互換性って何?AutoCAD 2020の互換性について徹底解説!
設計データを授受する場合「お互い設計CADで作っているから、詳細は確認しなくても必ず形状が参照できる」というのは誤った認識です。CADはそのシステムごとに複雑なデータ形式で保存されているので、バージョンを確認し、互換性が保てているかの確認が重要です。
AutoCAD同士であっても、場合によっては、誰かが作成したAutoCADデータが自分のAutoCADで開けないかもしれません。
この記事では、AutoCAD 2020を中心とした、データの互換性について紹介します。作成したCADデータのデータ連携で困らないようにぜひ参考にしてください。
CADデータ連携は互換性確保が重要
互換性とは、AのCADとBのCADが異なる場合に、Aで作ったデータをBのCADで読み込めるのか、またBで作ったデータをAのCADで読み込めるのかということです。まず、互換性の確認が必要となる原因や、CADのどんな違いに着目すればよいのかを紹介します。
チーム設計ではデータ互換性の確保が必要
設計は一人で全てを行うのではなく、構造や専門分野別に分担して行います。このときCADのバージョンが完全に同じであれば、チーム設計をしている別の人が作成したデータを参照しても、特に問題は起きません。
しかしCADは機能も費用もさまざまなので、各部門の設備要件や予算などの都合から、各部門や拠点などで異なるCADを使っていることがあります。
それぞれ受け入れ可能なデータの形式や、対応できる機能の範囲が異なるため、外部からデータを受け取る場合には、CADの互換性を確認しなければなりません。
また、設計部門で作成したCADデータは、複数の部門で活用されています。たとえば生産部門では、生産準備をフロントローディングするために試作品ができる前の段階から設計のCADデータで構造を確認しています。
自部門で作成したデータを外部に提供する場合にも、提出したデータを正しく参照してもらえるように、互換性の確認が必要です。
互換性が保てない場合のCADの挙動
互換性が保てないと、以下のようにさまざまな問題を起こす場合があります。
・データが開かない
・形状の一部が欠落、変形する
・想定外の微少形状が表示される
・形状の編集ができない
・履歴がわからない
CADのバージョンが異なる場合
同じCADであっても、CADのリリースやバージョンなどが異なると、完全に元のCADの情報を再現できない可能性があります。
古いバージョンのCADデータを新しいバージョンで読み込む場合(上位互換)、古い機能は補完されていることが多く問題になりにくいです。
一方、新しいバージョンのCADデータを古いCADで読み込む場合(下位互換)は、一部の形状などが思ったとおりに参照できないことがあります。
特にあるCADがバージョンアップした際に新しい機能が追加された場合、最新の機能は古いCADでは表現しようがありません。
下位互換でCADデータを受け取る場合は、一部履歴が編集不能になるなどの問題が考えられます。データを開いてそのまま業務に使うのではなく、想定外の異常が起きていないか確かめておくとよいでしょう。
CADが異なる場合
CADが違う場合はデータがそもそも読み込めないことがあります。そのような場合は、中間ファイルやダイレクトトランスレータを使ってデータの読み込みを行います。
中間ファイルにデータ変換する場合、データが一般的な形式に変換されているということに注意しましょう。履歴が省略されてしまい、設計意図が伝わらなくなっていたり、微細形状が発生したりする可能性があります。
再現のされ方は各中間ファイルにより異なるので、データを授受する際は自分が共有したい情報が確実に含まれているか、形状の異常はないかをよく確かめましょう。
AutoCAD 2020の互換性とは
AutoCADを使う場合には、他のCADと同様に図面データの互換性が重要です。
もしクライアント様や、業務提携会社など外部で使っているCADのファイル形式が下位バージョンだった場合、どちらのCAD環境を選べばよいか迷ってしまいます。具体的にみていきましょう。
AutoCAD 2020における図面ファイルの互換性
AutoCAD 2020の図面ファイルの保存形式は「AutoCAD 2018」。AutoCAD 2018から2020まではこの形式でデータが保存されています。(*1)
一方、AutoCAD 2013からAutoCAD 2017の場合はデータの保存形式が「AutoCAD 2013」です。つまりAutoCAD 2017 は、AutoCAD 2020 などの新しいバージョンのDWGファイルが開けません。(*1)
AutoCAD 2020は上位互換が保証されている
CADデータでインプットを受けたり、外部とデータ連携をしながら設計したりする場合であれば、最新のCAD環境であるAutoCAD 2020を使うと良いでしょう。(*2)外部から来るデータが自分の使っているCADよりも低いバージョンなので問題なく読み込めます。
AutoCADのデータはバージョンを下げて保存することが可能
AutoCAD同士の場合、古いバージョンのAutoCAD環境にデータを渡す際は、古いファイル形式で保存して、AutoCAD のデータのバージョンを合わせることができます。(*3)
また、以前のバージョンをダウンロードして使うことも可能です。(*4)データの授受が頻繁に発生する場合には、一時的に古いAutoCAD環境を導入すると、バージョン合わせをするためのデータ変換が不要になります。
AutoCAD 2020の下位互換は保証されていない
AutoCAD 2020でいう下位バージョンは、AutoCAD 2019、AutoCAD2018などです。
互換のない下位バージョンでは、ファイルが開けない
新しいバージョンのAutoCADで作成した図面ファイルを、古いバージョンの AutoCAD で開こうとすると、アラートが出ます。(*3)
AutoCAD2018までの下位バージョンであれば基本的なファイル形式が同じですが、AutoCAD 2017以前では、ファイルの保存形式が大きく異なるので、基本的に読み込みできません。(*1)
CADが異なる場合の互換性について
AutoCAD 2020は、PTC Creo、Rhino、CATIA、SolidWorks、JT、UGS NXなど、複数のCADデータが直接読み込めます。また、中間ファイルのIGES、STEP、Parasolidにも対応しています。(*5)
AutoCADの読み込みに対応しているデータの拡張子を、以下に一覧で紹介します。
なお、AutoCAD 2020とAutoCAD LT 2020とで、対応できるCADの種類は異なります。
形式 | 拡張子 | AutoCAD 2020 | AutoCAD LT 2020 |
3D Studio | .3ds | ○ | × |
ACIS | .sat | ○ | × |
Autodesk Inventor | .ipt
iam |
○ | × |
CATIA V4 | .model
.session .exp .dlv3 |
○ | × |
CATIA V5 | .CATPart
.CATProduct |
○ | × |
DGN | .dgn | ○ | ○ |
DXB | .dxb | ○ | × |
FBX | .fbx | ○ | × |
IGES | .iges
.igs |
○ | × |
JT | .ij | ○ | × |
Parasolid | .x_b
.x_t |
○ | × |
○ | ○ | ||
Pro/ENGINEER | .prt
.asm |
○ | × |
Pro/ENGINEER Granite | .g | ○ | × |
Pro/ENGINEER Neutral | .neu | ○ | × |
Rhino | .3dm | ○ | × |
SolidWork | .prt
.sldprt .asm .sldasm |
○ | × |
Windowsメタファイル | .wmf | ○ | ○ |
STEP | .ste
.stp .step |
○ | × |
各CADデータを読み込む際、ほとんどの場合IMPORTという機能を使用しますが、IGESの場合はIGESIMPORTという機能を使用します。(6)(7)
まとめ
AutoCAD 2020を含むCADデータでは、互換性の確保が非常に重要です。CADの種類やCADのバージョンにより互換性は微妙に異なります。せっかく作ったデータのやりとりに後になって困らないように、設計に着手する際はCADの環境を必ず確認しておきましょう。
*2 https://www.autodesk.co.jp/products/autocad/features
*4 https://www.autodesk.co.jp/products/autocad/compare-releases
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