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過去最高売上を叩き出すAmazonの戦略を「シッピング」から読み解く

 新型コロナの猛威により、私たちの生活やビジネスは大きな影響を受けています。飲食店・エンターテイメント業界・旅行関連など深刻な状況が続く業界もあれば、ゲーム産業・EC業界では巣篭もり需要により、業績を伸ばすところも多く出ています。
 実際、IT業界の巨人でありGAFAの一翼を担うAmazonは、2020年第四四半期の売上が前年同月比44%増、創業以来初の1,000億ドルを突破したことを発表しました。
 この記事ではAmazonの事業戦略について「シッピング」をキーワードに読み解いてみましょう。

この記事でわかること
 ・Amazonの2020年期のセグメント別の決算業績
 ・Amazonの「シッピング(Amazon Shipping)」について
 ・何がAmazonを世界最大のEC企業へ成長させたのか

Amazonの2020年期の決算をセグメント別に確認

 まずはAmazonが発表した2020年通期での業績を、セグメント別に確認していきましょう。

 ◯直販(オンラインストア)売上 1973億4900万ドル 39.7%増

 Amazonが自社で直接販売するオンラインストアの売上は、前年比約40%アップとなりました。世界的なパンデミックの影響で、ネット関連サービスは軒並み好況を呈しています。 とはいうものの、Amazonといえばすでにかなりの巨大企業であるにも関わらず、まだこれだけの成長余地があり、しかも短期間で急増する需要に的確に対応しているという事実に驚かされます。

 ◯第三者販売サービス(マーケットプレイス)手数料など 804億3700万ドル 49.6%増

 Amazonで商品を買うとき、私たちはあまり意識しないかもしれませんが、実は2通りの出品形態があります。
 一つはAmazonが自社で販売しているもので、直販部門に相当します。
 もう一つはAmazon以外の業者がAmazonのECサイトに出品・販売する形態のもので、「マーケットプレイス」と呼ばれます。Amazonがオンライン上の店舗スペースを貸しているようなものと考えればわかりやすいでしょう。

 Amazonで商品を購入する時に「この商品は◯◯◯が販売」との記載があり、「◯◯◯」の部分がAmazonなら直販、Amazon以外のショップ名であればマーケットプレイスとなります。
 このマーケットプレイス部門では、前年比約50%増となっています。こちらについては主にAmazonへの手数料が収入となっているため、実際の販売額はかなりのボリュームであると思われます。
 このとこからも、Amazonを通じた商品の物量はこの一年で急速に増加したと考えられます。

 ◯サブスクリプションサービス(Amazonプライムなど) 252億700万ドル 31.2%増
 ◯AWS(Amazon Web Service) 453億7000万ドル 29.5%増
 ◯実店舗(ホールフーズ)  164億2400万ドル 5.4%減
 ◯その他 214億7700万ドル 52.5%増

 実店舗以外のセグメントについても軒並み大幅増です。
 全体と見てみると、売上は3860億6400万ドル(前年比37.6%増)、総利益は213億3100万ドル(84.1%増)となっています。
 コロナ景気というと不謹慎なのかもしれませんが、確実に追い風をものにした一年でした。
 国内では、楽天が売上高1兆4555億円であり15.2%伸びていますが、最終損益は1141億円の赤字です。楽天は、新型コロナ需要で売上は伸びていますが、物流・モバイルへの投資がかさみ大幅赤字になってしまいました。
 特にモバイル部門では来期以降の収益見通しも不透明ですから、新型コロナ収束後も少々不安を残す内容となっています。*注1

Amazonの事業戦略の一つである「シッピング(Amazon Shipping)」とは

 Amazonのシッピングサービス(Amazon Shipping)とは、簡単に言うとAmazonによる宅配サービスです。巨大なECサイトを運営し、第三者にもマーケットプレイスという形でそのスペースを提供しているAmazonは、このところ物流ネットワークの構築に多大な投資をおこなっています。

 2015年に設立された「Amazon Air」は、50機を超える航空機で、世界中の空港を結ぶ定期便を運行しています。2017年にはシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港を、Amazonの貨物専用ハブ空港として整備するために、15億ドルを拠出しました。
 さらに何千台ものトレーラーやトラック・バンなどを購入し、短距離輸送ネットワークの整備にも力を入れて取り組んでいます。

 2012年には、スタートアップである「キヴァ・ロボティクス(Kiva Robotics)社」を7億7500万ドルで買収し、フルフィルメントセンターの自動化を加速させることを目指しています。
 ネットサービスのイメージが強いAmazonですが、「実業」であるロジティクス部門への積極的な投資を進めており、配送専業のトップ企業と比べても遜色ないレベルのネットワークを構築しつつあります。*注2

 これらの物流網の整備と、2018年から新たに始めたシッピングサービスへの流れが、Amazonの他社とは異なる事業戦略のわかりやすい事例となっています。以下の記事では、他社とは異なる事業戦略部分を、わかりやすく解説していきましょう。

何がAmazonを世界最大のEC企業へ成長させたのか

Amazonの戦略1 ハードウエアへの惜しみない投資

 現在主流となっているインターネット・サービス関連のスタートアップでは、自社の強みとなるソフト開発やサービスの充実にリソースを集中し、サーバーや物流などのハードウエアは外注するというビジネスモデルが大半です。
 これにより、スタートアップ段階でのコストを削減し、スピーディなサービスの拡大・充実を図ることができます。いわゆる「リーン・スタートアップ」と呼ばれるモデルです。

 しかしAmazonの場合は、ECサイトというインターネット・サービスを主力としながらも、自社で巨大なサーバー群を構築したり、配送センターを設置したりと、ハードウエアへも惜しみない投資を続けてきました。
 創業当初は巨額の投資により毎年赤字を計上していたため、当時の投資家から非難を受けることもあったようです。しかし最終的には物流拠点を自社で運営するAmazonが徐々に他社を圧倒しEC市場でトップの位置を確保したことで、ベゾスの戦略が正しいことが証明されました。*注3

Amazonの戦略2 徹底した顧客主義とデータの活用

 Amazonが最も優先しているのは「顧客のために」です。
 ベゾスはいくつかの有名な言葉を残していますが、その中でも印象に残るものの一つに「競合を見るな!顧客を見よ!」があります。顧客が望むものを提供することこそ、自社のサービスの優位性を高める要因であるという内容です。
 競合他社を気にする時点で、すでに後塵に拝することになり、先行するユニークなサービスを生み出すことはできません。

 ECサイトを利用して商品を購入する顧客にとって、その商品がスピーディかつ確実に配送されることは重要です。それを実現するために、Amazonは自社で配送センターなどのインフラを整備することで、即日出荷という特徴的なサービスを提供することができるようになりました。
 一方日本におけるEC大手の楽天は、ロジスティックスを外注に頼っていましたが、2016年時点の国内売上において、Amazonに抜かれてしまいました。
 このこともあり、楽天はやっと重い腰を上げて自社の配送網の整備に取り掛かり、その分の投資が直近の決算で赤字となる一つの要因となってしまいました。*注4

 Amazonが顧客至上主義を徹底するための手法として、ベゾスが注目したのは顧客の行動データを収集・分析することでした。Amazon創業当時に扱っていた書籍は、まさにこの目的に最適のアイテムだったことがわかります。
 ユーザがどんな本を選択するかは、顧客の趣味や志向をダイレクトに反映し、レコメンド機能や他のユーザーの評価などで新たな書籍の購入へと導くことができます。

 旧来の販売手法として重要視されていた「豊富な商品知識を持って、顧客に商品を進める」能力は実は『売り手視点』でした。しかしベゾスは「何を売りたいか」ではなく、顧客が「何を求めているか」をデータで分析し、それに沿った商品を素早く提供することに力を注いできました。
 この部分がAmazonの思想の重要な部分であり、創業以来一度もぶれることなくブラッシュアップを継続してきた結果、世界最大のECブランドを構築することに成功しました。

Amazonの戦略3 洗練されたシステムを外販

 このようにして圧倒的な集客力を持ったAmazonは、第三者である売り手に対してマーケットプレイスの提供を開始しました。マーケットプレイスとは、ECサイト上をAmazon以外の販売店に提供し、商品の売買をサポートする仕組みです。
 このことによりAmazonのECサイト上にある商品は、直販と第三者販売の種類が存在することになります。しかし、ユーザである私たちはあまりそれを気にすることなく、ほぼ同じ使い勝手でショッピングをすることができます。

 さらにこうした第三者のセラーに対しても、Amazonの持つフルフィルメントセンターが利用できるようにし、受注から配送までをAmazonのシステムで行えるようにサービスを拡張しています。
 セラーは、商品をAmazonに送り必要なデータを登録するだけで、Amazonの直販品と同等の良質なサービスを提供することができるようになります。

 また、最先端のデータ分析やスピーディな処理に必要な高性能のサーバー群も、Amazonは自社で構築しています。世界最高レベルのセキュリティと性能を持ったデータセンターは、AWS(Amazon Web Service)として現在多くの企業が利用するサービスを提供しています。
 近年のクラウド・コンピューティングの象徴ともいうべきサービスであり、現時点においてもこの分野で圧倒的なトップシェアを持ち続けています。*注5

 ここまで見てくると、Amazonのビジネスモデルについて理解することができたのではないでしょうか。
 最初は自社サービスを「顧客目線」で徹底的にブラッシュアップし、そのために必要なことであれば膨大な設備投資を積極的に行う。そこで構築したノウハウやインフラを新たなサービスとして提供する。この流れで立ち上げた「マーケットプレイス」や「AWS」は、それぞれ大きなウエイトを締める重要な事業として成長しています。

 今回の記事で取り上げた「シッピング」についても、まさにこの流れに即したサービスとなっています。スピーディで安全・確実な自社の輸送網を、外部の事業者に提供するもので、Amazonの手にかかれば既存の運送業者を超える優れたサービスを実現するかもしれません。
 米国内で有力な輸送業者であるUPS・USPS・FedExなどにとっては、これまで大口の顧客であったAmazonが急にライバルとなる訳ですから、大きな脅威と感じていることでしょう。

 ところがこの「シッピング」は、2020年の新型コロナ流行の影響で、現在(2021年3月時点)では一旦停止になっています。
 巣篭もり需要で急増したECサイトへの注文をさばくため、自社輸送網を外部に貸し出す余裕がなくなったのがその理由です。見方を変えると、こうした余剰分の輸送能力を保有していたことが、急増する受注に対して的確に対応できた大きな要因とも言えそうです。*注6

【まとめ】
 今回の記事では、新型コロナの影響でAmazonが「シッピング」サービスを停止したというニュースから、Amazonが世界最大のEC企業として成長してきた理由の一端を紐解いてみました。もちろん、この記事で触れたこと以外にも多くの要因がありますが、わかりやすい1つの視点と言えるのではないでしょうか。

 自社の一番強い分野にリソースを集中し、それ以外の部門は外注することが多いのが今どきのビジネスモデルです。
 しかしAmazonの場合このような流れとは異なり、膨大な投資でハードを整備することが圧倒的なブランド力へと繋がっています。
 国内の大手企業において、生産拠点の海外移転や事務部門・コールセンターの外注などを進める企業が増えていますが、ひょっとしたら何か重要なノウハウを失っているのかもしれません。
 短期的なコストメリットだけでなく将来を見通した上で、何が自社の成長にとって欠かせないものなのかを間違えないようにしたいものです。


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■参考文献
注1
ECのミカタ 「[楽天] 2020年12月期(2020年間)の決算を公表 売上は過去最高もモバイル投資のため最終損益は1000億円超のマイナス」
https://ecnomikata.com/ecnews/29343/
impress BUSINESS ONLINE 「Amazonの2020年売上は3860億ドルで37%増、日本円で41兆円。直販ECは4割増の1973億ドル、第三者販売は5割増の804億円」
https://netshop.impress.co.jp/node/8420
注2
PUGET SOUND BUSINESS JOURNAL “Amazon’s Prime Air cargo jet fleet is bigger than ever and has a new name (Video)”
https://www.bizjournals.com/seattle/news/2017/12/26/amazon-prime-air-cargo-jet-fleet-boeing-767.html
WCPO.com “Amazon latest: Company will lease office space at CVG”
https://www.wcpo.com/news/insider/amazon-latest-company-will-lease-office-space-at-cvg
Fly team 「アマゾン、シンシナティに貨物専用設備を着工 2021年に完成予定」
https://flyteam.jp/news/article/110968
MIT Technology Review 「アマゾンが米国で自社配送開始、宅配便市場参入へ」
https://www.technologyreview.jp/nl/amazon-is-taking-package-delivery-into-its-own-hands/
DIGIDAY 「[ 1分まとめ ] Amazon の「巨大配送ネットワーク」の仕組みとは?」
https://digiday.jp/platforms/amazons-massive-logistics-network-explained/
注3
ZUU ONLINE 「毎年赤字発表のアマゾン(Amazon) ジェフ・ベゾスの経営手腕にせまる」
https://zuuonline.com/archives/14548
注4
BUSINESS JOURNAL 「楽天、アマゾンに「敗北宣言」…ポイントをためる意味消失か」
https://biz-journal.jp/2018/01/post_21873.html
Emotion Tech 「“ジェフ・べゾス”の徹底した「顧客目線」」
https://www.emotion-tech.co.jp/resource/2015/amazon-jef-bezos
注5
AWS https://aws.amazon.com/jp/what-is-aws/
Synergy Research Group “Cloud Market Ends 2020 on a High while Microsoft Continues to Gain Ground on Amazon”
https://www.srgresearch.com/articles/cloud-market-ends-2020-high-while-microsoft-continues-gain-ground-amazon
注6
DIGDAY 「Amazon の独自配送サービス「シッピング」が停止状態に:競合配送サービスに道を譲る」
https://digiday.jp/coronavirus-fallout/with-amazon-shipping-on-pause-the-e-commerce-giant-cedes-ground-to-competitors/
ソース
With Amazon Shipping on pause, the e-commerce giant cedes ground to competitors
https://www.modernretail.co/platforms/with-amazon-shipping-on-pause-the-e-commerce-giant-cedes-ground-to-competitors/#/
REUTERS 「米アマゾン、自社配送サービスを一時停止へ=WSJ」
https://jp.reuters.com/article/amazon-com-delivery-idJPKBN21P3HF

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