意匠図と建築図のちがいとは?意匠設計を仕事にする方法もご紹介
「意匠図と設計図は何がちがうのだろう?」
「意匠設計の仕事に就くにはどうしたら良いのだろう?」
とお悩みの方へ。建築業界ではさまざまな図面が存在します。
意匠とはデザインのことで、建築業界における「意匠図」とは主にデザインに関する指示が書かれています。対して「建築図」とは建築物の設計図全体を指す図面で、寸法はもちろん設備や配管といった詳細まで記されており、どちらも複数の図面で構成されます。
この記事では意匠図と建築図のちがいをはじめ、意匠設計を仕事にする方法をご紹介します。建築士や意匠設計に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事を読むと、以下の3つのことが分かります。
1.意匠図と建築図のちがいについて
2.意匠設計を仕事にする方法
3.意匠設計や建築業界で導入が進む「BIM」について
意匠図と建築図のちがいとは?
まずは意匠図と建築図について、それぞれの特徴とちがいについて解説します。
意匠図とは
建築において意匠図といえば、建物の見た目やデザインに関する指示をまとめた図面のことです。間取りやデザインの詳細を専門的に書き起こしており、建築図面における「基本設計」の1つとなります。
基本設計には意匠設計以外に、構造図や設備図といったものもあります。基本設計における意匠図・構造図・設備図といった図面は同じ建物の情報を違う切り口で記載した図面なので、ぴったりと一致しなければなりません。
また意匠図は依頼主や施工者などの関係者に完成イメージを伝える、という重要な役目を持っています。
意匠図は1/200~1/300程度の縮尺が一般的で、平面図・断面図・立面図の3つで構成されます。
平面図は建物を水平に切った状態で、上から見た状態を図にしたものです。間取りや設備、天井や床といった意匠を確認しやすい平面図は、賃貸物件サイトなどでもよく使われます。
断面図は建物を垂直に切ったもので、建物の高さを把握しやすい図面です。部屋ごとの天井の高さをはじめ、軒の高さや階段のつながり、ロフト部分などの確認によく使われます。
立面図は建物の外観を図面にしたもので、東西南北の4つの方向から描かれます。建物全体の外観を把握する時によく使われ、屋根の形状や窓の位置、外壁の材質を確認する時にも欠かせません。
建築図とは
建築図(図面)とは、建物の構造について詳細にまとめたものです。その建物の柱や梁、基礎といった構造部分についても詳細にまとめてあります。
建築図は主に、以下3つの図面で構成されます。
基本設計図…配置図・平面図・立面図・断面図・矩形(かなばかり)図・外構・主要部分の展開図など
実施設計図…意匠図・構造図・設備図など
施工図…断面詳細図、プロット図、躯体図、配管図、割付図
上記は一部で、実際にはさらに多岐にわたる図面が必要です。
前述した「意匠図」は、上記の「基本設計図」に含まれます。
「意匠図」とは建物のデザインについて詳細にまとめた基本設計図の1つであり、「建築図」は意匠図を含めた建物全体をまとめたものとなります。
意匠図も建築図も、特定の建築物を表す図面です。そして意匠図は、建築図に内包されるデザインに特化した図面の1つとなります。ここが意匠図と建築図の大きなちがいといえます。
基本設計とは文字通り基本的な設計図であり、建物を作ることが決まった時に最初に作成する図面です。具体的には建物の仕様や耐用年数、全体の予算なども書かれます。基本設計を作る段階で依頼主の要望をヒアリングして、できる限り盛り込んでいきます。
基本設計図ができたら、工事を発注するための「実施設計図」を作成します。意匠図は、この実施設計図を作成する段階で作られる図面です。
実施設計図はデザイン仕様や間取り、建築物の形をまとめた「意匠図」、柱や梁など構造部材の発注に使う「構造図」、水道管や照明、配線関係の発注に使う「設備図」の3つから作成します。
意匠設計を行う「建築デザイナー」の仕事内容や資格
建物のデザインを表す意匠図は、主に建築デザイナーや建築士と呼ばれる方が描きます。意匠設計を行う建築デザイナーというお仕事について、主な業務内容や資格、魅力を解説します。
意匠設計は建築業界の中でも花形
建築業界にはさまざまなお仕事がありますが、「意匠設計」と呼ばれる建物をデザインするお仕事は人気があり、まさに“花形”の職業です。依頼主の要望を聞き、造形美を追及したり人をあっと驚かせるデザインを考えたりと、建築において華やかな側面があります。
意匠設計は業務範囲が広く、建物の構造やコンセプト、配管や配線を考慮しなければなりません。プロジェクト全体のまとめ役でもあり、完成まで密に関わる必要があります。
その分完成した時の感動はひとしおで、デザインやものづくりが好きな方は大きな達成感を感じるものです。ビルなどの大きな建築物はもちろん個人の住宅であっても、依頼主の納得いくものができればずっと感謝されます。
国内でも有名建築家として名を馳せた人は多く、「いつか有名建築家になりたい」と建築学科に通っている方も少なくありません。
意匠設計の仕事内容とは
建築の設計技術は、意匠設計・構造設計・設備設計の3つがあります。意匠設計は主に以下2つの設計業務を担っており、プロジェクトにおいてまず欠かすことはできません。
基本設計
詳細設計
基本設計では、システム開発のように「要件定義」からスタートします。依頼主の要望や予算を聞き、それらを反映してざっくりと形状や間取りを作りながら建物のデザインをつくっていきます。
要件定義では、建築基準法の範囲内で依頼主の要望や条件をクリアしていかなければなりません。もちろん予算もありますから、依頼主や関係者と話し合いを重ね、時には折衝するスキルも求められます。
依頼主が納得できる要件定義ができたら、次は詳細設計です。窓の位置やドアの高さ、使用する建材の型番やコンセントの位置といったより細かいデザインを詰めていき、「この図面があればいつでも建てられる」というレベルの図面を作ります。
意匠設計といえばデザインがメインですが、それだけではありません。構造設計や設備設計でトラブルが起きないように、幅広い知識が必要とされるお仕事です。
意匠設計の仕事に就く方法
意匠設計の仕事に就くためには、以下のような職場があります。
設計事務所
アトリエ事務所
建築会社
ハウスメーカー
設計事務所には、建物の設計や監理をする「建築家」がいます。建物や空間のデザインをメインの業務としており、意匠設計をしたい方におすすめです。
アトリエ事務所とは設計事務所の中の1つで、内装・外装の両方でよりデザインに特化した事務所が多くなっています。「建築デザインを突き詰めたい」という方は、アトリエ事務所を狙う方が多いようです。
また“ゼネコン”と呼ばれる国内の大手建築会社でも、多くの建築士が働いています。大きいプロジェクトに参加できれば、国内や海外の大規模な建築デザインに携われるかもしれません。
ハウスメーカーは個人の家づくりを担うケースが多く、戸建ての意匠設計がメインとなるでしょう。ハウスメーカーによってはアパートやマンションを建てることもあり、それらの設計にも関わることができます。
意匠設計に必要な資格
意匠設計をするにあたり、まず必要なのが「建築士」の資格です。建築士には木造・二級・一級建築士という3種類があり、それぞれでできることが違います。
木造建築士は文字通り木造の建物のみ設計できます。二級建築士は、戸建てレベルの建物なら木造・鉄筋コンクリート、鉄構造などの設計もできます。
一級建築士になればすべての建物の設計ができるようになるので、自分がどこまでできるようになりたいか一度考えてみましょう。
建築士になるためには、高等専門学校や大学で、指定の単位を履修する必要があります。二級建築士・木造建築士であれば、その後に国家試験の合格と実務経験を経ればOKです。
一級建築士の場合、その後に国家資格を受験してさらに実務経験を重ねることで取得できます。
意匠設計で導入が進む「BIM/CIM」について
建築業界で働く人にとって、無視できないのが「BIM/CIM」です。昨今の建築業界では、人手不足解消や業務効率化のために3Dモデリングやデータ共有を行うBIMの導入が進んでいます。
BIM(Building Information Modeling)は、BIMツールによってデジタル空間に建築物の3Dモデリングを構築する点が大きな特徴です。壁や建具、床材など建物を構成するパーツをデジタル空間の中で構築し、1つ1つに型番やサイズなどのデータを付与します。
建物の完成イメージを直感的に共有できるBIMは、特に意匠設計と相性が良いのです。照明や日当たりのシミュレーションもデジタル空間ででき、図面とちがって一目で完成図が理解できるので、設計者と依頼主の間での認識の齟齬が発生しません。
また、意匠図や建築図といった各種図面も3Dモデリングから作ります。そのため資料作成にかかる膨大な時間を短縮できるのです。
BIMは専用のツールが必要で、AutoCADの「Revit」やGRAPHISOFTの「Archicad」(アーキキャド)などが有名です。これらは高額なソフトですが、学生であれば無料で利用できますのでぜひ試してみてください。
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