AutoCAD LTとは何か?今でも知りたい魅力と活用法
はじめに
AutoCAD LTは、過去、Autodesk社が提供していた2D設計に特化したCADソフトウェアです。設計現場で幅広く使われているAutoCADシリーズの中でも、機能を限定することでシンプルさを重視したバージョンとして位置づけられていました。特に「低コスト」「2D設計特化」「操作性のシンプルさ」が特徴であり、フル機能版を必要としないユーザーに適しています。
ただし2021 年 6 月 6 日以降は提供停止しており、後継製品への移行がアナウンスされています。
AutoCAD LT 販売終了 | サブスク更新・後継製品について | Autodesk
この記事では、AutoCAD LTがどのような製品であったのか、使い方を詳しく解説します。
AutoCAD LTの主要な特徴
AutoCAD LTは、2D設計に特化したCADソフトウェアであり、操作がシンプルでコストパフォーマンスにも優れています。この特徴から、建築、機械設計、インテリアデザインなど、幅広い業界で利用されています。ここでは、AutoCAD LTの主要な特徴を詳しく見ていきましょう。
2D作図に特化した設計ツール
AutoCAD LTの最大の特徴は、2D設計に特化している点です。3D機能を持たないため、フル機能版に比べて操作がシンプルで、初心者でも短期間で基本的な操作を習得できます。設計業務において、2D図面の作成は多くの場面で必要とされるため、AutoCAD LTは建築図面や設備図面、機械設計図の作成に最適です。
具体的には、以下のような用途で活用されています。
- 建築図面:平面図や立面図などの基本設計図の作成
- 設備設計図:配管や電気設備のレイアウト設計
- 機械設計図:部品図や組立図などの機械要素の作図
このように、2D作図が主な業務となる現場であれば、AutoCAD LTは十分な機能を提供します。
操作性のシンプルさと使いやすさ
AutoCAD LTは、直感的なインターフェースを備えており、初めてCADを使う方でも比較的スムーズに作業を始められます。特に、AutoCADフル機能版と同じインターフェースを採用しているため、将来的にフル機能版へ移行する場合も操作感が変わらない点が魅力です。
さらに、動作が軽いため、スペックの高いPCを用意する必要がありません。これにより、中小企業や個人ユーザーでも導入しやすく、現場での軽作業や簡易な修正用途にも適しています。
具体的な使いやすさのポイントとしては以下が挙げられます。
- 簡単なコマンド操作:主要なコマンドが分かりやすく整理されており、基本操作を短期間で習得可能
- 軽快な動作:フル機能版に比べて軽量な設計のため、旧型PCでも安定して動作
コストパフォーマンスの高さ
AutoCAD LTは、フル機能版に比べて価格が抑えられており、特にコストを重視するユーザーにとって魅力的な選択肢です。Autodesk社はサブスクリプション形式でAutoCAD LTを提供しており、ユーザーは初期費用を抑えて導入できます。
また、AutoCAD LTはフル機能版と同じDWGファイル形式を使用しているため、他のAutoCADユーザーとのデータ共有がスムーズに行えます。この点は、チーム内でのコラボレーションにおいて大きなメリットとなります。
主なコストメリット
- 低価格で利用可能:フル機能版に比べて初期費用・ランニングコストが低い
- サブスクリプション形式:月額または年額での利用が可能であり、必要に応じて契約を変更できる柔軟性がある
- 高い互換性:フル機能版と同じファイル形式を採用しているため、外部とのやり取りに支障がない
AutoCAD LTとフル機能版の違い
AutoCAD LTは2D設計に特化したバージョンであり、フル機能版のAutoCADとはいくつかの重要な違いがあります。ここでは、主要な違いを詳しく解説し、それぞれを選ぶべきケースについても紹介します。
機能差の比較
AutoCAD LTとフル機能版AutoCADの最も大きな違いは、3Dモデリング機能の有無です。AutoCAD LTは純粋に2D図面の作成と編集に特化しており、3D機能を一切持たないため操作がシンプルで軽快です。一方、フル機能版のAutoCADは2Dだけでなく、3Dモデリングやレンダリング、解析などの高度な機能を備えており、3Dを活用した設計業務に適しています。
主な機能差
機能 | AutoCAD LT | AutoCAD フル機能版 |
---|---|---|
2D作図 | 対応 | 対応 |
3Dモデリング | 非対応 | 対応 |
レンダリング | 非対応 | 対応 |
カスタムツールの作成 | 限定的 | 対応 |
API対応 | 非対応 | 対応 |
これらの違いから、AutoCAD LTは「2D図面作成を効率的に行う」ニーズに応え、コストを抑えた導入を検討するユーザーに適しています。一方、フル機能版は「3Dモデリングや高度な設計作業を必要とする業務」に適しており、特に大規模なプロジェクトや製造業の分野で活用されています。
どちらを選ぶべきか?
AutoCAD LTを選ぶべきケース
- 2D図面が主な業務の場合
AutoCAD LTは、2D設計専用ツールとして開発されており、平面図や立面図などの基本設計図を効率よく作成できます。建築や設備設計、製造業での部品図作成など、2D設計が中心の業務には最適です。また、現場での軽作業や簡単な修正作業にも向いています。特に、動作が軽快であるため、スペックの低いPCでも使用できる点は、モバイルワークや現場での利用を想定したユーザーにとって大きなメリットです。 - コストを抑えたい場合
フル機能版AutoCADに比べて価格が抑えられており、初期費用やランニングコストを重視する中小企業や個人事業主にとって魅力的な選択肢です。加えて、Autodesk社が提供するサブスクリプション形式により、月額または年額で柔軟に利用できるため、必要な期間だけ契約することも可能です。 - 操作の簡単さを重視する場合
AutoCAD LTは、2D機能に限定されているため、フル機能版に比べて操作がシンプルです。基本的な操作は短期間で習得でき、初心者でもすぐに設計業務を始められます。また、フル機能版と同じインターフェースを採用しているため、将来的にフル版へ移行する際もスムーズです。 - フル機能版との互換性を重視する場合
AutoCAD LTは、フル機能版と同じDWGファイル形式を使用しているため、チーム内や外部とのデータ共有が円滑に行えます。2D作図に限る業務であれば、フル機能版ユーザーとの連携においても支障はありません。この点は、2D設計を中心とした中小規模のプロジェクトにおいて特に有効です。
フル機能版を選ぶべきケース
- 3Dモデリングが必要な業務の場合
フル機能版AutoCADは、3Dモデリング機能を備えており、建築設計や製造業などでの高度な設計業務に適しています。3Dモデリングを活用することで、設計精度を高め、製品や構造物の詳細な検証を行えます。 - 高度なカスタマイズやツール開発が必要な場合
フル機能版はAPIに対応しており、AutoLISPやVBA、.NETなどを用いたカスタムツールの作成が可能です。このため、特殊な業務フローを持つ企業や、設計プロセスを効率化する自動化ツールを必要とするユーザーに適しています。 - 大規模なプロジェクトで一貫性を重視する場合
大規模なプロジェクトや外部との協業では、フル機能版を使用することでデータの一貫性を保つことが可能です。特に、3D設計を含むプロジェクトでは、全員がフル機能版を使うことで、設計プロセス全体の効率を向上させられます。
まとめ
AutoCAD LTは、2D設計に特化した手軽なCADツールとして、多くの業界で広く利用されていました。特に、平面図や立面図などの2D図面作成を効率的に行いたいユーザーにとっては、シンプルな操作性と優れたコストパフォーマンスを兼ね備えた最適な選択肢でした。フル機能版AutoCADに比べて軽量で動作が速く、スペックの低いPCでも十分に活用できる点は、現場作業やモバイル環境での使用において大きなメリットのある製品でした。
しかし、現在では提供停止しており、後継製品への移行がアナウンスされています。
製品はライフサイクルに従って販売終了することもあり、ツール選定は長期運用を考えるうえでの課題と言えるでしょう。ツールを変更することで、どのような機能を使ってきたのか、どのような機能が必要となるのか、本記事を参考としていただければ幸いです。
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