BIM/CIM導入のメリットとは?初心者向けに解説
最新技術の活用は、建設や土木分野においても積極的に進められるようになりました。中でも中心技術として注目を集めているのが、BIM/CIMです。
これらの技術の登場は、業界に大きなイノベーションをもたらすとして、様々な組織で導入が進んでいますが、そもそもどのようなことを可能にする技術なのでしょうか。
今回は、BIM/CIM技術の活用メリットやその仕組みについて、初めての方でもその魅力がわかるようご紹介していきます。
目次:
①BIMとは
②CIMとは
③BIMとCIMの違いについて
④BIM/CIM導入のメリット
⑤BIM/CIM導入で実現することとは?事例をご紹介
BIMとは
BIMとはBuilding Information Modelingの略称で、わかりやすくいえば建築に特化した新しい3Dモデリング技術です。従来の3Dモデル作成といえば、CADソフトを使ったものが一般的でした。建物のモデルを仮想的に再現する上では重要な役割を果たしたCADですが、そんなCADの利便性をワンランク向上させたのがBIMです。
BIMの最大のメリットは、3D情報の中に様々な情報を付与できる点にあります。部材の大きさや価格、材質などに至るまで、あらゆる情報をモデルの中に内包できるため、BIMモデルだけで設計や施工に必要な情報を完結できます。
本来であれば、様々な図面をコンセプトごとに数種類用意しなければいけなかったのが、BIMモデルであれば一つ作るだけでプロジェクトに丸ごと対応できるというわけです。
CIMとは
一方のCIMについてですが、こちらはConstruction Information Modelingの略称です。CIMはBIMの概念を土木建設にも応用しよう、ということからスタートした技術で、国土交通省が提唱した、日本独自の概念です。そのため、海外ではCIMという技術は存在せず、分野を問わずBIM技術として扱われています。
基本的な仕組みについてはBIMと大差はありませんが、インフラ工事などの土木に特化した技術となっているのが特徴です。CIMの提唱以来、BIMとCIMは分けて考えることが基本とされてきましたが、近年はBIM/CIMとして同一の技術という枠組みで扱われるようにシフトしつつあります。というのも、日本企業がグローバル市場へ進出する機会も増加傾向にあり、海外でCIMという言葉が通用しないため、BIMに一本化しようという動きが進んでいるためです。
そのため、BIM/CIMという名称が最近は定着しつつあります。
BIM/CIM導入のメリット
BIM/CIM導入を多くの企業が進めているのは、非常に大きなメリットを期待できる点にあります。
業務の効率化
BIM/CIM導入の最大のメリットの一つが、業務の効率化です。土木・建築分野は人材不足が特に悪化している分野ですが、人が集まらない理由として、重労働や残業が常態化しているというイメージがつきまとっている点が挙げられます。
こういった懸念は働き方改革の推進で解消されつつあるものの、企業や部署によっては未だ根強く残っている場合もあり、優秀な人材が離れていく原因となっています。
そこで、BIM/CIMの導入です。BIM/CIMは設計図面の作成と3Dモデルの作成の両方をこなせるだけでなく、修正作業も数値の修正だけで完結できるというポテンシャルを秘めています。そのため、これまで設計段階で発生していた業務負担を大きく軽減し、その上、情報共有も一つのデータのやり取りだけで完結できるようになります。
部署間のやりとりで発生していた負担を削減したり、作業労働の削減にも役立つため、大幅な業務改善を実現します。
また、施工現場においてもBIMデータを活用することで、ロボットによる自動点検や、施工箇所や仕上がりの確認をARで簡単に確認できるというイノベーションにも繋がります。BIM活用は最新技術導入の呼び水となり、さらなる働き方改革の推進を実現します。
人材不足の解消
BIM/CIM導入によって業務効率化が進むことで、人手不足の解消にも役立ちます。建築土木分野で人材が不足していたのは、そもそも業務パフォーマンスをマンパワーに依存していたことも原因に挙げられます。そのためBIM/CIMによる効率化、自動化が進むことで、必要な人の数を削減できれば、少人数でも業務を遂行できるようになります。
また、BIM/CIMによって業務の効率化やロボットの導入が進めば、施工現場の自動化も進められ、建築業界も肉体労働から頭脳労働の現場へとシフトすることができます。肉体労働が多い職場というイメージから、ハイテクを駆使した最先端のIT企業へと転身し、優秀な人材の獲得にもつなげられるでしょう。
BIM/CIM導入で実現することとは?事例をご紹介
BIM/CIM導入の効果については様々なメリットが期待できますが、具体的にどんなことが実現するかについてはイメージが湧きづらいところでもあります。最後に実際のBIM/CIM導入事例も確認し、これらの技術の可能性についても触れておきましょう。
佐藤工業・シンテグレート
佐藤工業とシンテグレートがBIMを使って共同で施工を担当したのが、富士世界遺産センターにおける「逆さ富士」です。世界文化遺産である富士山の、新しい情報発信拠点として企画されたこのセンターは、3次元曲面を持つ木格子が目を引く「逆さ富士」の建設物が話題です*1。
坂茂氏が手掛けた設計を実現するにあたり、佐藤工業とシンテグレートはBIMを活用して複雑な設計の具現化と、タイトなスケジュールという厳しい条件のクリアに努めました。
まずはBIMデータのマネジメントを、BIMコンサルティングを手掛けるシンテグレートに依頼し、煩雑化した設計データの統合に着手しました。その後、施工や部材の製造を考慮し、実際に作れるデータを再びモデリングすることで、予定通りの竣工を実現したというわけです。
大林組
土木建設に強い大林組では、トンネル工事におけるCIM活用を推進し、生産性の向上を実現しています。
近畿自動車道紀勢線の山岳トンネルとして 2015 年に竣工した見草トンネルでは、建設管理に初めて 3D モデルと属性情報をフル活用しました。Autodesk社のRevitやCivil 3Dなどのソフトウェアを採用し、トンネル掘削における変位情報や地形情報など、さまざまなデータが現場で逐次入力される仕組みを整備しています。
結果的に、見草トンネルのプロジェクトにおける施工管理の効率は、実に 35% も向上し、CIM技術の有用性を社内に広める結果をもたらしてくれました*2。
おわりに
BIM/CIMは登場から10年以上経過していますが、まだまだ導入の余地は大きく、技術改善も進んでいます。今後、さらなる導入事例や新しい技術の登場により、ますます普及は進んでいくでしょう。
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参考:
*1 BUILT「「逆さ富士」を実現した施工BIM、成功の鍵は設計データの精査」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1801/18/news041.html
*2 Redshift「大林組のトンネル建設プロジェクトが CIM で生産性向上」
https://redshift.autodesk.co.jp/obayashi-mikusa-tunnel-cim/