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iTunes終了は誤解?どうなるAppleの音楽配信

「iTunes終了!」というニュースが発表されたとき、ユーザーや音楽業界には激震が走りました。発表があったのは米国時間で2019年6月3日、カリフォルニア州サンノゼで毎年開催された世界開発者会議「WWDC 2019」の基調講演です。

ユーザーにとって「iTunesがなくなってしまったら、これまで購入した音楽はどうなるの?」という不安が拡がったのは当然といえるでしょう。

ところが、正確にいえばiTunesが提供していたサービス自体は完全に終了したわけではありません。速報の「iTunes終了!」という言葉がひとり歩きしたイメージがありますが、実際にAppleが発表したのはiTunesの機能を3つに分離して「スリム化」することでした。

このようなiTunes終了の誤解も含めて、これからAppleの音楽配信はどうなるのかについて解説します。

この記事を読むと、次の3つのことが分かります。

①iTunes終了、誤解されている情報と本来の意味、なぜiTunesはなくなるのか
②iTunes終了による、さまざまな不安に対するFAQ
③音楽配信の現状とAppleによる音楽配信のこれから

iTunes終了の誤解:機能はApple Music、Apple Podcasts、Apple TVに3分割

WWDCの速報で先走って拡散した「iTunes終了!」。確かにiTunesというアプリ自体はなくなります。しかし、実際には異なります。

正確な意味としては「Appleのパーソナルコンピューター次期macOS Catalinaにおいて、iTunesという製品を搭載しない」ということです。しかし、iTunesの機能は「Apple Music」「Podcast」「Apple TV」という3つの機能に分割されます。したがって「Appleが音楽配信サービスを終了させる」という意味ではありません。

なぜ3分割しなければならないかという理由はシンプルで、WIREDの『さらば、iTunes。肥大化した混迷の産物の“死”と、その偉大なる功績』(2019年6月4日掲載の記事)が示している通り、建て増し的に機能を追加して「肥大」したiTunesをスリム化する必要があったからです。

参考:さらば、iTunes。肥大化した混迷の産物の“死”と、その偉大なる功績
https://wired.jp/2019/06/04/apple-kills-itunes/

音楽再生プレイヤーだったiTunesは、2002年にオーディオブック対応、2003年にWindows版をリリース、2005年にテレビ、ミュージックビデオ、ポッドキャストに対応、2006年に映画の販売開始、2007年に大学の講義を受講できる「iTunes U」追加と機能を拡大してきました。

しかし、ひとつのアプリに音楽から映像まで詰め込むのは、ムリがあります。まさに拡大というより「肥大」です。ユーザーにとっては複雑で分かりにくいアプリになりました。こうしてユーザビリティの悪化したiTunesを3つに分離して、使いやすくすることがAppleのねらいです。

iTunesとは何だったのか? その功績とは

製品としてiTunesがなくなるとはいえ、およそ20年もの間、アップデートを繰り返しながら使い続けられたiTunesの功績は賞賛に値します。

iTunes登場以前には、デジタル音楽を共有して楽しむためには、NapsterのようなP2P(ピア・ツー・ピア:端末と端末のネットワーク)の手段を使うしかありませんでした。しかし、Napsterはメジャーレーベルから著作権侵害の訴訟を起こされました。そのような状況下でAppleからiTunesが登場することによって、デジタル音楽は各自が購買して家族で共有して楽しんだり、自分の持っているCDを保存したりできるようになりました。

もともとiTunesは、ソフトウェア開発企業Casady & Greeneの「SoundJam MP」というMP3プレイヤーをAppleが買収し、2001年にiTunesとして発表した製品です。とはいえ、MacはもちろんiPodやiPhoneというメジャーなApple製品にiTunesが標準搭載されることにより、デジタル音楽は普及し、市場が大きく拡大しました。

ところが現在、音楽配信は端末保存による所有から、ストリーミングで聴くサブスクリプションのビジネスモデルが主流になりつつあります。iTunesが3つの機能に分化される背景には、そんなデジタル音楽配信の変化が影響を与えています。

三位一体を強調するApple

WWDC 2019で、AppleのCEOティム・クック氏は、Hardware、Software、Serviceによる三位一体の事業推進をアピールしました。Appleファンとしては、iTunesが、音楽、ポッドキャスト、テレビ(映画)という3つのソフトウェアに分離されることにより、それぞれのサービスのさらなる充実に期待したいところですね。

全般的にApple製品のよいところは「オールインワン」で、さまざまなセットアップをしなくても、直感的に使えるインターフェースではないでしょうか。音楽、テレビ、ポッドキャストなど別々のアプリをダウンロードして起動しなくても、iTunesがエンターテイメントのコントロールセンターとして機能し、音楽も映画も分け隔てなく利用できることは理想的でした。

また、macOSならびにWindowsのPCでは、iPhoneやiPodなどのデバイスをPCに接続することで、iTunesを介してバックアップ、モバイルOSの更新やリセット、楽曲を転送できる機能がありました。

ところがPCを持っていないユーザーが増え、クラウドに接続することでバックアップができる現在、iTunesはPCを持っていないユーザーには不要です。現在、スマートフォンではミュージックビデオをYouTubeアプリで見ることはありますが、音楽は専用ソフトで聴くことが一般的です。このようなスマートフォンのアプリ利用状況の変化を考えても、iTunesがエンターテイメントの統合ソフトである必然性はなくなりました。

オールインワンは確かに便利ですが、コンテンツの量が膨大になった現在、ひとつのアプリに音楽、ポッドキャスト、映画やテレビを詰め込むのはスマートではありません。iTunesの解体は、時代に合った自然な流れといえるでしょう。

iTunes終了による不安や疑問のFAQ

ここまで、iTunesが3つの機能に分離されることとその背景を解説しました。しかし、iTunesのユーザーには「実際に問題が生じるのではないか?」と不安や疑問があるはずです。そこで、FAQの形で疑問を解説します。

バックアップやリセットはどうなる?

macOS Catalinaでは、Finderの機能に引き継がれます。iPhone、iPad、iPod touchを接続すると、USBや外付けのハードディスクドライブと同様にFinderのサイドバーに接続された端末が表示され、従来のように利用できるようになります。Finder からOSのアップデート、楽曲やアプリなどのバックアップ、リストアが可能です。

これまでのファイルの整理が必要?

これまでiTunesに保存したライブラリやCDやMP3のファイルは、新たなApple Musicにインポートされます。購入した音楽も同様です。したがって、3つのアプリに分離されても、従来のファイルを整理する必要はありません。Apple Musicに登録している場合、iCloudにアップロードしたファイルは登録したすべてのデバイスで同期します。これも従来通りです。

今後、映画や音楽はどこで購入する?

現状では音楽はApple Music、その他はiTunes Storeではないかと予測されています。Appleユーザーの理想としては、それぞれのアプリ内で購入が可能になることです。なぜなら、購入のたびにiTunes Storeを起動するのは面倒ですから。

Windows版iTunesもなくなる?

いいえ、なくなりません。Windows版iTunesは「何の変更もなく存続する」という回答が報じられています。さらに次期macOS CatalinaのようにApple Music、Podcast、Apple TV」の3つの機能に分離されずに、これまでと同様に動作する予定です。

iTunesがなくなるのはいつから?

正式な発表がないため確実なことはいえませんが、新しいiPhoneの発売、iOS13のリリース時期である2019年9月から10月という説があります。例年、秋にApple Special Eventが行われているので、それに合わせて変更されるだろうという推測です。macOS Catalinaも同時期に発表されるという見解が現在の主流になっています。

まとめ: macOS CatalinaとiTunesなき後の音楽配信

既にmacOS Catalina ベータ版の配布が始まり、iTunesが3つのアプリに分化されてスリム化された快適さに対する絶賛の声が報じられるようになりました。

参考:iTunesのないmac OSは至福。Catalinaのベータ版で実感
https://www.gizmodo.jp/2019/07/life-without-itunes-is-sweet.html

2019年7月16日(米国時間)に配布されているベータ4は開発者向けであり、まだ不具合がある状態です。しかし、このベータ版を使った開発者の印象からは、iTunesの分割は高く評価されています。

ところで、ICT総研が2019年5月8日に発表した「2019年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」によると、定額音楽配信の利用者は有料サービスが14.4%、無料サービスが12.5%、で7割強はまだ利用していない状況という結果になりました(n=4,170、Webアンケート調査、複数回答、有料と無料のサービスを両方利用しているユーザーは有料としてカウント)。

定額音楽配信の利用者(n=1,124人)に絞り込むと、ベスト3は第1位がAmazonのPrime Music、第2位がApple Music、第3位がLINE MUSICです。わずかな差でSpotifyが続きます。

iTunesから音楽を分離して身軽になったAppleの展開によっては、Amazonに打ち勝ってAppleの定額制音楽配信サービスがトップに踊り出る可能性も秘めています。「三位一体」を強調していますが、米中の貿易摩擦でiPhone本体のシェア減少のウワサもあるAppleとしては、サービス強化が現状打破の有力なカギではないでしょうか。

参考:2019年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査
https://ictr.co.jp/report/20190508.html

 

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