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3Dのカリングとは何?AutoCADでの設定方法とあわせて解説

3D形状を扱っている際に、
「AutoCADのデータが重すぎる」
「要素がたくさん重なって選択すべき要素がわかりにくい」
などと困ることはありませんか。

3Dデータを詳細に作り込み、データ構造の規模が大きくなると、CADの要素一つひとつが多く感じたり要素が多すぎて描画に時間がかかったりすることがあります。

AutoCADなどの3DCADには描画処理を軽量化させる演算が組み込まれていて、必要に応じて活用可能です。
この記事ではAutoCADにも搭載されているカリングについて詳しく紹介します。

カリングとは摘み取ること

カリングとは、英単語の「cull」が語源です。
cullには花などを摘んだり不要なものなどを選んでより分けたりする意味があります。

AutoCADの機能にもあるカリングとは、3D形状のうち必要ないものを摘み取る機能です。
不要な形状を表示させない設定を盛り込み描画を簡素化したり要素を選択しやすくしたりするのに役立ちます。

カリングが必要となる背景とは

たとえば3D形状を作成する際には、さまざまなコマンドを積み上げていくため、カリングのように適宜データを整理する処理を行うと、スムーズに形状が動かせるようになります。

3D形状はポリゴンの組み合わせで構成される

カリングが必要となる背景には、3D形状を作成する演算方法が関連します。

3D形状はさまざまな表現手法がありますが、そのなかで最も一般的なのがポリゴンによる描画です。
ポリゴンとは、作成したい3D形状の表面にある三角形や四角形など多面体のことで、ポリゴンを組み合わせて3D形状は構成されます。

AutoCADの場合は、面と切り子面で構成されるメッシュオブジェクト表示が可能です。
切り子面一つひとつがポリゴンだと捉えるとわかりやすいでしょう。

ポリゴンが多いほどCADの描画負担が大きくなる

ポリゴンにある各々の多面体には必ず頂点があり、もし形状の変更をしたい場合には頂点の座標を制御して動かします。

形状変更の時に限らず、3D形状の移動や回転を行う場合にも座標の制御が必要です。
そのため、ポリゴン要素が多ければそれだけ描画の負担が大きくなるのです。

自分でできる表示負荷の軽減方法

設計をすすめる以上形状がたくさんできるのは仕方がありません。3Dデータの作成方法を工夫するだけでも画像を表示する負担が減らせます。

不要要素を切削

3D形状を作成する際は、スケッチや平面、レイヤーなどさまざまな要素を作成します。
要素が多ければ多いほど演算の処理が増えて図形の描画にも時間が必要です。
そのため、スムーズに形状を描画するためには、必要ない要素を非表示にしたり要素自体を切削したりすることで描画負荷が下げられます。

表示の使いわけ

3D形状にはいくつか表現方法の違いがあります。
ワイヤーフレーム、サーフェス、ソリッドの順で描画負荷が大きくなるため、用途に応じて切り替えて使うと便利です。

ワイヤーフレーム

3D形状を頂点と線だけが表示する方法です。
どこが面なのかわかりづらいものの、描画処理は最も単純で軽く表示できるのが特徴です。

サーフェス

3D形状の表面だけを作成する方法で、意匠面などを作成する場合によく用いられます。
最終的にはソリッドをサーフェスでトリム(分断)したりサーフェスを閉じてソリッドにしたりして設計をすすめるのが一般的です。

ソリッド

3D形状の表面のほか中身も完全に埋まっている状態です。
体積が求められるため、質量や重心、干渉などの設計検証に欠かせない状態です。
データ容量が大きく、演算にも時間がかかるため、複雑な形状の場合データの読み込みや移動の負荷が高くなります。

レンダリングの適用を最低限にする

サーフェスでもソリッドでも、各3D形状にマテリアルを適用するとCGのようにリアルな3D形状が作れます。
しかしレンダリング処理は、形状を描画する場合に非常に大きな負荷がかかるのです。

顧客への説明資料などに使う場合には必要な操作ですが、設計の途中では見た目のリアルな色合いにはこだわらず、構造が判別できる程度のわかりやすい単色の色を使うと便利です。

カリングの種類と効果

カリングとは前述のように描画負担を減らす方法のひとつで、3つの種類があります。

・背面カリング
・視錐台カリング
・オンクルージョンカリング

それぞれについて詳しくご紹介します。

背面カリング

背面カリング(backface culling)とは、最もシンプルなカリングです。
人が一見してもわかりませんが、ポリゴンは頂点や法線の向きから自動的に表裏が判断できます。

背面カリングではポリゴンの表だけを表示して、裏は表示させないという考え方で描画処理を行います。

視錐台カリング

視錐台カリング(frustum culling)とは、錐台(すいだい)の範囲を描画する方法です。
錐台とは台形に厚みが付いたような形状であり、カメラが写せる視野角の範囲のうち最も近い平面と最も遠い平面とで囲まれます。

カメラを構えた場合に「手前すぎるもの」「遠すぎるもの」「カメラに写らないほど外側にあるもの」は見えないため非表示にするという基準で描画を行います。

オンクルージョンカリング

オンクルージョンカリング(ocllusion culling、閉塞カリング)のocllusionとは、排除、閉塞、妨害などの意味です。
オンクルージョンカリングの場合、ある不透明な要素(遮へい物)が手前にある際に遮へい物の後ろにある要素を非表示にします。

たとえば立方体がある場合、手前のエッジは表示させて後ろ側にあるエッジは表示させません。

・オンクルージョンカリングありの場合:裏面が描画される、裏面要素が選択できる
・オンクルージョンカリングなしの場合:裏面の要素が表示されない、裏面要素が選択できない

製図では背面を陰線で表示することがありますが、閉塞カリングの有無を切り替えると陰線の有無と近い見え方になります。

AutoCADで行われるカリングの処理

AutoCADでは、2つの方法でカリングの制御が可能です。
どちらの場合もオンクルージョンカリングが行われます。

ツールバーのアイコンからカリングを選択

AutoCADのツールバーにあるカリングは、一時的にカリングのオンオフを切り替える際に便利です。
カリングのコマンドは3Dオブジェクトの「選択」コマンドで設定できます。

カリングがオンの場合は、3D形状の隠れている箇所の選択ができません。

システム変数でカリングを制御

要素ごとに一律でカリングの対応を決めてしまいたい場合には、システム変数を定義して標準のモデリングルールを作っておくと便利です。

AutoCADの場合、カリングを制御するシステム変数は2種類あります。

CULLINGOBJSELECTION

ビューからは見えない 3Dオブジェクトをハイライト表示したり選択可能にしたりするためのシステム変数です。(*1)

・0:オブジェクトをカリングしない
・1:オブジェクトをカリングする

CULLINGOBJ

ビューからは見えない 3Dサブオブジェクトをハイライト表示したり選択可能にしたりするためのシステム変数です。(*2)

・0:オブジェクトをカリングしない
・1:オブジェクトをカリングする

サブオブジェクトとは、3Dソリッドやサーフェス、メッシュ オブジェクトに含まれる構成要素の面やエッジ、頂点を指します。

まとめ

カリングとは画像処理方法のひとつで、一定の基準で描画対象する3D形状を場合分けしています。
カリングを行うことで表示負荷を減らしたり要素が選択しやすくなったりします。AutoCADの場合はカリングアイコンの選択で切り替える方法と、システム変数で制御する方法の2とおりがあるため、目的に応じて使い分けましょう。

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参考URL
*1 http://help.autodesk.com/view/ACD/2020/JPN/?guid=GUID-3B35DE27-EC50-4290-ACF8-ABC5FB25EBBC
*2 http://help.autodesk.com/view/ACD/2020/JPN/?guid=GUID-590C8657-F0DE-4014-B921-FFCFF8C389DE

2022年12月19日 情報更新

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