Autodesk Formaとは?データ共有やクラウドの利点、活用事例
Autodesk Forma*1とは、概念設計機能、予測分析、自動化機能に特化している建築(AEC)業界向けのクラウドです。
ここでは、Autodesk Formaの概要や必要となるライセンス、活用事例について紹介します。
Autodesk Formaとは?
Autodesk Formaとは、建築やエンジニアリング、建設向けに開発されたソリューションです。
Autodeskには、クラウド開発プラットフォームを基にした、3つの業界別のクラウドソリューションがあります。*2
クラウド開発プラットフォーム(Autodesk Platform Services:APS) | クラウド名 | 概要 |
Autodesk Forma | 建築、エンジニアリング、建設業界向けのクラウドプラットフォーム。建物の設計、シミュレーション、および建設プロジェクトの管理を支援。 | |
Autodesk Fusion | 製造向けのクラウドプラットフォーム。CAD・CAM・CAE・PCBが含まれ、設計から製造、販売までの製品開発ライフサイクル全体のワークフローを連携。 | |
Autodesk Flow | メディア & エンターテインメント向けのクラウドプラットフォーム。クリエイティブなプロジェクトの制作、管理、および配信の連携・効率化。 |
Autodesk Formaの概要
Autodesk Formaとは、設計・建築・建設・運用(AECO)に特化したクラウドシステムで、BIMのワークフローをプランニングや初期設計まで広げて、チーム全体のワークフローを統合する役割があります。
Autodesk Formaで必要となるライセンス
Autodesk Formaを使用する場合は、以下のライセンスが必要です。
日本国内の場合は、Revit、AutoCAD、Civil 3Dなどが含まれるAECコレクションのライセンスで使用するケースが多くみられます。
ライセンス名称 | 価格(1 ユーザー) |
Autodesk Architecture, Engineering & Construction Collection(AECコレクション) | 3年:1,663,200円 1年:554,400円 1か月:69,300円 |
Autodesk Forma※スタンドアロン | 3年:4,500ドル 1年:1,500ドル 1か月:190ドル |
Autodesk Formaの基本機能
Autodesk Formaは、初期段階の計画構築や設計立案に主眼を置いたクラウドベースのソフトウェアで、ノルウェーのSpacemaker社がもつ技術がベースになっています。
Spacemakerは、AIとジェネレーティブデザインを組み合わせて建築家や設計者、顧客などの関連メンバーが「候補となる土地に対してどのような建物を設計するのか?」という設計初期段階の意思決定を支援する技術です。
ここでは、Autodesk Formaの基本機能について紹介します。
必要なデータを必要なユーザーに連携
建築施工では、建築作業者の設計業務とゼネコンの施工業務が別々に行われるのが一般的です。Autodesk Formaには、データの収集と整理機能があり、さまざまなデータソースからデータを収集し、整理することができます。
そのため、どのプロジェクトのフェーズでも、すべての関係者がアクセスしやすい方法で関連するデータが利用可能です。またユーザーごとにアクセス権限を設定できるため、データの共有化とセキュリティ確保が両立可能です。
クラウド処理で反復作業を効率化
Autodesk Formaには、初期段階の企画や設計プロセスに必要となるモデリング ツールが含まれています。
- コンテキストモデリング:プロジェクトエリア全体の3Dモデルをスピーディに作成するツール
- コンセプト設計ツール:複雑な設計形状であっても設計意図を自由に表現するツール
- パラメータ駆動による設計追従機能
- 環境解析に必要な機械学習機能:日照、昼光、風、微気候などの密度特性や環境特性をリアルタイムで分析
- Revitアドイン:Revit上でFormaを駆動できるため、分析と詳細設計がシームレスに連携可能
AI を活用したシミュレーションや標準化された自動化機能、カスタマイズ可能なワークフローなどにより設計精度の向上やプロジェクトの迅速化が図れます。
プロジェクトをリアルタイムに表示
Autodesk Formaはクラウド上で処理を行うため、操作するワークステーション端末の処理性能に大きく依存することはありません。そのため、大量のデータやタスクを効率的に処理できるほか、リアルタイムの共同作業にも対応可能です。
リアルタイムの環境分析では、予測分析とデータに基づく結果をリアルタイムに出力できます。ユーザーごとに権限を付与して結果を共有することで、複数のユーザーが同時に分析結果を閲覧し判断を行ったり進捗状況を共有したりできます。
Autodesk AIとAutodesk Formaとの関連
Autodesk AIは各Autodesk製品を強化するための技術です。
Analysis(分析)、Augmentation(増強)、Automation(自動化)での活用が強化され、AutoCADやRevitなどにも取り入れられています。
Autodesk Formaでは、リアルタイム環境解析などにAutodesk AIが活用されています。
例えば、建物のエネルギー使用状況を見積もる場合には、FormaのRapid Operationalエネルギー分析が役立ちます。
予測結果を基に、エネルギー効率を考慮しながら設計することができます。
以前のシミュレーション結果に基づき数秒で予測を出力できるケースがあるため、以前の実験データを積み重ねて検証する方式よりも大幅に素早い処理が可能です。
複数の設計を反復評価して正確な予測を導くのに役立ちます。
Autodesk Formaの活用事例
建築・インテリアデザイン・プランニングを担う企業のCUBE 3では、クラウドベースのデジタル戦略を採用することで、顧客へのサービス向上を図っています。*3
建物にどの程度日光が入るかどうかは、居住者の快適性や健康に大きく影響します。
適切な日照時間の確保により、冬季の暖房負荷を減らし、夏季の冷房負荷を抑えることができます。
また、建物のデザインをする際に配置や形状の検討を行う場合や、日光を活用した機能性や快適性への配慮も重要です。
日本の場合には、建築基準法や都市計画法などに関わるため、適切な日照条件の確保は建物の設計において非常に重要です。
Autodesk Formaには、日照時間分析機能があります。
日照や風、騒音、景観などの情報をクラウド上で計算し、その結果得られた結果をRevitと連携することができます。
CUBE 3のチームでは、Autodesk Formaの日照時間分析を設計に反映することで、ビルの屋上に設置するプールの日照と日陰の確保を検討し、顧客要求を満たすことができました。
1つひとつを手計算して最適解を導くには多くの時間を要しますが、Autodesk Formaを活用することで、コンセプト設計にかかる時間を50~66%削減できました。
また、Formaの3D表現は視覚的にわかりやすく、顧客と相談して意思決定を行う場合にも便利です。
まとめ
RevitやAutoCAD、Civil 3Dなどと共用して活用できるAEC業界向けのクラウドです。
品質やコスト、納期を高めながら設計や施工、運用を行うためには、セキュリティを確保しながらもデータを統合してチームで共有する必要があります。
Autodesk Formaは、ユーザーやプロジェクトに必要なデータや分析結果が管理できるほか、クラウドでのシミュレーションや標準化、自動化などを組み合わせて反復作業の迅速化が図れます。
コンセプト設計や予測分析の効率化や、自動化設計を検討している方は導入を検討してみましょう。
大手ゼネコンBIM活用事例と 建設業界のDXについてまとめた ホワイトペーパー配布中!
❶大手ゼネコンのBIM活用事例
❷BIMを活かすためのツール紹介
❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX
参考URL
*1 https://www.autodesk.co.jp/company/autodesk-platform/aec
*2 https://www.autodesk.com/products/forma/overview?term=1-YEAR&tab=subscription
*3 https://blogs.autodesk.com/forma/2023/05/08/cube-3-forma-cloud-workflow/