Google DeepMindが開発したLyriaとは?特徴と業界に与える影響を解説
LyriaとはGoogleの子会社であるGoogle DeepMindが開発した音楽生成AIモデルです。しかし、音楽生成といっても、どのような楽曲を制作できるのか分からないという方もいるのではないでしょうか。
本記事ではLyriaの特徴と音楽生成AIモデルが音楽業界に与える影響を分かりやすく解説します。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
1.Lyriaの特徴
2.Lyriaと同時に発表されたツール
3.音楽生成AIモデルが与える影響
AIモデルのLyriaとは
LyriaとはGoogle DeepMindとYouTubeが共同開発した音楽生成AIモデルです。(*1)楽曲の制作に特化しており、Lyriaを搭載した「Dream Track」や「Music AI Tools」によってYouTubeのサウンドトラック生成や既存メロディの編集などが可能になりました。
長い音楽を出力するためには、ビートや音階などの膨大な情報を含まなければならないため、Lyria開発以前のAIにとって音楽生成は困難でした。一方、Lyriaではインストゥルメンタルやボーカルを含む音楽を高品質で生成し、ユーザーによるパフォーマンスおよびスタイルなどを調整できます。
また、Lyriaを使って生成した楽曲に「SynthID」による電子透かしの埋め込みが可能になりました。SynthIDの電子透かしにより、AIツールが生成した楽曲であることを示せるようになり、ノイズ合成やMP3へのデータ圧縮など楽曲編集された場合でもAIツールによる生成コンテンツとして識別が可能になります。
Google DeepMindの会社概要
Google DeepMindとは人工知能の研究に重点を置いたGoogleの子会社です。(*2)2010年にイギリスを拠点として設立した「DeepMind Technologies」が前身となり、2014年にはGoogleに買収され、新体制を構築しました。現在はロンドンに本社を構えており、カナダやフランス、ドイツ、アメリカに研究センターを設置しています。
Google DeepMindはLyriaをはじめ、多くのAIツールを開発しています。開発した代表的なAIツールは次の8つです。
・Lyria:音楽生成
・Alpha codeシリーズ:コーディング対処、バグ特定
・CODOC:医療画像の解釈
・Flamingo:画像言語モデル
・Gemini:テキストや画像、音声から入力できる生成AI
・GNoME:結晶構造の発見
・Graph Cast:気象予測
・SynthID:電子透かしの埋め込み
Lyriaと同時に発表されたAIツール
Lyriaと同時に「Dream Track」と「Music AI Tools」の2つのツールが発表されました。ここでは、それぞれの特徴をみていきましょう。
Dream Track
Dream TrackではYouTubeのショート用サウンドトラックを自動的に生成できます。ユーザーが音楽のジャンルやトピック、雰囲気などを入力することで、音声や歌詞を自動的に作成するAIツールです。制作できる楽曲の長さは最大30秒です。
また、好きなアーティストを指名すると、アーティストの音楽に寄せたYouTubeショート用の楽曲を制作できます。選択できるアーティストは一部に限られています。具体的なアーティストは次のとおりです。
・Alec Benjamin
・Demi Lovato
・John Legend
・Sia
・Troye Sivan
2023年11月からクリエイターによる試験的な運用を開始しています。一般に公開される日時は公表されていません。
Music AI Tools
Music AI Toolsは楽曲の制作および編集が可能になるAIツールです。楽器を演奏する必要が無く、メロディを口ずさむだけでホーンラインおよびメロディの生成が可能です。MIDIキーボードのコードからボーカル音源および異なる音楽スタイルや楽器に変換できるようになります。
Music AI Incubator向けにリリースされる予定で、試験的に運用されています。Music AI Incubatorとはアーティストやプロデュ―サーなど最前線で活躍している音楽業界の人々がAIテクノロジーの活用によるメリットやデメリットを洗い出す取り組みです。
Dream Trackと同様に、Music AI Toolsも一般公開の日時は未定です。
Lyriaが音楽業界に与える3つの影響
Lyriaのような音楽生成AIモデルは音楽業界にとって大きな存在となり、さまざまな影響を与えるでしょう。例えば、音楽制作のプロセスを大幅に変えたり、音楽の多様性を高めたり、などの影響が挙げられます。ここでは、Lyriaが音楽業界に与える影響をみていきましょう。
音楽制作のプロセスが大きく変わる
Dream TrackやMusic AI Toolsは音楽制作のプロセスを大きく変えるでしょう。自身の感情やアイデアの音楽変換を可能にすることで、直感的でクリエイティブな領域を切り開けるようになります。制作者が音楽に関する専門的なスキルや設備を持っていない場合でも、音楽活動を行えるようになるでしょう。
音楽の多様性を高める
音楽生成AIモデルによって異なる音楽のジャンルや文化の要素の組み合わせが可能になり、音楽の多様性が高まります。新しい音楽ジャンルやスタイルの出現を手助けする可能性も想定できるでしょう。また、音楽制作のハードルが下がることで、より多くの人が音楽を使って自分自身を表現できるようになります。
音楽業界のビジネスモデルに影響を与える
音楽生成AIモデルの導入により、音楽業界のビジネスモデルにさまざまな影響を与えるでしょう。例えば、Dream Trackで制作された音楽が広告業界で新しい需要を生み出す可能性を秘めています。一方、音楽生成AIモデルで制作された音楽に対する著作権や所有権について、議論が生じたり、規制がかかったりする可能性も否定できません。
まとめ
本記事ではGoogle DeepMindが開発したLyriaの概要を解説しました。Lyriaを搭載したAIツールのDream TrackやMusic AI Toolsでは、音楽の専門知識や設備がない人でもYouTubeのショート用動画楽曲の制作や楽曲の編集が可能になります。そのため、音楽制作のプロセスが大幅に変わり、より多くの人が音楽に触れられる機会を作れるでしょう。
しかし、音楽生成AIモデルによって制作された楽曲に対し、著作権や所有権における議論や規制が生じる可能性も否定できません。Lyriaのような音楽生成AIモデルの導入は、アーティストやプロデューサー、音楽業界に限らずさまざまな業界に大きな影響を与えるでしょう。
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*1
「Google DeepMind|Transforming the future of music creation」
https://deepmind.google/discover/blog/transforming-the-future-of-music-creation/
*2
「Google DeepMind」