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AmazonがEVトラックを10万台導入!謎の新興企業「リヴィアン」社と描く、「CO2ゼロの配送網」への夢

「電気自動車といえばテスラ社」という人は多いだろう。2003年に設立したテスラ社は、シリコンバレーを拠点に電気自動車およびその関連製品の開発・製造・販売を手がけるベンチャー企業であるが、EV自動車の製造・販売を手がける唯一の企業として業界内で大きな存在感を放っているからだ。

だが2018年末に、新興企業「リヴィアン」社がその独壇場に待ったをかけた。リヴィアン社は高級車路線を目指すテスラ社に対し、「高性能で汚せる電動ピックアップトラック」というコンセプトで差別化を図った。ショーにおいてリヴィアンの代表者スカリンジは、多機能性を軸とする開発戦略によって「2020年内に米国で50,000台を売り上げる」ことを宣言する。
2年半も先のこのビジョンに、しかし人々は好奇心こそよせれど大きな期待はしていなかったかもしれない。「そうはいっても、EV車はテスラ社か、せいぜいどこかの大手老舗自動車メーカーが市場を独占するんだろう」という感想を抱いた人がいたとしても、不思議ではない状況であった。

2019年9月、事態は急変した。あのAmazonのCEOであるジェフ・ベゾスが、リヴィアン社の電気自動車を「配送用EV」として採用することを宣言したのである。この時発表された注文台数は10万台であり、これは前述の2020年内における販売目標の倍に当たる数値である。世界的企業であるAmazonから名指しの受注を獲得したことによって、一介のスタートアップに過ぎなかったリヴィアン社の評価は、一躍期待のダークホースへと急上昇したのだ。

この記事では、リヴィアンとAmazon、それぞれの動向や背景に注目しながら、2018年〜2020年にかけて進展したAmazonのEV車導入にまつわる動向について解説する。

新興のEV自動車企業「リヴィアン」社とは?

リヴィアンは、2018年のロサンジェルス・オートショーにおいて、まさにダークホースと呼べる存在であった。同社は2009年設立であるが、彼らがEV製作を始めたのは2011年と意外にも最近である。リヴィアンはかつてメインストリーム・モーターズと称しており、その当時は当初は1リットルあたり約25キロの燃費を誇るハイブリッドカーの完成を目指す小さな企業であった。その後、2018年には拠点もフロリダからミシガンに拠点を移し、現在では5つの拠点と約750名の従業員を抱える規模にまで成長していた。
彼らがモーターショーに引っ提げてきた秘密兵器の名は、電動ピックアップトラック「R1T」。大きさ的にはフォード社の「F-150」とほぼ同じでありながら、価格は6万9,000ドル(約747万円)と倍以上であった。その高価格の背景にあるのは、「昔から言われる『燃費が悪い』『運転が楽しくない』『ハイウェイが苦手』という欠点をなくして、むしろそこを長所にしたいのです」という、リヴィアン社代表スカリンジの言葉に現れている。4基のモーターによる約5トンの牽引力と加速力、最適化された冷却装置により寿命を圧倒的に伸ばした180kwhという超大容量バッテリー、そして近未来映画から抜け出してきたようなワクワクするボディは、「ラグジュアリー・トラック」の名にふさわしいと言えただろう。*1)

衝撃のコラボレーション!Amazonによるリヴィアン社への経済支援

しかし、夢は描くだけでは実現できない。例えば自動運転車のクルーズがゼネラル・モーターズ(GM)の傘下に入ったように、例えばアップルが自動車部門「Project Titan」を立ち上げるにあたって各種大手自動車メーカーから従業員を引き抜いたように、例えばルノー・日産・三菱が自動運転車やEVにまつわるベンチャー企業に最大10億ドルを資金提供するファンドを設立したように、自動車ベンチャーには大企業との取引や駆け引きがつきものなのだ。当時のリヴィアンに必要だったのは、量産化に向けた取り組み、そしてそれを支援してくれる技術的・経済的なパートナーである。

はたしてリヴィアンに手を差し伸べたのは、何と天下のECサイトAmazonであった。2019年9月、大手オンライン通販のAmazonは、「リヴィアン」に対する投資ラウンドにおいて、7億ドル(約773億円)の出資を行うことを発表したのである。既存の株主による出資が4.5億ドルであったことを考えれば、この決定がリヴィアンに与えた影響は大きなものと言えるだろう。*2)

Amazonが描く「ゼロカーボン」な物流網の夢

しかしなぜAmazonは、リヴィアンが掲げる「ラグジュアリートラック」に対し、こうした支援を施したのであろうか?その背景にあるAmazonの思惑はどのようなものであったのだろうか?

背景にあるのは、Amazonの環境問題に対する姿勢の変化である。これまでAmazonの企業活動は、お世辞にも地球の気候変動にフレンドリーであるとは言えないものであった。例えばGreenpeaceによるレポートによれば、、Amazonのバージニア州データセンターの電源のうち再生可能エネルギーによるものは、Facebookの37%、Microsoftの34%に対しわずか12%であったという。
こうした批判をうけ、Amazonは“Shipment Zero” と呼ばれるプロジェクトを宣言し、2030年までにAmazon全出荷物の50%をネットゼロカーボンにすることを目標としたのである。*3)

さらにそれから半年後の9月19日には、ワシントンで開かれたNational Press ClubにおいてAmazonは100,000台のバンをリヴィアンに発注したことを明らかにする。
つまりAmazonによるリヴィアン社への支援とは、EV自動車の導入によるCO2排出量の削減に狙いがあったと言えるだろう。*4)

そして2020年の初頭には、納品される車のより詳細な仕様や紹介動画が発表された。従来のリヴィアン社が誇る駆動力や多機能性はもちろんのこと、人間工学に基づいた運転席や、荷台の暖房、それに磁石を利用して揺れても落ちない集配箱など、配送社としての工夫が随所にカスタマイズされている。自動緊急ブレーキ、前輪および全輪駆動オプション、車線維持サポート、歩行者警告システム、交通デザイン認識、自動警告システムなど、最先端の自動車情報技術の搭載に加え、音声アシスタントのAlexa(アレクサ)も設置されるなど、まさに未来の配送自動車が現実になったと言えるものであった。*5)

発表によれば、2021年までに初期ロットを納車し、2022年末までに1万台を、2030年までにすべての車両をリヴィアンの配送車に切り替える見込みであるという。また、納品される自動車には右ハンドルも含まれており、日本への導入も期待されている。

参考
*1)https://wired.jp/2018/12/20/rivian-pickups-tesla/
*2)https://www.autocar.jp/news/2019/02/18/351281/
*3)https://techcrunch.com/2019/02/18/amazon-aims-to-make-half-of-its-shipments-carbon-neutral-by-2030/?guccounter=1
*4)https://www.theverge.com/2019/9/19/20873834/amazon-sustainability-jeff-bezos-climate-change-pledge-emissions-paris-accord
*5)https://techcrunch.com/2020/01/06/amazon-backed-rivian-will-integrate-alexa-into-its-electric-pickup-and-suv/


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