CADの直交モードとは?基本の意味と使い方をやさしく解説
1. はじめに|“まっすぐ描けない”を一発で解決する鍵は「直交モード」
「線がわずかに斜めになってしまう」「あとで修正に時間を取られる」——CADを使い始めた人がまずぶつかる壁です。原因の多くは、カーソルが自由に動きすぎること。ここで役立つのが直交モードです。
直交モードは、カーソルの動きを現在のUCSに対する水平・垂直方向にだけ制限する機能。F8キーやステータスバーの ORTHO ボタンでオン/オフでき、AutoCAD・BricsCAD・IJCADなど主要なCADに共通して搭載されています。これを使えば、意図しない“ナナメ”を防ぎ、正確で速い作図が一気に実現します。
本記事では、直交モードの基本概念と使い方、オン/オフの切り替え方法、そしてよくあるつまずきの対処法までをやさしく解説します。読み終えるころには、「どのタイミングで直交を使うべきか」が感覚的に分かり、線のズレに悩まされることがぐっと減るはずです。
2. 直交モードとは?CADの基本操作を掘り下げる
CADで正確な図面を描くとき、たとえば壁を水平にまっすぐ引きたい、左右対称のパーツを狂いなく配置したい――そんな場面で力を発揮するのが直交モード(Orthogonal Mode)です。直交とは文字どおり「二つの線が90度で交わる」こと。これをカーソル操作に応用すると、水平方向と垂直方向に動きが制限され、意図せず斜めにずれてしまうミスを大きく抑えられます。
通常、マウスだけで線を引くと、わずかな手ぶれで角度が付くことがあります。直交モードをONにすれば、カーソルは現在のUCS(ユーザー座標系)を基準にX軸方向(水平)またはY軸方向(垂直)にのみ移動します。グリッドや座標系を回転させている場合は、画面上での見た目が0°/90°と一致しないこともありますが、原理は「UCS基準の水平・垂直に拘束される」という一点です。結果として、作図精度の向上はもちろん、水平・垂直ラインの描画にかかる時間も短縮できます。
よく耳にする「F8キーで直交モード」や「ステータスバーの ORTHO ボタンで切り替え」は、この機能の代表的な操作方法です。ソフトによっては「ORTHO」コマンドやシステム変数「ORTHOMODE」でON/OFFを制御しますが、狙いはいずれも同じ――真っ直ぐを簡単・確実に描くための補助です。
本節では、まず直交モードの基本概念と、主要なCADソフトがどのように実装しているかを確認します。続く節では、具体的な作図手順やキーボード操作のコツ、よくある疑問へのトラブルシューティングまで丁寧に解説していきます。
2.1. 直交モードの定義と基本的な概念
直交モード(Orthogonal Mode)を一言で言えば、現在のUCSに対してカーソルの移動方向を「水平(X軸)」と「垂直(Y軸)」に固定する機能です。ここでいう「固定」とは、ユーザーの意図に反してカーソルが斜め方向へ流れないよう、角度の自由度を自動で制御することを指します。
背景として、CADでは角度や距離を数値入力する方法もありますが、日常的にはマウス操作で素早く線を引く場面が少なくありません。このとき微妙な傾きが混じると、のちの寸法調整や延長・トリムで修正手間が増大します。直交モードはこの「わずかな傾き」を根本から防止し、はじめから“正しい方向”で線を置けるようにする仕組みです。
なお、「直交(orthogonal)」=90度の関係という数学・建築の用語はCADでも同様に用いられます。つまり、XY座標の基準軸に対してまっすぐ水平・垂直で線を引くのを強力にサポートするものです。初心者が最初に身につけるべき基本操作のひとつと言って差し支えありません。
また、各ソフトでは「オーソ(Ortho)モード」という名称で表記されることがあります。一方で「正投影(Orthographic)」は投影法に関する表示の用語であり、直交モードの別名ではありません。ここを混同しないようにしておくと、ヘルプ検索や設定確認がスムーズになります。主要なAutoCAD、BricsCAD、IJCADなどには標準機能として搭載されています。
2.2. 直交モードの役割とCADでの位置づけ
直交モードの第一の役割は、作業者の負担を減らし、精度とスピードを同時に高めることです。角度入力をしなくてもワンクリックで方向が安定するため、水平・垂直線の量産や矩形フレームの作図、等間隔の部品配置などで効果を発揮します。結果として、斜めズレの事後修正が減り、全体の作図リードタイムを短縮できます。
さらに、直交モードは他の作図支援機能との併用で真価を発揮します。たとえばスナップモードは「端点・交点など特定点への吸着」を担い、グリッド表示は「位置合わせの視覚的ガイド」を提供し、ポラートラッキングは「任意角度の方向ガイド」を提示します。直交モードが“90度方向の精度を担保”するのに対し、これらは“着点の正確さ”や“任意角度の誘導”を補うイメージです。場面に応じて使い分ければ、単純形状から複雑形状まで、安定した品質で作図できます。
このように直交モードは、CADを習得する上で避けて通れない基礎スキルです。以降の章では、実務で迷わないためのON/OFFの使い分け、具体的な手順、そして効かないときの確認ポイントまで順を追って紹介します。ここを押さえておけば、日常の作図で“まっすぐ”に悩む時間は確実に減り、仕上がりの精度とスピードが両立できるようになります。
3. 直交モードの操作方法
ここからは、直交モードをオン/オフする具体的な手順について解説します。多くのCADソフトでは、キーボードショートカットやステータスバーのボタンを使って簡単に切り替えることができ、特にF8キーが標準ショートカットとして設定されている場合がほとんどです。このキー操作を覚えておくだけで、作図中でもスムーズに直交モードを切り替えられます。
操作方法を理解しておくことで、必要な場面で瞬時にオン/オフを切り替えられるようになります。たとえば、壁や梁などの水平・垂直線を大量に引くときは直交モードをONにし、斜め線や曲線を描くときはOFFにして作業する――このように使い分けることで、作図スピードと精度の両方を大幅に向上できます。
基本的な操作方法はソフトごとに多少異なりますが、AutoCAD・BricsCAD・IJCADといった代表的なCADソフトではほぼ共通しています。以下で、一般的な3つの切り替え方法を順に見ていきましょう。なお、ステータスバーの表記やショートカット設定が環境によって異なる場合もあるため、実際に使用しているソフトの設定画面を確認しておくと安心です。
3.1. 直交モードのオン/オフの切り替え
■ キーボードショートカット(F8キー)
もっともよく使われるのがこの方法です。AutoCADやBricsCADなどでは、初期設定でF8キーが直交モードの切り替えに割り当てられています。作図コマンドの実行中でも、F8キーを押すだけで「自由線」から「直交状態」へ、あるいはその逆に瞬時に切り替え可能です。覚えておけば、コマンド操作の途中でも手を止めずに効率よく作業できます。
■ ステータスバーのボタン
画面下部にあるステータスバーの「ORTHO」ボタンをクリックしてオン/オフを切り替える方法です。ボタン名が「オーソモード」や「直交」と表記されているソフトもあります。オンになるとボタンの色やアイコンが変化し、状態を一目で確認できるため、視覚的に管理したい方に最適です。特にマウス中心で操作するユーザーに向いています。
■ コマンドライン入力
コマンドラインが使えるソフト(AutoCADなど)では、「ORTHO」と入力してEnterを押すことでモードを切り替えられます。内部的にはシステム変数「ORTHOMODE」の値(0=OFF/1=ON)を変更して動作しており、コマンドライン操作に慣れているユーザーなら、こちらの方が素早いと感じるかもしれません。初心者の方は、まずはF8キーやステータスバー操作から慣れていくとよいでしょう。
これら3つの方法を使い分ければ、どのCADソフトでも状況に合わせて柔軟に操作できます。作図の途中で迷ったときも、まずは「F8」か「ORTHO」ボタンを確認するのが鉄則です。
3.2. 直交モードを使った具体的な作図手順
■ 手順1:直交モードをONにする
作図を始める前に、まず直交モードをONに設定します。F8キーを押すか、ステータスバーの「ORTHO」ボタンをクリックすればすぐに有効になります。オンになっていることを確認してから次の操作に進みましょう。
■ 手順2:線分コマンドを選択
ここでは、最も基本的な線分コマンド(LINE)を例に説明します。コマンドを起動したら、図面上で始点をクリックして指定します。マウスのクリックで基準点を確定させるイメージです。
■ 手順3:水平方向または垂直方向へドラッグ
カーソルを水平方向、または垂直方向へ動かします。直交モードがONになっていれば、マウスを少し斜めに動かしても、UCS(ユーザー座標系)に基づく水平・垂直方向に自動で拘束されます。これにより、意図しない角度のズレを完全に防ぐことができます。
■ 手順4:終点をクリックして確定
カーソルを所定の位置まで動かしたらクリックして終点を決定します。線が確定すると同時に次の始点を指定できるため、連続した水平・垂直線の作成もスムーズに行えます。複数の線を描く場合もこの操作を繰り返すだけで、均整の取れた正確な図面が完成します。
4. 直交モードの活用シーンと効果的な使い方

実際のCAD作図において、直交モードはどんな場面で役立つのかを理解しておくことはとても大切です。たとえば、建築図で柱や壁を描くとき、機械設計で部品の外形やフレームを作成するときなど、正確な水平・垂直線が必要な場面は多く存在します。こうした作業では、直交モードを使うことで「まっすぐ」を確実に保ち、手作業での角度ズレを防げます。
一方、設計が複雑になると、斜め線や曲線などが多く登場し、「直交モードは不要では?」と感じることもあるかもしれません。ですが実際には、どんな複雑な形状にも必ず垂直や水平の要素が含まれています。そうした部分だけを正確に描くために、一時的に直交モードをONにして使う――この柔軟な使い方こそが、上級者の作図テクニックです。
熟練のCADオペレーターは、状況に応じて直交モードをON/OFFしながら作図しています。作業スピードを上げ、ミスを減らすためには、「今は直交を使うべきか、解除すべきか」を常に意識することが重要です。以下では、基本的な図形作成時の使い方と、複雑な設計作業での活用方法の2つの視点から、効果的な運用例を紹介します。
また、スムーズな作業のためには、他の補助機能と組み合わせて使うことも欠かせません。次の章で紹介するように、状況に合わせた切り替えを意識すると、作図の正確性とスピードがさらに高まります。
4.1. 基本的な図形作成時の直交モードの利用
■ 水平・垂直線の連続作図
壁や梁など、単純に見えても精度が求められる要素を描く際には、直交モードが非常に効果的です。角度を入力する必要がなく、カーソルを水平または垂直に動かすだけで正確な線を引けるため、作業スピードが格段に向上します。大量の線を描くときほど、その恩恵を実感できるでしょう。
■ 矩形や枠線の一括作図
四角い図形やフレームを描くときも、直交モードが役立ちます。四隅を自動的に直角に保つため、寸法ミスを防ぎながら正確な矩形を短時間で作成できます。図面のレイアウト枠や構造部材の外形など、正確さが求められる場面では必須の機能といえます。
■ オブジェクトの配置や移動
直交モードは線を引くだけの機能ではありません。オブジェクトをコピーしたり、整列させたりする際にも有効です。カーソルの動きが上下左右に制限されるため、ずれや傾きのない配置が容易になります。特に部品配置や設備図のレイアウト調整では、直交モードを活用することで誤差を最小限に抑えられます。
このように、基本的な図形作成ほど直交モードの恩恵は大きく現れます。特に初心者のうちは、意識して多用することで正確な作図感覚を身につけることができるでしょう。
4.2. 複雑な設計作業での直交モードの活用
■ 局所的な水平・垂直定義
曲線や斜線を多用する複雑な設計図でも、一部に正確な水平線や垂直線を引きたい場面は必ずあります。そんなときに一時的に直交モードをONにして必要な要素だけ正確に描き、終わったらOFFに戻す――この切り替え操作を習慣化すると、精度と自由度を両立した作図が可能になります。
■ 合い口やジョイントの精密作図
家具や機械部品など、接合部分の設計では、角度誤差がミスにつながることがあります。直交モードを使えば、X軸・Y軸と平行なラインを正確に引けるため、接合部のズレを防ぎ、部品の整合性を確保できます。特に大きな部品や長尺物を扱うときは、直交モードを使うことで仕上がりの精度が安定します。
■ 他の補助機能との組み合わせ
直交モードは、他の支援機能と組み合わせて使うことでさらに効果を発揮します。たとえば「直交モード+オブジェクトスナップ」で端点や交点を正確に指定したり、「直交モード+ポラートラッキング」で45度など任意の角度線を描いたりと、柔軟な作図が可能になります。
特にAutoCAD系ソフトでは、Shiftキーによる「一時オーバーライド」が利用でき、押している間だけ直交モードを一時的にON/OFFすることができます(設定項目:TEMPOVERRIDES=1 が有効であることが条件)。一部のノートPCではキーボード設定やドライバの影響で動作しない場合がありますが、その場合は設定やドライバを見直すことで対応できます。
このように、直交モードを必要な瞬間だけ有効化するテクニックを覚えると、作業効率が大幅に上がります。CADの上達は、こうした小さな機能の使い分けを積み重ねることから始まります。
5. 直交モードと他の補助機能との違い
多機能なCADソフトには、直交モードのほかにもスナップモード・グリッドモード・ポラートラッキングといった補助機能が備わっています。一見似たように見えますが、実際にはそれぞれが異なる役割と目的を持っています。これらの違いを理解しておくことで、作業効率や精度が格段に向上し、トラブルシューティングの際にも役立ちます。
特に初心者のうちは、「スナップモードをONにしたのにカーソルが動かない」「直交モードのまま斜め線が描けない」といった混乱が起こりがちです。各モードの特性と使い分けをしっかり押さえておくことで、より快適に作図を進めることができます。
ここでは、まずスナップモード・グリッドモードとの違いを整理し、続いてポラートラッキングとの関係を比較していきます。ソフトによってボタン名や配置が若干異なる場合もあるため、実際の環境設定やヘルプ画面も併せて確認してみましょう。
5.1. スナップモード、グリッドモードとの比較
■ スナップモードとの違い
スナップモードは、カーソルを既存オブジェクトの端点・交点・中心点などに正確に吸着させる機能です。つまり、線や点など「特定の位置」に自動でピタッと合わせるのが目的です。
一方で、直交モードはカーソルの動く方向そのものを制限する機能です。現在のUCS(ユーザー座標系)を基準に、水平方向(X軸)と垂直方向(Y軸)のみに移動を固定します。
また、グリッドの回転角(SNAPANG)が設定されている場合には、その角度を基準として水平・垂直方向が再定義されるため、見た目が斜めに感じられることもあります。
このように、スナップモードは「点に吸着」、直交モードは「方向を固定」という違いがあり、両者の目的は明確に異なります。混同しないよう注意しましょう。
■ グリッドモードとの違い
グリッドモードは、図面上に等間隔の格子(グリッド)を表示する機能です。あくまで視覚的なガイド線として作業位置を把握しやすくするもので、カーソルがそのグリッドに吸着するわけではありません。
対して直交モードは、カーソルの移動方向を制御する機能です。したがって、グリッドモードは「目で見る補助」、直交モードは「動作の補助」と考えると理解しやすいでしょう。
■ 使い分けのポイント
高精度な作図を行う際は、「直交モード+スナップモード」の併用がおすすめです。これにより、方向のブレを防ぎつつ、端点や交点にも正確に吸着できます。また、背景のガイドとしてグリッド表示を併用すれば、レイアウト全体のバランス確認にも役立ちます。
多くの熟練オペレーターは、作業内容に応じてこれらの補助機能を組み合わせて使用し、作図精度と作業スピードの最適化を実現しています。
5.2. ポラートラッキングとの相違点
■ ポラートラッキングとは
ポラートラッキング(Polar Tracking)は、あらかじめ設定した任意の角度にガイド線を表示し、カーソルをその角度に沿って動かせるようにする機能です。たとえば45°や30°などを設定しておくと、カーソルを動かした際にその角度方向へ自動的に補正されたラインガイドが表示され、正確な斜め線を簡単に引けます。
■ 直交モードの限定度合い
直交モードは、90度(水平・垂直)のみを厳密に保持します。つまり、「真っ直ぐ」に特化したシンプルで強力な制御機能です。
一方のポラートラッキングは、設定次第であらゆる角度の方向ガイドを出せる柔軟な機能で、より自由な作図に向いています。直交モードが“基本の精度を確保するための定規”なら、ポラートラッキングは“任意角度の補助線を引くためのガイド”といえるでしょう。
■ 併用の実践例
実務では、通常は直交モードをOFFにしておき、必要に応じてポラートラッキングをONにするという使い分けをするケースが多く見られます。たとえば45°の配管ラインや傾斜面の作図など、一定の角度を維持した線を引くときに非常に便利です。
さらに、AutoCAD系ソフトではShiftキーによる「一時オーバーライド」が利用でき、押している間だけ直交モードを一時的にON/OFFできます(システム変数TEMPOVERRIDES=1が有効であることが前提)。ノートPCなどで動作しない場合は、キーボード設定やドライバを確認してください。
このように、直交モード・ポラートラッキング・スナップモードを作図内容に応じて切り替え・併用することで、複雑な形状でも効率よく正確な線を描くことができます。熟練者ほど、これらの補助機能を自在に使い分けているのです。
6. トラブルシューティング:直交モードが効かない場合の対処法
「直交モードをオンにしているのに、思ったように線が引けない」――そんな経験はありませんか?
実はこのトラブル、設定やショートカットの競合といったちょっとした要因が原因であることがほとんどです。中には、UCS(ユーザー座標系)の回転やシステム変数の競合など、見落としやすい設定が影響しているケースもあります。
初心者の方ほど、「なぜ急に斜めになるの?」と戸惑うことが多いですが、焦らずにひとつずつ確認していけば必ず解決できます。代表的な原因としては、
- ステータスバーがロックされている
- F8キーが他の機能に割り当てられている
- UCSが回転している
などが挙げられます。
ここでは、よくある症状と解決策を整理し、あわせてシステム設定やショートカットの確認ポイントも解説します。直交モードがうまく働かないときは、以下の手順を順番に確認してみてください。
なお、これは初心者に限らず、長年CADを使っている方でも環境設定を切り替えたタイミングなどで発生しがちな問題です。慌てず対処し、作業を中断せずスムーズに続行できるようにしましょう。
6.1. 一般的な問題とその解決策
■ F8キーが効かない
ショートカットの割り当てが他の機能に上書きされている可能性があります。
まずはツールメニュー → キーボードショートカット設定で、F8キーが「直交モード」に割り当てられているか確認しましょう。
ノートPCでは、Fnキーと同時押しが必要な機種もあるため注意が必要です。キー設定を見直すだけで解決するケースが多いです。
■ ステータスバーのボタンが押せない
ステータスバーが反応しない場合は、作図コマンドの実行中で入力待ち状態になっていることがあります。まずESCキーでコマンドを解除してから操作してみましょう。
また、ステータスバーが画面外に隠れていたり、ウィンドウが最小化されているとクリックできない場合があります。画面下部の表示位置やウィンドウ状態を確認し、再度切り替えを試してみてください。
■ カーソルが斜め方向へ動いてしまう
UCS(ユーザー座標系)が回転していると、カーソルが斜めに見えることがあります。
この場合は、UCSを「ワールド座標(WCS)」に戻すか、UCSをリセットしてください。
また、グリッド回転角(SNAPANG)が設定されている場合も、Orthoの拘束方向がその角度を基準に定義されます。必要に応じてSNAPANGを0に戻すことで、見た目のズレが解消される場合があります。
6.2. システム設定とキーボードショートカットのチェック
■ システム変数の確認
AutoCAD系ソフトでは、コマンドラインにORTHOMODEと入力して確認できます。
値が1ならON、0ならOFFを示しており、これ以外の数値は設定できません。
BricsCADやIJCADなどでも同様に動作しますが、ソフトによっては別の変数名を使用していることもあるため、念のためマニュアルやヘルプを参照しておくと安心です。
■ キーボード入力設定の見直し
F8キーが反応しない場合、キーボードドライバの不具合が原因の可能性もあります。
一度再起動してみたり、他のショートカットキー(たとえばCtrl+F8など)で代用してみると、原因を切り分けやすくなります。
また、共有PCを使用している場合は、別のユーザーがキー設定を変更しているケースもあります。思わぬトラブルを防ぐためにも、定期的に設定のバックアップを取っておくと安心です。
■ ショートカットは自由にカスタマイズ可能
ほとんどのCADソフトでは、ショートカットキーを自由に再設定できます。
もしF8キーが押しづらい、または別の機能に誤って割り当ててしまうことが多いなら、使いやすいキーに変更するのも有効な方法です。
自分の作業スタイルに合わせたショートカットを整えておくことで、操作効率が格段に向上し、ストレスなく作図を進められるようになります。
7. まとめ:直交モードをマスターしてCAD作業を効率化
ここまで、CADにおける直交モードの基本概念から操作方法、活用シーン、そしてトラブル対処法までを体系的に解説してきました。
直交モードは、「AutoCAD」「BricsCAD」「IJCAD」など主要なCADソフトに共通して搭載されている最も基本的で重要な作図補助機能です。水平線や垂直線を正確に描くことで、図面全体の整合性を保ち、作業効率を大きく向上させることができます。
特に、壁・梁・フレーム・部品の外形など、どんな設計分野でも水平方向・垂直方向の線は頻繁に登場します。そのたびに角度を入力して確認するのは手間がかかりますが、直交モードを使えばワンクリックで正確な方向を自動保持できます。
F8キーやステータスバーの ORTHO ボタン、コマンドラインでの「ORTHO」入力など、どの方法も操作はシンプルです。必要なときだけONにし、不要な場面でOFFにする――この切り替えを自然にできるようになると、作業スピードと精度が一段と高まります。
さらに、直交モードはスナップモード・グリッドモード・ポラートラッキングと組み合わせることで、より柔軟な作図が可能です。斜め線や複雑な角度線を描くときはポラートラッキング、端点や交点の精度を高めたいときはスナップモード、全体のレイアウト確認にはグリッド表示——といったように、それぞれの強みを使い分けることで作図の自由度と正確性を両立できます。
直交モードの習得は、正確で美しい図面を描くための第一歩です。使い慣れてくると、線のズレや角度誤差による修正作業が激減し、結果として作業時間の短縮と品質向上の両方が実現します。
今日からぜひ、直交モードをあなたの作図ルーチンに取り入れてみてください。きっと、「まっすぐ描く」ことがこれまで以上にスムーズになり、CAD操作全体がぐっと快適になるはずです。
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<参考文献>
AutoCAD 2026 ヘルプ | ORTHOMODE (システム変数) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-CF142B68-675B-452F-B3A8-7831DDB71BD0
AutoCAD 2026 ヘルプ | ORTHO (Command) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2026//JPN/?guid=GUID-128AC5D7-72B0-498F-958D-7F619A73EC5F
直交モード – BricsCAD Lite & Pro | Bricsysヘルプセンター
https://help.bricsys.com/ja-jp/document/bricscad/drawing-accurately/orthogonal-mode?id=165079145073
ORTHO [直交モード] (コマンド) – IJCAD ヘルプセンター





