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生産管理にPLMを導入することで得られる3つのメリット

グローバル化が進み、世界中のメーカーとの競争が激化している製造業界。この戦いに勝ち抜くためには、スピーディーな意思決定と経営判断、コスト削減、効率化、さらに変化するマーケットへの対応などが求められています。
 ICT技術の進化とクラウド化によって、このような課題に対応できる「PLM」が今、注目されています。

この記事でわかること
 ・PLMとは何か
 ・PLMの導入で得られる3つのメリット
 ・PLM導入に際して注意すること

PLMとは何か

 「PLM」は”Product Lifecycle Manegement”のことであり、日本語では「製品ライフサイクルマネジメント」と訳されます。
 一つの製品に対して、企画・設計段階から原材料や部品の調達、生産、市場への投入、サポート、廃棄までの一連の流れを「製品ライフサイクル」といい、これは生物分野で元々使われていた用語を、工業分野に転用したものです。

 この「製品ライフサイクル」に関わる全ての情報を一元管理し、マネジメントすることを「PLM」と言います。元々、1990年代には設計から生産までの製造工程に関して、CADデータや部品管理表(BOM)を一元管理する「PDM(Product Data Manegement)」が登場し、普及してきました。

 それまで紙で管理していた情報をデジタル化し共有することによって、生産工程における無駄を省き、効率よく製品を製造することができるようになります。

 以前は工程ごとに異なる形で情報を管理していたため、「同じ情報を何度も入力する」手間や「ヒューマンエラーによるミス」の発生が問題でした。しかし「PDM」を利用することによって、一度情報を入力すれば製造に関わる全ての部署で共有し、利用することができるため、不必要な作業が軽減され、ミスやエラーが早期に発見できるというメリットが得られます。
 さらに、製品の一部を変更するような際にも、大元のデータを一度修正するだけで全ての工程に反映でき、市場ニーズへの素早い対応が可能になります。

 「PLM」は「PDM」よりも対象範囲を拡大し、製造部門だけでなく企画段階から、製品の販売、顧客からの反応、サポート、廃棄に至るまでの全ての情報を一元管理します。2000年代ぐらいから「PDM」を拡張する形で、徐々に一般的になりました。当初はパッケージソフトなどもありましたが、現在ではクラウド上での管理へとシフトしています。

 また「PLM」といっても、単一のシステムでカバーできる訳ではなく、いくつかのシステムを組み合わせて実現しています。顧客管理や部品や資材の調達などは、外部などの社外との連携も必要となることから、それぞれの目的やニーズに合わせたシステムを組み合わせることになります。

 例えば、企画段階であればポートフォリオは予算の管理、設計部門であればCADデータや部品表の管理が必要となります。メンテナンス部門なら、部品の在庫数や修理履歴の管理、廃棄段階では不良品の発生数や耐用年数、さらに排出量の管理をデータ化しています。

 これまで各部門・各工程ごとに異なる管理方法で、異なる形式によるデータ化がなされていたものを、「PLM」ならクラウド上で一元管理し、視覚化することが可能です。
 「PLM」の導入により、製品の誕生から消滅までを網羅し、統一化された情報を手に入れることができるようになります。*注1

PLMの導入で得られる3つのメリット

 「PLM」を導入し生産管理で活用することによって、いくつものメリットが得られます。その中でも特に代表的なものを3つ取り上げてみましょう。

 1)無駄の削減・効率化

 ICT技術が生産現場に導入される以前は、各工程ごとに異なる形で情報を管理することが普通でした。設計部門が作成した製品情報は「紙」で次の工程に渡され、そこから必要な情報を読み取り、それぞれの工程で製造装置にデータを手入力するなどといった状態です。これでは二度手間でありミスも生じやすく、不良品が発生しても原因の特定に時間がかかります。

 設計・製造部門間であってもこのような状態ですから、企画部門やメンテナンス部門、顧客対応や経理部門など、性質の異なる部署ではより大きな溝があるのが普通です。

 例えば「PLM」が機能していない企業で、ある製品の企画段階から製造・廃棄までのコストを算出したいとします。
 経理担当者は各部門に対して、工数や材料代などを期間を指定して算出・集計するようにメールで連絡しなければいけません。さらに広告費や在庫の保管料、顧客からの問い合わせ対応や廃棄する際のコストなども網羅しようとしたら、かなりの部署から詳細な情報を集める必要があります。
 数日後、各部署の担当者からの返信メールに添付されたエクセルデータを集計して、、、、などという、非常に面倒で手間のかかる作業をすることになります。
 
 これに似た状況を、今現在も日々やっているという方も多いのではないでしょうか。これは「ある製品に関する情報が、部署ごとに異なる形で散在している」ことが原因であり、「その情報を管理している人に聞かないとわからない」状態であることが問題です。

 「PLM」によって、全ての情報がクラウド上で管理され、権限を持った人物であればいつでも自由にアクセスできる状態であり、さらに必要に応じて集計や加工、抽出が容易になります。
 自分のデスクから動くことなく、必要と思った時に必要な情報を入手できることのメリットは非常に大きいでしょう。

 2)コスト削減

 無駄の削減や効率化が実現できれば、そのままコスト削減につながることは明らかです。重複した作業をする必要がなくなり、少ない人員でより多くの業務を遂行することができるようになります。
 また、情報の伝達ミスや人力作業を伴うヒューマンエラーの削減、問題が発生した際のスピーディな原因追及ができることも、コスト削減に効果的です。

 さらに既存製品の改良や改善をする場合も、メンテナンス情報や顧客からの声などを活用することができます。情報へのアクセスと抽出がスムーズにできれば、新たな製品開発に取り組む際の準備期間を短縮し、スピーディな市場への投入を実現できるようになります。
 時代のニーズに合わせて、市場に受け入れられる製品を作る「マーケットイン」型に最も相応しい手法といえるでしょう。

 3)品質向上

 これは言うまでもないことかもしれません。全ての情報を一元管理し、トレースできるのですから、不具合の発生から原因を辿ることも、新たな機能を追加して効果を測定することも格段に容易になります。

 データの一元管理、視覚化、共有化、共通化がもたらす効果は絶大で、それを製品のライフサイクル全体に適用するのが「PLM」です。
 マーケットの動向に合わせて柔軟で迅速な製品のリリースを可能にし、ユーザーボイスをリアルタイムに改良に反映させることができれば、大きな優位性を築くことができます。

 このように「PLM」の導入と運用は、グローバル化が進み海外の多数のメーカーとの競争に晒されながら、生産人口の減少に伴う効率化・省力化を実現しなければならない製造業にとって非常に重要です。

 「PLM」は元々、航空・宇宙産業や自動車産業で導入されてきた手法ですが、その有効性から徐々に他の産業分野へも拡大しています。
 今や、大企業ばかりでなく深刻な人手不足と市場競争に晒される中小企業にとっても、重要な取り組みとなっています。

PLM導入に際して注意すること

 いかに「PLM」が優れていたとしても、既存の生産管理手法が動いている現場全てを一気にリプレイスするのは困難を伴います。業種や業態、製品の種類や規模によっても機能を最適化する必要がありますし、そもそも「PLM」という定番のソフトウエアが存在するわけでもありません。

 各部署で動いているシステムや手法を考慮した上で、段階的にPLMへの移行を行うことが重要です。また、スタッフへのトレーニング期間も考慮しなければなりません。
 まずは「PDM」の導入から始めて、徐々に他の部門のシステムと統合する形で最終的に「PLM」へ完全移行するというのが無理の少ない手順です。

 また一口に「PLM」といっても、ベンダーによって特徴の異なるシステムをリリースしています。それぞれの特徴を精査した上で、自社に最適なものを選定しなくてはなりません。解決したい課題は何か、将来の事業拡大などの変化に対応できるかなど、長期的な視点に立った選択が必要です。

 時には、既存のシステムをある程度動かしながら、PLMシステムと連携させたり、自社の特徴的な業務フローに合わせて、新たな機能を追加したりする必要があるかもしれません。
 そのためには、現状の手法を精査し、必要な情報は何かを明確にした上で、最適なシステム設計と導入計画、運用計画の立案が重要となります。

 単に形だけのPLMシステムの導入は簡単にできます。それが本当にコスト削減につながっているのか、品質向上を実現できているのか、作業効率化は実現できるのかなどの効果測定が必要です。
 よくある「新システムの導入でかえって手間が増えた」ような事になっては、本末転倒です。

【まとめ】

 本稿では「PLM」について簡単にまとめてみました。ICT技術の進化とクラウドの普及により、かつては考えられなかったほど、大量のデータを効率的に取り扱うことが可能になっています。

 これを生産管理に活かし、情報の一元管理と活用を進める「PLM」は、間違いなくこれからの製造業にとって必要不可欠となります。これは中小企業であっても例外ではありません。厳しさを増す市場競争に対抗する重要な武器の一つが「PLM」の導入と適切な運用ではないでしょうか。

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■参考文献

注1

DAIKO+製造業 「PLMとは?PDMとの違いや機能、導入のメリットを詳しく解説」

https://www.daikodenshi.jp/daiko-plus/production-control/what-is-plm/
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