています。
 BIMは、建設業界における労働人口減少など、今後起こりえる多くの問題を解決する重要なツールです。
 BIM360が、中小の事業者や設備設計事務所などで導入が進むことで、上流から下流まで共通のデータを活用することが可能となり、維持管理などでも効果が発揮できるようになります。
 BIM360はクラウドで運用され、様々なデバイスに対応していることから、オフィスだけでなく現場におけるロボット作業などへの有効性も期待できるでしょう。
 今回の記事が、BIM360を広く活用するための人材育成のヒントになればと思います。

 

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■参考文献
注1
国土交通省 「建築BIM推進会議の設置について」
https://www.mlit.go.jp/common/001293417.pdf
注2
AUTODESK 「教育機関限定ライセンスでオートデスク ソフトウェアへのアクセスが無償に」
https://www.autodesk.co.jp/education/edu-software/overview?sorting=featured&page=2
日本の教育機関におけるBIM教育の現状についてはこちらの記事をご覧ください。
CAPA 「1級建築士が語る!大学におけるBIM教育の現状とは」
https://www.capa.co.jp/archives/23345
注3
AUTODESK Design Academy ”Learn how to design and make a better world.”
https://academy.autodesk.com/
注4 
AUTODESK “Discover how design works.”
https://academy.autodesk.com/explore-and-learn
注5
AUTODESK Learning Partner 「オートデスク認定トレーニングセンター(ATC)
プログラムとは…」
http://www.myautodesk.jp/atc/
注6
「全国のトレーニングセンターのご案内」
http://www.myautodesk.jp/atc/centerlist.html
「オートデスク認定トレーニングセンター 最新トレーニングコース情報」
http://www.myautodesk.jp/atc/pdf/atc_training_course.pdf
注7
CadJapan.com Autodesk コンシェルジュセンター 「BIM 360で何ができるの?」
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/200805-01/

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