なぜ自動運転にLiDARが採用されるのか?仕組みや運用の今後を解説
世界で最も注目されている最先端技術の一つに、自動運転が挙げられます。自動運転技術は一見すると一つのテクノロジーで成り立っているような印象を受けますが、実際にはさまざまな技術が複雑に組み合わさることで、高度な運転技術を実現しています。
この記事では、そんな自動運転でも盛んに採用されているLiDARと呼ばれるテクノロジーについて、自動運転で採用される理由やその仕組みを解説します。
目次:
- LiDARとは
- LiDARの仕組み
- LiDARを採用する自動運転について
- LiDAR開発の主な事例
- LiDAR運用の課題と今後
LiDARとは
LiDARは「light detection and ranging」の略称で、「ライダー」と呼ばれている測量技術です。レーザー光を使って、遠い場所にある物体の形状や、詳細な距離を把握することができるテクノロジーで、現在で最も精度に優れるセンシング技術としても知られています。
元々は地質調査や気象調査、宇宙探索などの領域で活躍していた技術ですが、最近ではその精度の高さが評価されていることや、小型化が進んでいることから、その他の領域でも盛んに用いられるケースが増えています。
LiDARの仕組み
LiDARにおいて核となる技術が、レーザー光を照射し、その反射によって得られた情報からさまざまな分析を行えるというものです。世界で最も早いとされるのが光線ですが、LiDARはレーザー光を使って文字通り光の速さで情報の取得と計算を行える仕組みを備えています。
LiDARが登場するまで、こういった周辺調査に活躍していたのはレーダー技術です。レーダーは電波を発信し、その反射などによって情報を取得する技術ですが、LiDARは従来のミリ波レーダーよりも光束密度に優れ、短い波長のレーザー光線を採用しているのが大きく違います*1。
その結果、LiDARは電波よりも正確に情報を取得できるため、レーダーよりも精度の高い情報を必要としているシーンでは、強力なパフォーマンスを発揮してくれるのが強みです。
LiDARを採用する自動運転について
極めて正確な測定ができるLiDARですが、自動運転技術においても積極的に採用が進んでいます。LiDARが自動運転に採用される大きな理由は、やはりその情報の正確性にあります。
従来のレーダー技術の場合、大まかな物体の存在や距離などは把握できたものの、人間の肉眼レベルでの物体の検知は難しい問題を抱えていました。自動車の運転は、常に状況が変化する道路上で行われるため、極めて繊細な情報の取得が求められます。そこで活躍するのがLiDARで、車に搭載されている光学センサーとカメラを使用することで、極めて正確な状況の把握が行えます。
先を走る車の存在や、後続車、歩行者や建物、道路上の障害物など、多くの情報をレーザー光によって瞬時に取得可能です。現在もレーダー技術を使った自動ブレーキ機能や、車線の維持を支援する機能などは一部の自動車に搭載されていますが、LiDAR搭載の自動運転車は、従来のドライブアシスト機能をはるかに超える精度での運用が期待されています。
高速道路などの限定的なシーンであれば、現在の技術でも自動運転でのドライビングはある程度可能ですが、問題となるのは一般道を走る際の運転です。一般道は高速道路とは異なり、交通ルールが複雑化し、多くのオブジェクトやハプニングも存在します。こういった事態にも臨機応変に対応するためには、LiDARのような正確性に優れる測量システムの存在が不可欠です。
LiDAR開発の主な事例
LiDARの技術開発にはさまざまな企業が参入しています。
デンソー
デンソーでは国内でも先行してLiDAR開発を進めている企業の一つで、自動運転車に特化した製品の開発に注力しています*2。デンソーはLiDARやミリ波レーダーなどに採用される、製品性能を左右するセンサーの内製化が進んでおり、量産技術にも強みを持っていることから、国産LiDARメーカーのパイオニアとなれる可能性を持つ企業です。
LiDAR運用はコストや量産化の問題を抱えているものの、デンソーであればこの課題を最初に突破することができるかもしれません。
東芝
東芝は2021年、高画質・長距離測定が可能でありながら、世界最小サイズのLiDAR開発を発表しました*3。今回開発した製品は同社従来製品の1/3のサイズとなる約350cc、および、4倍の解像度となる1200×80画素を実現、測定距離は200メートルに及ぶなど、高性能な技術を実現しています。
LiDAR運用の課題となるのが、その本体性能もさることながら、サイズの問題が挙げられます。
自動運転車のようなモビリティ製品に搭載する場合、あまりに大きなLiDARは現行の自動車の規格に合わない可能性もあります。しかし東芝は、その問題をクリアするための技術開発を進めていると言えるでしょう。
小糸製作所
小糸製作所は、LiDARの製造と販売に携わる米Cepton Technologies(セプトン・テクノロジーズ)の株式を取得したことを発表しました*4。
自動車用の照明器の開発や製造を手掛ける小糸製作所ですが、今回の株式取得に伴い、セプトン社との高性能LiDARの実用化に向けて関係強化を進めるとしています。小糸製作所のセプトン社の株式取得額は5000万ドル(約55億円)で、LiDAR市場の注目度の高さがうかがえます。
LiDAR運用の課題と今後
LiDAR運用に多くの期待が集まる一方、実用化にあたっては課題もあります。まず、LiDARの開発や実装コストは非常に高額で、一般の自動車などに搭載するには高すぎるのが現状です。
また、LiDARだけで全てのセンシングを賄うことは難しく、悪天候の現場では測定精度も低下するため、絶対に安心できる技術というわけでもありません。ただ、近年はLiDARの技術発展も進んでおり、改善も進んでいるため、LiDARを実装した自動運転車の登場まで多くの時間はかからないでしょう。
まとめ
この記事では、LiDAR技術の詳細や仕組み、自動運転に採用される背景などについて、解説しました。LiDARは高精度な測量が可能な技術であり、多くの領域で活躍が期待されます。
コスト面などの問題は抱えているものの、今後はレーダー技術などと合わせて無視できないテクノロジーへと進化していくでしょう。
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参考:
*1 くるまづくりコラム「自動運転実現で注目を集めるLiDARのしくみと種類(1/2)」
https://www.keyence.co.jp/ss/general/automotive-manufacturing/010/
*2 日本経済新聞「デンソー、自動運転の「目」開発へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39972190S9A110C1000000/
*3 東芝「世界最小サイズ・最高画質で最長測定距離200mのソリッドステートLiDARを開発」
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/21/2106-03.html
*4 自動運転LAB「「自動運転の目」LiDAR内蔵のランプ開発へ 小糸製作所、米Ceptonの株式取得」
https://jidounten-lab.com/u_koito-cepton