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大手ゼネコンのBIMファミリデータを一般配布⁉︎AUTODESK社が乗り出すBIM標準化への第一歩

数十年は遅れているとされてきた本邦建設業のデジタル化ですが、企業や業態や国境の壁を越えた各方面の努力により、近年その硬直が少しずつ氷塊しつつあります。
そして2020年を迎えた今、もはや建設業界で「デジタル」「BIM」という言葉を聞かない日はありません。

そんな建築のDX化(デジタル・トランスフォーメーション)の動きの中で、とりわけ耳にする言葉の一つにBIMの「標準化」というキーワードがあります。
BIMの標準化とはその名の通り、
「異なる国や企業や部署で作られたBIMデータであっても相互に利用しあえるように、規格を統一する」
一連の試みを指す単語です。
企画設計から構造計算・積算・施工・保守管理に至るまで、同一のデータを使える点にこそBIM化することのメリットがある以上、そのデータを扱う人々の間でフォーマットを統一するのは必然とも言えるでしょう。

しかし過去のBIM導入に関する取り組みの中には、競合他社との過剰な差別化や、導入者の知識不足といった点からBIMの標準化はさほど進みませんでした。
そのため、工程間の受け渡しや会社同士の連携に適切なBIMデータの管理ができているとは言えない状況でした。

こうした状況を受け国土交通省は、2019年10月に「建築BIM環境整備部会」を開催し、官民一体となったBIM標準化を目指すことを発表しました。*1)
企画設計から実施設計、施工、維持管理まで至るワークフローの標準化と、それによる生産性の向上は、近年の建築業界にとって最大級の悲願とも言えるでしょう。

▽関連リンク

もちろん、BIMデータの標準化に向けて動いてきたのは行政だけではありません。
建築現場の最前線で戦う大手ゼネコン各社や、BIMを開発するメーカーによる一体的な動きがなければ、BIMの標準化など夢のまた夢でしょう。

そこでこの記事では、BIM標準化に向けた「構造用ファミリの公開」一連の取り組みについて調査しました。
具体的には、2016年から2020年にかけて行われた、AUTODESK社及び大手ゼネコンの努力を中心にご紹介してまいります。

Revit 構造設計用ファミリとは?

はじめに、「ファミリ」という単語について解説しましょう。

建築物は、壁・床・屋根・柱・梁・窓・ドアなど、無数の部品によって構成されています。
また、一つの建物で一種類の窓しか存在しないということはなく、寸法や開き方においてさまざまなバリエーションの窓が、一つの建物の中に複数利用されているのが普通です。
しかし同時に、すべての窓の規格が完全にバラバラで、同じ仕様の窓は一つも存在しないという建物も普通は存在しません。

このように建築物は、共通点と相違点がある無数の部品の集合から成り立っています。
そのため、窓ならば「窓A」「窓B」「窓C」のように名前を割り振り、
「窓Aはこの建物で107組み、それより少しだけ幅の細い窓A’が同じく107組み、窓Bは12組み、特注の窓Cは一箇所にしか使わない」
というように、グループ化して管理することで効率的に設計を進めることができるようになります。
同様に柱や梁にしてもその太さや断面形状、壁一枚にしても厚みや内装材など、「共通点もあるが微妙に仕様の異なる大量のバリエーション」があるというのが一般的です。
そのため、建材の企画をなるべく統一しつつ、そのバリエーションの違いを適切に管理することで、画一的ではない見た目と大量生産の両立を目指すなどの工夫が行われてきました。
この発想はBIMにも当然用いられており、使い回しの効く汎用性の高い部品・パーツ・建材は設計の前に事前に登録しておき、いつでも使える状態にしておくのが普通です。

建築業界で大きなシェアを占めるBIMソフトの「Revit」においては、このパーツのひとつ一つを「ファミリ」と称します。
このファミリ機能を使えば、例えば建物内のある扉を引き戸から開戸に変更する場合も、いちいち図面を引き直すようなことはしません。
登録されている「引き戸のファミリ」を「開戸のファミリ」にワンクリックで変更させるだけで、一括で修正できるようになるのです。

ファミリ標準化への夢

ファミリ機能は非常に便利な一方、その運用には大きな課題もありました。
それは、異なるファミリを利用しているソフト同士の間では、データの受け渡しが難しい点です。

BIMを用いた大規模な設計では、通常意匠設計者→実施設計者→構造設計者→設備設計者→施工管理者のような、川上から川下へ一方通行で図面が引き継がれるということはまずありません。
むしろ施工現場からの要望や建材の製造元の状況に応じて、図面の書き換えにより何度も上流へ下流へ往復することが普通です。

この時、会社ごとに利用しているファミリが異なっていると、受け取ったデータを読み取ることができなかったり、受け渡しの間にデータが欠落する可能性が高まります。
そのため、Revitで作成したデータを企業間で受け渡す行為は、細心の注意が必要な作業といえました。

いうまでもありませんが、こうしたデータ受け渡し間の調整作業は、非効率以外の何物でもありません。
この状況を打破するためには、全ての企業が同じファミリを使うことが最善手です。
すでにBIMが各企業に導入されてから10年近くが経過する今、そうした利用データの統一作業を進めることは、口で言うほど簡単な行為ではないでしょう。
しかし利用データの標準化は、時間が経てば経つほど困難になる作業であることも事実です。

企業の枠を超えたファミリの統一は、まさに建築業界の悲願といっても過言ではありませんでした。

AUTODESK社による、構造用ファミリ標準化に向けた取り組み

そこでRevitの開発元であるAUTODESK社は、オリンピックを控えた2010年代後半に、大手ゼネコンを巻き込んだRevitファミリの標準化に乗り出しました。

この動きが最初に世間に発表されたのは、2018年12月のことでした。*2)
AUTODESK社は自社HPのリリースにて、「AUTODESK® REVIT® 2019 向け構造用ファミリを公開。大手建設会社が標準化整備に協力、構造設計・施工の関係者と高いレベルの情報共有が可能に」という記事を発表します。
そこでは、株式会社大林組、清水建設株式会社、大成建設株式会社など大手建設会社の協力を得て翌年の2019年版Revitに用いることができる構造用ファミリの無償配布が明らかとなりました。

この取り組みは、大きく二つの意味を持ちます。
一つは、大手ゼネコン同士が共通のファミリを用いる点です。
例えばオリンピックに向けたスポーツ施設の建設や、大手ディベロッパーによる首都圏の再開発事業などでは、大手ゼネコン同士が一つの建物の企画設計・実施設計・施工を分担して取り組むこともたびたび存在します。
そこで用いるファミリが共通化されれば、たとえ部分的な改善であったとしても、生産性向上に向けた大きな一歩となることでしょう。

また、そのデータを全世界に公開した点は、大手ゼネコンとデータのやり取りを行う生産・施工・保守を担当する各企業にも大きなメリットをもたらします。
これまで複数のゼネコンの下請けを行ってきた企業などは、取引先のゼネコンごとにファミリを使い分けるような煩わしい作業から、部分的とはいえ解放されることを意味するからです。
あるいはこの動きが広まれば、やがて大手ゼネコンと直接の取引のない企業や設計事務所においてさえも、この構造用ファミリの利用がスタンダート化するかもしれません。

この時点で発表されたのは、あくまで鉄骨造建築物の構造用ファミリのみでしたが、2020年の7月にはRC造向けのファミリデータの配布を公表しました。*3)
今回の発表では新たに鹿島建設の参加もあきらかとなりました。
ますます標準化に向けた大きな一歩が踏み出されたと言えるでしょう。

まとめ

マイナビニュースによれば、AUTODESK社および各ゼネコンによるファミリの配布は、今後もさらなる充実を目指しているとされています。*4)
BIMによる建築生産の効率改善は、これからも少しずつ進んでいくことでしょう。
なお、構造用ファミリは以下のWeb サイトから、だれでもダウンロード可能です。

【外部リンク:Revit 構造設計用ファミリダウンロード:https://gems.autodesk.com/RST

*1)国土交通省HP 広報 「BIMを活用した将来像等を議論します
~建築BIM環境整備部会(第1回)を開催~」https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000646.html
*2)AUTODESK社公式HP プレスリリース 「2018年12月4日 AUTODESK® REVIT® 2019 向け構造用ファミリを公開 大手建設会社が標準化整備に協力、構造設計・施工の関係者と高いレベルの情報共有が可能に」https://www.autodesk.co.jp/press-releases/2018-12-04
*3)AUTODESK社公式HP プレスリリース「2020年7月22 日 大手建設会社が Autodesk® Revit® 2020 向け構造用ファミリの整備に協力、 構造設計・施工の関係者と高いレベルの情報共有が可能に」
https://www.autodesk.co.jp/press-releases/2020-07-22
*4)マイナビニュース「2020年7月20日 オートデスクのBIM「Revit 2020」向け構造用ファミリを大手建設会社が公開」
https://news.mynavi.jp/article/20200720-1164840


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